老健の認知症チームケア推進加算とは?

老健の認知症チームケア推進加算は、(Ⅰ)が1月につき150単位、(Ⅱ)が1月につき120単位です。令和6年度改定で新設されました。認知症専門ケア加算とどちらか一方しか算定できないため、老健にとっては「どちらを選ぶか」の判断がそのまま論点になります。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)、老企第40号の原文を確認して、単位数・算定要件・認知症専門ケア加算との比較・実務でつまずく点を整理しました。
この記事でわかること
- 老健の認知症チームケア推進加算(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位という単位数
- 対象者は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」だということ
- 認知症専門ケア加算より対象者の範囲が広いこと
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の差は研修の種類だけだということ
- 複数人の介護職員によるチームを組む必要があること
- BPSDを「評価に基づく値」として測定する必要があること
- 認知症専門ケア加算との選択になること
- 詳細は別途通知に置かれていること
老健の認知症チームケア推進加算とは?
認知症チームケア推進加算は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の予防と、出現したときの早期対応に取り組むチームを施設内に作り、その活動を評価する加算です。令和6年度改定で新設されました。
従来からある認知症専門ケア加算が「研修修了者を配置し、会議を開いている」という体制を見るのに対し、この加算はBPSDを計画的に評価して数値化し、チームでケアを回すという中身に踏み込んでいます。評価しているのは配置ではなく、実践のプロセスです。
もう一つの違いは対象者です。認知症専門ケア加算の対象が日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mに限られるのに対し、この加算の対象は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」とされています。BPSDが出てから対応するのではなく、出る前から予防する、という趣旨に沿った広さです。
ちびウルフ認知症専門ケア加算を取っているのですが、こちらに乗り換えたほうが得ですか。
リハウルフ単位数の比べ方に注意が要ります。専門ケア加算は1日単位、こちらは1月単位です。専門ケア加算(Ⅱ)は4単位×30日で120単位。チームケア推進加算(Ⅱ)と同額です。金額だけでは決まりません。
認知症チームケア推進加算の単位数
告示第21号の介護保健施設サービスのツに定められています。
ツ 認知症チームケア推進加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った介護老人保健施設が、別に厚生労働大臣が定める者に対し認知症の行動・心理症状の予防等に資するチームケアを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定せず、認知症専門ケア加算を算定している場合においては、次に掲げる加算は算定しない。
(1) 認知症チームケア推進加算(Ⅰ) 150単位
(2) 認知症チームケア推進加算(Ⅱ) 120単位
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 認知症チームケア推進加算(Ⅰ) | 150単位 | 1月 |
| 認知症チームケア推進加算(Ⅱ) | 120単位 | 1月 |
(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は30単位です。後述するとおり要件の差は研修の種類だけなので、指導者クラスの研修修了者がいるかどうかで決まります。
認知症チームケア推進加算の算定要件
要件は告示第95号の第58号の5の2に定められています。老健のほか、グループホーム・地域密着型特養・特養・介護医療院に共通して適用される基準です。
加算(Ⅰ)の4要件
- 施設における入所者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者(対象者)の占める割合が2分の1以上であること
- BPSDの予防および出現時の早期対応に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者、または認知症介護に係る専門的な研修およびBPSDの予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了している者を1名以上配置し、かつ複数人の介護職員から成るBPSDに対応するチームを組んでいること
- 対象者に対し、個別にBPSDの評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、BPSDの予防等に資するチームケアを実施していること
- BPSDの予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、BPSDの有無および程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を行っていること
加算(Ⅱ)の要件
- (Ⅰ)の(1)(3)(4)に掲げる基準に適合すること
- BPSDの予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、かつ複数人の介護職員から成るBPSDに対応するチームを組んでいること
| 要件 | 加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 対象者が入所者総数の2分の1以上 | 必要 | 必要 |
| 個別のBPSD評価と値の測定 | 必要 | 必要 |
| カンファレンス・計画・定期評価・振り返り・見直し | 必要 | 必要 |
| 複数人の介護職員によるチーム | 必要 | 必要 |
| 配置する研修修了者 | 指導に係る専門的な研修、またはケアプログラムを含んだ研修 | 専門的な研修 |
(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は研修の種類だけ
要件を並べると、違いは配置する人の研修だけです。(Ⅰ)は認知症介護の指導に係る専門的な研修(指導者クラス)か、専門的な研修にBPSD予防のケアプログラムを含んだ研修を加えたもの。(Ⅱ)は専門的な研修で足ります。BPSDの評価もチーム編成も、両方に共通して求められます。
「評価に基づく値」を測定する
要件(3)は「個別にBPSDの評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し」としています。ここが認知症専門ケア加算にはない部分です。BPSDを「落ち着いている」「不穏がある」といった記述で残すのではなく、尺度を使って数値化することが求められます。
どの尺度を使うのかを含め、具体的な運用は別途通知に置かれています。
認知症チームケア推進加算の詳細は別途通知にある
老企第40号 5の(39)は、次の一文だけです。
認知症チームケア推進加算の内容については、別途通知(「認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について」)を参照すること。
つまり告示と老企第40号だけでは、対象者の判定方法もBPSDの評価尺度も研修の具体名も分かりません。この加算に取り組むときは、必ずこの別途通知にあたってください。本記事で扱っているのは告示・大臣基準に書かれている骨格の部分です。
認知症専門ケア加算とどちらを選ぶか
告示の注は、認知症専門ケア加算との併算定を明確に排除しています。両方の要件を満たしても、算定できるのはどちらか一方です。
| 比較の観点 | 認知症チームケア推進加算 | 認知症専門ケア加算 |
|---|---|---|
| 単位数 | (Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位 | (Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位 |
| 算定頻度 | 1月 | 1日 |
| 30日換算 | 150/120単位 | 90/120単位 |
| 対象者 | 周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者 | 日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・M |
| 割合要件 | 入所者総数の2分の1以上 | 入所者総数の2分の1以上 |
| 研修修了者の人数 | 1名以上 | 対象者20人未満で1人、以降10人ごとに1人 |
| チーム編成 | 必要(複数人の介護職員) | 要件なし |
| BPSDの数値評価 | 必要 | 要件なし |
単位数だけを見ると判断を誤る
チームケア推進加算(Ⅱ)は月120単位、専門ケア加算(Ⅱ)は1日4単位=月120単位(30日)で同額です。31日の月なら専門ケア加算のほうが4単位多くなります。差がつくのは(Ⅰ)を取れるかどうかで、チームケア推進加算(Ⅰ)150単位に対し、専門ケア加算(Ⅰ)は1日3単位=月90単位です。
一方で、研修修了者の必要人数は逆転します。専門ケア加算は対象者の数に応じて何人も必要ですが、チームケア推進加算は1名以上で足ります。研修修了者が少ない施設ほど、チームケア推進加算のほうが現実的ということになります。
ちびウルフ実践リーダー研修の修了者が1人しかいません。対象者は50人くらいです。
リハウルフその条件だと専門ケア加算は5人必要なので届きません。チームケア推進加算なら1名以上で足ります。BPSDの評価とチーム編成という手間は増えますが、算定できる可能性があるのはこちらです。
認知症チームケア推進加算の注意点
チームは「複数人の介護職員」から成る
告示は「複数人の介護職員から成るBPSDに対応するチームを組んでいること」としています。研修修了者1名を置くだけでは足りず、実際に動くチームの編成が要件です。名簿を作って終わりにせず、カンファレンスの参加記録で実態を示せるようにしてください。
割合要件は継続的に確認する
対象者が入所者総数の2分の1以上という要件は、入退所で動きます。認知症専門ケア加算と同様、入退所のたびに割合を再計算する運用が必要です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)も併算定できない
告示の注は「次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定せず」としており、(Ⅰ)と(Ⅱ)の同時算定も認められません。
転換老健でも算定できる
告示のツの注には「イ(1)、ロ(1)について」のような限定がありません。介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ)を算定する転換老健でも届出ができます。
認知症チームケア推進加算のQ&A
認知症専門ケア加算と両方は算定できませんか?
できません。告示の注が明確に排除しています。両方の要件を満たしていても、算定できるのはどちらか一方です。
対象者はどう判定しますか?
告示は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」としています。具体的な判定方法は別途通知「認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について」に示されているため、そちらを確認してください。
BPSDの評価にはどの尺度を使いますか?
告示は「その評価に基づく値を測定し」とするのみです。具体的な尺度は別途通知によります。
研修修了者は1名でよいのですか?
1名以上です。認知症専門ケア加算のように対象者の数に応じて増える仕組みではありません。
チームに看護職員を入れてもよいですか?
告示は「複数人の介護職員から成る」チームとしています。介護職員が中心であることが前提の書き方です。他職種の参加を妨げる記載はありません。
(Ⅰ)を取るにはどの研修が必要ですか?
BPSDの予防等に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者、または認知症介護に係る専門的な研修およびBPSDの予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了している者です。具体的な研修名は別途通知で確認してください。
認知症ケア加算とは併算定できますか?
この加算の注が排除しているのは認知症専門ケア加算と、(Ⅰ)(Ⅱ)相互です。認知症ケア加算(1日76単位・認知症専門棟)については、そちらの注も併せて確認してください。
月の途中で対象者の割合が2分の1を下回ったらどうなりますか?
要件を満たさない状態になります。取扱いは指定権者の判断によるため、下回る見込みが立った時点で相談してください。
ユニット型でも算定できますか?
算定できます。告示の注にユニット型を除く旨の記載はありません。
まとめ
- 老健の認知症チームケア推進加算は(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位(いずれも1月につき)
- 令和6年度改定で新設された
- 対象者は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」
- 認知症専門ケア加算(自立度Ⅲ・Ⅳ・M)より対象者の範囲が広い
- 対象者が入所者総数の2分の1以上であることが前提
- 研修修了者は1名以上でよく、対象者の数に応じて増えない
- 複数人の介護職員から成るBPSD対応チームを組む必要がある
- 個別にBPSDを計画的に評価し、評価に基づく値を測定する
- カンファレンス・計画作成・定期評価・振り返り・計画の見直しを行う
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の要件の差は、配置する人の研修の種類だけ
- (Ⅰ)と(Ⅱ)、および認知症専門ケア加算とは併算定できない
- 研修修了者が少ない施設ほど、専門ケア加算よりこちらが現実的になる
- 対象者の判定方法・評価尺度・研修名は別途通知に置かれている
- 転換老健(介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ))でも算定できる
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の5の2
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)5の(39)、8の(41)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。対象者の判定方法、BPSDの評価尺度、研修の具体名は別途通知「認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について」に定められているため、実際の届出にあたっては同通知および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。


