障害者控除対象者認定書のデメリットは?申請前の注意点を解説

先に結論を書きます。障害者控除対象者認定書そのものに、デメリットと呼べるものはほとんどありません。取得は無料で、持っていることで何かを失う制度ではないからです。ただし「取ったのに1円も税金が減らなかった」という結果になることはあり、それを知らずに申請すると損した気分になります。
この記事では、障害者控除対象者認定書について、所得税法・所得税法施行令・地方税法の原文を確認して整理しました。効果が出ない条件、手帳との違い、要介護認定との関係、そして寝たきりの人は認定書がなくても控除を受けられる可能性がある点までをまとめています。
- 障害者控除対象者認定書に本当のデメリットがない理由
- 「効果ゼロ」になるのはどういう人かという具体的な条件
- 障害者手帳とはまったく別物で、割引やサービスは付かないこと
- 要介護認定を受けていれば自動的に認定される、わけではないこと
- 所得税27万円・住民税26万円という控除額と、特別障害者の場合の額
- 控除で住民税非課税になると、介護の自己負担にも波及すること
- 寝たきりの人は認定書がなくても特別障害者に該当しうること
- 過去の分を遡って還付してもらえる期間
障害者控除対象者認定書とは?
障害者控除対象者認定書は、障害者手帳を持っていない高齢者でも、税金の障害者控除を受けられるようにするための書類です。市町村長(または福祉事務所長)が交付します。根拠は所得税法施行令第10条第1項第7号です。
- 前各号に掲げる者のほか、精神又は身体に障害のある年齢六十五歳以上の者で、その障害の程度が第一号又は第三号に掲げる者に準ずるものとして市町村長又は特別区の区長(中略)の認定を受けている者
ここでいう第1号は知的障害者、第3号は身体障害者手帳の交付を受けている者です。つまり「手帳を持っている人と同じくらいの状態です」と市町村が認めた65歳以上の人が、税法上の障害者として扱われるという仕組みです。
さらに、その障害の程度が重い場合は特別障害者になります。同施行令第10条第2項第6号が、第1項第7号の者のうち、程度が知的障害者(重度)または身体障害者手帳1級・2級に準ずると認定された者を特別障害者としています。
ちびウルフ要介護認定を受けてるんだけど、それだけで障害者控除は使えるの?
リハウルフ使えません。要介護認定と障害者控除は別の制度です。条文は「市町村長の認定を受けている者」と書いていて、要介護度いくつ以上、とは書いていません。市町村が独自に基準を決めていて、要介護3以上を目安にしているところもあれば、認定調査票や主治医意見書の内容で個別に判断するところもあります。まず市町村に基準を聞くところから始めてください。
障害者控除対象者認定書のデメリット
制度上の不利益はありません。取得しても、介護保険のサービス利用や年金、医療費の負担割合に悪影響が出ることはないからです。ただし、次の7つは知っておいたほうがよい注意点です。
1. 税金がかかっていない人には効果がない
これが最大の落とし穴です。障害者控除は所得から差し引く「所得控除」であり、税額から直接引く仕組みではありません。もともと課税される所得がなければ、差し引くものがないので税金は1円も変わりません。
2. 障害者手帳の代わりにはならない
名前が似ているため誤解されますが、認定書は税金の計算のためだけの書類です。障害者手帳のような、次のサービスは一切付きません。
- 鉄道・バス・タクシーの運賃割引
- NHK受信料の減免
- 公共施設の利用料減免
- 障害福祉サービスの利用
- 自動車税・軽自動車税の減免
これらを目当てに申請すると、確実にがっかりします。手帳の交付要件を満たすなら、手帳の申請を別途検討してください。
3. 要介護認定を受けていても認定されないことがある
前述のとおり、認定基準は市町村が独自に定めています。要介護度だけで機械的に決まるわけではなく、同じ要介護3でも、A市では認定され、B市では認定されないということが起こります。転居した後に「前の市では出ていたのに」という相談を受けることがあります。
4. 認定書をもらっただけでは税金は減らない
認定書は「証明書」であって、申告書ではありません。確定申告または年末調整で障害者控除として申告して、初めて税額に反映されます。認定書を取ったまま申告を忘れ、何も変わらなかったというケースが実際にあります。
5. 毎年の更新が必要な市町村がある
認定書は、その年の12月31日時点の状態について交付されるのが一般的です。そのため申告する年ごとに取り直しが必要な市町村が多くあります。一度取れば一生使えるものではありません。
6. 遡って還付できる期間には限りがある
過去に認定書を取っていなかった年について、遡って申告し直すことはできます。ただし還付を受けられるのは、法定申告期限から5年以内の分です。10年前の分までは戻りません。すでに亡くなっている場合も、相続人が期限内であれば手続きできます。
7. 申請から交付まで時間がかかる
市町村が要介護認定の資料などを確認して判断するため、即日交付とはいかないことがほとんどです。確定申告の期限直前に申請すると間に合わないおそれがあります。年内、遅くとも1月中には動いておくのが安全です。
障害者控除対象者認定書のメリット(控除額)
控除額は所得税法第79条と地方税法第314条の2に定められています。
| 区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 26万円 | 所得税法第79条第1項・第2項/地方税法第314条の2第1項第6号 |
| 特別障害者 | 40万円 | 30万円 | 同上 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 上乗せあり | 所得税法第79条第3項 |
同居特別障害者とは、同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者で、かつ納税者やその配偶者・生計を一にする親族と同居を常況としている場合をいいます(所得税法第79条第3項)。在宅で介護している家庭は、ここに当たる可能性があります。控除額が27万円から75万円へと大きく変わるため、影響は小さくありません。
住民税が非課税になると、介護の負担まで変わる
ここが、税金だけの話にとどまらない重要な点です。障害者控除によって住民税が非課税になると、次のような波及があります。
- 介護保険料の所得段階が下がる(住民税非課税かどうかが判定に使われるため)
- 高額介護サービス費の自己負担上限額の区分が下がる
- 施設入所時の食費・居住費を軽くする特定入所者介護サービス費(補足給付)の対象になり得る
- 後期高齢者医療保険料の均等割軽減の対象になり得る
寝たきりの場合は認定書がなくても該当することがある
見落とされやすい規定です。所得税法施行令第10条第1項第6号は、市町村長の認定とは別に、次の者を障害者としています。
- 前各号に掲げる者のほか、常に就床を要し、複雑な介護を要する者
そして同条第2項第5号は、この第6号に掲げる者を特別障害者としています。つまり、常時寝たきりで複雑な介護を要する状態であれば、条文上は市町村長の認定を経ずに特別障害者に該当し得るということです。
ただし、実際の申告では状態を証明できるかどうかが問題になります。市町村の認定書があるほうが手続きは確実です。判断に迷う場合は、税務署に事実関係を示して相談してください。
障害者控除対象者認定書の申請の流れ
- 市町村の高齢者福祉担当または介護保険担当に、認定基準と必要書類を確認する
- 申請書に記入し、介護保険被保険者証などを添えて提出する(本人以外でも申請できることが多い)
- 市町村が要介護認定の資料などをもとに判定する
- 認定書が交付される(該当しない場合は非該当の通知)
- 確定申告または年末調整で障害者控除として申告する
申告は本人が行う場合と、その人を扶養親族としている家族が行う場合があります。どちらで申告したほうが有利かを先に検討してください。本人が非課税なら、扶養している家族側で使うほうが効果は出ます。
ちびウルフ結局、うちは申請したほうがいいのかな?
リハウルフ取得して損はないので、要介護認定を受けているなら、まず市町村に基準を聞いてみることを勧めます。判断が分かれるのは「誰の申告で使うか」のほうです。本人が非課税で、扶養している家族もいないなら効果は出ません。逆に、働いている子が扶養に入れているなら、取らないほうがもったいないです。
よくある質問
障害者控除対象者認定書を取ると、何か不利になることはありますか?
ありません。介護保険のサービス利用、年金、医療費の負担割合などに影響する制度ではありません。強いていえば、効果が出ない場合に手間だけがかかるという点です。
要介護3ですが、必ず認定されますか?
必ずではありません。認定基準は市町村が独自に定めており、要介護度だけで決まるわけではありません。お住まいの市町村の基準を確認してください。
障害者手帳を持っています。認定書も必要ですか?
不要です。手帳を持っていれば所得税法施行令第10条第1項第2号・第3号などにより、そのまま障害者控除の対象になります。認定書は手帳のない人のための仕組みです。
本人が住民税非課税でも申請する意味はありますか?
本人の税額は変わりませんが、その人を扶養親族としている家族が控除を使えます(所得税法第79条第2項)。家族側で効果が出るなら意味があります。
過去の分も遡って還付を受けられますか?
法定申告期限から5年以内の分であれば、遡って申告することで還付を受けられる可能性があります。市町村で過年度分の認定書を交付してもらえるか確認してください。
亡くなった親の分も申請できますか?
亡くなった年の12月31日を待たずに亡くなった場合は、死亡の日の状態で判定されます。準確定申告や過年度の更正の請求により、相続人が手続きできる場合があります。
施設に入所していても認定されますか?
認定されます。在宅か施設かは要件ではありません。ただし市町村の基準で判断されるため、確認してください。
認知症でも対象になりますか?
対象になり得ます。所得税法施行令第10条第1項第7号は「精神又は身体に障害のある」65歳以上の者としており、認知症による判断能力の低下も判定の対象になります。程度により特別障害者と認定されることもあります。
毎年申請が必要ですか?
市町村によります。申告する年ごとに交付を受ける取扱いが多いので、確定申告のたびに確認してください。
- 障害者控除対象者認定書に、制度上のデメリットはほとんどない
- 根拠は所得税法施行令第10条第1項第7号で、市町村長等が認定する
- 程度が重ければ同条第2項第6号により特別障害者となる
- 最大の注意点は、もともと税金がかかっていない人には効果がないこと
- 本人が非課税なら、扶養している家族の申告で使うほうが効果が出る
- 障害者手帳とは別物で、運賃割引やNHK受信料減免などは付かない
- 要介護認定を受けていても自動的に認定されるわけではない
- 認定基準は市町村ごとに違うため、転居で結論が変わることがある
- 認定書を持っているだけでは税額は変わらず、申告が必要
- 申告する年ごとに取り直しが必要な市町村が多い
- 控除額は所得税27万円・住民税26万円、特別障害者は40万円・30万円
- 同居特別障害者なら所得税は75万円になる
- 控除で住民税非課税になると、介護保険料段階・高額介護サービス費・補足給付にも波及する
- 常に就床を要し複雑な介護を要する人は、認定書がなくても特別障害者に該当し得る
- 遡って還付を受けられるのは法定申告期限から5年以内
- 所得税法施行令(昭和40年政令第96号)e-Gov法令検索(第10条)
- 所得税法(昭和40年法律第33号)e-Gov法令検索(第79条)
- 地方税法(昭和25年法律第226号)e-Gov法令検索(第314条の2)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)e-Gov法令検索
※本記事の税制に関する記述は、所得税法・所得税法施行令・地方税法にもとづいて整理したものです。障害者控除対象者認定書の認定基準、申請方法、交付の要否は市町村(特別区・福祉事務所)によって異なります。実際の申請にあたっては、お住まいの市町村の案内をご確認ください。控除の適用可否や還付の手続きなど個別の税務判断については、所轄の税務署または税理士にご相談ください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。





