訪問介護の運営指導対策|指摘されやすい点と準備

訪問介護の運営指導には、他のサービスにない確認項目があります。同居の家族に対するサービス提供が、基準で明確に禁止されていることです。加えて、サービス提供責任者が訪問介護計画を作成すること、生活援助の範囲、2時間未満の間隔の取扱いなど、訪問介護特有の論点が集中します。
この記事では、訪問介護の運営指導対策を、指定居宅サービス等基準の原文を確認して整理しました。介護支援専門員として訪問介護事業所と関わってきた立場から、実際に指摘されやすい点を書いています。全体の流れは運営指導と監査の違いを参照してください。
- 同居家族へのサービス提供が禁止されていること
- 訪問介護計画を作成するのはサービス提供責任者であること
- 計画の実施状況の把握と変更が義務であること
- 生活援助の範囲で指摘されやすい行為
- サービス提供記録で見られる点
- サービス提供責任者の配置と業務
- 記録の保存期間が条例で異なること
- 当日に提示を求められる書類
訪問介護に特有の禁止規定
- 指定訪問介護事業者は、訪問介護員等に、その同居の家族である利用者に対する訪問介護の提供をさせてはならない。
他のサービスにはない、訪問介護だけの規定です。「同居」であることが要件なので、別居の親族へのサービス提供は禁止されていません。ただし運営指導では、実態として同居ではないかを確認されることがあります。
- 訪問介護員と利用者の住所が同一になっていないか
- 生計を一にしている実態がないか
- 小規模事業所で、家族的な関係の職員がシフトに入っていないか
- 訪問記録上、特定の職員が特定の利用者に固定されていないか
訪問介護計画|作成者はサービス提供責任者
- サービス提供責任者は、利用者の日常生活全般の状況及び希望を踏まえて、指定訪問介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した訪問介護計画を作成しなければならない。
通所介護は管理者、通所リハは医師等の従業者が共同して、訪問介護はサービス提供責任者。サービスごとに作成者が違うため、他のサービスの様式を流用している事業所は注意が必要です。
作成後の義務も条文に書かれている
- サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成後、当該訪問介護計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて当該訪問介護計画の変更を行うものとする。
計画を作って交付したら終わりではありません。実施状況を把握した記録、必要に応じて変更した記録が求められます。数年前に作った計画がそのままになっている状態は、典型的な指摘対象です。
- 居宅サービス計画が変更されたとき、訪問介護計画も見直しているか
- 利用者の状態が変わったときに変更しているか
- 変更した場合、説明・同意・交付をやり直しているか(第24条第6項が準用を定めています)
- モニタリングの記録が定期的に残っているか
ケアプランより訪問介護計画の日付が古い、同意日がサービス提供開始日より後になっているといった逆転は、その場で指摘されます。書類が揃っていても、日付が合わなければ要件を満たしていないと判断されます。
生活援助の範囲で指摘されやすい行為
訪問介護の運営指導で、報酬請求とあわせて必ず確認される領域です。訪問介護として算定できない行為が含まれていないかを見られます。
| 類型 | 代表的な例 |
|---|---|
| 利用者以外のための行為 | 家族の分の食事づくり、家族の洗濯、来客の対応 |
| 日常生活の援助の範囲を超える行為 | 草むしり、ペットの世話、大掃除、家具の移動、正月料理などの特別な調理 |
| 日常的に行われる家事の範囲を超える行為 | 床のワックスがけ、窓の外側の掃除、大掃除 |
これらは訪問介護の対象外とされています。サービス提供記録に、これらの行為が書かれていると指摘の対象になります。実際に行っていた場合は、報酬の返還につながることがあります。
- ケアプランと訪問介護計画に位置づけられた内容と、実施記録が一致しているか
- 記録に、対象外の行為が書かれていないか
- 利用者と家族の分を区別して行っている記録になっているか
- サービス提供責任者が、内容を確認しているか
ちびウルフご家族に頼まれたら、断りにくいよね…。
リハウルフ断りにくいのは分かります。ただ、断れなかった結果として返還になるのは事業所です。ヘルパー個人が現場で判断するのではなく、契約時と重要事項説明の段階で「できないこと」を明示しておくのがいちばん効きます。そのうえで、依頼があったらサービス提供責任者に上げる流れにしてください。個人に判断させると、必ずばらつきます。
サービス提供記録で見られる点
- 一 訪問介護計画
- 二 第十九条第二項の規定による提供した具体的なサービスの内容等の記録
- 三 身体的拘束等の態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由の記録
- 四 市町村への通知に係る記録 五 苦情の内容等の記録 六 事故の状況及び採った処置についての記録
- 訪問した日時(開始・終了時刻)が記録されているか
- 提供した具体的な内容が、抽象的でなく書かれているか
- 利用者の確認(署名等)の運用が定まっているか
- 算定した時間区分と、記録上の実際の所要時間が一致しているか
- 身体介護と生活援助の区分が、実態と合っているか
算定区分と記録の不一致は、返還に直結します。とくに身体介護と生活援助の区分、所要時間の区分は重点的に確認されます。
サービス提供責任者の配置と業務
- 利用者数に応じた必要数が配置されているか
- 資格要件を満たしているか(資格証を確認できるか)
- 常勤要件を満たしているか
- 他の職務との兼務が、認められる範囲を超えていないか
- 訪問介護計画の作成、実施状況の把握、ヘルパーへの指示など、業務を実際に行っているか
ケアマネジャーとの兼務については訪問介護員とケアマネの兼務はできる?にまとめています。名前だけのサービス提供責任者になっていないかが確認されます。
運営体制で確認される項目
| 項目 | 根拠(基準) | 確認されること |
|---|---|---|
| 勤務体制の確保 | 第30条 | 事業所ごとの勤務体制、当該事業所の従業者による提供、研修機会の確保 |
| ハラスメント対策 | 第30条第4項 | 方針の明確化等の必要な措置 |
| 業務継続計画 | 第30条の2 | 計画の策定、周知、研修および訓練の定期的な実施 |
| 感染症対策 | 第31条 | 委員会の開催、指針の整備、研修および訓練 |
| 虐待の防止 | 第37条の2 | 委員会、指針、研修、担当者の配置 |
| 会計の区分 | 第38条 | 事業所ごとの経理区分、他事業との区分 |
感染症対策の委員会は、基準第31条第3項でおおむね6か月に1回以上の開催が求められています。議事録がなければ開催の事実を示せません。
記録の保存期間
2年で処分して提示できなくなる事故が起きています。指定権者の条例を確認し、迷う場合は5年保存にしてください。
当日に提示を求められる書類
- 運営規程、重要事項説明書、契約書、同意書
- 勤務形態一覧表、出勤簿・タイムカード、資格証の写し
- 訪問介護計画(アセスメント、説明・同意、交付、モニタリングの記録)
- サービス提供記録、訪問日時のわかる記録
- 各種加算の届出書控えと、要件を裏づける記録
- 苦情記録、事故記録、身体的拘束等に関する記録
- 感染症対策委員会・虐待防止委員会の議事録、指針、研修記録
- 業務継続計画と、研修・訓練の記録
- ハラスメント対策の方針を示す資料
- 会計の区分がわかる資料
加算の要件は訪問介護の加算・減算一覧で確認できます。算定している加算を一覧化し、要件と記録を突き合わせておくことが、最も効率のよい準備です。
よくある質問
同居の家族にサービスを提供できますか?
できません。基準第25条が明確に禁止しています。訪問介護だけの規定で、他のサービスにはありません。
別居の親族なら提供できますか?
条文は「同居の家族」を対象としています。ただし実態として同居でないかを確認されることがあるため、住所や生計の状況を整理しておいてください。
訪問介護計画は誰が作成しますか?
基準第24条第1項により、サービス提供責任者です。通所介護(管理者)や通所リハ(医師等の従業者が共同)とは作成者が異なります。
計画は作ったままでよいですか?
いけません。基準第24条第5項により、実施状況の把握と、必要に応じた変更が求められます。数年前の計画がそのままの状態は指摘対象です。
家族の分の調理を頼まれた場合は?
利用者以外のための行為は訪問介護の対象外です。契約時と重要事項説明で「できないこと」を明示し、依頼があればサービス提供責任者に上げる流れにしてください。
草むしりや大掃除は生活援助に含まれますか?
日常生活の援助の範囲を超える行為として、対象外とされています。記録に書かれていると指摘の対象になります。
身体介護と生活援助の区分はどう見られますか?
算定した区分と、サービス提供記録に書かれた実際の内容・所要時間が一致しているかが確認されます。不一致は返還につながります。
感染症対策の委員会はどのくらいの頻度ですか?
基準第31条第3項により、おおむね6か月に1回以上の開催が求められています。議事録がなければ実施を示せません。
記録は何年保存しますか?
基準上は完結の日から2年間ですが、条例で5年としている自治体があります。指定権者の条例を確認してください。
- 訪問介護には、同居家族へのサービス提供を禁止する第25条がある
- この規定は訪問介護だけのもので、他のサービスにはない
- 訪問介護計画の作成者は、基準第24条第1項によりサービス提供責任者
- サービスごとに計画の作成者が違うため、様式の流用に注意する
- 基準第24条第5項により、実施状況の把握と必要な変更が義務
- ケアプラン→訪問介護計画→説明・同意→交付→提供、の日付の順序が見られる
- 利用者以外のための行為(家族の食事・洗濯など)は対象外
- 草むしり、ペットの世話、大掃除、ワックスがけなども対象外
- 対象外の行為が記録にあると、返還につながることがある
- 個人に判断させず、契約時に「できないこと」を明示する
- 身体介護と生活援助の区分、所要時間の区分は重点的に確認される
- サービス提供責任者が名前だけになっていないかが見られる
- 感染症対策の委員会は、おおむね6か月に1回以上(第31条第3項)
- ハラスメント対策、業務継続計画、虐待防止の記録も確認される
- 記録の保存は基準上2年だが、条例で5年としている自治体がある
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)e-Gov法令検索(第24条、第25条、第30条、第31条、第37条の2、第39条ほか)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)e-Gov法令検索(第76条、第76条の2)
※本記事の制度に関する記述は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準および介護保険法にもとづいて整理したものです。運営基準は都道府県または市町村の条例で定められるため、記録の保存期間をはじめ具体的な取扱いが自治体によって異なります。生活援助として算定できる行為の範囲は、留意事項通知等により示されており、個別の可否は保険者の判断によって異なる場合があります。本記事に挙げた例は代表的なものにすぎません。判断に迷う場合は、必ず保険者にご確認ください。運営指導の実施方法や確認項目も指定権者によって異なるため、公表されている実施要綱および自己点検表をご確認ください。実務上の注意点は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理です。2026年9月時点の内容として整理しています。




