難病受給者証(正式には「特定医療費(指定難病)受給者証」)で受けられるのは、指定難病の医療費の助成です。ただし、受給者証を持っている人が使える支援はそれだけではありません。手帳がなくても障害福祉サービスを使える道があり、ここを知らずに損をしている方が現場には少なくありません。

この記事では、難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)とその施行令、障害者総合支援法の原文を確認して整理しました。受給者証そのもので受けられるもの、受給者証があることで使いやすくなるもの、そして受給者証では受けられないものを分けて説明します。

この記事でわかること
  • 難病受給者証の本体は医療費助成であること
  • 自己負担の上限月額が7区分あり、最も低い区分は0円であること
  • 人工呼吸器を装着している人の上限は月1,000円であること
  • 指定医療機関以外で受けた医療は助成の対象にならないこと
  • 障害者手帳がなくても障害福祉サービスを使える仕組み
  • ただし受給者証を見せるだけでは使えず、別に申請が必要なこと
  • 40歳から64歳の人が介護保険を使えるのは16の特定疾病に限られること
  • 訪問看護が医療保険扱いになる場合があること

難病受給者証で受けられるサービスとは?

難病受給者証は、都道府県から交付されます。根拠は難病法第5条第1項です。

難病の患者に対する医療等に関する法律 第5条第1項(抜粋)
  • 都道府県は、支給認定を受けた指定難病の患者が、支給認定の有効期間内において、特定医療のうち、(中略)指定医療機関から受けるものであって当該支給認定に係る指定難病に係るもの(以下「指定特定医療」という。)を受けたときは、(中略)当該指定特定医療に要した費用について、特定医療費を支給する。

条文が示すとおり、受給者証の効果は「その指定難病に関する医療費の助成」です。まずここを押さえてください。そのうえで、受給者証を持つ人が使える支援を整理すると、次の4つの層になります。

内容受給者証との関係
1. 医療費助成指定難病の医療費が2割負担かつ上限月額まで受給者証そのものの効果
2. 障害福祉サービスホームヘルプ、短期入所、生活介護など別に申請が必要。手帳は不要
3. 介護保険サービス訪問介護、通所介護、福祉用具など65歳以上、または40〜64歳で特定疾病に該当
4. 医療保険の訪問看護週の回数制限がゆるやかになる場合がある疾病によって医療保険扱いになる
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受給者証を持っていけば、ヘルパーさんも使えるようになるの?

リハウルフリハウルフ

受給者証を見せるだけでは使えません。障害福祉サービスは市町村への別の申請が必要です。ただし「障害者手帳がなくても対象になる」という点が大事で、ここを知らずにあきらめている方をよく見ます。受給者証は、対象疾病であることを示す材料として役に立ちます。

1. 医療費の助成(自己負担の上限月額)

指定難病に関する医療について、医療保険の自己負担が3割の人でも2割に下がり、さらに所得等に応じた上限月額までしか払わなくてよくなります。上限月額は、難病法施行令第1条に7つの区分で定められています。

区分おもな要件自己負担の上限月額
第1号第2号から第7号に当たらない人(上位所得)3万円
第2号一定の所得区分に当たる人2万円
第3号市町村民税の所得割の合算額が7万1千円未満(高額難病治療継続者は25万1千円未満)1万円
第4号市町村民税世帯非課税の人5,000円
第5号市町村民税世帯非課税で、本人の所得と障害基礎年金等の合計が82万6,500円以下2,500円
第6号人工呼吸器その他の生命の維持に欠くことができない装置を装着していると都道府県の認定を受けた人1,000円
第7号生活保護を受けている人0円

注目すべきは第6号です。人工呼吸器を装着している場合、所得にかかわらず上限が月1,000円になります。ただし自動ではなく、都道府県の認定を受ける必要があります。該当しそうな場合は、必ず保健所や難病相談支援センターに確認してください。

指定医療機関でなければ助成されない

難病法第5条第1項は、助成の対象を「都道府県知事が指定する医療機関(指定医療機関)」から受けた医療に限定しています。さらに、受給者証に記載された医療機関で受けたものである必要があります。

受給者証に書かれていない病院・薬局では助成されない 引っ越しや転院で医療機関が変わったとき、受給者証の記載を変更しないまま受診すると、その分は助成の対象外になります。訪問看護ステーションや調剤薬局も記載の対象です。在宅療養を始めるときに訪問看護を追加し忘れる例を、現場で何度も見ています。医療機関を変えるときは、先に都道府県(保健所)に変更の届出をしてください。

また、助成されるのはその指定難病とそれに付随する傷病の医療に限られます。まったく別の病気やけがの治療は、通常の医療保険の自己負担です。

2. 障害福祉サービス(手帳がなくても使える)

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。障害者総合支援法第4条第1項は、「障害者」の定義に次の類型を含めています。

障害者総合支援法 第4条第1項(抜粋)
  • (前略)並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が主務大臣が定める程度である者であって十八歳以上であるものをいう。

つまり、政令で定める対象疾病に該当し、障害の程度が一定以上であれば、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳がなくても「障害者」として障害福祉サービスを利用できます。難病の方が「手帳がないから無理」とあきらめるのは、この規定を知らないためです。

使えるサービスの種類

障害者総合支援法第5条第1項が列挙している障害福祉サービスは次のとおりです。

  • 居宅介護(ホームヘルプ)
  • 重度訪問介護
  • 同行援護
  • 行動援護
  • 療養介護
  • 生活介護
  • 短期入所(ショートステイ)
  • 重度障害者等包括支援
  • 施設入所支援
  • 自立訓練
  • 就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援・就労定着支援
  • 自立生活援助
  • 共同生活援助(グループホーム)

このほか、補装具費の支給や地域生活支援事業(日常生活用具の給付、移動支援など)も利用できる場合があります。

利用するには市町村への申請が必要

受給者証を持っていることと、障害福祉サービスを使えることは別の手続きです。

  • 市町村の障害福祉担当の窓口に相談し、支給申請をする
  • 対象疾病に該当することを、診断書や受給者証などで確認してもらう
  • 障害支援区分の認定調査を受ける(サービスの種類により必要)
  • サービス等利用計画案を作成し、支給決定を受ける
  • 障害福祉サービス受給者証が交付され、事業所と契約して利用を開始する

ここで交付されるのは「障害福祉サービス受給者証」で、医療費助成の「特定医療費(指定難病)受給者証」とは別物です。名前が似ているため混乱しやすいところです。

対象疾病の範囲は、指定難病より広い 医療費助成の対象になる指定難病と、障害福祉サービスの対象疾病は、同じ範囲ではありません。障害福祉サービスの対象疾病のほうが広く設定されています。したがって医療費助成の認定は受けられなかったが、障害福祉サービスは使えるという場合があります。医療費助成が非該当だったからといって、障害福祉サービスまであきらめないでください。

3. 介護保険サービス(年齢による違い)

65歳以上であれば、要介護認定を受けて介護保険のサービスを使えます。問題は40歳から64歳の場合です。介護保険法施行令第2条は、第2号被保険者が介護保険を使える特定疾病を16に限定しており、その中には次のような難病が含まれます。

  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • 後縦靱帯骨化症
  • 脊髄小脳変性症
  • 多系統萎縮症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  • 早老症

指定難病であっても、この16に入っていなければ40〜64歳の人は介護保険を使えません。その場合は障害福祉サービスで対応することになります。ここを取り違えると、使えるはずの支援にたどり着けません。

4. 訪問看護(医療保険になる場合がある)

難病の方の在宅療養では、訪問看護が中心になることが多くあります。介護保険の要介護認定を受けている人は原則として介護保険の訪問看護になりますが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合は医療保険の訪問看護になります。医療保険になると、週の訪問回数の制限が緩和され、複数の訪問看護ステーションからの訪問も可能になるなど、量的な支援が組みやすくなります。

該当するかどうかは疾病名と状態によります。詳しくは指定難病の訪問看護の自己負担はいくら?難病医療費助成制度(54)とは|訪問看護・訪問リハの実務対応で整理しています。

難病受給者証では受けられないもの

誤解されやすいものを挙げておきます。

  • 指定難病以外の病気やけがの医療費(通常の自己負担です)
  • 受給者証に記載のない医療機関・薬局・訪問看護ステーションでの医療
  • 入院時の差額ベッド代、文書料などの保険外の費用
  • 障害福祉サービスそのもの(別に申請が必要です)
  • 障害年金(別の制度で、別に請求が必要です)
  • 鉄道運賃の割引やNHK受信料の減免(障害者手帳の制度です)

お金の支援全般については、難病でもらえるお金は?医療費助成・障害年金・手当を解説にまとめています。

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どこに相談するのがいちばん早いのかな?

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医療費助成は保健所、障害福祉サービスは市町村の障害福祉担当、介護保険は市町村の介護保険担当と、窓口が分かれています。全体を見てもらうなら、都道府県の難病相談支援センターか、通院先の医療ソーシャルワーカーが早いです。窓口をまたぐ調整に慣れている人に、最初に相談するのが結局いちばん近道になります。

よくある質問

難病受給者証があれば、介護保険のサービスも安くなりますか?

なりません。受給者証は医療費助成の仕組みで、介護保険の自己負担割合や上限には影響しません。介護保険の負担軽減は高額介護サービス費などの別の制度になります。

障害者手帳がなくても障害福祉サービスを使えますか?

使える場合があります。障害者総合支援法第4条第1項により、政令で定める対象疾病で障害の程度が一定以上であれば、手帳がなくても対象になります。市町村の障害福祉担当に相談してください。

医療費助成が非該当でした。もう使える支援はありませんか?

あります。障害福祉サービスの対象疾病は医療費助成の指定難病より広く設定されています。重症度の基準で医療費助成が非該当でも、障害福祉サービスは使える可能性があります。

人工呼吸器を使っています。負担は軽くなりますか?

難病法施行令第1条第6号により、人工呼吸器その他の生命の維持に欠くことができない装置を装着していると都道府県の認定を受けた場合、自己負担の上限月額は1,000円になります。認定の申請が必要です。

受給者証に書いていない病院にかかったらどうなりますか?

その分は助成の対象になりません。通常の医療保険の自己負担になります。医療機関を追加・変更するときは、事前に保健所へ届け出てください。

40代です。指定難病なら介護保険を使えますか?

介護保険法施行令第2条の特定疾病16に該当する場合に限られます。指定難病であっても16に入っていなければ、40〜64歳では介護保険は使えません。

障害福祉サービスと介護保険は併用できますか?

65歳以降は介護保険が優先されるのが原則ですが、介護保険にないサービスなどは併用できる場合があります。取扱いは市町村の判断によります。

受給者証の更新はどうなりますか?

有効期間があり、原則として年1回の更新申請が必要です。更新には臨床調査個人票などの提出を求められます。期限が切れると助成が受けられなくなるため、案内が届いたら早めに手続きしてください。

入院したときの食事代も助成されますか?

難病法第5条第2項は、指定特定医療に食事療養が含まれる場合の額についても定めています。取扱いは自治体や状況によるため、保健所に確認してください。

まとめ
  • 難病受給者証の本体は、指定難病に関する医療費の助成である(難病法第5条第1項)
  • 自己負担は2割に下がり、さらに所得等に応じた上限月額までとなる
  • 上限月額は難病法施行令第1条で7区分(3万円/2万円/1万円/5,000円/2,500円/1,000円/0円)
  • 人工呼吸器等を装着し都道府県の認定を受けた人は、所得にかかわらず月1,000円
  • 生活保護を受けている人は0円
  • 助成されるのは指定医療機関で、かつ受給者証に記載された機関で受けた医療のみ
  • 訪問看護ステーションや薬局も記載の対象で、追加忘れが起きやすい
  • 障害者手帳がなくても障害福祉サービスを使える(障害者総合支援法第4条第1項)
  • 使えるのはホームヘルプ、短期入所、生活介護、グループホームなど幅広い
  • ただし受給者証を見せるだけでは使えず、市町村への支給申請が必要
  • 障害福祉サービスの対象疾病は、医療費助成の指定難病より広い
  • 医療費助成が非該当でも、障害福祉サービスは使える場合がある
  • 40〜64歳が介護保険を使えるのは、特定疾病16に該当する場合に限られる
  • 疾病と状態によっては訪問看護が医療保険扱いになり、回数の制限が緩和される
  • 窓口は保健所・市町村障害福祉・市町村介護保険に分かれるため、難病相談支援センターや医療ソーシャルワーカーへの相談が早い
参考にした情報

※本記事の制度に関する記述は、難病の患者に対する医療等に関する法律および同法施行令、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律、介護保険法施行令にもとづいて整理したものです。指定難病および障害福祉サービスの対象疾病は告示等により随時見直されます。ご自身の疾病が対象かどうか、自己負担の区分がどれに当たるかは、お住まいの都道府県(保健所)および市町村の窓口でご確認ください。障害福祉サービスの支給決定は市町村の判断によります。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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