グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の認知症行動・心理症状緊急対応加算は、1日につき200単位、入居を開始した日から起算して7日を限度に算定します。

この加算の特徴は、短期利用(ロ)にしか算定できないことです。条文の書き出しが「ロについて」となっており、本体入居(イ)では算定できません。BPSDで在宅生活が困難になった人を、GHの空床で緊急に受け止める仕組みだと理解すると要件が読みやすくなります。

もうひとつの要点は、「医師が判断した者」という要件です。事業所やケアマネジャーの判断では算定できません。加えて、この加算を算定している間は若年性認知症利用者受入加算(120単位)を算定できません。

この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)認知症対応型共同生活介護費の注7・注8、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第31号ハの条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 認知症行動・心理症状緊急対応加算の単位数(200単位/日、7日限度)
  • 短期利用(ロ)でしか算定できないこと
  • 「医師が判断した者」が要件であること
  • 若年性認知症利用者受入加算と併算定できないこと
  • 短期利用の施設基準(3年以上の運営経験、30日以内、1住居1名など)
  • ケアマネジャーが緊急に必要と認めた場合の定員超過の例外
  • 介護予防(要支援2)でも同じ200単位で算定できること
  • ショートステイ・特養の同名加算との違い
ちびウルフちびウルフ

空いている居室に緊急で受け入れたら算定できる、ということですか?

リハウルフリハウルフ

順序が逆です。まず短期利用の施設基準を満たして届け出ていること、そのうえで医師の判断があることが前提になります。短期利用の届出をしていないGHは、そもそもこの加算の土俵に立てません。

単位数は200単位。7日が限度

告示126号の注7は、次のとおりです。

ロについて医師が、認知症の行動・心理症状が認められるため、在宅での生活が困難であり、緊急に指定認知症対応型共同生活介護を利用することが適当であると判断した者に対し、指定認知症対応型共同生活介護を行った場合は、入居を開始した日から起算して7日を限度として、1日につき200単位を所定単位数に加算する。

項目内容
単位数1日につき200単位
限度入居を開始した日から起算して7日
対象「ロ」=短期利用認知症対応型共同生活介護費
判断者医師
併算定不可若年性認知症利用者受入加算(注8)

7日フルで算定すれば1,400単位。短期利用の基本報酬(要介護1で793単位/日など)に上乗せされるため、緊急受入れの負担に対する評価としては小さくありません。

「医師が判断した者」であることが要件

条文は、医師が次の3点を判断していることを求めています。

  • 認知症の行動・心理症状(BPSD)が認められること
  • そのため在宅での生活が困難であること
  • 緊急にグループホームを利用することが適当であること

ケアマネジャーや事業所の判断だけでは算定できません。受け入れの相談が来た時点で、かかりつけ医や受診先の医師の判断をどう文書で残すかを決めておく必要があります。算定根拠となるのは、医師の判断を記録した書面です。

緊急受入れは記録が後回しになりやすい

BPSDの緊急対応は、家族が限界に達している場面で動くことがほとんどです。受入れ調整と本人対応に人手が取られ、医師の判断を示す書面の取得や、居宅サービス計画に位置付けられていない旨の記録が後回しになりがちです。受入れ当日に何を残すかを、あらかじめ様式化しておくことをおすすめします。

前提となる短期利用の施設基準

短期利用認知症対応型共同生活介護費を算定するには、施設基準告示第96号第31号ハ(1ユニットの場合)またはニ(2ユニット以上)を満たす必要があります。

要件内容
運営経験指定居宅サービス、指定地域密着型サービス、指定居宅介護支援、介護保険施設等の運営について3年以上の経験を有すること
居室共同生活住居の定員の範囲内で、空いている居室等を利用すること
人数1の共同生活住居において、短期利用を受ける利用者の数は1名とすること
利用期間あらかじめ30日以内の利用期間を定めること
職員短期利用を行うにあたって、十分な知識を有する従業者が確保されていること

ケアマネジャーが緊急に必要と認めた場合の例外

ただし、利用者の状況や利用者の家族等の事情により、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に短期利用認知症対応型共同生活介護を受けることが必要と認めた者に対し、居宅サービス計画において位置付けられていない短期利用認知症対応型共同生活介護を提供する場合であって、当該利用者及び他の利用者の処遇に支障がない場合にあっては、(一)及び(二)の規定にかかわらず、当該指定認知症対応型共同生活介護事業所を構成する共同生活住居ごとに定員を超えて、短期利用認知症対応型共同生活介護を行うことができるものとする。

この例外は実務でほとんど知られていません。ケアプランに位置付けられていない緊急利用に限って、定員を超えて受け入れることが認められています。BPSDの緊急対応と場面が重なるため、受け入れ相談を断る前に、この規定を思い出せるかどうかで対応が変わります。ただし「処遇に支障がない場合」という条件があり、実際の運用は市町村の判断も踏まえる必要があります。

若年性認知症利用者受入加算とは併算定できない

注8のただし書きに「注7を算定している場合は、算定しない」とあります。

期間算定できる加算
緊急受入れから7日以内認知症行動・心理症状緊急対応加算 200単位/日(若年性認知症利用者受入加算は算定不可)
8日目以降も短期利用を継続緊急対応加算は終了。以降の取扱いは市町村に確認

単位数は200単位>120単位なので、重なる期間は緊急対応加算を算定するほうが有利です。

介護予防(要支援2)でも算定できる

介護予防認知症対応型共同生活介護費(平成18年厚生労働省告示第128号)の注7にも、同じ内容(短期利用について7日限度、1日200単位)の規定があります。要支援2の人をBPSDの緊急対応で受け入れる場合も算定できます。

よくある質問

本体入居(イ)でも算定できますか?

できません。注7は「ロについて」と限定しており、短期利用認知症対応型共同生活介護費を算定する場合のみが対象です。

ケアマネジャーの判断で算定できますか?

できません。条文は「医師が……判断した者」と定めています。医師の判断を示す記録が必要です。

7日を超えて受け入れた場合はどうなりますか?

加算は入居開始日から7日が限度です。短期利用そのものは30日以内の期間を定めて継続できますが、8日目以降にこの加算は算定できません。

若年性認知症利用者受入加算と両方算定できますか?

できません。注8のただし書きにより、この加算を算定している場合は若年性認知症利用者受入加算を算定できません。

短期利用の届出をしていなくても算定できますか?

できません。まず短期利用認知症対応型共同生活介護費の施設基準(3年以上の運営経験、空き居室の利用、1住居1名、30日以内の利用期間など)を満たす必要があります。

定員を超えて受け入れることはできますか?

居宅介護支援事業所の介護支援専門員が緊急に必要と認め、居宅サービス計画に位置付けられていない短期利用を提供する場合で、利用者と他の利用者の処遇に支障がないときは、定員を超えて行うことができるとされています。実際の運用は市町村に確認してください。

要支援2の人にも算定できますか?

できます。介護予防認知症対応型共同生活介護費にも同じ規定があります。

ショートステイの同名加算と何が違いますか?

単位数(200単位)と7日限度という枠組みは共通ですが、GHは短期利用の施設基準を満たしていることが前提になる点が異なります。

まとめ
  • 認知症行動・心理症状緊急対応加算は1日200単位、入居開始日から7日が限度
  • 短期利用(ロ)でのみ算定できる。本体入居(イ)は対象外
  • 要件は、医師がBPSDのため在宅生活が困難で緊急利用が適当と判断していること
  • 医師の判断を示す記録が算定根拠になる
  • 若年性認知症利用者受入加算(120単位)とは併算定できない
  • 前提として短期利用の施設基準(3年以上の運営経験、空き居室の利用、1住居1名、30日以内)を満たす必要がある
  • ケアマネジャーが緊急に必要と認めた場合、定員を超えて受け入れられる例外がある
  • 介護予防(要支援2)でも同じ200単位で算定できる
参考にした情報
  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 認知症対応型共同生活介護費の注7・注8(厚生労働省法令等データベース)
  • 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第31号ハ・ニ(短期利用認知症対応型共同生活介護費を算定すべき施設基準)(厚生労働省法令等データベース)
  • 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)別表 介護予防認知症対応型共同生活介護費の注7(厚生労働省法令等データベース)

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。グループホームは地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、加算の解釈や届出の運用が自治体によって異なる場合があります。定員を超えて受け入れる場合の取扱い、7日経過後の短期利用継続時の扱いについては所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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