訪問介護の緊急時訪問介護加算とは?100単位と2時間ルールが外れる仕組みを解説

訪問介護の緊急時訪問介護加算は1回につき100単位。単位そのものより、この加算を算定する訪問には2時間ルールが適用されないことのほうが実務では重要です。
通知がはっきり書いています。「当該加算の対象となる訪問介護と当該訪問介護の前後に行われた訪問介護の間隔が2時間未満であった場合であっても、それぞれの所要時間に応じた所定単位数を算定する(所要時間を合算する必要はない)」。20分未満の身体介護でも算定できることも明記されています。
もうひとつ、あきらめられがちな論点があります。原則はケアマネジャーとの事前連携ですが、やむを得ない事由で事前に連携できなかった場合も、事後にケアマネが必要だったと判断すれば算定できます。「先に動いてしまったから取れない」ではありません。
この記事では、指定居宅サービス介護給付費単位数表(厚生省告示第19号)訪問介護費 注16、老企第36号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 単位数は1回につき100単位、1回の要請につき1回が限度であること
- 対象は身体介護中心型のみであること
- 「緊急に行った場合」の定義(計画外の時間帯+要請から24時間以内)
- ケアマネとの事前連携が原則だが、事後の判断でも算定できること
- 2時間ルール(所要時間の合算)が適用されないこと
- 20分未満の身体介護でも算定できること
- 所要時間はケアマネが判断し、実際の内容で変更してよいこと
- 20分未満の身体介護に続く生活援助加算の例外になること
- 必要な記録4項目
- 届出が不要であること
緊急時訪問介護加算とは?単位数は100単位
緊急時訪問介護加算とは、利用者や家族からの要請を受けて、居宅サービス計画にない訪問介護を緊急に行った場合に算定できる加算です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 100単位 |
| 算定の単位 | 1回につき |
| 回数の上限 | 1回の要請につき1回 |
| 対象 | 身体介護中心型のみ |
| 届出 | 不要(体制届出の規定なし) |
訪問介護の加算の多くは「厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして届出を行った事業所が」という書き出しで始まります。しかし緊急時訪問介護加算の注には、その文言がありません。
人員の割合も、研修修了者の配置も、体制の届出も不要。要件を満たす場面が来たら、その都度算定できる加算です。
告示の原文で算定要件を確認する
訪問介護費 注16です。
イについて、利用者又はその家族等からの要請に基づき、指定訪問介護事業所のサービス提供責任者が指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員と連携し、当該介護支援専門員が必要と認めた場合に、当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等が当該利用者の居宅サービス計画において計画的に訪問することとなっていない指定訪問介護を緊急に行った場合は、1回につき100単位を加算する。
- 冒頭の「イについて」=身体介護中心型のみ(生活援助中心型・通院等乗降介助では算定できない)
- 起点は利用者または家族等からの要請(事業所側の判断で始めたものではない)
- サ責がケアマネと連携し、ケアマネが必要と認める
- 提供するのは居宅サービス計画にない訪問介護
「緊急に行った場合」とは——計画外の時間帯+24時間以内
老企第36号が定義を示しています。
「緊急に行った場合」とは、居宅サービス計画に位置付けられていない(当該指定訪問介護を提供した時間帯が、あらかじめ居宅サービス計画に位置付けられたサービス提供の日時以外の時間帯であるものをいう。)訪問介護(身体介護が中心のものに限る。)を、利用者又はその家族等から要請を受けてから24時間以内に行った場合をいうものとする。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 計画外であること | 居宅サービス計画に位置付けられた日時以外の時間帯 |
| 種別 | 身体介護が中心のもの |
| 時間の制限 | 要請を受けてから24時間以内 |
緊急=すぐ駆けつけること、ではありません。要請から24時間以内であればよい、と通知が定めています。
たとえば夕方に「明日の朝、いつもの時間より前に来てほしい」という要請があり、翌朝に計画外の身体介護を提供した場合も、24時間以内であれば対象になり得ます。
逆に、要請から24時間を超えてしまえば、どれだけ切迫していても算定できません。要請を受けた時刻の記録が要件そのものである理由がここにあります。
1回の要請につき1回まで
当該加算は、1回の要請につき1回を限度として算定できるものとする。
1回の要請に対して2回訪問しても、加算は1回分です。要請が別々にあった場合は、それぞれについて算定できます。
事前連携ができなくても、事後の判断で算定できる
この加算をあきらめないための、いちばん重要な規定です。
緊急時訪問介護加算は、サービス提供責任者が、事前に指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員と連携を図り、当該介護支援専門員が、利用者又はその家族等から要請された日時又は時間帯に身体介護中心型の訪問介護を提供する必要があると判断した場合に加算されるものであるが、やむを得ない事由により、介護支援専門員と事前の連携が図れない場合に、指定訪問介護事業所により緊急に身体介護中心型の訪問介護が行われた場合であって、事後に介護支援専門員によって、当該訪問が必要であったと判断された場合には、加算の算定は可能である。
ちびウルフ夜間や休日だと、ケアマネさんに連絡がつかないことがありますよね。
リハウルフまさにそのための規定なんだ。「やむを得ない事由により事前の連携が図れない場合」+「事後にケアマネが必要だったと判断」で算定できる。
現場では「ケアマネに連絡がつかなかったから、この訪問は加算なしでいこう」と処理してしまいがちだけど、それは損をしている。
大事なのは事後にケアマネから「必要だった」という判断をもらい、それを記録に残すこと。翌営業日に電話して、内容を伝えて、判断を記録する。口頭でのやりとりを、こちら側の記録に残しておくだけでも全然違う。
最大の実務論点:2時間ルールが適用されない
訪問介護には、前回の訪問からおおむね2時間未満の間隔で訪問した場合は所要時間を合算する、という「2時間ルール」があります。緊急時訪問介護加算を算定する訪問には、このルールが適用されません。
当該加算の対象となる訪問介護の所要時間については、(4)④及び(5)の規定は適用されないものとする。したがって、所要時間が20分未満であっても、20分未満の身体介護中心型の所定単位数の算定及び当該加算の算定は可能であり、当該加算の対象となる訪問介護と当該訪問介護の前後に行われた訪問介護の間隔が2時間未満であった場合であっても、それぞれの所要時間に応じた所定単位数を算定する(所要時間を合算する必要はない。)ものとする。
| 論点 | 通常の訪問介護 | 緊急時訪問介護加算の対象 |
|---|---|---|
| 2時間未満の間隔 | 所要時間を合算する | 合算しない |
| 20分未満の身体介護 | 頻回訪問の要件(要介護度・認知症・担当者会議等)を満たす必要あり | 要件なしで算定可 |
朝9時に計画どおりの身体介護(30分)を提供。10時に家族から要請があり、10時30分に計画外の身体介護(20分未満)を緊急で提供した——というケース。
- 通常なら、間隔が2時間未満なので2回分を合算して1回として算定することになります
- しかし緊急時訪問介護加算を算定する場合は、9時の訪問と10時30分の訪問をそれぞれ別に算定でき、さらに100単位が付きます
この違いを知らずに合算していると、取れるはずの単位を毎回落とすことになります。
20分未満の身体介護に続く生活援助の例外にもなる
通知にはもうひとつ、この加算を例外として扱う規定があります。
なお、20分未満の身体介護に引き続き生活援助を行う場合は、引き続き行われる生活援助の単位数の加算を行うことはできない(緊急時訪問介護加算を算定する場合を除く。)。
通常は、20分未満の身体介護のあとに生活援助を行っても生活援助の加算はできません。しかし緊急時訪問介護加算を算定する場合は、この制限が外れます。
所要時間はケアマネが判断する
当該加算の対象となる訪問介護の所要時間については、サービス提供責任者と介護支援専門員が連携を図った上、利用者又はその家族等からの要請内容から、当該訪問介護に要する標準的な時間を、介護支援専門員が判断する。なお、介護支援専門員が、実際に行われた訪問介護の内容を考慮して、所要時間を変更することは差し支えない。
- 所要時間を決めるのは介護支援専門員
- 判断の材料は要請の内容から見た標準的な時間
- ただし実際に行われた内容を考慮して変更してよい
訪問介護の所要時間は原則として「計画に位置付けられた標準的な時間」で決まりますが、緊急時は計画がありません。そこでケアマネが要請内容から標準的な時間を判断するという建て付けになっています。
実務としては、サ責が要請の内容と実際に行った介助を伝え、ケアマネが時間区分を確定する——という流れになります。
記録すべき4項目
通知⑥が、記録すべき内容を具体的に挙げています。
緊急時訪問介護加算の対象となる指定訪問介護の提供を行った場合は、指定居宅サービス基準第19条に基づき、要請のあった時間、要請の内容、当該訪問介護の提供時刻及び緊急時訪問介護加算の算定対象である旨等を記録するものとする。
| 記録項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 要請のあった時間 | 24時間以内の要件を証明するため |
| 要請の内容 | 誰からの、どのような要請かを示すため |
| 訪問介護の提供時刻 | 計画外の時間帯であることと24時間以内を示すため |
| 緊急時訪問介護加算の算定対象である旨 | 通常の訪問と区別するため |
サービス提供記録には訪問時刻が残りますが、要請を受けた時刻まで書く様式になっていない事業所が多いのが実情です。
24時間以内という要件を後から証明できるのは、この記録だけです。緊急対応用の記録様式を1枚つくり、電話を受けた時点で記入する運用にしておくのが確実です。あわせて、ケアマネとの連携(事前/事後)の記録も残してください。
算定できない場面を整理する
| 場面 | 算定 | 理由 |
|---|---|---|
| 生活援助中心型を緊急で提供 | 不可 | 注16は「イについて」=身体介護中心型のみ |
| 通院等乗降介助を緊急で提供 | 不可 | 同上 |
| 要請から24時間を超えて訪問 | 不可 | 「24時間以内」の要件を満たさない |
| 計画に位置付けられた日時の訪問 | 不可 | 「計画に位置付けられていない」に当たらない |
| 事業所の判断で訪問(要請なし) | 不可 | 利用者・家族等からの要請が起点 |
| 1回の要請に対する2回目の訪問 | 不可 | 1回の要請につき1回が限度 |
| ケアマネと事前連携できなかった | 可 | 事後にケアマネが必要と判断すれば算定可 |
算定にあたっての実務ステップ
- 利用者・家族等からの要請を受けた時刻と内容を、その場で記録する
- 身体介護中心型で対応する内容かを確認する(生活援助のみでは算定できない)
- サービス提供責任者がケアマネジャーに連絡し、必要性の判断を得る
- 連絡がつかない場合は、やむを得ない事由として緊急対応を行い、事後にケアマネの判断を得る
- 要請から24時間以内に訪問する
- 訪問の提供時刻を記録する
- ケアマネが要請内容と実際の介助内容から所要時間(時間区分)を判断する
- 2時間ルールによる合算は行わず、前後の訪問とそれぞれ算定する
- 緊急時訪問介護加算の算定対象である旨を記録に明記する
1つ目と8つ目が要です。要請時刻を記録することと、2時間ルールで合算しないこと。この2つで、取りこぼしのほとんどが防げます。
よくある質問
緊急時訪問介護加算の単位数は?
1回につき100単位です。
生活援助中心型でも算定できますか?
できません。告示注16は「イについて」と定めており、身体介護中心型のみが対象です。
「緊急」とはすぐに駆けつけることですか?
違います。通知は「利用者又はその家族等から要請を受けてから24時間以内に行った場合」としています。24時間以内であれば対象になり得ます。
1回の要請で2回訪問した場合はどうなりますか?
加算は1回分です。1回の要請につき1回を限度として算定できるとされています。
ケアマネに事前連絡できなかった場合は算定できませんか?
算定できます。やむを得ない事由により事前の連携が図れない場合でも、事後に介護支援専門員が当該訪問は必要であったと判断すれば算定可能とされています。
2時間ルールで前後の訪問と合算しますか?
合算しません。通知は、間隔が2時間未満であってもそれぞれの所要時間に応じた所定単位数を算定し、所要時間を合算する必要はないとしています。
20分未満の身体介護でも算定できますか?
できます。頻回訪問の要件(要介護度・認知症の状況・サービス担当者会議での判断等)を満たしていなくても、20分未満の身体介護中心型の所定単位数と本加算を算定できるとされています。
20分未満の身体介護に続けて生活援助を行った場合は?
通常は生活援助の加算ができませんが、緊急時訪問介護加算を算定する場合は例外とされています。
所要時間は誰が決めますか?
介護支援専門員です。サービス提供責任者と連携したうえで、要請内容から標準的な時間を判断します。実際に行われた内容を考慮して変更しても差し支えありません。
何を記録すればよいですか?
要請のあった時間、要請の内容、訪問介護の提供時刻、緊急時訪問介護加算の算定対象である旨などです。
届出は必要ですか?
告示の注に体制の届出を求める規定は置かれていません。ただし請求上の取扱いは指定権者にご確認ください。
事業所の判断で訪問した場合は算定できますか?
できません。利用者またはその家族等からの要請に基づくことが要件です。
- 訪問介護の緊急時訪問介護加算は1回につき100単位
- 1回の要請につき1回が限度
- 対象は身体介護中心型のみ
- 生活援助中心型・通院等乗降介助では算定できない
- 体制の届出を求める規定は置かれていない
- 起点は利用者または家族等からの要請
- 「緊急に行った場合」=計画に位置付けられた日時以外の時間帯の訪問
- かつ要請を受けてから24時間以内に行うこと
- 「すぐ駆けつけること」ではなく24時間以内でよい
- 原則はサ責がケアマネと事前に連携し、ケアマネが必要と認めること
- やむを得ず事前連携できなくても、事後の判断で算定できる
- この加算の対象となる訪問には2時間ルールが適用されない
- 前後の訪問と間隔が2時間未満でも所要時間を合算しない
- 20分未満の身体介護でも頻回訪問の要件なしに算定できる
- 20分未満の身体介護に続く生活援助加算の制限も外れる
- 所要時間は介護支援専門員が要請内容から判断する
- 実際の内容を考慮して所要時間を変更してよい
- 記録は要請時刻・要請内容・提供時刻・加算算定対象である旨
- 「要請のあった時間」の記録が24時間以内の証明になる
- 取りこぼしを防ぐ鍵は、要請時刻の記録と合算しないこと
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号) 訪問介護費 注16(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス等に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号) 訪問介護費(4)訪問介護の所要時間、(5)20分未満の身体介護の算定について、(20)緊急時訪問介護加算について
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号) 第19条(提供した具体的なサービスの内容等の記録)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第36号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。「やむを得ない事由」に当たるかの判断、事後にケアマネジャーの判断を得る方法や記録の残し方、所要時間の確定方法については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。記録様式や連携の進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




