訪問入浴介護の清拭・部分浴90%とは?全身入浴が困難な場合の要件を解説

訪問入浴介護で清拭または部分浴を行った場合は、所定単位数の90%(10%減)で算定します。1回1,266単位に対して約127単位の減額です。
ここで押さえるべきは、この90%は「事業所の都合」では発動しないということ。条文は2つの条件を重ねています。①訪問時の利用者の心身の状況等から全身入浴が困難な場合であって、②当該利用者の希望により清拭又は部分浴を実施したとき。
つまり「全身入浴が困難」+「利用者の希望」が揃ってはじめて90%算定になります。設備の不具合や職員体制の都合で全身浴ができなかった場合は、この規定が想定する場面ではありません。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問入浴介護費の注5の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 清拭・部分浴の場合が90%算定であること
- 「全身入浴が困難」+「利用者の希望」という2条件
- 部分浴の定義(洗髪、陰部、足部等の洗浄)
- 介護職員3人での95%算定との違い
- 2つの減算が重なる場合の考え方
- 記録に残すべき内容
- 介護予防訪問入浴介護でも同様であること
ちびウルフ当日に熱があって全身浴をやめたら、自動的に90%ですか?
リハウルフ条文は「利用者の希望により」清拭又は部分浴を実施したときとしています。状態から全身浴が困難と判断し、そのうえで本人が清拭を希望した——という流れを記録に残すことが必要です。「困難だから清拭にした」だけでは、条文の書きぶりと少しずれます。
条文は2つの条件を重ねている
訪問時の利用者の心身の状況等から全身入浴が困難な場合であって、当該利用者の希望により清拭又は部分浴(洗髪、陰部、足部等の洗浄をいう。)を実施したときは、所定単位数の100分の90に相当する単位数を算定する。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 算定率 | 所定単位数の90% |
| 条件① | 訪問時の心身の状況等から全身入浴が困難であること |
| 条件② | 利用者の希望により清拭又は部分浴を実施したこと |
| 部分浴の定義 | 洗髪、陰部、足部等の洗浄 |
「訪問時の」という限定にも注意してください。あらかじめ清拭で計画していた場合と、訪問して状態を確認した結果として清拭に切り替えた場合とでは、条文が想定している場面が異なります。取扱いは保険者に確認してください。
記録に残すべきこと
- 訪問時のバイタル・全身状態を測定・観察し、記録する
- 全身入浴が困難と判断した根拠を記録する(誰が判断したかを含む)
- 本人(又は家族)に説明し、清拭・部分浴の希望を確認した経過を記録する
- 実施した内容(清拭か、部分浴ならどの部位か)を記録する
訪問入浴は看護職員1人・介護職員2人が基本の体制です。入浴前の観察と可否の判断は、もともと看護職員の業務として記録されています。その記録に「本人の希望を確認した」一文が加わるだけで、90%算定の根拠として説明できる形になります。新たな様式を作るより、既存の記録に項目を足すほうが現実的です。(この整理は筆者の実務経験にもとづくもので、制度上の定めではありません)
介護職員3人での95%算定との違い
| 規定 | 算定率 | 発動する場面 |
|---|---|---|
| 清拭・部分浴(注5) | 90% | 全身入浴が困難+利用者の希望 |
| 介護職員3人での実施(注4) | 95% | 入浴により支障が生じるおそれがないと認められ、主治医の意見を確認したうえで介護職員3人が実施 |
2つはまったく別の規定です。注4は「看護職員が同行しない体制」の話、注5は「入浴の方法」の話。両方に該当する場面(介護職員3人で訪問し、状態から清拭に切り替えた)もあり得ます。その場合の計算方法は条文に明示がないため、保険者に確認してください。
同一建物減算との重なり
同一建物減算(90%・85%)とも重なり得ます。複数の率が同時に適用される場合の計算順序は、請求上の取扱いによります。請求ソフトの計算結果を鵜呑みにせず、保険者の指示と照合しておくことをおすすめします。
介護予防訪問入浴介護でも同様
介護予防訪問入浴介護費(平成18年厚生労働省告示第127号)にも、清拭・部分浴に関する同様の規定が設けられています。要支援1・2の利用者でも同じ考え方です。
よくある質問
部分浴とは何を指しますか?
条文は「洗髪、陰部、足部等の洗浄」と定義しています。
事業所の都合で全身浴ができなかった場合も90%ですか?
条文は「訪問時の利用者の心身の状況等から全身入浴が困難な場合」であって「利用者の希望により」実施したときと定めています。設備や体制の都合は想定されていません。取扱いは保険者に確認してください。
あらかじめ清拭で計画していた場合はどうなりますか?
条文は「訪問時の」状況を前提とした書き方です。計画段階から清拭のみとしている場合の取扱いは保険者に確認してください。
利用者の希望はどう確認・記録しますか?
様式の定めはありません。説明した内容と本人(又は家族)の意向を、訪問記録に残してください。
介護職員3人の95%と同時に適用されますか?
両方の要件に該当する場面はあり得ます。計算方法は条文に明示がないため、保険者に確認してください。
同一建物減算とも重なりますか?
重なり得ます。複数の率が適用される場合の計算順序は請求上の取扱いによります。
清拭でも加算は算定できますか?
加算ごとに要件が異なります。たとえば看取り連携体制加算について、清拭・部分浴の日の取扱いは条文に明示がないため保険者に確認してください。
要支援の人にも適用されますか?
介護予防訪問入浴介護費にも同様の規定があります。
- 清拭・部分浴を実施した場合は所定単位数の90%で算定する
- 要件は「訪問時の心身の状況等から全身入浴が困難」+「利用者の希望」の2つ
- 部分浴は洗髪、陰部、足部等の洗浄を指す
- 事業所側の都合による変更は条文が想定する場面ではない
- 判断根拠と本人の希望を記録に残すことが必要
- 看護職員の入浴前観察の記録に希望確認を追記する運用が現実的
- 介護職員3人での95%算定(注4)とは別の規定
- 同一建物減算と重なる場合の計算順序は保険者に確認する
- 介護予防訪問入浴介護でも同様の規定がある
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問入浴介護費の注4・注5・注6(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表 介護予防訪問入浴介護費(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
※本記事の算定率・要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。あらかじめ清拭で計画していた場合の扱い、複数の減算が重なる場合の計算順序、清拭・部分浴の日における各加算の算定可否については必ず保険者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。記録の運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




