医療費と介護費の両方がかかっている家庭で、使われないまま終わりやすいのがこの制度です。理由は単純で、1年分を合計してみないと該当するか分からないからです。

しかも「世帯」の意味が住民票の世帯とは違います。この記事では、限度額の表と計算期間を確認したうえで、誰と合算できるのか、いつ申請するのかを整理しました。

この記事でわかること

  • 高額医療・高額介護合算療養費のしくみ
  • 所得区分ごとの限度額(75歳以上・70〜74歳・70歳未満)
  • 計算期間と基準日
  • 「医療保険上の世帯」が住民票の世帯と違うこと
  • 別居でも合算できる場合、同居でも合算できない場合
  • 高額療養費・高額介護サービス費との関係
  • 申請の流れと、どこから振り込まれるか
  • 合算できない費用

高額医療・高額介護合算療養費とは?

厚生労働省の資料は、この制度の概要を次のように説明しています。

制度の概要(原文)

「高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険における1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)の自己負担の合算額が高額な場合に、自己負担を軽減する制度

「支給要件:医療保険上の世帯単位で、医療保険と介護保険の自己負担合算額が、各所得区分に設定された限度額を超えた場合に、限度額を超えた額を支給」

ポイントは「年単位」であることです。月ごとに負担を抑える高額療養費・高額介護サービス費を使ってもなお重い負担が残る場合に、1年分をまとめて見直すという位置づけです。

介護保険の側では、同じしくみを「高額医療合算介護(予防)サービス費」と呼びます。名前が2つあるのは、医療と介護の両方の保険から支給されるためです。

合算療養費の限度額

限度額は、年齢と所得区分で決まります。所得区分は、介護保険の自己負担割合を決める区分とは別に判定されます。

所得区分75歳以上
(介護+後期高齢者医療)
70〜74歳70歳未満
年収約1,160万円〜212万円212万円212万円
年収約770〜約1,160万円141万円141万円141万円
年収約370〜約770万円67万円67万円67万円
〜年収約370万円56万円56万円60万円
市町村民税世帯非課税等31万円31万円34万円
市町村民税世帯非課税
(年金収入80万円以下等)
19万円※19万円※

※介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円です。

いちばん多いのは、年金生活の高齢者世帯で年収約370万円までの区分=年56万円です。月あたりにすると約4.7万円。医療と介護を合わせて毎月これを超えているなら、該当する可能性があります。

住民税非課税世帯であれば年31万円(月あたり約2.6万円)まで下がります。該当する家庭は決して少なくありません。

医療保険上の世帯は住民票の世帯と違う

ここが最大の落とし穴です。厚生労働省のQ&Aは次のように説明しています。

厚労省Q&Aの原文

「自己負担額の合算は、同一の医療保険に加入する家族を単位として行われます(医療保険における『世帯』は、いわゆる一般のイメージの『世帯』(住民基本台帳上の世帯)の範囲とは異なります)」

具体例も示されています。

  • 健康保険の被保険者とその被扶養者は、お互いの住所が異なっていても合算できる
  • 共働きの夫婦など別々の健康保険に加入していれば、住所が同じでも合算できない
  • 健康保険の被保険者(例:45歳)と後期高齢者医療制度の被保険者(例:80歳)が同居していても、それぞれの医療費は合算の対象にならない

親と同居して介護している家庭で最も多いのが3つめのパターンです。親が75歳以上なら、子の医療費とは合算できません。親自身の医療費と介護費を合計して判定します。

逆に、夫婦とも後期高齢者医療制度に加入していれば、2人分を合算できます。夫婦のどちらかが施設に入っていても同じです。

計算期間と基準日

計算期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。基準日は7月31日で、この日に加入している医療保険者が支給額を計算します。

支給までの流れ(原文の整理)

①申請 → ②医療保険者と介護保険者が自己負担額に関する情報を連携 → ③基準日の医療保険者が支給額を算定し、各保険者に連絡 → ④各保険者から支給

算定された支給額は「自己負担額の比率に応じて保険者間で按分」されます。

つまり、お金は医療保険と介護保険の2か所から別々に振り込まれます。医療側だけ入金されて「介護分が入っていない」と心配する方がいますが、時期がずれることがあります。

年度の途中で保険が変わった場合(74歳から75歳になって後期高齢者医療に移るなど)は、前の保険者の分も情報が連携されます。基準日時点の保険者が窓口です。

高額療養費・高額介護サービス費との関係

合算療養費は、月単位の制度を使った後の残りを見る制度です。順番を整理すると次のようになります。

  • 医療費は月ごとに高額療養費で上限まで抑える
  • 介護費は月ごとに高額介護サービス費で上限まで抑える
  • それでも残った1年分の自己負担を合計する
  • 合計が年間の限度額を超えていれば、合算療養費として超えた分が戻る

したがって、高額療養費や高額介護サービス費で戻った分は差し引いて計算します。窓口で払った総額がそのまま合算されるわけではありません。

月単位の制度については高額介護サービス費とは?払い戻しの上限額と申請方法をご覧ください。

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該当するかどうか、自分で計算しないとだめなの?

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市町村によっては、該当しそうな方にお知らせを送ってくれます。ただし全員ではありません。入院と介護が重なった年があるなら、こちらから窓口に聞いてください。

いくら戻るのか計算してみる

75歳以上・1割負担・住民税課税(年収約370万円まで=限度額56万円)の方を例に、2つのパターンで見てみます。

内訳パターンA(該当しない)パターンB(該当する)
介護保険の自己負担要介護3・月27,000円×12か月=324,000円要介護4・月31,000円×12か月=372,000円
医療保険の自己負担外来のみ 月8,000円×12か月=96,000円外来+医療保険の訪問看護 月20,000円×12か月=240,000円
1年間の合計420,000円612,000円
限度額56万円との差届かない(支給なし)52,000円が支給される

パターンAでも年42万円を払っています。負担は重いのに、制度としては該当しないという結果になります。ここが納得しづらいところです。

分かれ目になったのは医療費の側でした。介護保険だけを目一杯使っても限度額には届きにくく、医療保険の訪問看護や通院が重なった年に届きます。

金額はあくまで目安です。実際の自己負担は加算や地域区分、受診の回数で変わります。該当しそうなら、自分で計算しきる前に窓口で確認するほうが早いです。

合算できない費用

すべての支払いが合算されるわけではありません。次のものは対象外です。

  • 入院時の食費・居住費(標準負担額)
  • 差額ベッド代などの保険外の費用
  • 施設やショートステイの食費・居住費
  • おむつ代、日常生活費
  • 福祉用具購入費、住宅改修費の自己負担
  • 支給限度額を超えて全額自己負担になった分

合算できるのは、保険が適用された部分の自己負担だけと考えてください。施設に入っている方は費用の総額が大きくても、食費・居住費が大半を占めていると該当しないことがあります。

その場合は別の制度、介護保険負担限度額認定証とは?申請方法と対象者の対象になるかを確認してください。食費・居住費はそちらで下げます。

申請の方法

申請先は、基準日(7月31日)に加入している医療保険です。

加入している医療保険申請先
後期高齢者医療制度市区町村の後期高齢者医療の窓口
国民健康保険市区町村の国民健康保険の窓口
健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)加入している健康保険(勤務先経由のことが多い)

介護保険の自己負担額については、多くの市区町村で「自己負担額証明書」の交付を受けてから医療保険に提出します。同じ市区町村内で完結する場合は省略できることもあります。

支給を受ける権利は2年で時効になります。過去の分で心当たりがあるなら、早めに窓口で確認してください。なお、算定した支給額が少額の場合は支給されない取扱いがあります。金額の線引きは加入先で確認してください。

該当しやすいのはどんな年か

実際に相談を受けていて、該当しやすいのは次のような年です。

  • 入院や手術があり、退院後に介護サービスを増やした年
  • 通院と訪問看護・訪問リハビリを並行して続けている年
  • 要介護度が上がって、区分支給限度額の上限近くまで使うようになった年
  • 医療保険の訪問看護を週複数回使っている年
  • 夫婦とも要介護で、2人分の医療費と介護費がかかっている年

特に1つめは典型です。入院した年は、医療費と介護費が同じ年度に重なります。退院して生活が落ち着いた頃に、その年度分を確認する価値があります。

よくある質問

計算期間はいつからいつまでですか?

毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。基準日は7月31日で、この日に加入している医療保険が窓口になります。

限度額はいくらですか?

年齢と所得区分で決まります。75歳以上で年収約370万円までなら年56万円、市町村民税世帯非課税等は年31万円、年金収入80万円以下等は年19万円です。

同居している親子の医療費は合算できますか?

同じ医療保険に加入していれば合算できます。親が後期高齢者医療制度、子が健康保険という場合は、同居していても合算できません。

別居していても合算できますか?

できます。健康保険の被保険者とその被扶養者であれば、住所が異なっていても合算の対象です。

高額療養費を受けていても対象になりますか?

なります。合算療養費は、月単位の制度で軽減した後になお残る負担を年単位で見る制度です。ただし戻った分は差し引いて計算します。

施設の食費や居住費も合算できますか?

できません。食費・居住費、差額ベッド代、おむつ代などの保険外の費用は対象外です。食費・居住費は負担限度額認定で軽減を検討してください。

住宅改修費や福祉用具購入費は合算できますか?

できません。支給限度額を超えて全額自己負担になった分も対象外です。

お金はどこから振り込まれますか?

医療保険者と介護保険者の両方から、自己負担額の比率に応じて按分して支給されます。入金の時期がずれることがあります。

申請しないと戻ってきませんか?

申請が必要です。該当しそうな方にお知らせを送る市区町村もありますが、全員に届くとは限りません。心当たりがあれば窓口に相談してください。

過去の分もさかのぼれますか?

支給を受ける権利は2年で時効になります。過去に入院と介護が重なった年があるなら、早めに確認してください。

まとめ

  • 医療と介護の1年分の自己負担を合算して限度額を超えた分が戻る制度
  • 計算期間は毎年8月1日から翌年7月31日
  • 基準日は7月31日で、その日の医療保険者が窓口
  • 限度額は年齢と所得区分で決まる
  • 75歳以上・年収約370万円までは年56万円
  • 市町村民税世帯非課税等は年31万円、年金収入80万円以下等は年19万円
  • 合算は「医療保険上の世帯」単位で、住民票の世帯とは範囲が違う
  • 同じ健康保険なら別居でも合算できる
  • 親が後期高齢者医療、子が健康保険なら同居でも合算できない
  • 月単位の高額療養費・高額介護サービス費で戻った分は差し引く
  • 食費・居住費・差額ベッド代・おむつ代は合算できない
  • 住宅改修費・福祉用具購入費・限度額超過分も対象外
  • 支給は医療保険者と介護保険者から按分して振り込まれる
  • 申請が必要で、権利は2年で時効
  • 介護保険だけでは限度額に届きにくく、医療費が重なった年に該当しやすい
  • 入院と介護が重なった年は該当しやすい

参考にした情報

※本記事の限度額・計算期間・支給の流れ・世帯の考え方は、厚生労働省の資料にもとづいて整理したものです。限度額の所得区分は年収の目安であり、実際の判定は課税所得や標準報酬月額等によって行われます。自己負担額証明書の要否、少額の場合の不支給の取扱い、お知らせの送付の有無は保険者・市区町村によって異なります。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。実際の申請にあたっては、加入している医療保険およびお住まいの市区町村にご確認ください。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味