訪問入浴介護の同一建物減算とは?

訪問入浴介護の同一建物減算は、90%(10%減)と85%(15%減)の2段階です。訪問介護のような3段階ではありません。
判定は人数で決まります。同一敷地内建物等に居住する利用者は原則90%。ただし1月あたりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上いる建物なら85%。同一敷地内建物等ではない建物でも、1月あたり20人以上が居住していれば90%。
訪問入浴は浴槽と3人の職員を建物へ運び込むサービスです。同一建物に複数の利用者がいれば移動コストが下がる——その前提で設けられた減算ですが、1回あたり1,266単位に対する10%は約127単位と小さくありません。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問入浴介護費の注6の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 同一建物減算が90%・85%の2段階であること
- 「同一敷地内建物等」の定義
- 50人以上で85%、20人以上で90%という人数の基準
- 同一敷地内建物等かどうかで判定基準が変わること
- 訪問介護の3段階(90%・88%・85%)との違い
- 1回あたりの減算額の目安
- 介護予防訪問入浴介護でも同様の減算があること
ちびウルフ同じ建物に1人しか利用者がいなくても減算ですか?
リハウルフ事業所と同一敷地内・隣接敷地内の建物、または事業所と同一の建物に住んでいる人なら、人数にかかわらず90%です。人数の要件が出てくるのは、そこから離れた建物の場合(20人以上)と、85%になる場合(50人以上)です。ここを取り違えている事業所は少なくありません。
条文を分解する
告示19号の訪問入浴介護費の注6は、一文が長く読みにくいので分解します。
指定訪問入浴介護事業所の所在する建物と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは指定訪問入浴介護事業所と同一の建物(以下この注において「同一敷地内建物等」という。)に居住する利用者(1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者を除く。)又は1月当たりの利用者が同一の建物に20人以上居住する建物(同一敷地内建物等を除く。)に居住する利用者に対して、指定訪問入浴介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の90に相当する単位数を算定し、1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者に対して、指定訪問入浴介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の85に相当する単位数を算定する。
| ケース | 算定率 |
|---|---|
| 同一敷地内建物等に居住(その建物の利用者が50人未満) | 90% |
| 同一敷地内建物等に居住(その建物の利用者が50人以上) | 85% |
| 同一敷地内建物等ではない建物に居住し、その建物に利用者が20人以上 | 90% |
| 上記以外 | 減算なし(100%) |
「同一敷地内建物等」の3類型
- 事業所の所在する建物と同一の敷地内の建物
- 事業所の所在する建物と隣接する敷地内の建物
- 事業所と同一の建物
この3つに当てはまれば、居住する利用者が1人でも90%です。サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームに併設している訪問入浴事業所は、原則として全員が対象になります。
離れた建物は「20人以上」がライン
同一敷地内建物等ではない建物の場合、1月あたりの利用者がその建物に20人以上居住しているときに90%となります。
「1月当たりの利用者」が何人かは、月ごとに変動します。19人だった月は減算なし、20人になった月は減算という判定になり得ます。
- 数える対象は自事業所の利用者か、建物全体の入居者か
- 月の途中で利用開始・終了した人をどう数えるか
- 判定はいつの時点で行うか
これらは請求実務に直結しますが、条文だけでは判断できません。大規模な集合住宅へ複数人訪問している事業所は、保険者に確認して運用を固定してください。
訪問介護の3段階との違い
| サービス | 減算の段階 |
|---|---|
| 訪問入浴介護 | 90%・85%の2段階 |
| 訪問介護 | 90%・88%・85%の3段階 |
訪問介護には、同一敷地内建物等の利用者が一定割合以上を占める場合の88%という中間段階があります。訪問入浴にはこの中間段階がありません。訪問介護向けの解説をそのまま当てはめないでください。
減算額の目安
| 区分 | 1回あたり | 月8回の場合 |
|---|---|---|
| 90%(10%減) | 約127単位減 | 約1,013単位減 |
| 85%(15%減) | 約190単位減 | 約1,520単位減 |
※基本報酬1,266単位を基礎とした概算です。端数処理により実際とは異なります。
他の減算(清拭・部分浴の90%、介護職員3人での95%)と重なる場面もあります。複数の減算が同時に生じる場合の計算順序は、請求ソフトの仕様と保険者の指示を確認してください。
介護予防訪問入浴介護でも同様の減算がある
介護予防訪問入浴介護費(平成18年厚生労働省告示第127号)にも同様の規定が設けられています。要支援1・2の利用者についても、同じ考え方で判定します。
よくある質問
同一敷地内の建物に利用者が1人でも減算ですか?
同一敷地内建物等に居住する利用者は、人数にかかわらず90%です(その建物の利用者が50人以上の場合は85%)。
離れた建物ではどう判定しますか?
同一敷地内建物等ではない建物の場合、1月当たりの利用者がその建物に20人以上居住しているときに90%となります。
85%になるのはどんな場合ですか?
1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者に対してサービスを行った場合です。
訪問介護と同じ3段階ではないのですか?
訪問入浴介護は90%・85%の2段階です。訪問介護にある88%の区分はありません。
人数は自事業所の利用者数ですか?
条文は「1月当たりの利用者」としています。数え方の詳細は保険者に確認してください。
月によって人数が変わる場合はどうしますか?
判定の時点や算定への反映方法は請求実務に直結します。保険者に確認し、運用を固定してください。
清拭・部分浴の90%と重なる場合はどうなりますか?
複数の減算が生じる場合の計算順序は、請求上の取扱いによります。請求ソフトの仕様と保険者の指示を確認してください。
要支援の人にも適用されますか?
介護予防訪問入浴介護費にも同様の規定があります。
- 訪問入浴介護の同一建物減算は90%・85%の2段階
- 「同一敷地内建物等」は、同一敷地内・隣接敷地内の建物、事業所と同一の建物の3類型
- 同一敷地内建物等に居住する利用者は人数にかかわらず90%
- その建物の利用者が1月当たり50人以上なら85%
- 同一敷地内建物等ではない建物は、1月当たり20人以上で90%
- 訪問介護にある88%の中間段階はない
- 1回あたりの減算は10%で約127単位、15%で約190単位
- 人数の数え方と判定時期は保険者への確認が必要
- 他の減算と重なる場合の計算順序も確認が必要
- 介護予防訪問入浴介護でも同様の規定がある
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問入浴介護費の注6(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準 別表 訪問介護費(同一建物減算の段階の比較)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表 介護予防訪問入浴介護費(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
※本記事の算定率・要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。利用者数の数え方、判定の時点、複数の減算が重なる場合の計算順序については必ず保険者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の減算額の試算は単位数を単純に計算した概算であり、地域区分や端数処理により実際の請求額とは異なります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




