老健の科学的介護推進体制加算とは?

老健の科学的介護推進体制加算は、(Ⅰ)が1月につき40単位、(Ⅱ)が1月につき60単位です。(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、LIFEに出す情報に疾病・服薬の状況を加えるかどうかの1点だけ。要件の差が小さいわりに20単位の差がつくため、老健では(Ⅱ)を取りにいく価値が高い加算です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)、老企第40号の原文を確認して、単位数・算定要件・(Ⅰ)と(Ⅱ)の分かれ目・実務でつまずく点を整理しました。
この記事でわかること
- 老健の科学的介護推進体制加算(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)60単位という単位数
- 特養が(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)50単位なのに、老健は(Ⅱ)が60単位である理由
- (Ⅰ)で提出する情報と、(Ⅱ)で追加される情報
- 原則として入所者全員が対象になること
- 「LIFEに出すだけでは算定できない」と通知が明記していること
- 施設に求められるPDCAの4ステップ
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できないこと
- 他のLIFE関連加算との関係
老健の科学的介護推進体制加算とは?
科学的介護推進体制加算は、入所者の心身の状況等に関する情報をLIFE(科学的介護情報システム)に提出し、そのフィードバック情報を活用してサービスの質を高める体制を評価する加算です。個別のケアの中身ではなく、施設としてデータを使う仕組みがあるかどうかを見ています。
老健にはLIFEを使う加算が複数あります。褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算、自立支援促進加算、リハビリテーションマネジメント計画書情報加算、そしてこの科学的介護推進体制加算です。このうち科学的介護推進体制加算だけは特定の領域に限定されず、入所者の状態像を丸ごと提出する性格を持っています。令和3年度改定で創設され、令和6年度改定での単位数の見直しはありません。
ちびウルフLIFEにデータを送りさえすれば算定できる加算、という理解で合っていますか。
リハウルフ合っていません。通知が「情報を厚生労働省に提出するだけでは、本加算の算定対象とはならない」とはっきり書いています。実地指導で確認されるのは、返ってきたフィードバックをどう使ったかのほうです。
科学的介護推進体制加算の単位数
告示第21号の介護保健施設サービスのヰに定められています。
ヰ 科学的介護推進体制加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った介護老人保健施設が、入所者に対し介護保健施設サービスを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) 科学的介護推進体制加算(Ⅰ) 40単位
(2) 科学的介護推進体制加算(Ⅱ) 60単位
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 科学的介護推進体制加算(Ⅰ) | 40単位 | 1月 |
| 科学的介護推進体制加算(Ⅱ) | 60単位 | 1月 |
老健と特養で(Ⅱ)の単位数が違う
特養(介護福祉施設サービス)の科学的介護推進体制加算は(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)50単位です。老健と介護医療院は(Ⅱ)が60単位で、10単位高く設定されています。医療的な管理を行う施設として、疾病・服薬の情報提出により重い評価が置かれている形です。他サービスの記事や資料を参考にするときは、単位数をそのまま持ち込まないよう注意してください。
100床の老健が(Ⅱ)を通年で算定すると、60単位×100人×12月=72,000単位になります。(Ⅰ)との差は年間24,000単位です。
科学的介護推進体制加算の算定要件
要件は告示第95号の第92号の3に定められています。老健と介護医療院に共通の基準です。
加算(Ⅰ)の要件
- 入所者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他の入所者の心身の状況等に係る基本的な情報を、厚生労働省に提出していること
- 必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービスの提供にあたって、提出した情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること
加算(Ⅱ)の要件
- (Ⅰ)の情報に加えて、入所者ごとの疾病、服薬の状況等の情報を、厚生労働省に提出していること
- 必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービスの提供にあたって、(Ⅰ)の情報、疾病・服薬の情報その他必要な情報を活用していること
| 提出する情報 | 加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) |
|---|---|---|
| ADL値 | ○ | ○ |
| 栄養状態 | ○ | ○ |
| 口腔機能 | ○ | ○ |
| 認知症の状況 | ○ | ○ |
| その他の心身の状況等に係る基本的な情報 | ○ | ○ |
| 疾病の状況 | — | ○ |
| 服薬の状況 | — | ○ |
(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は、疾病と服薬の情報を出すかどうかだけです。老健には医師と薬剤師が配置されており、かかりつけ医連携薬剤調整加算のように服薬情報を扱う加算も別にあります。情報そのものは施設内にあることが多いため、(Ⅰ)で止めている施設は(Ⅱ)への移行を検討する価値があります。
科学的介護推進体制加算で見落とされる「情報の活用」
老企第40号 5の(44)③は、この加算の核心を次のように書いています。
施設は、入所者に提供する施設サービスの質を常に向上させていくため、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクル(PDCAサイクル)により、質の高いサービスを実施する体制を構築するとともに、その更なる向上に努めることが重要であり、具体的には、次のような一連の取組が求められる。したがって、情報を厚生労働省に提出するだけでは、本加算の算定対象とはならない。
そのうえで、求められる4つの取組を挙げています。
- 入所者の心身の状況等に係る基本的な情報に基づき、適切なサービスを提供するための施設サービス計画を作成する(Plan)
- サービスの提供にあたっては、施設サービス計画に基づいて、入所者の自立支援や重度化防止に資する介護を実施する(Do)
- LIFEへの提出情報およびフィードバック情報等も活用し、多職種が共同して、施設の特性やサービス提供の在り方について検証を行う(Check)
- 検証結果に基づき、入所者の施設サービス計画を適切に見直し、施設全体として、サービスの質の更なる向上に努める(Action)
Checkは「多職種が共同して」「施設の特性」を検証する
ここが実務でいちばん抜けやすいところです。個々の入所者の計画を見直しているだけでは、通知が求めるCheckになりません。フィードバック情報を使って、施設全体としての傾向やサービス提供の在り方を多職種で検証した記録が必要です。委員会の議事録やカンファレンス記録に、フィードバックのどの数値を見て何を議論したかを残しておくと説明しやすくなります。
科学的介護推進体制加算の注意点
原則として入所者全員が対象
老企第40号 5の(44)①は「原則として入所者全員を対象として、入所者ごとに大臣基準第71号の5に掲げる要件を満たした場合に、当該施設の入所者全員に対して算定できるものであること」としています。一部の入所者だけ提出して算定する、という運用はできません。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
告示の注に「次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」とあります。施設として(Ⅰ)か(Ⅱ)のどちらかを選びます。
他のLIFE関連加算とは併算定できる
科学的介護推進体制加算の注が排除しているのは(Ⅰ)と(Ⅱ)の相互だけで、褥瘡マネジメント加算・排せつ支援加算・自立支援促進加算・リハビリテーションマネジメント計画書情報加算との併算定を妨げる規定はありません。LIFEに出す情報の種類が加算ごとに違うため、提出漏れが起きないよう様式ごとの担当を決めておくのが実務的です。
ちびウルフLIFE関連の加算をいくつも取ると、提出の手間が単純に増えていきませんか。
リハウルフ増えます。ただ評価のタイミングは3か月ごとで揃っているものが多いので、評価の会議を1本にまとめてしまうほうが現場は回ります。加算ごとに別の会議を立てると続きません。
提出頻度は別途通知を確認する
老企第40号 5の(44)②は、提出情報・提出頻度等について「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」を参照するよう指示しています。告示・老企第40号だけでは提出頻度は確定しません。
転換老健でも算定できる
告示のヰの注には「イ(1)、ロ(1)について」のような限定がありません。褥瘡マネジメント加算のように基本型・在宅強化型に限られる加算とは異なり、介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ)を算定する転換老健でも届出ができます。
科学的介護推進体制加算のQ&A
(Ⅰ)から(Ⅱ)に変更するには何が必要ですか?
疾病・服薬の状況等の情報をLIFEに提出することと、その情報を含めて活用することです。区分が変わるため、都道府県知事への届出が必要になります。
入所者や家族の同意は必要ですか?
告示・老企第40号には同意に関する規定は置かれていません。ただし個人情報を国に提出するため、実務上は重要事項説明書や利用契約の中で説明しておくのが一般的です。取扱いは指定権者に確認してください。
LIFEにデータを出したのにフィードバックが返ってこない場合はどうなりますか?
通知はフィードバック情報「等」を活用するとしており、提出情報自体の活用も含まれます。フィードバックの有無にかかわらず、多職種での検証と計画の見直しを行い、記録に残してください。
一部の入所者だけ提出して算定できますか?
できません。原則として入所者全員を対象とし、入所者全員に対して算定する加算です。
特養と同じ50単位ではないのですか?
老健の(Ⅱ)は60単位です。特養・地域密着型特養の(Ⅱ)が50単位で、老健と介護医療院は60単位と定められています。
褥瘡マネジメント加算や排せつ支援加算と一緒に算定できますか?
できます。告示上、これらとの併算定を排除する規定はありません。それぞれ提出する情報が異なります。
月の途中で入所した人も算定できますか?
1月につき算定する加算のため、月内の在籍期間による按分は規定されていません。請求上の具体的な扱いは指定権者・国保連の取扱いを確認してください。
ADL値はBarthel Indexで評価するのですか?
告示は「ADL値」とするのみです。LIFEに提出する様式と評価指標は「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」に示されています。
実地指導では何を見られますか?
提出の記録に加えて、フィードバック情報を使って多職種で検証した記録と、その結果として施設サービス計画をどう見直したかです。通知が「提出するだけでは算定対象とならない」と明記している以上、活用の記録が要になります。
まとめ
- 老健の科学的介護推進体制加算は(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)60単位(いずれも1月につき)
- 特養の(Ⅱ)は50単位で、老健・介護医療院は60単位と10単位高い
- (Ⅰ)はADL値・栄養状態・口腔機能・認知症の状況等の基本情報を提出する
- (Ⅱ)はこれに疾病・服薬の状況等の情報を加える
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の要件の差は、提出する情報の範囲だけ
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できず、施設としてどちらかを選ぶ
- 原則として入所者全員が対象で、一部だけの提出では算定できない
- 通知は「情報を厚生労働省に提出するだけでは算定対象とならない」と明記している
- 求められるのはPlan・Do・Check・Actionの4つの取組
- Checkは多職種が共同して施設の特性やサービス提供の在り方を検証すること
- 褥瘡マネジメント加算・排せつ支援加算・自立支援促進加算等とは併算定できる
- 提出頻度はLIFE関連の別途通知で確認する
- 転換老健(介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ))でも算定できる
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第71号の5・第92号の3
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)5の(44)、8の(47)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。





