訪問入浴介護の業務継続計画未策定減算とは?

訪問入浴介護の業務継続計画未策定減算は、所定単位数の1%減です。入所・入居系サービスの3%とは異なり、訪問系は1%に設定されています。
根拠は指定居宅サービス等基準第54条で準用する第30条の2第1項。感染症と非常災害の両方について業務継続計画(BCP)を策定し、計画に従い必要な措置を講じていることが求められます。経過措置は令和7年3月31日で終了しています。
訪問入浴のBCPには、他サービスにない固有の論点があります。浴槽を積んだ専用車両が動かせなければ、事業そのものが止まるという点です。給水・給湯・電源を利用者宅から借りる構造も、災害時には前提が崩れます。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問入浴介護費の注3、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第4号の5の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 業務継続計画未策定減算が1%であること(入所系の3%との違い)
- 経過措置が令和7年3月31日で終了していること
- 感染症と非常災害の「両方」の計画が必要であること
- 策定だけでなく周知・研修・訓練・見直しも運営基準上の義務であること
- 訪問入浴のBCPで固有に検討すべき点(車両・給水・電源)
- 高齢者虐待防止措置未実施減算(1%)との関係
- 介護予防訪問入浴介護でも同じ1%であること
ちびウルフ訪問系は1%なんですね。軽く見てもいいですか?
リハウルフ金額は小さいですが、訪問入浴は災害時にいちばん止まりやすいサービスです。車両、水、電気、3人の職員。どれか1つ欠けると提供できません。逆に言えば、BCPを本気で作る意味が最も大きい業態でもあります。減算の話としてではなく、事業継続の話として組み立てるべきです。
減算率は1%
別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、業務継続計画未策定減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
| サービス類型 | 減算率 |
|---|---|
| 訪問入浴介護(訪問系) | 1% |
| グループホーム・特養等(入居・入所系) | 3% |
1回1,266単位に対して約13単位、月8回で約101単位の影響です(概算)。
経過措置は令和7年3月末で終了
告示の附則により、令和7年3月31日までは減算規定が適用されませんでした。ただし、感染症の予防及びまん延の防止のための指針と、非常災害に関する具体的計画を策定していない場合は経過措置の対象外とされていました。
この経過措置はすでに終了しています。計画がなければ、現在はそのまま1%減算です。
基準は「策定」だけではない
準用される第30条の2は3項構成です。
1 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問入浴介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて変更を行うものとする。
減算の基準(告示95号第4号の5)が引用しているのは第1項ですが、第2項・第3項も運営基準上の義務です。減算を免れることと、基準を満たすことは別です。
訪問入浴のBCPで固有に検討すべきこと
訪問介護なら職員が自転車や徒歩でも駆けつけられますが、訪問入浴は違います。
- 車両:浴槽を積む専用車が使えない(燃料切れ、道路寸断、車両故障)と提供不能
- 水:断水時に給水をどう確保するか。利用者宅の水道が使えない前提の代替手段はあるか
- 電源:停電時にボイラー・ポンプをどう動かすか
- 人:3人1組が崩れたとき、介護職員3人での対応(95%算定)に切り替えられる利用者はどこまでか
- 優先順位:全員に提供できない場合、誰から再開するか(褥瘡リスク、医療的ケアの有無、家族の介護力)
- 代替:清拭・部分浴(90%算定)で当面をつなぐ判断基準
「95%算定」「90%算定」といった報酬上の選択肢が、そのまま非常時の代替手段になります。BCPにこの切り替え基準を書き込んでおくと、実効性のある計画になります。(この整理は筆者の実務経験にもとづくもので、制度上の定めではありません)
虐待防止措置未実施減算との関係
| 減算 | 率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 業務継続計画未策定減算 | 1% | 基準第54条で準用する第30条の2第1項 |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% | 基準第54条で準用する第37条の2 |
訪問入浴介護費の注に置かれている未実施減算はこの2つです。身体拘束廃止未実施減算は設けられていません。両方に該当すれば、それぞれの減算が生じます。
介護予防訪問入浴介護でも同じ1%
介護予防訪問入浴介護費(平成18年厚生労働省告示第127号)にも同じ規定があり、基準は告示95号第100号の11が定めています。
よくある質問
訪問入浴も3%減算ですか?
1%です。3%は入居・入所系サービスの率です。
経過措置はまだありますか?
令和7年3月31日で終了しています。
感染症のBCPだけでもよいですか?
足りません。感染症と非常災害の両方について、継続的なサービス提供と早期の業務再開を図る計画が必要です。
計画を作れば減算されませんか?
減算の基準は第1項(策定と計画に従った措置)ですが、第2項の周知・研修・訓練、第3項の見直しも運営基準上の義務です。
研修と訓練の頻度は決まっていますか?
「定期的に実施」とのみ定められています。保険者が目安を示している場合は確認してください。
法人共通の計画でもよいですか?
事業所の実情(車両、給水・給湯設備、職員体制、地域の災害リスク)を反映している必要があります。共通部分と事業所固有部分を分けて整理してください。
虐待防止の減算と両方適用されますか?
それぞれ別の規定です。要件に該当すればそれぞれ減算が生じます。計算方法は保険者に確認してください。
要支援の人にも同じ率ですか?
同じです。介護予防訪問入浴介護費でも1%です。
- 訪問入浴介護の業務継続計画未策定減算は所定単位数の1%減
- 入居・入所系の3%とは率が異なる
- 経過措置は令和7年3月31日で終了している
- 感染症と非常災害の両方を対象とする計画が必要
- 基準は策定と、計画に従った必要な措置を講じること
- 周知・研修・訓練・見直しも運営基準上の義務
- 訪問入浴のBCPでは車両・給水・電源・3人体制が固有の論点
- 95%算定・90%算定の切り替え基準を計画に書き込むと実効性が上がる
- 訪問入浴には身体拘束廃止未実施減算は設けられていない
- 介護予防訪問入浴介護でも同じ1%
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問入浴介護費の注3、附則(業務継続計画未策定減算に係る経過措置)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第4号の5(訪問入浴介護費における業務継続計画未策定減算の基準)、第100号の11(介護予防訪問入浴介護費における同減算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第30条の2(業務継続計画の策定等)、第54条(準用)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)1.(5)④ 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入
※本記事の減算率・基準は、厚生労働省の告示・省令および改定資料にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。研修・訓練の頻度、法人共通計画の扱い、複数の減算が重なる場合の計算方法については保険者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の減算額の試算は単位数を単純に計算した概算です。BCPの作成に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




