老健の緊急時施設療養費とは?

老健の緊急時施設療養費は、緊急時治療管理が1日につき518単位、これに特定治療を加えた2本立てです。緊急時治療管理は月1回、連続する3日が限度。しかも「連続する」なので、月内に1日ずつ3回に分けて算定することは認められません。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)と老企第40号の原文を確認して、単位数・対象となる6つの状態・特定治療の考え方・実務でつまずく点を整理しました。
この記事でわかること
- 老健の緊急時治療管理は1日518単位という単位数
- 月1回・連続する3日という限度の正確な意味
- 対象となる6つの重篤な状態
- 緊急時治療管理と特定治療は同時に算定できないこと
- 特定治療は医科診療報酬点数表の点数に10円を乗じて算定すること
- 老企第40号の単位数の記載が告示と異なっていること
- 所定疾患施設療養費との違い
- まず入院を検討すべきという通知の前提
老健の緊急時施設療養費とは?
緊急時施設療養費は、入所者の病状が急変したときに、老健の中で行った医療行為を評価する仕組みです。老企第40号 8の(37)は、その位置づけをこう説明しています。
入所者の病状が著しく変化し、入院による治療が必要とされる場合には、速やかに協力病院等の病院へ入院させることが必要であるが、こうした場合であっても、介護老人保健施設において緊急その他やむを得ない事情により施設療養を行うときがあるので、緊急時施設療養費は、このような場合に行われる施設療養を評価するために設けられていること。
読み取るべきは順序です。原則は速やかな入院であり、緊急時施設療養費はやむを得ない場合の受け皿として置かれています。施設内で診るほうが得だから算定する、という性格のものではありません。
構成は2つです。緊急時治療管理(1日518単位)と、特定治療(医科診療報酬点数表による算定)。両者は同時に算定できません。
ちびウルフ所定疾患施設療養費とは何が違うんですか。
リハウルフ対象が違います。所定疾患施設療養費は肺炎・尿路感染症・帯状疱疹など決まった疾患で、届出が要る仕組みです。緊急時治療管理は救命救急が必要な重篤な状態が対象で、届出は要りません。
緊急時施設療養費の単位数
告示第21号の介護保健施設サービスのタに定められています。
タ 緊急時施設療養費
入所者の病状が著しく変化した場合に緊急その他やむを得ない事情により行われる次に掲げる医療行為につき算定する。
(1) 緊急時治療管理(1日につき) 518単位
注
1 入所者の病状が重篤となり救命救急医療が必要となる場合において緊急的な治療管理としての投薬、検査、注射、処置等を行ったときに算定する。
2 同一の入所者について1月に1回、連続する3日を限度として算定する。
| 区分 | 単位数 | 限度 |
|---|---|---|
| 緊急時治療管理 | 518単位 | 1月に1回、連続する3日 |
| 特定治療 | 医科診療報酬点数表の点数×10円 | — |
| 3日分の最大 | 1,554単位 | — |
老企第40号の「五〇〇単位」は古い記載
老企第40号 8の(37)①イは、緊急時治療管理について「一日につき五〇〇単位を算定すること」と書いています。しかし告示第21号の現行の規定は518単位です。単位数は告示で定められるものであり、通知の記載が改定に追いついていない形です。請求は告示の518単位で行ってください。判断に迷う場合は指定権者に確認を。
緊急時治療管理の算定要件
対象となる6つの状態
老企第40号 8の(37)①ニは、対象となる入所者を次のとおり限定しています。
- 意識障害または昏睡
- 急性呼吸不全または慢性呼吸不全の急性増悪
- 急性心不全(心筋梗塞を含む)
- ショック
- 重篤な代謝障害
- その他薬物中毒等で重篤なもの
いずれも救命救急の水準です。発熱や脱水といった一般的な急変は含まれません。この6つに当てはまるかどうかが、最初の関門になります。
行った医療行為
告示の注1は「緊急的な治療管理としての投薬、検査、注射、処置等を行ったとき」としています。診察のみでは算定できません。
「1月に1回、連続する3日」の意味
老企第40号 8の(37)①ロが、この限度を具体的に説明しています。
緊急時治療管理は、一回に連続する三日を限度とし、月一回に限り算定するものであるので、例えば、一月に連続しない一日を三回算定することは認められないものであること。
「3日分」ではなく「連続する3日」
月内に急変が3回起きても、1日ずつ3回算定することはできません。1回の急変につき連続する3日まで、それが月に1回だけという構造です。月の初めに1日算定してしまうと、月末に本当に重篤な状態になっても、その月はもう算定できません。
特定治療とは
特定治療は、老健でやむを得ない事情により行われた医療行為を、医科診療報酬点数表で評価する仕組みです。老企第40号 8の(37)②はこう定めています。
特定治療は、介護老人保健施設においてやむを得ない事情により行われるリハビリテーション、処置、手術、麻酔又は放射線治療について、診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号)別表第一医科診療報酬点数表により算定する点数に一〇円を乗じた額を算定すること。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる行為 | リハビリテーション、処置、手術、麻酔、放射線治療 |
| 算定方法 | 医科診療報酬点数表の点数 × 10円 |
| 算定できないもの | 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(告示第94号)第67号に列挙 |
| 具体的取扱い | 医科診療報酬点数表の取扱いの例による |
単位ではなく「額」で算定する点が特徴です。介護報酬は1単位あたりの単価が地域区分で変わりますが、特定治療は点数×10円で固定されます。
緊急時治療管理とは同時算定できない
老企第40号 8の(37)①ハは「緊急時治療管理と特定治療とは同時に算定することはできないこと」と明記しています。同じ日に両方を算定することはできません。
ちびウルフ緊急時治療管理を3日算定した後、4日目から特定治療に切り替えることはできますか。
リハウルフ通知が禁じているのは同時算定です。日を分ける運用が認められるかは通知に明示がないので、指定権者に確認してください。ここは自己判断で走らないほうがいい部分です。
緊急時施設療養費の注意点
届出は不要
告示のタの注には、届出に関する文言がありません。所定疾患施設療養費が「別に厚生労働大臣が定める基準に適合する介護老人保健施設において」とされているのとは対照的です。体制を整えて届け出るタイプの加算ではなく、実際に医療行為を行ったときに算定する費用です。
所定疾患施設療養費との使い分け
| 比較の観点 | 緊急時治療管理 | 所定疾患施設療養費 |
|---|---|---|
| 単位数 | 1日518単位 | (Ⅰ)239単位・(Ⅱ)480単位 |
| 限度 | 1月に1回、連続する3日 | (Ⅰ)1月に1回・連続7日/(Ⅱ)1月に1回・連続10日 |
| 対象 | 救命救急が必要な6つの重篤な状態 | 厚生労働大臣が定める入所者(肺炎・尿路感染症・帯状疱疹等) |
| 届出 | 不要 | 必要((Ⅰ)(Ⅱ)とも施設基準あり) |
単位数は緊急時治療管理のほうが高く、日数は所定疾患施設療養費のほうが長い。対象となる病態がそもそも違うので、どちらが得かで選ぶものではありません。
記録は診療録に残す
緊急時治療管理は救命救急が必要な状態が前提です。どの状態に該当したのか、どの治療管理を行ったのか、なぜ入院ではなく施設内での対応になったのか。この3点は診療録に残しておくべき内容です。特に3つ目は、通知が「速やかに協力病院等の病院へ入院させることが必要」と前置きしている以上、説明を求められる可能性が高い部分です。
転換老健でも算定できる
告示のタには「イ(1)、ロ(1)について」のような限定がありません。介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ)を算定する転換老健でも算定できます。
緊急時施設療養費のQ&A
届出は必要ですか?
不要です。告示のタの注に届出に関する文言がありません。
月に2回、別々の急変があった場合は?
算定できるのは月1回だけです。1回に連続する3日が限度で、月をまたがない限り2回目は算定できません。
1日だけ算定して、後日また算定できますか?
できません。老企第40号は「一月に連続しない一日を三回算定することは認められない」と明記しています。
老企第40号には500単位と書いてありますが、どちらが正しいですか?
単位数は告示第21号で定められており、現行は518単位です。通知の記載は改定に追いついていないものと考えられます。判断に迷う場合は指定権者に確認してください。
発熱や脱水でも算定できますか?
対象は意識障害・昏睡、急性呼吸不全または慢性呼吸不全の急性増悪、急性心不全、ショック、重篤な代謝障害、薬物中毒等で重篤なものの6つです。一般的な発熱・脱水は含まれません。
特定治療の点数はどう調べますか?
診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一医科診療報酬点数表によります。算定できないものは告示第94号の第67号に列挙されています。
緊急時治療管理と特定治療を同じ日に算定できますか?
できません。老企第40号が同時算定を明確に禁じています。
所定疾患施設療養費と同じ日に算定できますか?
それぞれの規定を確認する必要があります。対象となる病態が異なるため、同一の入所者に同じ日に両方が該当する場面は限られます。取扱いは指定権者に確認してください。
診察だけでも算定できますか?
できません。告示は「緊急的な治療管理としての投薬、検査、注射、処置等を行ったとき」としています。
まとめ
- 老健の緊急時施設療養費は、緊急時治療管理(1日518単位)と特定治療の2本立て
- 緊急時治療管理は1月に1回、連続する3日が限度(最大1,554単位)
- 月内に1日ずつ3回に分けて算定することは認められない
- 対象は意識障害・昏睡、急性/慢性呼吸不全の急性増悪、急性心不全、ショック、重篤な代謝障害、薬物中毒等で重篤なものの6つ
- 投薬・検査・注射・処置等を行ったことが必要で、診察のみでは算定できない
- 特定治療はリハビリテーション・処置・手術・麻酔・放射線治療が対象
- 特定治療は医科診療報酬点数表の点数に10円を乗じた額で算定する
- 特定治療で算定できないものは告示第94号 第67号に列挙されている
- 緊急時治療管理と特定治療は同時に算定できない
- 届出は不要
- 老企第40号は「500単位」と記載しているが、告示の現行規定は518単位
- 通知の前提は「速やかな入院」であり、これはやむを得ない場合の受け皿
- 所定疾患施設療養費とは対象となる病態が異なる
- 転換老健(介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ))でも算定できる
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護保健施設サービス タ
- 診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)8の(37)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。緊急時治療管理の単位数について、老企第40号の記載(500単位)と告示第21号の規定(518単位)に相違があります。単位数は告示で定められるため518単位として整理していますが、実際の請求にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。
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