高齢者の足のむくみ|原因と受診の目安

高齢者の足のむくみで、まず確認してほしいのは左右差があるかどうかです。両足が同じようにむくんでいるのか、片足だけなのか。ここで緊急性がまったく変わります。
片足だけが急にむくんだ場合は、すぐ受診が必要な状態の可能性があります。一方、両足が夕方にかけてむくむ場合の多くは、動かないことによるものです。この記事では、原因の切り分け方、受診すべきサイン、そして自宅でできる対策を整理しました。
この記事でわかること
- むくみが起こる仕組み
- 左右差で緊急性を判断する方法
- 高齢者に多い6つの原因
- 在宅で最も多い「動かないことによるむくみ」
- すぐ受診すべきサイン
- 自宅でできる対策(足首の運動・挙上)
- 弾性ストッキングを自己判断で使ってはいけない理由
- 水分を控えるのが危険な理由
高齢者の足のむくみは症状であって病気ではない
むくみ(浮腫)は、血管の外に水分が溜まった状態です。原因は幅広く、命に関わるものから生活習慣によるものまで含まれます。「むくみ」という一つの言葉でまとめて対処しようとすると、重大な病気を見逃します。
まず左右差を見る
| むくみ方 | 主に考えられるもの | 緊急性 |
|---|---|---|
| 片足だけ、急に | 深部静脈血栓症、蜂窩織炎(感染)、外傷 | 高い(すぐ受診) |
| 片足だけ、ゆっくり | リンパ浮腫、静脈瘤、麻痺側の廃用 | 中(受診を検討) |
| 両足、夕方に強い | 動かないことによるもの、静脈の機能低下 | 低(生活の工夫から) |
| 両足、朝から強い・全身 | 心不全、腎臓、肝臓、低栄養、薬 | 中〜高(受診) |
片足だけ急にむくんだら受診
特に、片足だけが数日のうちに腫れ、痛みや熱感、赤みを伴う場合は要注意です。
- 深部静脈血栓症:脚の深い静脈に血の塊ができた状態。剥がれて肺に飛ぶと肺塞栓(エコノミークラス症候群)を起こします
- 蜂窩織炎:皮下の細菌感染。赤み・熱感・発熱を伴います
どちらもマッサージや温めは禁物です。血栓を飛ばす、感染を広げる危険があります。足を揉む前に受診してください。
ちびウルフむくんでいたら、とりあえず揉んであげればいいと思っていました。
リハウルフそこが危ないところです。原因が分からないうちに揉むのは避けてください。特に片足だけ、痛みがある、熱を持っているときは絶対にやめてください。まず原因を確かめる。順序を逆にしないことです。
高齢者に多い6つの原因
① 動かないこと(廃用性・依存性浮腫)
在宅で最も多い原因です。ふくらはぎの筋肉は、歩くたびに収縮して血液を心臓へ押し戻すポンプの役割をしています(筋ポンプ)。
座りっぱなし・寝たきりの時間が長いと、このポンプが働きません。さらに、車椅子や椅子で足を下げたまま過ごすと重力で水分が下に溜まります。
特徴は、夕方に強くなり、朝は軽くなること。両足に出ます。
② 心不全
心臓のポンプ機能が落ちると、全身に血液を送り出せず、水分が溜まります。むくみに加えて体重増加・息切れ・夜間の咳・横になると苦しいといった症状を伴うのが特徴です。
心不全では、症状が出る前に体重が増えます。1日で1〜2kg、3日で2kg以上の増加は要注意とされます。詳しくは心不全のリハビリ|運動の強さと再入院を防ぐ管理をご覧ください。
③ 腎臓・肝臓の病気
腎臓の機能が落ちると水分・塩分が排出されにくくなり、肝臓の機能が落ちるとアルブミンという血液中のたんぱく質が減って水分が血管外へ漏れます。顔やまぶたのむくみ、尿量の変化、黄疸などを伴うことがあります。
④ 低栄養
食事量が減ってたんぱく質が不足すると、血液中のアルブミンが下がり、むくみが出ます。痩せているのにむくんでいるという状態は、この可能性があります。
厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」は、地域で生活する高齢者について「低栄養またはそのリスクがある者が約4割いるという報告がある」とし、65歳以上の目標BMIの範囲を21.5〜24.9kg/m²としています。
⑤ 薬の影響
一部の降圧薬(カルシウム拮抗薬)、消炎鎮痛薬、ステロイド、ホルモン製剤などは、むくみを起こすことがあります。
「むくみ始めた時期」と「薬が変わった時期」が近くないかを確認してください。自己判断で中止せず、主治医・薬剤師に相談することが重要です。
⑥ リンパ浮腫・静脈瘤
がんの手術でリンパ節を切除した後などに起こるリンパ浮腫、下肢の静脈弁の機能低下による静脈瘤も原因になります。いずれも片側に出ることが多く、専門的な治療が必要です。
すぐ受診すべきサイン
受診の目安
- 片足だけが急にむくんだ(数日以内)
- むくんだ部分に痛み・熱感・赤みがある
- 発熱を伴う
- 息切れ・呼吸困難がある(横になると苦しい、夜間に咳が出る)
- 短期間で体重が増えた(1日1〜2kg、3日で2kg以上)
- 顔やまぶたもむくんでいる
- 尿の量が明らかに減った
- 指で押すと深くへこみ、なかなか戻らない
- 皮膚が硬くなってきた、傷や潰瘍ができた
特に息切れを伴うむくみは、心臓や肺の問題の可能性があります。様子を見ずに受診してください。
自宅でできる対策
ここからは、重大な原因が否定された場合、または医師の指示のもとで行う対策です。
足首の運動(最も基本かつ有効)
ふくらはぎの筋ポンプを働かせます。座ったままでも、寝たままでもできます。
- 足首の曲げ伸ばし:つま先を上げる・下げるを交互に。20回を1日数回
- 足首回し:左右各10回
- かかと上げ:立てる方は、椅子につかまって15回×2セット
- 足指のグー・パー:20回
回数に厳密な決まりはありません。テレビを見ながら、気づいたときに動かすほうが継続します。
足を上げる(挙上)
- 横になり、心臓より高い位置にクッションや座布団で足を上げる
- 目安は15〜30分。就寝前や昼間の休憩時に
- 膝の下だけでなく、ふくらはぎ全体を支える(一点で支えると圧迫になります)
心不全がある方は自己判断で足を上げない
足を高く上げると、下肢に溜まっていた水分が一気に心臓へ戻ります。心臓に負担がかかることがあるため、心不全のある方は主治医に確認してから行ってください。
座り方・過ごし方
- 足を下げたままの時間を減らす:車椅子ではフットレストの高さを調整。足台を使う
- 30分〜1時間ごとに足首を動かす
- 日中に体を起こす時間をつくる:寝たきりでも座位をとる
- きつい靴下・ゴムの強い下着を避ける:跡が深く残るものは締めつけています
- 皮膚を保湿する:むくんだ皮膚は乾燥して傷つきやすくなります
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」も、座位行動について「座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する(立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かす)」としています。
むくみの程度を記録する
「むくんでいる」という感覚だけでは、良くなっているのか悪くなっているのかが分かりません。数字と記録で追うと、受診時にも正確に伝えられます。
- 体重を毎日同じ条件で測る:朝起きてトイレを済ませた後、同じ服装で。最も確実な指標です
- ふくらはぎの周囲径を測る:週1回、同じ位置(最も太い部分)をメジャーで。左右とも
- 押してへこむ深さと戻る時間:すねの骨の上を5秒押して、へこみの深さと戻り方を見る
- 靴下の跡:跡の深さ、消えるまでの時間
- 靴が入るか:同じ靴で判断できます
受診時に伝えるべき5項目
- いつから(急か、徐々にか)
- 片足か両足か
- 朝と夕方でどう違うか
- 体重の変化
- ほかの症状(息切れ・尿量・発熱・痛み)
「むくんでいます」だけより、「3日前から右足だけ、朝も引かない、体重は2kg増えた」のほうが、はるかに的確な判断につながります。
むくみがあるときの運動の可否
「むくんでいるけれど運動していいのか」は判断に迷う点です。厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」は、運動を実施しない基準を数値で示しています。
運動を控えるべきチェック項目(原文より)
- 収縮期血圧 180mmHg以上、または 80mmHg未満
- 拡張期血圧 110mmHg以上
- 体温 37.5℃以上
- 脈拍が 120拍/分以上
- いつもと異なる脈の不整がある場合
- 関節痛など慢性的な症状の悪化
運動中については、開始時と比較して収縮期血圧が40mmHg以上、または拡張期血圧が20mmHg以上上昇した場合、あるいは脈拍が140回/分を越えた場合は中止とされています。強い呼吸困難感、頻呼吸(1分間に25回以上)、めまい、狭心痛、頭痛、強い疲労感が出た場合も同様です。
同マニュアルは、不整脈の確認について「毎回プログラム実施前に脈拍数だけでなく、不整脈についても観察する。いつもより多く不整脈が発生する場合には運動を控える」とも記載しています。
むくみが増えている日は運動を控える
上記の基準に加えて、短期間で体重が増えている日、むくみが明らかに強くなっている日は、運動より受診を優先してください。
水分が体に溜まっている状態で運動するのは、心臓にとって負担の大きい組み合わせです。心不全がある方は特に注意が必要です。心不全のリハビリもあわせてご覧ください。
介護サービスでできること
むくみの管理は、本人と家族だけで抱える必要はありません。
| サービス | できること |
|---|---|
| 訪問看護 | むくみの観察、体重・血圧の確認、皮膚の状態の管理、医師への報告 |
| 訪問リハビリ | 足首の運動指導、座り方・過ごし方の調整、活動量を上げる提案 |
| 通所介護・通所リハビリ | 日中に体を起こし、動く時間を確保する |
| 福祉用具 | 車椅子のフットレスト調整、足台、介護ベッドの角度調整 |
特に訪問看護は、むくみの変化を継続的に観察し、医師へつなぐ役割を担えます。「悪くなってから受診」ではなく「変化に早く気づく」仕組みをつくることが、入院を防ぐことにつながります。
また、日中ずっとベッドで過ごしている場合、通所サービスで体を起こす時間をつくるだけでむくみが軽くなることがあります。これは薬ではなく生活の調整で得られる効果です。ケアマネジャーにご相談ください。
弾性ストッキングは自己判断で使わない
むくみ対策として知られていますが、使ってはいけない場合があります。
注意が必要なケース
- 動脈の血流障害がある場合(閉塞性動脈硬化症など):締めつけることで血流がさらに悪化し、皮膚の壊死につながる危険があります
- 心不全が悪化している場合:戻る水分が心臓の負担になることがあります
- 皮膚に傷・感染がある場合
- サイズが合っていない場合:食い込んで、かえって循環を妨げます
市販品もありますが、医師の判断と、適切なサイズ選定が必要です。「むくんでいるから」という理由だけで使い始めないでください。
水分を控えるのは危険
「むくんでいるから水分を減らす」は、多くの場合で誤りです。
高齢者はもともと体内の水分量が少なく、喉の渇きも感じにくい。そこへ水分制限を加えると、脱水・便秘・尿路感染・意識障害のリスクが上がります。
厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」も、運動時の注意として「高齢者では、喉の渇きを感じにくい、頻尿を心配して水分を控えることなどから、脱水を起こしやすいので、必ず運動中に水分補給の時間をとる」としています。
心不全や腎臓病で医師から水分制限の指示が出ている場合はそれに従ってください。指示がないのに自己判断で減らすのは避けるべきです。
塩分は見直す価値がある
水分ではなく塩分です。塩分を摂ると体は水分を溜め込みます。汁物を1日1杯までにする、麺類の汁を残す、加工食品(漬物・練り物・干物)を控える。この3つだけでも変わります。
ただし、減塩を意識しすぎて食事量そのものが減り、低栄養になっては本末転倒です。目標量は主治医・管理栄養士にご確認ください。
よくある質問
むくみで最初に確認することは何ですか?
左右差です。片足だけが急にむくんだ場合は、深部静脈血栓症や蜂窩織炎の可能性があり、すぐ受診が必要です。両足が夕方に強くなる場合は、動かないことによるものが多いです。
むくんだ足を揉んでもいいですか?
原因が分からないうちは避けてください。特に片足だけ、痛みがある、熱を持っている場合は絶対にやめてください。血栓を飛ばしたり、感染を広げたりする危険があります。
夕方になるとむくむのは病気ですか?
朝は軽く、夕方に強くなり、両足に出る場合は、動かないことや静脈の機能低下によるものが多いです。ただし息切れや体重増加を伴う場合は心不全の可能性があるため受診してください。
水分を控えたほうがいいですか?
医師の指示がある場合を除き、控えないでください。高齢者は脱水を起こしやすく、便秘・尿路感染・意識障害のリスクが上がります。見直すべきは水分ではなく塩分です。
足を上げるのは効果がありますか?
効果があります。心臓より高い位置に15〜30分を目安に上げてください。ただし心不全がある方は、戻る水分が心臓の負担になることがあるため、主治医に確認してから行ってください。
弾性ストッキングは使ってもいいですか?
自己判断では使わないでください。動脈の血流障害がある場合、締めつけで血流が悪化し皮膚の壊死につながる危険があります。医師の判断と適切なサイズ選定が必要です。
薬が原因のことはありますか?
あります。一部の降圧薬(カルシウム拮抗薬)、消炎鎮痛薬、ステロイドなどが原因になることがあります。むくみ始めた時期と薬が変わった時期が近ければ、主治医・薬剤師に相談してください。自己判断での中止は避けてください。
痩せているのにむくんでいます。
低栄養によるむくみの可能性があります。食事量が減ってたんぱく質が不足すると、血液中のアルブミンが下がり水分が漏れ出します。主治医・管理栄養士にご相談ください。
むくんだ皮膚のケアは必要ですか?
必要です。むくんだ皮膚は乾燥して傷つきやすく、小さな傷から感染を起こすことがあります。保湿を行い、きつい靴下やゴムの強い下着は避けてください。
寝たきりでもできる対策はありますか?
足首の曲げ伸ばしと足指のグー・パーは寝たままできます。また日中に体を起こす時間をつくること、足を心臓より高くする時間を設けることも有効です(心不全がある場合は主治医に確認を)。
まとめ
- むくみは症状であって病気ではない。原因の幅が広い
- 最初に確認するのは左右差
- 片足だけ急にむくんだ場合は深部静脈血栓症・蜂窩織炎の可能性があり、すぐ受診
- 原因が分からないうちにマッサージや温めをしない
- 在宅で最も多いのは、動かないことによるむくみ(筋ポンプが働かない)
- 夕方に強く朝は軽い、両足に出るのがその特徴
- 心不全では体重増加・息切れ・夜間の咳を伴う
- 低栄養でもむくむ。痩せているのにむくむ場合は疑う
- 一部の降圧薬・消炎鎮痛薬・ステロイドが原因になることがある
- 息切れを伴うむくみは様子を見ずに受診する
- 足首の運動が最も基本的で有効な対策
- 足を心臓より高く15〜30分。ただし心不全がある方は主治医に確認
- 弾性ストッキングは自己判断で使わない(動脈疾患では危険)
- 水分を控えるのは危険。見直すのは塩分
- むくんだ皮膚は傷つきやすいので保湿と締めつけ回避を
- 収縮期180以上/80未満、脈拍120以上などでは運動を控える
- むくみが強くなっている日・体重が増えた日は運動より受診を優先する
参考にした情報
- 厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」(令和4年3月)
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(令和6年1月)
- 厚生労働省「介護予防マニュアル 第4版」
- 診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)第7部 リハビリテーション
※本記事の低栄養・脱水・身体活動に関する記述は、厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」および「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」にもとづいて整理したものです。むくみの原因の分類、受診の目安、体重増加の数値、弾性ストッキングの禁忌に関する記述は、医学・看護・リハビリテーション領域で一般に用いられている整理および筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづくものであり、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません(確度:中)。本記事は診断を目的とするものではありません。むくみの原因の特定と治療方針の決定は医師が行います。特に片側性の急なむくみ、痛み・発熱・息切れを伴うむくみは、自己判断せず速やかに受診してください。足の挙上、運動、弾性ストッキングの使用、水分・塩分の量は、心臓・腎臓の状態によって適否が変わります。必ず主治医の指示に従ってください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。





