グループホームの認知症チームケア推進加算とは?

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の認知症チームケア推進加算は、(Ⅰ)150単位/月、(Ⅱ)120単位/月です。令和6年度改定で新設されました。評価しているのはBPSD(認知症の行動・心理症状)が出てからの対応ではなく、出さないための平時の取組です。
ただしグループホームで導入を検討するときは、認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位/日・(Ⅱ)4単位/日と併算定できないことが最大の論点になります。専門ケア加算は入居者ごと・1日ごと、チームケア推進加算は事業所として月1回。9人ユニットで比べると、専門ケア加算(Ⅱ)は月1,080単位、チームケア推進加算(Ⅰ)は月150単位です。
それでもこの加算に意味があるとすれば、専門ケア加算の要件(研修修了者の配置や会議)を満たせない場合、あるいはBPSDの評価尺度を使ったチームケアをすでに実践している場合です。この記事では両方を比べたうえで判断できるように整理しました。
参照したのは、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)認知症対応型共同生活介護費のリ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の5の2、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(同第94号)第41号の2の条文です。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 認知症チームケア推進加算(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位という単位数
- 対象者が「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」であること
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の違いが研修の種類だけであること
- BPSDの評価を「計画的に行い、その評価に基づく値を測定」する要件の意味
- 認知症専門ケア加算と併算定できないこと
- GHの規模では専門ケア加算のほうが金額的に有利になりやすいこと
- 短期利用(ロ)では算定できないこと
- 介護予防(要支援2)でも算定できること
ちびウルフ新しい加算だから、こちらを取ったほうがよいのでは?
リハウルフ新しさと有利さは別です。GHの定員規模では、1日単位の専門ケア加算のほうが月額で大きくなります。チームケア推進加算を選ぶのは、専門ケア加算の要件を満たせないときか、BPSDの評価尺度を使った実践を報酬で裏づけたいときです。
単位数は(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位(1月につき)
告示126号の認知症対応型共同生活介護費「リ 認知症チームケア推進加算」の注は次のとおりです。
イについて、別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして(略)届出を行った指定認知症対応型共同生活介護事業所が、別に厚生労働大臣が定める者に対し認知症の行動・心理症状の予防及び出現時の早期対応(以下「予防等」という。)に資するチームケア(複数人の介護者がチームを組み、利用者の情報を共有した上で介護に係る課題を抽出し、多角的な視点で課題解決に向けた介護を提供することをいう。)を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定せず、認知症専門ケア加算を算定している場合においては、次に掲げる加算は算定しない。
(1) 認知症チームケア推進加算(Ⅰ) 150単位
(2) 認知症チームケア推進加算(Ⅱ) 120単位
条文が「チームケア」の定義まで書き込んでいる点が特徴です。複数人でチームを組み、情報を共有し、課題を抽出し、多角的な視点で介護を提供すること。個人の力量に依存したケアではないことを求めています。
対象者は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」
告示94号第41号の2が定める対象者は、次の一文です。
周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者
認知症専門ケア加算の対象者(日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者)とは文言が異なります。どちらも「利用者の総数のうち2分の1以上」という割合要件ですが、母集団の定義が違うため、専門ケア加算の判定表をそのまま流用しないでください。
(Ⅰ)の要件は4つ
- 利用者の総数のうち、対象者の占める割合が2分の1以上であること
- BPSDの予防等に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者、又は認知症介護に係る専門的な研修+BPSDの予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了している者を1名以上配置し、かつ複数人の介護職員から成るBPSDに対応するチームを組んでいること
- 対象者に対し、個別にBPSDの評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、予防等に資するチームケアを実施していること
- BPSDの予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、BPSDの有無及び程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を行っていること
3つ目の要件は、BPSDを主観で語らず、尺度を使って数値化することを求めています。「最近落ち着かない」ではなく、評価尺度でスコアを取り、その推移でケアの効果を確認する運用です。カンファレンス記録に数値と推移が残っているかどうかが、実地指導での確認ポイントになります。使用する尺度の指定は告示にはありません。どの尺度を使うかは市町村に確認しておくと安全です。
(Ⅱ)は研修要件だけが軽い
- (Ⅰ)の(1)(割合要件)、(3)(評価と測定)、(4)(カンファレンス等)に適合すること
- BPSDの予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、複数人の介護職員から成るチームを組んでいること
違いは「指導に係る専門的な研修(指導者レベル)」か「専門的な研修」かだけです。差は30単位/月。ケアの中身の要件(評価・測定・カンファレンス)は(Ⅰ)と(Ⅱ)で同じなので、まず(Ⅱ)で運用を回し、人材が育ったら(Ⅰ)に切り替える進め方が現実的です。
認知症専門ケア加算とどちらを選ぶか
| 比較項目 | 認知症専門ケア加算 | 認知症チームケア推進加算 |
|---|---|---|
| 単位 | (Ⅰ)3単位/日、(Ⅱ)4単位/日 | (Ⅰ)150単位/月、(Ⅱ)120単位/月 |
| 算定の単位 | 入居者ごと・1日ごと | 事業所として1月につき |
| 9人ユニットの月額目安 | (Ⅱ)で約1,080単位 | (Ⅰ)で150単位 |
| 対象者の定義 | 日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められる認知症の者 | 周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者 |
| ケアの要件 | チームでの専門的な認知症ケア、定期的な会議 | BPSDの計画的評価と測定、カンファレンス・計画・振り返り |
※月額は入居者数×単位数×30日で計算した概算です。
金額だけを見れば専門ケア加算が有利です。チームケア推進加算を選ぶ合理性があるのは、専門ケア加算の研修修了者の配置要件や割合要件を満たせない場合、あるいはBPSDの評価尺度を用いた実践がすでに定着している場合に限られます。
短期利用では算定できない/介護予防では算定できる
注は「イについて」と限定しているため、短期利用(ロ)では算定できません。一方、介護予防認知症対応型共同生活介護費(平成18年厚生労働省告示第128号)には認知症チームケア推進加算(ト)が設けられており、要支援2の入居者についても算定できます。
よくある質問
認知症専門ケア加算と併算定できますか?
できません。認知症専門ケア加算を算定している場合はチームケア推進加算を算定できず、逆にチームケア推進加算を算定している場合は専門ケア加算を算定できません。
どちらが金額的に有利ですか?
GHの規模では認知症専門ケア加算のほうが有利になりやすいです。専門ケア加算は入居者ごと・1日ごと、チームケア推進加算は事業所として1月につきの算定だからです。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?
研修要件だけです。(Ⅰ)は指導に係る専門的な研修の修了者等、(Ⅱ)は専門的な研修の修了者を1名以上配置します。評価・測定・カンファレンス等の要件は共通です。
BPSDの評価はどの尺度を使えばよいですか?
告示に尺度の指定はありません。「個別に計画的に評価し、その評価に基づく値を測定する」ことが要件です。使用する尺度と記録方法は市町村に確認しておくと安全です。
対象者の割合は専門ケア加算と同じ判定でよいですか?
同じではありません。チームケア推進加算の対象者は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」で、専門ケア加算とは文言が異なります。それぞれの定義で判定してください。
チームは何人で組めばよいですか?
条文は「複数人の介護職員から成る」としており、人数の下限は示されていません。研修修了者1名以上の配置とあわせて体制を整えます。
短期利用の利用者にも算定できますか?
できません。注が「イについて」と限定しています。
要支援2の入居者に算定できますか?
できます。介護予防認知症対応型共同生活介護費にも認知症チームケア推進加算が設けられています。
- 認知症チームケア推進加算は令和6年度改定で新設。(Ⅰ)150単位/月、(Ⅱ)120単位/月
- 評価しているのはBPSDが出てからの対応ではなく、平時からの予防と早期対応
- 対象者は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」で、割合は2分の1以上
- (Ⅰ)は指導者レベルの研修修了者等、(Ⅱ)は専門的研修の修了者を1名以上配置
- 共通要件は、BPSDの計画的評価と値の測定、カンファレンス・計画作成・定期評価・振り返り・見直し
- 認知症専門ケア加算とは併算定できない
- GHの定員規模では専門ケア加算のほうが月額で大きくなりやすい
- 短期利用(ロ)では算定できない
- 介護予防(要支援2)でも算定できる
- 届出先は市町村長
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 認知症対応型共同生活介護費のリ(認知症チームケア推進加算)、チ(認知症専門ケア加算)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の5の2(認知症チームケア推進加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第41号の2(対象となる者)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)1.(7)⑤ 認知症対応型共同生活介護、介護保険施設における平時からの認知症の行動・心理症状の予防、早期対応の推進
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および改定資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。グループホームは地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、加算の解釈や届出の運用が自治体によって異なる場合があります。対象者の判定方法、使用する評価尺度、該当する研修の範囲については所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の月額の試算は単位数を単純に乗じた概算であり、地域区分や端数処理により実際の請求額とは異なります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




