デイサービスで男性利用者が続かない理由は、プログラムの内容そのものより「なぜそれをやるのかが説明されていない」ことにあります。折り紙や体操を勧められても、目的が分からなければ参加する理由がありません。逆に、目的が明確な活動であれば、内容が地味でも続きます。

この記事では、デイサービスの男性向けプログラムを、個別機能訓練加算の要件と結びつけて整理しました。理学療法士として通所の現場に関わってきた立場から、導入の手順と、記録への落とし込み方まで書いています。

この記事でわかること
  • 男性利用者が続かない本当の理由
  • 「男性向け」を性別で考えると失敗すること
  • 目的が説明できる活動の作り方
  • 4つの型で考えるプログラム例
  • 個別機能訓練加算の要件と結びつける方法
  • 導入で失敗しやすい進め方
  • 記録に残すときの書き方
  • 人手をかけずに始める順番

男性利用者がデイサービスに馴染まない理由

よくある説明実際に起きていること
男性は集団が苦手集団が苦手なのではなく、役割がない場にいるのが苦痛
レクに興味がない目的が説明されていないため、参加する理由が持てない
女性が多くて居づらい会話の輪に入る手がかりがない(共通の話題や作業がない)
プライドが高いできないことを人前でさせられる場面が多い
家にいたい通う目的が本人の言葉になっていない

つまり問題は性別ではなく、その人に役割と目的があるかです。ここを取り違えて「男性向けの活動」を用意しても、当たり外れが大きくなります。

ちびウルフちびウルフ

じゃあ、男性向けのプログラムを考えても意味がないってこと?

リハウルフリハウルフ

意味はあります。ただ「男性だから木工」ではなく、「この人は何ができて、何を任せられるか」から入るということです。結果として木工になることはあります。順番が逆だと、道具を揃えたのに誰も使わない、という失敗になります。実際にそういう事業所をいくつも見てきました。

プログラムを4つの型で考える

内容の例向いている人準備の負担
役割型おしぼりの準備、道具の手入れ、植木の水やり、新聞の整理、行事の司会人に頼られたい人。手持ち無沙汰が苦手な人小さい
技能型木工、園芸、書道、囲碁・将棋、写真、模型、パソコン職歴や趣味が活かせる人中〜大
身体型マシントレーニング、屋外歩行、自転車エルゴメーター、ストレッチ目に見える成果がほしい人
社会参加型地域行事への参加、近隣清掃、子どもとの交流、就労的活動社会とのつながりを保ちたい人
最初に手をつけるなら「役割型」 道具も予算もほぼ不要で、その日から始められます。「これ、お願いできますか」と頼むだけです。
効果が出やすいのは、他の利用者や職員が実際に助かる役割です。形だけ用意した仕事はすぐ見抜かれます。おしぼりを畳む、配膳を手伝う、道具を数える。実際に必要な作業を任せてください。

個別機能訓練加算と結びつける

ここが実務上いちばん重要です。目的が説明できる活動は、そのまま個別機能訓練計画の内容として位置づけられます。逆に、目的を説明できない活動は、加算の根拠になりません。

活動生活上の目標に翻訳すると
園芸(プランターの水やり)自宅の庭木の手入れを続けられる。しゃがむ・立ち上がる動作の維持
木工(簡単な工作)自宅で棚の修理ができる。手指の巧緻性と両手動作の維持
屋外歩行近所のコンビニまで一人で行ける。屋外の不整地への対応
道具の手入れ座位での作業時間の延長。役割の獲得による活動量の維持
書道年賀状を自分で書ける。座位保持と上肢の操作

「本人が自宅でやりたいこと」に翻訳できるかどうかが分かれ目です。ここが書けていれば、活動はレクリエーションではなく機能訓練になります。加算の要件は通所介護の加算・減算一覧で確認してください。

導入で失敗しやすい進め方

  • 道具を先に買う:使う人が決まっていないまま設備投資すると、ほぼ使われません
  • 男性だけの時間を作る:分離すると、かえって参加しにくくなることがあります
  • 全員参加にする:やりたくない人を巻き込むと、雰囲気が壊れます
  • 職員が主導しすぎる:教えられる場になると、役割がなくなります
  • 成果を求める:作品の出来を評価すると、できない人が離れます
  • 1回で判断する:初回で断られても、3回目に参加することがあります

始める順番

  • 対象になりそうな利用者の職歴・趣味・自宅での役割を聞き取る(家族にも聞く)
  • その人が「できること」を1つ決め、実際に必要な作業を頼んでみる
  • 反応を見て、続けられそうなら通所介護計画・個別機能訓練計画に位置づける
  • 生活上の目標に翻訳して、計画書に書く
  • 実施記録に、活動内容と目標への効果を記録する
  • 同じ関心を持つ利用者が現れたら、小さなグループにする
  • 定着してから、必要な道具を揃える

順番を守れば、予算をかけずに始められます。道具を揃えるのは最後です。

記録に残すときの書き方

避けたい書き方望ましい書き方
木工を実施。楽しそうだった木工(棚の補修)を30分実施。立位で工具を使用し、途中休憩1回。自宅の棚を直したいという目標に対し、両手動作は安定していた
園芸に参加プランターの水やりを実施。しゃがみ込みは手すり使用で可能。連続15分の立位を保持できた
おしぼり畳みを手伝ったおしぼり畳みを20分。座位で上肢の反復動作。他利用者との会話が3回あり、前回より発語が増えた

「何をしたか」だけでなく「どんな動作を、どのくらい」を書くと、機能訓練の記録として成立します。運営指導でも、この形の記録が求められます。

活動中の事故に注意 木工や園芸では、刃物、電動工具、農薬、日射などのリスクがあります。
・使用する道具の管理方法を決める(数を数えて保管する)
・屋外活動では、暑さ・寒さ・水分の管理を計画に入れる
・活動前に、その日の体調と服薬の状況を確認する
・事故が起きたときの対応と記録の手順を、あらかじめ決めておく
新しい活動を始めるときは、事前にリスクを洗い出し、記録に残してください。

よくある質問

男性利用者が参加してくれません。

活動の内容より、目的が本人に説明されているかを確認してください。「なぜそれをやるのか」が分からない活動には参加する理由が持てません。

何から始めればよいですか?

役割型です。道具も予算も不要で、その日から始められます。実際に職員や他の利用者が助かる作業を頼んでください。

男性だけの時間を作るのは有効ですか?

逆効果になることがあります。分離すると参加しにくくなる場合があるため、まずは個別に役割を持ってもらうほうが確実です。

道具を揃えたほうがよいですか?

最後です。使う人が決まらないまま設備投資すると、使われないまま終わることが多くなります。定着してから揃えてください。

レクリエーションと機能訓練の違いは何ですか?

生活上の目標に翻訳できているかどうかです。目標に結びついていれば機能訓練として計画に位置づけられます。

個別機能訓練加算の対象にできますか?

活動が計画に位置づけられ、目標と実施記録が対応していれば可能です。要件の詳細は告示および留意事項通知で確認してください。

記録はどう書けばよいですか?

「何をしたか」だけでなく「どんな動作を、どのくらい」を書いてください。目標に対する効果まで書けると、機能訓練の記録として成立します。

断られたらどうすればよいですか?

1回で判断しないでください。初回は断っても、3回目に参加することがあります。強制はせず、声をかけ続けてください。

職員の人手が足りません。

役割型であれば、職員の手が増えることはあっても減りません。実際に必要な作業を任せる形にすれば、業務の一部が回ります。

まとめ
  • 男性利用者が続かないのは、内容ではなく目的が説明されていないため
  • 集団が苦手なのではなく、役割がない場にいるのが苦痛になっている
  • 「男性だから木工」ではなく「何を任せられるか」から入る
  • プログラムは役割型・技能型・身体型・社会参加型の4つで考える
  • 最初に手をつけるなら役割型。道具も予算も不要
  • 形だけの仕事ではなく、実際に助かる作業を任せる
  • 目的が説明できる活動は、個別機能訓練計画に位置づけられる
  • 活動を「本人が自宅でやりたいこと」に翻訳できるかが分かれ目
  • 道具を先に買うと、使われないまま終わる
  • 男性だけの時間を作ると、かえって参加しにくくなることがある
  • 全員参加にせず、成果を評価しない
  • 初回で断られても、3回目に参加することがある
  • 記録は「どんな動作を、どのくらい」まで書く
  • 道具を揃えるのは、定着してから最後に行う
  • 木工や園芸では、道具の管理と体調確認をあらかじめ手順化する
参考にした情報

※本記事のプログラムの内容および導入方法に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、効果を保証するものではありません。個別機能訓練加算の算定要件は告示および留意事項通知で定められており、本記事では具体的な数値要件を記載していません。活動を計画に位置づけて加算を算定する場合は、必ず原文および保険者の見解をご確認ください。活動中の事故防止については、各事業所の実情に応じた手順を定めてください。利用者の身体状況によっては実施できない活動があるため、実施の可否は主治医およびリハビリテーション専門職にご確認ください。2026年9月時点の情報として整理しています。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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