老健の安全管理体制未実施減算は、1日につき5単位です。率ではなく定額で、老健の減算のなかでは最も軽い部類にあたります。ただし注目すべきは金額ではなく、同じ基準の裏側に安全対策体制加算(1日20単位)があることです。同じ土台の上で、20単位を取るか5単位を引かれるかが分かれます。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)と老企第40号の原文を確認して、減算額・根拠となる基準・安全対策体制加算との関係・減算のタイミングを整理しました。

この記事でわかること

  • 老健の安全管理体制未実施減算は1日5単位という減算額
  • 率ではなく定額の減算だということ
  • 根拠は介護老人保健施設基準第36条第1項だということ
  • 事故発生の防止のための4つの体制
  • 安全対策体制加算(1日20単位)との関係
  • 25単位の差がつくという構造
  • 減算が始まるタイミング
  • 改善計画の提出が求められていないこと

老健の安全管理体制未実施減算とは?

安全管理体制未実施減算は、事故発生の防止のために求められている体制を整えていない場合に、1日5単位を減算する仕組みです。

老健では、事故を防ぐための体制整備が運営基準で義務づけられています。指針を作り、事故やヒヤリハットの報告と分析の仕組みを作り、委員会を開き、研修を行い、それらを担当する者を置く。この土台がない場合に減算されます。

特徴的なのは、同じ基準の上に加算も用意されていることです。基準を満たしたうえで、担当者が外部研修を受け、安全管理部門を設置していれば、安全対策体制加算として1日20単位が算定できます。

ちびウルフちびウルフ

5単位なら、あまり気にしなくていい気がします。

リハウルフリハウルフ

減算だけ見ればそうです。ただ、この基準を満たせば加算で20単位が取れます。減算を受けている状態と加算を取っている状態では、1日25単位の差です。100床なら年間91万単位になります。

安全管理体制未実施減算の減算額

告示第21号の介護保健施設サービスの注4に定められています。

4 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、安全管理体制未実施減算として、1日につき5単位を所定単位数から減算する。

減算減算額対象
安全管理体制未実施減算1日につき5単位入所者全員

率ではなく定額

身体拘束廃止未実施減算(10%)や業務継続計画未策定減算(3%)が率で定められているのに対し、この減算は1日5単位の定額です。栄養管理の基準未達(1日14単位)と同じ形になります。要介護度や部屋のタイプに関係なく、一律5単位です。

他の減算との比較

減算減算額(要介護3・900単位と仮定)
身体拘束廃止未実施減算(10%)90単位
夜勤職員基準減算(3%)27単位
業務継続計画未策定減算(3%)27単位
栄養管理の基準未達(定額)14単位
高齢者虐待防止措置未実施減算(1%)9単位
安全管理体制未実施減算(定額)5単位

安全管理体制未実施減算の根拠となる基準

老企第40号 8の(8)は、根拠を次のように示しています。

安全管理体制未実施減算については、介護老人保健施設基準第36条第1項に規定する基準を満たさない事実が生じた場合に、その翌月から基準に満たない状況が解消されるに至った月まで、入所者全員について、所定単位数から減算することとする。

介護老人保健施設基準第36条第1項は、事故発生の防止のために講じるべき措置を定めています。求められるのは次の4つです。

  • 事故が発生した場合の対応、報告の方法等が記載された指針を整備すること
  • 事故が発生した場合またはそれに至る危険性がある事態が生じた場合に、その事実の報告とその分析を通じた改善策を、従業者に周知徹底する体制を整備すること
  • 事故発生の防止のための委員会および従業者に対する研修を定期的に行うこと
  • これらを適切に実施するための担当者を置くこと

ヒヤリハットの報告体制も要件のうち

2つ目の要件は、事故だけでなく「それに至る危険性がある事態」=ヒヤリハットの報告と分析を含んでいます。事故報告書だけを整備していて、ヒヤリハットの収集と分析の仕組みがない場合、基準を満たしているとは言いにくくなります。しかも「報告」だけでなく「分析を通じた改善策の周知徹底」まで求められています。集めて終わりでは不十分です。

安全対策体制加算との関係

この減算と表裏の関係にあるのが、安全対策体制加算(1日20単位)です。老企第40号 5の(45)は、加算の位置づけをこう説明しています。

安全対策体制加算は、事故発生の防止のための指針の作成・委員会の開催・従業者に対する研修の実施及びこれらを適切に実施するための担当者の配置を備えた体制に加えて、当該担当者が安全対策に係る外部の研修を受講し、組織的に安全対策を実施する体制を備えている場合に評価を行うものである。

状態報酬への影響
基準を満たさない1日5単位の減算
基準を満たしている増減なし
基準+担当者の外部研修+安全管理部門の設置1日20単位の加算

下限と上限で25単位の差

減算を受けている状態と、加算を取っている状態では1日25単位の差がつきます。100床が1年間満床なら約912,500単位です。減算の5単位という数字だけを見て軽く扱うと、その上にある20単位を取り逃がします。

加算に必要な追加要件

  • 担当者が安全対策に係る外部の研修を受講していること
  • 施設内に安全管理部門を設置し、組織的に安全対策を実施する体制が整備されていること

老企第40号 5の(45)は、外部研修の内容について「介護現場における事故の内容、発生防止の取組、発生時の対応、施設のマネジメント等の内容を含むもの」としています。

ちびウルフちびウルフ

担当者を1人、外部研修に出せば加算が取れるということですか。

リハウルフリハウルフ

それに安全管理部門の設置が要ります。部門といっても新しい組織を作るというより、責任の所在と権限を明確にする話です。ハードルは高くないので、取っていない施設は検討する価値があります。

安全管理体制未実施減算のタイミング

時点内容
事実が生じた月減算なし
翌月減算開始
基準に満たない状況が解消された月この月まで減算

身体拘束廃止未実施減算のような改善計画の提出や3か月後の報告は、通知に定められていません。業務継続計画未策定減算にある「月の初日なら当月から」という括弧書きもありません。

比較の観点安全管理体制未実施減算身体拘束廃止未実施減算業務継続計画未策定減算
減算1日5単位10%3%
開始翌月から翌月から翌月から(初日なら当月)
改善計画の提出記載なし速やかに提出記載なし
3か月後の報告記載なし必要記載なし

安全管理体制未実施減算の注意点

委員会と研修は「定期的に」

基準は委員会と研修を「定期的に行うこと」としており、回数の明示がありません。身体拘束の委員会(3か月に1回以上)や虐待防止の研修(年2回以上)のような数値基準がないため、どの間隔なら「定期的」と言えるのかは指定権者の解釈によります。確認しておいてください。

リハビリ場面の事故は報告が漏れやすい

転倒・転落は事故報告として上がりやすい一方で、訓練中のふらつき、平行棒での膝折れ、移乗時の滑りといった「事故に至らなかった事態」は、リハ職の中で処理されて共有されないことがあります。ヒヤリハットの報告と分析が要件である以上、リハビリ場面の情報を上げる導線を作っておく必要があります。

担当者は虐待防止の担当者と別に置くか

高齢者虐待防止措置未実施減算にも担当者の要件があります。兼務の可否について告示・通知に明示はありません。実務上は兼ねている施設が多いと思われますが、それぞれの担当者として文書で特定できる状態にしておいてください。

安全管理体制未実施減算のQ&A

事故が起きたら減算されますか?

されません。減算の理由は、事故発生の防止のための体制を整えていないことです。

減算額は率ですか、定額ですか?

定額です。1日につき5単位で、要介護度や部屋のタイプに関係なく一律です。

要件は何ですか?

介護老人保健施設基準第36条第1項の措置です。指針の整備、事故・ヒヤリハットの報告と分析による改善策の周知徹底、委員会と研修の定期的な実施、担当者の配置の4つです。

ヒヤリハットの収集も必要ですか?

必要です。基準は「事故が発生した場合又はそれに至る危険性がある事態が生じた場合」の報告と分析を求めています。

委員会は何回開けばよいですか?

基準は「定期的に行うこと」とするのみで、回数を明示していません。指定権者に確認してください。

減算はいつから始まりますか?

基準を満たさない事実が生じた月の翌月からです。

改善計画の提出は必要ですか?

老企第40号のこの減算の記載には、改善計画の提出に関する定めがありません。取扱いは指定権者に確認してください。

安全対策体制加算を取っていれば減算されませんか?

加算は基準を満たしたうえでの上乗せ評価です。加算を算定できている状態であれば、減算の前提となる基準は満たしています。

担当者は専任でなければいけませんか?

基準は専任を求めていません。ただし「これらを適切に実施するための担当者」として明確にしておく必要があります。

まとめ

  • 老健の安全管理体制未実施減算は1日につき5単位
  • 率ではなく定額の減算
  • 老健の減算のなかで最も軽い
  • 事故が起きたこと自体は減算の理由ではない
  • 根拠は介護老人保健施設基準第36条第1項
  • 要件は指針の整備、報告と分析による改善策の周知徹底、委員会と研修、担当者の配置の4つ
  • ヒヤリハット(事故に至る危険性がある事態)の報告と分析も要件に含まれる
  • 報告を集めるだけでなく、分析と改善策の周知徹底まで求められる
  • 委員会と研修は「定期的に」とされ、回数の明示がない
  • 同じ基準の上に安全対策体制加算(1日20単位)がある
  • 加算には担当者の外部研修受講と安全管理部門の設置が追加で必要
  • 減算を受けている状態と加算を取っている状態では1日25単位の差になる
  • 減算が始まるのは事実が生じた月の翌月から
  • 改善計画の提出や3か月後の報告に関する定めは通知にない

参考にした情報

※本記事の減算額・要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶