ケアマネジャーを決めるのは利用者本人と家族です。市町村が割り当てるものでも、病院が指定するものでもありません。これは基準に明記されており、さらに「複数の事業所を紹介するよう求めることができる」と説明する義務まで事業者側に課されています。

この記事では、ケアマネジャーは誰が決めるのかについて、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準の原文を確認して整理しました。選び方、合わなかったときの変更、断られたときの対応まで、介護支援専門員としての実務も踏まえて書いています。

この記事でわかること
  • ケアマネジャーは利用者が選ぶと基準に定められていること
  • 複数の事業所を紹介するよう求められる権利があること
  • 特定の事業者に偏らないよう公正中立が義務づけられていること
  • 自社サービスへの集中割合を聞ける仕組み
  • ケアマネジャー1人あたりの担当人数の上限
  • 担当を変更したいときの手順
  • 断られた場合に事業者が負う義務
  • 要支援の場合は担当が変わること

ケアマネージャーは誰が決めるのか

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第1条の2は、事業の基本方針を次のように定めています。

指定居宅介護支援等基準 第1条の2第2項
  • 指定居宅介護支援の事業は、利用者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、利用者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われるものでなければならない。

「利用者の選択に基づき」と条文にあります。つまり、どの居宅介護支援事業所に依頼するかを決めるのは利用者側です。市町村の窓口で一覧を渡されることはありますが、それは情報提供であって、決定ではありません。

公正中立が義務づけられている

指定居宅介護支援等基準 第1条の2第3項
  • 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供に当たっては、利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立って、利用者に提供される指定居宅サービス等が特定の種類又は特定の指定居宅サービス事業者等に不当に偏することのないよう、公正中立に行われなければならない

ケアマネジャーが自分の法人のサービスばかり組み込むことは、この規定に反します。「うちの系列のデイサービスを使ってください」と言われたら、それは断ってよいということです。

ちびウルフちびウルフ

でも、病院からこの事業所にって紹介されたら、断りにくいよね。

リハウルフリハウルフ

紹介はあくまで紹介です。退院支援の場面では、病院が近隣の事業所を案内することがよくありますが、そこに決めなければならない決まりはありません。断っても不利益はありません。実際、退院後に「合わないので変えたい」と相談されることは珍しくないです。

利用者には「複数紹介を求める権利」がある

これはあまり知られていませんが、基準に明記されています。

指定居宅介護支援等基準 第4条第2項
  • 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、利用者又はその家族に対し、居宅サービス計画が第一条の二に規定する基本方針及び利用者の希望に基づき作成されるものであり、利用者は複数の指定居宅サービス事業者等を紹介するよう求めることができること等につき説明を行い、理解を得なければならない。

事業者は「複数紹介を求められますよ」と説明しなければならないのです。もし説明を受けていないなら、契約時の説明が不十分だった可能性があります。遠慮せず「他の事業所も教えてください」と言ってください。

自社サービスへの集中割合も聞ける

指定居宅介護支援等基準 第4条第3項(要旨)
  • 前六月間に作成された居宅サービス計画の総数のうち、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、地域密着型通所介護がそれぞれ位置付けられた割合、および、それらの回数のうち同一の事業者によって提供されたものが占める割合について、説明を行い、理解を得るよう努めなければならない。

つまり「この事業所のケアプランは、どのくらい自社のサービスに偏っているか」を数字で聞けるということです。努力義務ではありますが、聞かれた事業所は答えられる状態にしておくべき数字です。中立性を判断する材料になります。

ケアマネジャーの選び方

確認することなぜ重要か
事業所の母体(医療法人、社会福祉法人、独立系など)系列サービスへの偏りが起きやすいかの目安になる
担当している利用者の人数多すぎると訪問や連絡が手薄になる
得意な分野(医療的ケア、認知症、看取りなど)本人の状態に合うかが変わる
連絡の取りやすさ(電話の時間帯、緊急時の対応)実際の困りごとは時間外に起きる
事業所の規模(複数名いるか、1人か)担当が休んだときに引き継げるか
自宅からの距離訪問の頻度と、緊急時の対応に影響する
担当できる人数には上限がある 基準第2条第2項は、介護支援専門員の員数について「利用者の数が四十四又はその端数を増すごとに一」と定めています(一定の要件を満たす場合の取扱いは別に定めがあります)。
つまり1人のケアマネジャーが無制限に受けられるわけではありません。「今は受けられない」と断られるのは、意地悪ではなく人数の問題であることが多いです。

断られたときはどうなるか

基準には、事業者側の義務も定められています。

  • 第5条(提供拒否の禁止):正当な理由なく提供を拒んではならない
  • 第6条(サービス提供困難時の対応):自ら適切な支援を提供することが困難と認めた場合は、他の事業者の紹介その他の必要な措置を講じなければならない

つまり断るだけで終わらせてはいけないということです。「うちは無理です」と言われたら、「では他にお願いできる事業所を教えてください」と伝えてください。それに応じるのは事業者の義務です。

それでも見つからない場合は、市町村の介護保険担当窓口か地域包括支援センターに相談してください。地域の空き状況を把握しています。

ケアマネジャーを変更したいとき

  • 何が合わないのかを整理する(連絡が取れない、提案がない、系列に偏るなど)
  • まず事業所の管理者に相談する(同じ事業所内で担当を替えられることがあります)
  • 事業所ごと変えたい場合は、新しい事業所を探す
  • 新しい事業所が決まったら、市町村へ居宅サービス計画作成依頼(変更)届出書を提出する
  • 前の事業所から、必要な情報を引き継いでもらう

変更に、理由を説明する義務はありません。気まずさを理由に我慢する必要はないということです。実務でも、担当変更は特別なことではありません。

変更のタイミングだけ注意 月の途中で事業所が変わると、給付管理の扱いが煩雑になります。急を要さないのであれば、月末で区切るほうがトラブルが少なくなります。また、サービスが途切れないよう、次の事業所を決めてから動いてください。

要支援の場合は担当が変わる

要支援1・2と認定された場合、居宅介護支援ではなく介護予防支援となり、原則として地域包括支援センターが担当します。ただし、地域包括支援センターから居宅介護支援事業所へ委託される形もあります。

要介護から要支援に変わった場合、基準第13条第25号は、指定介護予防支援事業者と必要な情報を提供するなど連携を図るものとすると定めています。担当が変わっても情報は引き継がれる仕組みになっています。

よくある質問

ケアマネジャーは市町村が決めるのですか?

違います。基準第1条の2第2項は「利用者の選択に基づき」と定めています。市町村は事業所の一覧を提供しますが、決めるのは利用者側です。

病院に紹介された事業所にしないといけませんか?

その必要はありません。紹介は情報提供であり、断っても不利益はありません。

複数の事業所を紹介してもらえますか?

求められます。基準第4条第2項は、複数の事業者を紹介するよう求めることができる旨を、事業者が説明しなければならないと定めています。

系列のサービスばかり勧められます。

基準第1条の2第3項は、特定の事業者に不当に偏らないよう公正中立に行うことを義務づけています。断って構いませんし、集中割合を尋ねることもできます。

担当してもらえないと断られました。

基準第6条により、困難と認めた場合は他の事業者の紹介その他の必要な措置を講じなければなりません。他の事業所を教えてもらってください。見つからない場合は市町村や地域包括支援センターへ相談してください。

ケアマネジャーは何人まで担当できますか?

基準第2条第2項は、利用者の数が44またはその端数を増すごとに1人と定めています(一定の要件を満たす場合の取扱いは別に定めがあります)。

担当を変えたい場合、理由を説明する必要はありますか?

ありません。まず事業所の管理者に相談し、事業所ごと変える場合は新しい事業所を決めてから、市町村へ届出書を提出します。

変更するとサービスは止まりますか?

次の事業所を決めてから動けば止まりません。月の途中の変更は給付管理が煩雑になるため、急がないなら月末で区切るほうが安全です。

要支援でもケアマネジャーを選べますか?

要支援では介護予防支援となり、原則として地域包括支援センターが担当します。居宅介護支援事業所へ委託される形もあるため、地域包括支援センターに相談してください。

まとめ
  • ケアマネジャーを決めるのは利用者と家族
  • 基準第1条の2第2項は「利用者の選択に基づき」と定めている
  • 市町村が割り当てるものでも、病院が指定するものでもない
  • 基準第1条の2第3項は、特定の事業者に偏らない公正中立を義務づけている
  • 系列サービスばかり勧められた場合は断ってよい
  • 基準第4条第2項により、複数の事業者の紹介を求める権利がある
  • 事業者はその権利を説明する義務がある
  • 基準第4条第3項により、自社サービスへの集中割合を聞くことができる
  • ケアマネジャー1人あたりの担当は、利用者44人ごとに1人が基準
  • 断られるのは人数の上限による場合が多い
  • 基準第6条により、断る場合は他の事業者を紹介する義務がある
  • 見つからないときは市町村や地域包括支援センターへ相談する
  • 担当の変更に、理由の説明義務はない
  • 変更は次の事業所を決めてから。月末で区切ると手続きが煩雑になりにくい
  • 要支援では介護予防支援となり、原則として地域包括支援センターが担当する
参考にした情報

※本記事の制度に関する記述は、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準および介護保険法にもとづいて整理したものです。介護支援専門員の員数に関する基準には、一定の要件を満たす場合の取扱いが別に定められています。事業所の選び方や変更の具体的な手続きは、市町村によって運用が異なる場合があります。実際の手続きは、お住まいの市町村の介護保険担当窓口または地域包括支援センターにご確認ください。実務上の判断に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理です。2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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