訪問入浴介護の認知症専門ケア加算とは?

訪問入浴介護の認知症専門ケア加算は、(Ⅰ)3単位/日、(Ⅱ)4単位/日です。単位は小さいものの、訪問入浴で見落とされやすいのは「(Ⅰ)と(Ⅱ)で対象者の定義が違う」ことです。
(Ⅰ)の対象者は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」が利用者の2分の1以上。(Ⅱ)は「日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者」が20%以上。割合の基準(1/2と20%)も、母集団の定義も違います。
入居系サービスの認知症専門ケア加算は(Ⅱ)が(Ⅰ)の要件を丸ごと含む構造ですが、訪問系は組み立てが異なります。他サービス向けの解説をそのまま使うと判定を誤ります。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問入浴介護費のハ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第3号の4、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(同第94号)第3号の3の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位という単位数
- (Ⅰ)と(Ⅱ)で対象者の定義が違うこと
- 割合要件が(Ⅰ)2分の1以上、(Ⅱ)20%以上であること
- 研修修了者の必要人数の計算方法
- (Ⅱ)が(Ⅰ)の割合要件を引き継がない構造であること
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できないこと
- 1日につきの加算であること
- 介護予防訪問入浴介護でも算定できること
ちびウルフ(Ⅱ)は(Ⅰ)の上位版という理解でいいですか?
リハウルフ訪問系は少し違います。(Ⅱ)が引き継ぐのは(Ⅰ)の(2)と(3)(研修修了者の配置と会議)だけで、(1)の割合要件は引き継ぎません。代わりに(Ⅱ)独自の20%要件があります。「(Ⅰ)を満たしてから(Ⅱ)」という発想で判定すると、条文と合わなくなります。
単位数は(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位(1日につき)
告示19号の訪問入浴介護費「ハ 認知症専門ケア加算」の注は、次のとおりです。
別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして(略)都道府県知事に対し届出を行った指定訪問入浴介護事業所において、別に厚生労働大臣が定める者に対して専門的な認知症ケアを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1日につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) 認知症専門ケア加算(Ⅰ) 3単位
(2) 認知症専門ケア加算(Ⅱ) 4単位
訪問入浴介護の基本報酬は「1回につき」ですが、この加算は「1日につき」です。同じ日に2回訪問した場合の扱いは保険者に確認してください。
対象者の定義が(Ⅰ)と(Ⅱ)で違う
告示94号第3号の3は、次のように定めています。
イ 認知症専門ケア加算(Ⅰ)を算定すべき利用者
周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者
ロ 認知症専門ケア加算(Ⅱ)を算定すべき利用者
日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者
| 区分 | 対象者の定義 | 割合要件 |
|---|---|---|
| (Ⅰ) | 周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者 | 利用者の総数の2分の1以上 |
| (Ⅱ) | 日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者 | 利用者の総数の100分の20以上 |
(Ⅱ)のほうが対象者の状態像は重く、必要な割合は低いという関係です。訪問入浴の利用者は重度の人が中心なので、(Ⅱ)の20%要件は実務上満たしやすいと考えられます。
(Ⅰ)の要件は3つ
- 利用者の総数のうち、対象者の占める割合が2分の1以上であること
- 認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を、対象者が20人未満なら1人以上、20人以上なら「1に、対象者数が19を超えて10又はその端数を増すごとに1を加えて得た数」以上配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施していること
- 従業者に対する認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催していること
(Ⅱ)の要件は4つ
- (Ⅰ)の(2)及び(3)の基準に適合すること(研修修了者の配置と会議)
- 利用者の総数のうち、対象者((Ⅱ)の定義)の占める割合が100分の20以上であること
- 認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施していること
- 介護職員・看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、計画に従い研修(外部研修を含む)を実施又は実施を予定していること
基準の文言は「イ(2)及び(3)の基準のいずれにも適合すること」です。(Ⅰ)の(1)(2分の1以上)は引用されていません。
つまり(Ⅰ)の割合要件を満たしていなくても、(Ⅱ)の20%要件と研修要件を満たせば(Ⅱ)を算定できる読み方になります。ただし、この構造は自治体によって説明の仕方が異なることがあるため、届出前に保険者へ確認することをおすすめします。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時算定できない
注のただし書きにより、いずれか一方のみです。単位数は(Ⅱ)4単位>(Ⅰ)3単位なので、要件を満たすなら(Ⅱ)を選ぶことになります。
| 区分 | 1日 | 月8回訪問した場合の目安 |
|---|---|---|
| (Ⅰ) | 3単位 | 約24単位 |
| (Ⅱ) | 4単位 | 約32単位 |
※訪問日数×単位数で計算した概算です。金額は小さいものの、研修修了者の配置と会議は他の加算(サービス提供体制強化加算の会議・研修要件)とも重なるため、まとめて整えると効率的です。
介護予防訪問入浴介護でも算定できる
告示95号第3号の4は、訪問介護費・訪問入浴介護費・定期巡回・夜間対応型訪問介護費とあわせて介護予防訪問入浴介護費の基準も定めています。要支援1・2の利用者でも算定できます。
よくある質問
(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合、その他の加算は算定できません。
(Ⅱ)を算定するには(Ⅰ)の要件も満たす必要がありますか?
基準が引用しているのは(Ⅰ)の(2)(研修修了者の配置)と(3)(会議)です。(Ⅰ)の割合要件(2分の1以上)は引用されていません。判断は保険者に確認してください。
対象者の割合はどう数えますか?
(Ⅰ)は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」が2分の1以上、(Ⅱ)は「日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者」が20%以上です。定義が異なるため、それぞれで判定します。
研修修了者は何人必要ですか?
対象者が20人未満なら1人以上です。20人以上の場合は、1に、対象者数が19を超えて10又はその端数を増すごとに1を加えて得た数以上となります。
「1日につき」とは、同じ日に2回訪問したら2回分ですか?
条文は「1日につき」と定めています。同一日に複数回訪問した場合の取扱いは保険者に確認してください。
会議の頻度は決まっていますか?
「定期的に開催」としか定められていません。運用を決めたうえで保険者に確認し、開催記録を残してください。
届出は必要ですか?
必要です。都道府県知事(指定都市・中核市はその市長)に対して届出を行います。
要支援の人にも算定できますか?
できます。介護予防訪問入浴介護費にも同じ加算が設けられています。
- 訪問入浴介護の認知症専門ケア加算は(Ⅰ)3単位/日、(Ⅱ)4単位/日
- (Ⅰ)と(Ⅱ)で対象者の定義が異なる
- 割合要件は(Ⅰ)が2分の1以上、(Ⅱ)が20%以上
- (Ⅱ)は(Ⅰ)の研修・会議要件のみを引き継ぎ、割合要件は引き継がない
- (Ⅱ)は指導者研修修了者1名以上の配置と研修計画の作成が必要
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できない
- 研修修了者の必要数は対象者20人未満なら1人以上
- 基本報酬は「1回につき」だが、この加算は「1日につき」
- 介護予防訪問入浴介護でも算定できる
- 届出先は都道府県知事
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問入浴介護費のハ(認知症専門ケア加算)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第3号の4(訪問介護費、訪問入浴介護費等における認知症専門ケア加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第3号の3(訪問入浴介護費のハの注の厚生労働大臣が定める者)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表 介護予防訪問入浴介護費(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および保険者・指定権者の解釈をご確認ください。対象者の判定方法、(Ⅱ)における(Ⅰ)の割合要件の要否、同一日に複数回訪問した場合の取扱い、会議の開催頻度については確認をおすすめします。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の月額の試算は単位数を単純に乗じた概算です。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




