訪問入浴介護の高齢者虐待防止措置未実施減算とは?

訪問入浴介護の高齢者虐待防止措置未実施減算は、所定単位数の1%減です。令和6年度改定で全サービスに導入されました。
減算されるのは虐待が起きたときではありません。指定居宅サービス等基準第54条で準用する第37条の2が求める4つの措置——①委員会の定期開催、②指針の整備、③研修の定期実施、④担当者の配置——を講じていない場合です。
訪問入浴は3人1組で利用者の自宅に上がり、全身を露出する場面を扱うサービスです。密室性が高く、羞恥心や尊厳に直結する場面が日常的にあるという意味では、虐待防止の措置が形式で終わっていないかを最も問われる業態のひとつだと考えています。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問入浴介護費の注2、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第4号の4の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算が1%であること
- 減算の対象が「虐待の発生」ではなく「措置の未実施」であること
- 求められる4つの措置(委員会・指針・研修・担当者)
- 委員会はテレビ電話装置等を活用できること
- 「担当者を置く」が見落とされやすいこと
- 業務継続計画未策定減算(1%)との違い
- 訪問入浴には身体拘束廃止未実施減算がないこと
- 介護予防訪問入浴介護でも同じ1%であること
ちびウルフ訪問入浴には身体拘束の減算はないんですか?
リハウルフ訪問入浴介護費の注には、身体拘束廃止未実施減算は設けられていません。置かれているのは虐待防止1%とBCP未策定1%の2つだけです。入所・入居系のように利用者の生活の場を管理するサービスではないためと理解できます。ただし虐待防止の措置は当然に必要です。
減算率は1%
別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 減算率 | 所定単位数の1% |
| 1回あたりの影響 | 約13単位減(基本報酬1,266単位の場合) |
| 月8回の場合 | 約101単位減 |
| 根拠基準 | 指定居宅サービス等基準第54条で準用する第37条の2 |
※端数処理は請求時の取扱いによります。
求められる4つの措置
- 虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができる)を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること
- 虐待の防止のための指針を整備すること
- 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
- これらの措置を適切に実施するための担当者を置くこと
委員会・指針・研修は整えていても、担当者を明示していないために指摘を受ける事業所があります。氏名・職名と役割を運営規程や委員会規程に位置づけ、職員に周知しておいてください。
訪問入浴で議題にすべき場面
委員会や研修が形式で終わらないために、訪問入浴に固有の場面を議題に乗せることをおすすめします。
- 脱衣・移乗時の声かけと、カーテン・タオルによる露出の配慮
- 拒否がある人への説得が、強要になっていないか
- 3人1組の作業のなかで、利用者を置き去りにした会話が起きていないか
- 時間に追われた日の言葉遣いの変化
- 家族から見えない居室内での対応
- ヒヤリとした場面を、その日のうちに共有できているか
訪問入浴は職員3人が同時に立ち会うため、相互に気づける環境でもあります。「言いにくいことを言える関係」があるかどうかが、実質的な虐待防止になります。(この整理は筆者の実務経験にもとづくもので、制度上の定めではありません)
2つの未実施減算の比較
| 減算 | 率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% | 基準第54条で準用する第37条の2 |
| 業務継続計画未策定減算 | 1% | 基準第54条で準用する第30条の2第1項 |
訪問入浴介護は、業務継続計画未策定減算も1%です。入所・入居系の3%とは異なります。
介護予防訪問入浴介護でも同じ1%
介護予防訪問入浴介護費(平成18年厚生労働省告示第127号)にも同じ規定があり、基準は告示95号第100号の10が定めています。
よくある質問
虐待が発生しなければ減算されませんか?
発生の有無ではなく、委員会・指針・研修・担当者の4つの措置を講じているかどうかで判断されます。
委員会の頻度は決まっていますか?
「定期的に開催」としか定められていません。運用を決めたうえで保険者に確認し、開催記録を残してください。
委員会はオンラインでもよいですか?
テレビ電話装置等を活用して行うことができるとされています。
担当者に資格は必要ですか?
条文に資格の定めはありません。措置を適切に実施するための担当者を置き、役割を明確にしてください。
研修は年何回必要ですか?
「定期的に実施」とのみ定められています。年1回以上に加え、新規採用時に実施する運用が一般的です。
訪問入浴に身体拘束廃止未実施減算はありますか?
訪問入浴介護費の注には設けられていません。置かれているのは虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算です。
業務継続計画未策定減算も1%ですか?
そのとおりです。訪問入浴介護では両方とも1%です。
要支援の人にも同じ率ですか?
同じです。介護予防訪問入浴介護費でも1%です。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算は所定単位数の1%減
- 減算の対象は虐待の発生ではなく、措置の未実施
- 求められる措置は、委員会の定期開催、指針の整備、研修の定期実施、担当者の配置の4つ
- 委員会はテレビ電話装置等を活用でき、結果は全従業者に周知徹底する
- 「担当者を置く」は書面で示せるようにしておく
- 訪問入浴には身体拘束廃止未実施減算は設けられていない
- 業務継続計画未策定減算も1%(入所系の3%とは異なる)
- 介護予防訪問入浴介護でも同じ1%
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問入浴介護費の注2・注3(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第4号の4(訪問入浴介護費における高齢者虐待防止措置未実施減算の基準)、第100号の10(介護予防訪問入浴介護費における同減算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第37条の2(虐待の防止)、第54条(準用)
※本記事の減算率・基準は、厚生労働省の告示・省令にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。委員会の開催頻度、研修の回数、減算の適用期間については保険者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の減算額の試算は単位数を単純に計算した概算です。議題の例など実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




