高齢者の足がつる原因で最も多いのは、脱水と、ふくらはぎの筋肉が縮んだ状態で寝ていることの組み合わせです。夜間から明け方にかけて起こりやすいのは、この2つが重なる時間帯だからです。

ただし、毎晩のように繰り返す、日中にも起こる、片側だけという場合は、別の病気が背景にあることがあります。薬の影響や、脊柱管狭窄症、血管の問題など、対処法がまったく変わるものも含まれます。この記事では、原因の切り分けと、つったときの正しい対処、予防策を整理しました。

この記事でわかること

  • 足がつる(こむら返り)が起こる仕組み
  • 夜間・明け方に多い理由
  • 高齢者に多い6つの原因
  • つったときの正しい伸ばし方
  • やってはいけない対処
  • 今夜からできる予防策
  • 受診すべきサイン
  • 薬が原因になっている可能性

高齢者の足がつる主な原因

こむら返りは、筋肉が意思と関係なく強く縮んだまま戻らなくなる状態です。ふくらはぎ(腓腹筋)に最も多く起こります。

① 脱水・電解質の乱れ

最も多い原因です。体内の水分やミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)のバランスが崩れると、筋肉が異常に興奮しやすくなります。

高齢者は特に起こりやすい条件がそろっています。厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」も、次のように記載しています。

マニュアルの記載(原文より)

「高齢者では、喉の渇きを感じにくい、頻尿を心配して水分を控えることなどから、脱水を起こしやすいので、必ず運動中に水分補給の時間をとる」

「夜中にトイレに行きたくないから、寝る前は水を飲まない」――この習慣が、こむら返りの直接的な引き金になっていることが非常に多いです。

② 筋肉が縮んだ状態で寝ている

仰向けで寝ると、足首は自然に伸びた状態(つま先が下を向く)になります。このときふくらはぎは縮んでいます。さらに、布団や毛布の重みがつま先を押し下げます。

縮んだ筋肉は、わずかな刺激で強く収縮しやすくなります。寝返りを打った瞬間や、明け方に足を伸ばした瞬間につるのは、このためです。

③ 筋力低下・活動量の低下

使われていない筋肉は、血流が乏しく、疲労物質も溜まりやすくなります。日中ほとんど歩かない方ほど、夜につりやすい傾向があります。

また逆に、久しぶりに歩いた日の夜につることもあります。普段使っていない筋肉に急な負荷がかかったためです。

④ 薬の影響

特に注意したいのが利尿薬です。尿として水分とともにミネラルも排出されるため、電解質のバランスが崩れやすくなります。

  • 利尿薬(心不全・高血圧・むくみの治療で使われます)
  • 一部の降圧薬
  • 脂質異常症治療薬(スタチン系):筋肉の症状を起こすことがあります
  • ホルモン製剤

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」も、脂質異常症治療薬(スタチン系)の使用時に「筋力低下や筋肉痛をきたすことがある」と注記しています。

つり始めた時期と、薬が変わった時期が近くないかを確認してください。自己判断で中止せず、主治医・薬剤師に相談してください。

⑤ 神経・血管の病気

疾患特徴
腰部脊柱管狭窄症歩くと脚がしびれて休む(間欠跛行)。前かがみで楽になる
閉塞性動脈硬化症歩くと痛むが、姿勢に関係なく立ち止まれば楽になる。足が冷たい
糖尿病性神経障害しびれ、感覚の鈍さを伴う
下肢静脈瘤血管が浮き出る、だるさ、むくみを伴う

脊柱管狭窄症については脊柱管狭窄症のリハビリ|楽になるストレッチと注意点で詳しく解説しています。

⑥ 内科的な病気

腎臓の機能低下、肝硬変、甲状腺の機能低下、糖尿病などでも起こることがあります。頻繁に繰り返す場合は、血液検査で確認できることがあります。

ちびウルフちびウルフ

年のせいだと思って、我慢していました。

リハウルフリハウルフ

たまに起こる程度なら、水分とストレッチで改善することが多いです。ただし毎晩のように起こる、日中も起こる、片側だけという場合は違います。薬や病気が隠れていることがあるので、一度相談してください。

つったときの正しい対処

ふくらはぎがつっているときは、その筋肉を伸ばす方向に動かします。

  • あわてず、力を抜くことを意識する(痛みで体に力が入ると余計に縮みます)
  • 膝を伸ばした状態で、つま先を手前(すね側)にゆっくり引く
  • 自分でできない場合は、介助者が足裏を手で押して同じ方向へゆっくり
  • 痛みが和らぐまで20〜30秒その姿勢を保つ
  • 収まったら、ふくらはぎを軽くさすって血流を促す
  • 落ち着いてから水分をとる

コツは「ゆっくり」です。急に強く引くと、筋肉や腱を痛めます。

やってはいけない対処

  • 急に強く引っ張る:筋肉や腱の損傷につながります
  • 痛みを我慢して歩く:つっている最中に体重をかけない
  • つった直後に強く揉む:まず伸ばして収まってから、軽くさする程度に
  • 原因不明のむくみがある足を揉む:血栓などの可能性がある場合は危険です

足の指がつった場合

指を持って、反り返す方向(甲側)へゆっくり伸ばします。足裏の筋肉がつっている場合も、つま先を手前に引く動きが有効です。

今夜からできる予防

水分をとる

  • 就寝前にコップ1杯:夜間のトイレを心配して控えている方こそ見直す価値があります
  • 日中にこまめに:一度に大量ではなく、少量を何度も
  • 入浴前後に1杯ずつ:入浴で失われる水分は意外に多いです
  • 枕元に水を置く:夜間に起きたときに飲める

※心不全や腎臓病で医師から水分制限の指示が出ている場合は、その指示が優先です。自己判断で増やさず、主治医にご相談ください。

寝る前のストレッチ

ふくらはぎを伸ばしておくと、縮んだ状態から始まらずに済みます。

  • 壁を使ったストレッチ:壁に手をつき、片脚を後ろに引いて、かかとを床につけたまま20秒。左右2回ずつ
  • タオルを使う方法:座って脚を伸ばし、足裏にタオルをかけて手前に20秒引く。立てない方向け
  • 足首の曲げ伸ばし:布団の中でも、つま先の上げ下げを20回

寝るときの工夫

  • 布団の重みでつま先が押し下げられないようにする:掛け布団を軽いものにする、足元をゆるめる
  • 足元にクッションを置き、足首が伸びきらないようにする
  • 足を冷やさない:靴下やレッグウォーマー。ただし締めつけの強いものは避ける
  • 寝る前に足を温める:入浴、足浴で血流を良くする

布団の重みは見落とされがち

重い掛け布団は、一晩中つま先を押し下げ続けます。ふくらはぎが縮んだ状態が数時間続くことになり、つりやすい条件が整います。

軽い掛け布団に替える、足元だけ布団を持ち上げる(市販の布団あげ)といった対策で、これだけで改善する方がいます。費用のかからない対策から試してください。

日中の活動

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、高齢者に対して筋力トレーニングを週2〜3日、筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上推奨しています。

ふくらはぎにはかかと上げが直接効きます。椅子の背につかまって、15回×2セット。血流を保つことが、夜のこむら返りの予防にもつながります。

具体的な運動は高齢者の筋トレメニュー9選をご覧ください。

介護している家族ができること

本人が自力で対処できない場合、家族の対応が回復までの時間を左右します。

夜中につったとき

  • まず落ち着いて声をかける:痛みでパニックになると力が入り、余計に強く縮みます
  • 膝を伸ばした状態にする:膝が曲がっていると伸ばしきれません
  • 足裏に手を当て、つま先を体側へゆっくり押す:一気に押さない
  • 20〜30秒保つ:すぐに離すと再発します
  • 収まったら温める:蒸しタオルや湯たんぽ(低温やけどに注意)
  • 水分をとってもらう

ベッド上で介助するときの姿勢

夜中に慌てて、低いベッドに対して立ったまま前かがみで足を押す。この姿勢は介助者の腰を痛めます。

厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」も、不自然な姿勢を避ける方法として「対象者にできるだけ近づいて作業する」「ベッドや作業台等の高さを調節する」「作業面が低くて調節できない場合は、椅子に腰掛けて作業するか、ベッドや床に膝を着く」ことを挙げています。

ベッドの端に腰かける、膝をつく。この一手間で腰への負担が変わります。

繰り返すなら記録して相談する

家族が気づける情報は、診察時に大きな手がかりになります。

記録する項目分かること
時間帯夜間中心か、日中もあるか
どちらの脚か片側だけなら神経・血管の問題を疑う
頻度週◯回。増えているか減っているか
その日の活動量歩きすぎた日か、逆に動かなかった日か
水分摂取量少ない日に集中していないか
薬の変更開始時期と一致していないか

訪問看護や訪問リハビリを利用している場合は、この記録をそのまま見せてください。専門職が医師へつなぐ判断材料になります。「夜、足がつるみたいです」より、はるかに早く原因にたどり着けます。

受診すべきサイン

相談したほうがよい場合

  • 毎晩のように起こる
  • 日中にも起こる
  • 片側だけに集中している
  • しびれ、感覚の鈍さを伴う
  • 歩くと脚が痛くなり、休むとまた歩ける(間欠跛行)
  • 足が冷たい、色が悪い、脈が触れにくい
  • むくみを伴う
  • つった後に痛みや腫れが数日続く
  • 水分・ストレッチを続けても改善しない
  • 新しい薬を始めてから増えた

特に「歩くとつる・痛む」場合は、脊柱管狭窄症や閉塞性動脈硬化症の可能性があります。見分け方の目安は、前かがみで休むと楽になるか(脊柱管狭窄症)姿勢に関係なく立ち止まれば楽になるか(血管の問題)です。

血管の問題は全身の動脈硬化の一部であり、心筋梗塞や脳梗塞とも関係します。整形外科だけを受診していると見逃されることがあるため、心当たりがあれば主治医に伝えてください。

記録しておくと診察が早い

いつ(時間帯)、どこが、どちら側が、どれくらいの頻度で、何をしていたとき。これを1〜2週間メモしておくと、原因の特定がぐっと早くなります。服用中の薬のリスト(お薬手帳)も忘れずに持参してください。

よくある質問

なぜ夜や明け方に多いのですか?

就寝中は水分をとらず脱水になりやすいこと、仰向けで寝ると足首が伸びてふくらはぎが縮んだ状態になること、布団の重みでつま先が押し下げられることが重なるためです。

つったときはどうすればいいですか?

膝を伸ばした状態で、つま先を手前(すね側)にゆっくり引いてください。20〜30秒保ちます。急に強く引くと筋肉や腱を痛めるので、必ずゆっくり行ってください。

つった直後に揉んでもいいですか?

まず伸ばして収まるのを待ってください。収まってから軽くさする程度にします。なお、原因不明のむくみがある足を揉むのは危険な場合があるため避けてください。

寝る前に水を飲むと夜中にトイレに行きたくなります。

その心配から水分を控えることが、こむら返りの大きな原因になっています。コップ1杯程度から試してください。ただし心不全や腎臓病で水分制限の指示がある場合は主治医の指示が優先です。

布団は関係ありますか?

関係します。重い掛け布団は一晩中つま先を押し下げ、ふくらはぎが縮んだ状態を続けさせます。軽い布団に替える、足元を持ち上げるといった対策で改善する方がいます。

薬が原因のことはありますか?

あります。特に利尿薬は水分とともにミネラルを排出するため、電解質のバランスが崩れやすくなります。脂質異常症治療薬(スタチン系)でも筋肉の症状が出ることがあります。自己判断で中止せず、主治医・薬剤師に相談してください。

どのくらいの頻度なら受診すべきですか?

毎晩のように起こる、日中にも起こる、片側だけに集中している、水分とストレッチを続けても改善しない場合は相談してください。しびれや歩行時の痛みを伴う場合も受診の対象です。

歩くと足がつるのですが。

脊柱管狭窄症や閉塞性動脈硬化症の可能性があります。前かがみで休むと楽になるなら脊柱管狭窄症、姿勢に関係なく立ち止まれば楽になるなら血管の問題を疑います。受診してください。

予防のストレッチはいつやればいいですか?

就寝前が最も効果的です。ふくらはぎを20秒×左右2回伸ばしておくと、縮んだ状態から夜が始まらずに済みます。立てない方は、座ってタオルを足裏にかけて引く方法があります。

サプリメントは効きますか?

不足している場合には意味がありますが、まず水分・ストレッチ・薬の確認が先です。腎機能によっては摂取に注意が必要な成分もあるため、開始前に主治医・薬剤師にご相談ください。

まとめ

  • 最も多い原因は脱水と、ふくらはぎが縮んだ状態で寝ていることの組み合わせ
  • 高齢者は喉の渇きを感じにくく、頻尿を心配して水分を控えがち
  • 仰向けで寝ると足首が伸び、ふくらはぎが縮む
  • 布団の重みがつま先を押し下げ続けている
  • 利尿薬は電解質のバランスを崩しやすい
  • スタチン系の薬でも筋肉の症状が出ることがある
  • つったら膝を伸ばし、つま先を手前にゆっくり引く(20〜30秒)
  • 急に強く引かない。つった直後に強く揉まない
  • 就寝前にコップ1杯の水分(水分制限の指示がある場合は主治医に確認)
  • 就寝前のふくらはぎストレッチが有効
  • 軽い掛け布団に替えるだけで改善することがある
  • 日中のかかと上げでふくらはぎの血流を保つ
  • 毎晩・日中も・片側だけの場合は受診
  • 歩くとつる場合は脊柱管狭窄症や血管の病気を疑う
  • いつ・どこが・どちら側かを記録すると診察が早い

参考にした情報

※本記事の脱水・水分補給に関する記述は厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」、薬剤(スタチン系)と筋症状に関する記述は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」にもとづいて整理したものです。こむら返りの原因分類、対処法、予防策に関する記述は、医学・リハビリテーション領域で一般に用いられている整理および筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづくものであり、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません(確度:中)。本記事は診断を目的とするものではありません。頻繁に繰り返す場合、しびれや歩行時痛を伴う場合は、背景に治療が必要な疾患があることがあります。必ず医療機関を受診してください。水分の摂取量は、心臓・腎臓の状態によって制限が必要な場合があります。薬の変更・中止は必ず主治医の判断によります。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味