「退院日に訪問看護を入れたいけれど、医療保険・介護保険どちらでも算定できるの?」——退院支援の現場で必ずぶつかる疑問です。原則のルールと例外、そして令和6年度(2024年度)介護報酬改定で新設された評価まで、正確に押さえておかないとレセプト返戻や請求もれにつながります。

この記事では、訪問看護師・PT/OT/ST・事業所運営者の目線で、退院日に訪問看護が入れるかどうかを医療保険・介護保険それぞれに分けて整理します。令和6年度改定で創設された「初回加算(Ⅰ)」まで、厚生労働省の一次情報をもとにわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 退院日に訪問看護が入れるか(医療保険のルール)
  • 退院日に訪問看護が入れるか(介護保険の原則と例外)
  • 令和6年度(2024年度)改定で新設された「初回加算(Ⅰ)」の中身
  • 現場で請求もれ・返戻を防ぐためのチェックポイント
ちびウルフ
ちびウルフ

リハウルフ先生、退院した「その日」に訪問看護って入っていいの?保険によって違うって聞いて混乱してます…

リハウルフ
リハウルフ

いい質問だね。医療保険と介護保険でルールが違うんだ。まずは「結論」から押さえて、そのあと例外と最新の改定を順番に見ていこう。

退院日に訪問看護は入れるか?【医療保険】

医療保険の訪問看護では、入院日・退院日そのものに訪問看護療養費を算定することは原則できません。入院・退院(入所・退所)の当日は、医療機関側のサービスとの重複を避ける考え方になっているためです。

ただし、退院日に「訪問看護そのもの」を算定する代わりに、要件を満たせば退院支援指導加算を算定できます。これは退院にあたって在宅での療養上の指導を行った場合の評価で、退院日に訪問できないわけではなく、評価の枠組みが異なるという点が重要です。

また、訪問看護を実施したあとに、その日のうちに緊急で再入院になったようなケースでは、実施分の算定が可能になる場合があります。

POINT

医療保険は「退院日=訪問看護療養費は不可、ただし退院支援指導加算で評価」という整理。退院日に在宅へ訪問して指導すること自体は想定されています。

退院日に訪問看護は入れるか?【介護保険】

介護保険の訪問看護では、退院・退所日当日のサービス利用は原則として算定できません。これは、同じ日に施設サービス費などと費用が重複してしまうことを避けるためです。

ただし、次の例外にあたる場合は、退院日でも訪問看護を算定できます。

  • 厚生労働大臣が定める状態(特別管理加算の対象)にある利用者
  • 主治の医師が必要と認めた利用者

※ 介護老人保健施設・介護療養型医療施設などからの退所日、短期入所療養介護(ショートステイの医療系)のサービス終了日(退所・退院日)も、同様の取扱いです。

注意

同じ退院・退所日でも、施設サービスや短期入所サービス側ですでに費用が発生している日に、通所リハ・通所介護などを「機械的に」組み込むのは適正ではないとされています。家族の出迎えや送迎の都合で食堂や機能訓練室にいるだけでは、通所サービスを提供したとは認められません。

「主治の医師が必要と認めた利用者」が加わった意味

もともと例外は「特別管理加算の対象者」だけでした。そこに「主治の医師が必要と認めた利用者」が加わったことで、医学的な必要性があれば退院日に訪問看護を入れられる範囲が広がりました。これは在宅移行をスムーズにするための見直しです。

退院当日の訪問看護(2021年度介護報酬改定)

2021年度(令和3年度)の介護報酬改定で、退院当日の訪問看護の取扱いが見直されました。背景は、利用者のニーズに応じて早期に在宅療養の体制を整えるためです。

区分退院日に訪問看護を入れられる利用者
変更前厚生労働大臣が定める状態(特別管理加算の対象)にある利用者
変更後①特別管理加算の対象者 ②主治の医師が必要と認めた利用者

この見直しで、退院日に訪問看護を提供できる対象が「特別管理加算の対象者」だけでなく、医師が必要と判断した利用者にも広がりました。

退院当日の訪問看護(2024年度介護報酬改定=令和6年度)

令和6年度(2024年度)介護報酬改定では、退院当日の訪問看護がさらに前向きに評価されることになりました。要介護者などのより円滑な在宅移行を進める観点から、看護師が退院・退所「当日」に初回訪問を行うことを評価する新しい区分が創設されたのです。

従来は「特別な場合は退院日に訪問看護を提供しても良い」という“許可”のニュアンスでした。改定後は「退院日に訪問することを推進する。退院日に訪問したらきちんと評価する」という、明確に後押しする方向へ大きく変わっています。

ちびウルフ
ちびウルフ

“評価する新しい区分”って、具体的にはどんな加算なんですか?

リハウルフ
リハウルフ

「初回加算」が(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分になったんだ。退院・退所した“当日”に初回訪問すると(Ⅰ)、翌日以降だと(Ⅱ)になるイメージだよ。

初回加算が(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分に

令和6年度改定により、これまで1種類だった訪問看護の初回加算(介護保険)が2区分に分かれました。退院・退所した当日に初回訪問する「初回加算(Ⅰ)」が新設され、従来の初回加算は「初回加算(Ⅱ)」となっています。

区分初回訪問のタイミング単位数
初回加算(Ⅰ)病院・診療所・施設などからの退院・退所の当日に初回訪問350単位/月(新設)
初回加算(Ⅱ)退院・退所の翌日以降に初回訪問300単位/月
算定の注意

初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できません(どちらか一方)。また、退院時共同指導加算を算定する場合は初回加算を算定できません。初回加算はそもそも、過去2か月間(暦月)に訪問看護を受けておらず、かつ新規に訪問看護計画書を作成した利用者が対象です。

つまり退院日に初回訪問できれば、より高い「初回加算(Ⅰ)=350単位/月」を算定できる仕組みになりました。在宅移行を支える訪問看護にとっても、利用者・家族にとっても、プラスに働く改定だといえます。

退院日の訪問看護に関するQ&A(厚生労働省)

厚生労働省の事務連絡(介護報酬等に係るQ&A)でも、退院日・退所日の訪問看護の取扱いが示されています。要点を実務目線で整理します。

他の医療機関を退院した日でも算定できる?

老健・介護療養型医療施設の退所・退院日について特別管理加算の対象となりうる状態の利用者に訪問看護が算定できるのと同様に、他の医療機関を退院した日についても算定できると整理されています。

入所(入院)当日の訪問・通所サービスは別に算定できる?

入所(入院)当日であっても、その入所前に利用する訪問・通所サービスは別に算定できます。ただし、施設・短期入所でも機能訓練やリハビリが行えるため、入所前に通所サービスを「機械的に」組み込む計画は適正ではないとされています。

実務メモ(PT/OT/ST・看護師向け)

退院日に訪問看護を入れる場合は、①特別管理加算の対象か/②主治医が必要と認めているかを、退院前カンファレンスの段階で確認しておくとスムーズです。算定根拠(医師の指示・状態)を記録に残しておくと、返戻リスクを下げられます。

退院日に訪問看護を入れるときの実務ステップ

  1. 退院前カンファレンスで必要性を確認特別管理加算の対象か、主治医が退院当日の訪問を必要と認めているかを確認します。
  2. 指示書・計画書を整える新規利用者なら訪問看護計画書を作成。初回加算の対象要件(過去2か月訪問看護なし等)も確認します。
  3. 退院当日に初回訪問を実施当日訪問できれば介護保険では初回加算(Ⅰ)の対象に。服薬管理・点滴・家族指導など在宅移行支援を行います。
  4. 記録と算定区分の確認当日訪問=(Ⅰ)/翌日以降=(Ⅱ)。退院時共同指導加算との併算定不可など、重複に注意して請求します。

よくある質問(FAQ)

医療保険では退院日に訪問看護は一切入れないの?

訪問看護療養費そのものは退院日には算定できませんが、要件を満たせば退院支援指導加算で評価されます。退院日に在宅へ訪問して指導すること自体は想定されています。

介護保険で退院日に訪問看護を入れられるのはどんな人?

①特別管理加算の対象(厚生労働大臣が定める状態)にある利用者、②主治の医師が必要と認めた利用者、のいずれかです。施設退所日・ショートステイ終了日も同様の取扱いです。

初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できる?

できません。どちらか一方のみです。退院・退所の当日に初回訪問すれば(Ⅰ)350単位/月、翌日以降なら(Ⅱ)300単位/月です。退院時共同指導加算を算定する場合は初回加算は算定できません。

2024年度改定で退院当日の訪問看護はどう変わった?

退院・退所当日に看護師が初回訪問することを評価する新区分(初回加算Ⅰ=350単位/月)が新設されました。「許可」から「推進・評価」へと方針が前進したのが大きなポイントです。

まとめ|退院日の訪問看護は「保険区分」と「例外要件」で判断する

退院日に訪問看護が入れるかどうかは、医療保険・介護保険のどちらかと、例外要件を満たすかで決まります。令和6年度改定で当日訪問が評価される時代になったので、要件を押さえて積極的に在宅移行を支えていきましょう。

この記事のまとめ
  • 医療保険:退院日に訪問看護療養費は不可。ただし退院支援指導加算で評価される。
  • 介護保険:退院・退所日は原則不可。①特別管理加算の対象 ②主治医が必要と認めた利用者は例外で算定可。
  • 令和6年度改定で初回加算が2区分に。当日訪問=(Ⅰ)350単位/月(新設)、翌日以降=(Ⅱ)300単位/月。両者は併算定不可。
  • 退院時共同指導加算を算定する場合は初回加算は算定できない。要件と記録を整えて返戻を防ぐ。

制度の数値や要件は改定で変わります。算定にあたっては最新の告示・通知や自治体・保険者の取扱いも確認してください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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