特養の栄養管理の基準未達とは?

特養の栄養管理の基準を満たさない場合の減算は、1日につき14単位です。特養の減算のなかで唯一、減算が始まるのが「翌々月」からという猶予が置かれています。しかも翌月の末日までに基準を満たせば、減算そのものが発生しません。他の減算とは時間の数え方が違います。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)と老企第40号の原文を確認して、減算額・根拠となる2つの基準・翌々月ルールの正確な意味・関連する加算への影響を整理しました。
この記事でわかること
- 特養の栄養管理の基準未達は1日14単位という減算額
- 減算が始まるのが翌々月からだということ
- 翌月末までに解消すれば減算されないこと
- 根拠になる2つの基準(栄養士等の員数と栄養管理の実施)
- 退所時栄養情報連携加算・再入所時栄養連携加算が算定できなくなること
- 栄養マネジメント強化加算との関係
- 他の減算との開始タイミングの比較
- 実務で気をつけるポイント
特養の栄養管理の基準を満たさない場合の減算とは?
この減算は、栄養管理に関する運営基準を満たさない場合に、1日14単位を減算する仕組みです。栄養マネジメント強化加算のような上乗せの評価ではなく、施設が最低限持つべき栄養管理の体制が欠けたときに適用されます。
令和3年度改定で、それまでの栄養マネジメント加算が廃止され、栄養管理が運営基準に組み込まれました。基準になったぶん、満たさない場合の減算が新設されたという経緯です。
ちびウルフ管理栄養士が急に退職した場合、すぐに減算されてしまうんですか。
リハウルフすぐには始まりません。この減算だけ翌々月からで、しかも翌月末までに補充できれば減算されません。実質2か月弱の猶予があります。他の減算にはない配慮です。
栄養管理の基準未達の減算額
| 減算 | 減算額 | 対象 |
|---|---|---|
| 栄養管理の基準を満たさない場合 | 1日につき14単位 | 入所者全員 |
率ではなく定額です。100床が1か月満床なら約42,000単位になります。安全管理体制未実施減算(1日5単位)と同じ定額型ですが、額は約3倍です。
栄養管理の基準未達の根拠
老企第40号は、栄養士または管理栄養士の員数に関する基準と、栄養管理の実施に関する基準の2つを根拠として挙げています。
| 根拠 | 内容 |
|---|---|
| 指定介護老人福祉施設基準 第2条 | 栄養士または管理栄養士の員数(人員基準) |
| 指定介護老人福祉施設基準 第17条の2 | 栄養管理の実施に関する基準(運営基準) |
「人」と「中身」の両方が対象
栄養士・管理栄養士の人数が足りないという人員の問題と、栄養管理そのものが適切に行われていないという運営の問題。どちらでもこの減算になります。人はいるが栄養ケア・マネジメントが回っていない、という状態も対象です。
減算が始まるのは「翌々月」から
この減算の最大の特徴が、開始のタイミングです。
| 減算 | 減算の開始 |
|---|---|
| 栄養管理の基準未達 | 翌々月から(翌月末に満たしていれば減算なし) |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 翌月から |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 翌月から |
| 安全管理体制未実施減算 | 翌月から |
| 業務継続計画未策定減算 | 翌月から(初日なら当月から) |
具体的な流れ
4月10日に管理栄養士が退職し、基準を満たさなくなったとします。
- 4月:事実が生じた月。減算なし
- 5月:まだ減算なし。5月31日時点で基準を満たしていれば、減算は発生しない
- 6月:5月末時点で基準を満たしていなければ、6月から減算開始
- 基準を満たさない状況が解決された月まで減算が続く
猶予は「翌月の末日」まで
括弧書きの「ただし、翌月の末日において基準を満たすに至っている場合を除く」が効きます。上の例なら5月31日が期限です。6月1日に採用が決まっても間に合いません。管理栄養士の採用は時間がかかるため、退職の申し出があった時点から動く必要があります。
栄養管理の基準未達が他の加算に及ぼす影響
この減算は、単に14単位が引かれるだけでは終わりません。栄養関係の2つの加算が算定できなくなります。
| 加算 | 影響 | 根拠 |
|---|---|---|
| 退所時栄養情報連携加算(70単位) | 算定できない | 告示のニの注の但し書き |
| 再入所時栄養連携加算(200単位) | 算定できない | 告示のホの注の但し書き |
特養の退所時栄養情報連携加算・再入所時栄養連携加算の注は、いずれも栄養管理の基準を満たさない場合の減算を算定している場合には算定しない、としています。
栄養管理の体制が崩れると、栄養の加算も止まる
制度の作りとして筋が通っています。栄養管理の基準を満たしていない施設が、栄養に関する情報提供や連携で加算を取るのはおかしいという整理です。減算14単位だけを見るのではなく、失う加算まで含めて考えてください。
栄養マネジメント強化加算はどうなるか
栄養マネジメント強化加算(1日11単位)は管理栄養士を50対1で配置することが要件です。栄養士・管理栄養士の員数基準を満たしていない状況では、そもそも加算の要件を満たしていないことになります。実質的に、この減算と両立する場面は考えにくいところです。
ちびウルフ1人退職しただけで、そこまで影響が出るんですね。
リハウルフ管理栄養士は1施設に1〜2人という配置が多いので、1人の退職が即座に基準を割ります。看護職員や介護職員のように人数でカバーできないぶん、採用のリードタイムを見込んだ体制を考えておく必要があります。
栄養管理の基準未達の注意点
員数だけでなく実施の中身も見られる
指定介護老人福祉施設基準第17条の2は、栄養管理の実施に関する基準です。入所者の栄養状態の維持・改善を図り、自立した日常生活を営むことができるよう、各入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行うことが求められます。人がいても計画が作られていない、モニタリングが行われていない、といった状態は基準を満たしません。
猶予期間を「大丈夫な期間」と読み替えない
翌々月からという猶予は、採用活動の時間を確保するためのものです。その間、入所者の栄養管理を止めてよいという意味ではありません。非常勤や他施設からの応援を含めて、栄養管理の実施そのものは継続する必要があります。
機能訓練指導員も栄養の視点を持つ
栄養と機能訓練は切り離せません。低栄養の状態で運動負荷をかければ、筋肉はかえって落ちます。個別機能訓練加算(Ⅲ)で機能訓練・栄養・口腔の一体的取組が求められている流れのなかで、機能訓練指導員が体重と食事摂取量の変化を見る習慣を持っておくと、栄養管理の体制が揺らいだときの気づきが早くなります。
ユニット型も同じ
栄養管理に関する基準は、従来型・ユニット型を問わず適用されます。
栄養管理の基準未達のQ&A
減算はいつから始まりますか?
基準を満たさない事実が生じた月の翌々月からです。ただし翌月の末日において基準を満たすに至っている場合は減算されません。
管理栄養士が退職したらすぐ減算ですか?
すぐには始まりません。翌月の末日までに基準を満たせば減算は発生しません。
栄養士でも基準を満たしますか?
指定介護老人福祉施設基準第2条は「栄養士又は管理栄養士」の員数を定めています。ただし栄養マネジメント強化加算など、管理栄養士の配置を要件とする加算は別途確認が必要です。
人はいるのに減算されることはありますか?
あります。指定介護老人福祉施設基準第17条の2の栄養管理の実施に関する基準を満たしていない場合も対象です。
減算額は率ですか、定額ですか?
定額です。1日につき14単位で、要介護度に関係なく一律です。
この減算中に算定できなくなる加算はありますか?
退所時栄養情報連携加算(70単位)と再入所時栄養連携加算(200単位)です。いずれも告示の注の但し書きで排除されています。
改善計画の提出は必要ですか?
老企第40号のこの減算の記載には、改善計画の提出に関する定めがありません。取扱いは指定権者に確認してください。
減算はいつまで続きますか?
基準を満たさない状況が解決されるに至った月までです。
ユニット型でも同じですか?
同じです。栄養管理に関する基準は従来型・ユニット型を問わず適用されます。
まとめ
- 特養の栄養管理の基準を満たさない場合の減算は1日につき14単位
- 率ではなく定額の減算
- 令和3年度改定で栄養管理が運営基準に組み込まれたことに伴う減算
- 根拠は指定介護老人福祉施設基準 第2条(栄養士等の員数)と第17条の2(栄養管理の実施)
- 人員の不足でも、栄養管理の実施が不十分でも対象になる
- 減算が始まるのは事実が生じた月の翌々月から
- 翌月の末日において基準を満たしていれば減算は発生しない
- 翌々月からという猶予は、特養の減算のなかでこれだけ
- 減算は基準を満たさない状況が解決されるに至った月まで続く
- 改善計画の提出や3か月後の報告に関する定めはない
- この減算中は退所時栄養情報連携加算(70単位)が算定できない
- 再入所時栄養連携加算(200単位)も算定できない
- 栄養マネジメント強化加算は、員数基準を満たさない状況では要件自体を満たさない
- 減算の対象は入所者全員
参考にした情報
※本記事の減算額・要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。



