訪問介護の同一建物減算とは?10%・12%・15%の違いと90%判定を解説

訪問介護の同一建物減算は、10%・12%・15%の3段階です。事業所と同じ建物や隣の建物に住んでいる人に訪問すれば10%減、その建物に自分の事業所の利用者が50人以上いれば15%減、そして令和6年度改定で新設された「同一敷地内建物等の利用者が90%以上」に当たると12%減になります。
私は理学療法士として16年、訪問の現場にいます。介護支援専門員でもあるので、サービス付き高齢者向け住宅に併設された訪問介護事業所の請求相談も受けます。そこで毎回つまずくのが「うちは何%なのか」「50人ルールと90%ルールは重なるのか」という点です。この記事では、告示第19号の注12、大臣基準告示第95号の三の二、老企第36号 第二の2(16)という3つの原文を突き合わせて、どの利用者にどの率がかかるのかを切り分けます。
- 訪問介護の同一建物減算が10%・12%・15%の3段階である理由
- 「同一敷地内建物等」に当たるもの・当たらないもの
- 同一敷地内建物等ではない建物に適用される「20人以上」ルール
- 15%減算になる「50人以上」の数え方(日ごとの平均・小数点切り捨て)
- 令和6年度改定で新設された12%減算(90%以上)の判定期間と計算式
- 90%判定の分母・分子に誰が入り、誰が入らないのか
- 9月15日・3月15日という届出期限と、認められる「正当な理由」
- 位置関係だけで機械的に減算してはいけないと通知が書いていること
- 居宅介護支援の同一建物減算(一律5%)との違い
訪問介護の同一建物減算とは?3つの減算率を一覧で確認する
まず告示の原文を確認します。訪問介護費の注12です。
12 指定訪問介護事業所の所在する建物と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは指定訪問介護事業所と同一の建物(以下この注において「同一敷地内建物等」という。)に居住する利用者(指定訪問介護事業所における1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者を除く。)又は指定訪問介護事業所における1月当たりの利用者が同一の建物に20人以上居住する建物(同一敷地内建物等を除く。)に居住する利用者に対して、指定訪問介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の90に相当する単位数を算定し、指定訪問介護事業所における1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者に対して、指定訪問介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の85に相当する単位数を算定する。ただし、別に厚生労働大臣が定める基準に該当する指定訪問介護事業所が、同一敷地内建物等に居住する利用者(指定訪問介護事業所における1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者を除く。)に対して、指定訪問介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の88に相当する単位数を算定する。
一文が長いので、対象者ごとに割ると次のようになります。
| 対象となる利用者 | 算定する単位数 | 実質の減算率 |
|---|---|---|
| 同一敷地内建物等に居住(50人以上の建物を除く) | 所定単位数の90% | 10%減 |
| 同一敷地内建物等ではないが、同じ建物に利用者が20人以上いる | 所定単位数の90% | 10%減 |
| 同一敷地内建物等に居住し、その建物の利用者が50人以上 | 所定単位数の85% | 15%減 |
| 同一敷地内建物等に居住(50人以上の建物を除く)+事業所の提供割合が90%以上 | 所定単位数の88% | 12%減 |
いずれも「1回につき所定単位数の◯◯に相当する単位数を算定する」という書き方です。月額でまとめて引かれるのではなく、1回ごとの単位数そのものが小さくなります。そのうえで加算率(特定事業所加算など)が乗るので、減算後の単位数が土台になります。

「同一敷地内建物等」の定義|渡り廊下はアウト、広大な敷地はセーフ
老企第36号 第二の2(16)①が定義しています。
注12における「同一敷地内建物等」とは、当該指定訪問介護事業所と構造上又は外形上、一体的な建築物及び同一敷地内並びに隣接する敷地(当該指定訪問介護事業所と建築物が道路等を挟んで設置している場合を含む。)にある建築物のうち効率的なサービス提供が可能なものを指すものである。具体的には、一体的な建築物として、当該建物の一階部分に指定訪問介護事業所がある場合や当該建物と渡り廊下でつながっている場合など、同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物として、同一敷地内にある別棟の建築物や幅員の狭い道路を挟んで隣接する場合などが該当するものであること。
通知が例示しているものを整理します。
| 該当する(同一敷地内建物等) | 該当しない |
|---|---|
| 建物の1階部分に事業所がある | ・同一敷地であっても、広大な敷地に複数の建物が点在する場合 ・隣接する敷地であっても、道路や河川などに敷地が隔てられており、横断するために迂回しなければならない場合 |
| 建物と渡り廊下でつながっている | |
| 同一敷地内にある別棟の建築物 | |
| 幅員の狭い道路を挟んで隣接している |
ここで見落とされやすいのが、通知③の一文です。
当該減算は、指定訪問介護事業所と建築物の位置関係により、効率的なサービス提供が可能であることを適切に評価する趣旨であることに鑑み、本減算の適用については、位置関係のみをもって判断することがないよう留意すること。具体的には、次のような場合を一例として、サービス提供の効率化につながらない場合には、減算を適用すべきではないこと。
つまり「敷地が同じだから減算」ではありません。減算の趣旨は移動時間が短く効率的にサービスを提供できることの評価であり、効率化につながっていないなら適用すべきではない、と通知が明言しています。上に挙げた「広大な敷地に点在」「河川で隔てられて迂回が必要」は、あくまで一例です。
「効率化につながらないから減算しない」という判断を事業所が単独で下すのはリスクがあります。実地指導で覆れば返還です。敷地図・動線・実際の移動時間を資料にして、事前に都道府県(指定都市・中核市)に相談しておくのが安全です。
もうひとつ、通知④が重要です。「同一の建物については、当該建築物の管理、運営法人が当該指定訪問介護事業所の指定訪問介護事業者と異なる場合であっても該当する」。建物のオーナーが別法人でも減算されます。自社のサ高住ではないから対象外、という理解は誤りです。
同一敷地内建物等ではない建物の「20人以上」ルール
事業所から離れた建物でも、そこに自分の事業所の利用者が20人以上住んでいれば10%減算です。通知②が数え方を定めています。
- 合算しない。建築物ごとに数える。同一敷地内の別棟や道路を挟んで隣接する建物の利用者数を足し上げるものではない
- 1月間(暦月)の平均を使う
- 平均=その月の1日ごとの、その建物に居住する利用者の合計 ÷ その月の日数
- 小数点以下は切り捨て
- 指定相当第一号訪問事業と一体的に運営している場合は、第一号訪問事業の利用者も含めて計算する
たとえば30日の月で、1日あたりの人数が20人の日と19人の日が半々だったとします。合計585人÷30日=19.5人 → 切り捨てで19人。減算は適用されません。月末に1人増えただけで20人になるようなケースは、日ごとに数え直すと届かないことがあります。
15%減算になる「50人以上」の数え方
同一敷地内建物等のうち、その建物に自分の事業所の利用者が50人以上いる場合、その建物の利用者全員が15%減算です。通知⑤イが「利用者全員に適用される」と明記しています。
人数の数え方は20人ルールと同じで、1月間(暦月)の1日ごとの合計を日数で割り、小数点以下切り捨てです。


令和6年度改定で新設された12%減算(90%以上)
ここが令和6年度改定の目玉です。「別に厚生労働大臣が定める基準」の中身は、大臣基準告示第95号 三の二です。
三の二 訪問介護費における指定訪問介護事業所と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物又は指定訪問介護事業所と同一の建物(以下この号において「同一敷地内建物等」という。)に居住する利用者に対して指定訪問介護を行う指定訪問介護事業所の基準
正当な理由なく、指定訪問介護事業所において、算定日が属する月の前六月間に提供した指定訪問介護の提供総数のうち、同一敷地内建物等に居住する利用者に提供されたものの占める割合が百分の九十以上であること。
判定期間と減算適用期間
通知⑥イが年2回の判定サイクルを定めています。
| 判定期間 | 減算適用期間 |
|---|---|
| 前期:3月1日〜8月31日 | 10月1日〜3月31日 |
| 後期:9月1日〜2月末日 | 4月1日〜9月30日 |
判定期間が終わってから減算が始まるまでに1か月あります。8月末で判定 → 10月から減算という時間差があるので、9月中に居宅介護支援事業所へ単位数の変更を伝える必要があります。
計算式と、分母・分子に入らない人
(判定期間に指定訪問介護を提供した利用者のうち同一敷地内建物等に居住する利用者数(利用実人員))÷(判定期間に指定訪問介護を提供した利用者数(利用実人員))
ここで注意すべき点が2つあります。
ひとつめ。分子に入る「同一敷地内建物等に居住する利用者」からは、50人以上の建物に居住する利用者が除かれます。通知⑥の見出しに「(指定訪問介護事業所における1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者を除く。以下同じ。)」と書かれているためです。すでに15%減算がかかっている人は、12%減算の世界には入ってきません。
ふたつめ。「20人以上ルール」で減算されている人は、分子に入りません。分子は「同一敷地内建物等に居住する利用者」に限られており、離れた建物の20人以上ルール該当者は同一敷地内建物等ではないからです。事業所から離れた集合住宅を多く抱えていても、90%には近づきません。
大臣基準告示は「指定訪問介護の提供総数のうち、同一敷地内建物等に居住する利用者に提供されたものの占める割合」と書いており、これは回数ベースの表現に読めます。一方、老企第36号⑥ロの計算式は利用実人員です。両者の文言は一致していません。実務では具体的な計算式を示した通知に従うことになりますが、条文上そう整理されているわけではないので、判断に迷う場合は指定権者に確認してください。
届出と、認められる「正当な理由」
- 書類を作成する:判定期間が前期なら9月15日まで、後期なら3月15日までに作成する
- 記載する4項目:①判定期間に訪問介護を提供した利用者の総数(利用実人員)、②同一敷地内建物等に居住する利用者数(利用実人員)、③計算した割合、④90%以上の場合で正当な理由があるときは、その理由
- 90%以上なら都道府県知事へ提出する
- 90%未満でも書類は2年間保存する
90%未満だった年も書類を作って保存しておく義務がある点は、見落とされやすいところです。作っていなければ、実地指導で「判定していない」と指摘されます。
正当な理由として通知が例示しているのは次の3つです。
- 特別地域訪問介護加算を受けている事業所である場合
- 判定期間の1月当たりの延べ訪問回数が200回以下であるなど事業所が小規模である場合
- その他正当な理由と都道府県知事が認めた場合
ただし通知は「都道府県知事が当該理由を不適当と判断した場合は減算を適用するものとして取り扱う」と書いています。理由を出せば自動的に免除される仕組みではありません。また、判断にあたっては「地域的な事情等も含め諸般の事情を総合的に勘案」するとされており、上の3つ以外が認められる余地も残されています。
居宅介護支援の同一建物減算との違い
ケアマネジャーとして両方の請求を見ていると、この2つを混同している人が多いと感じます。同じ「同一建物減算」でも、中身はかなり違います。
| 項目 | 訪問介護 | 居宅介護支援 |
|---|---|---|
| 減算率 | 10%/12%/15% | 一律5%(所定単位数の95%) |
| 単位 | 1回につき | 1月につき |
| 50人以上ルール | あり(15%) | なし |
| 90%以上ルール | あり(12%) | なし |
| 20人以上の数え方 | 1日ごとの平均・小数点切り捨て | その月に提出した給付管理票に係る利用者の合計 |
| 同一敷地内建物等の定義 | ほぼ同文(一体的な建築物・同一敷地・隣接敷地) | |
| 位置関係のみで判断しない旨 | どちらにも明記あり | |
定義と「効率化につながらないなら適用しない」という考え方は共通ですが、人数の数え方が違います。訪問介護は日ごとの平均で切り捨て、居宅介護支援は給付管理票ベースの単純合計です。同じ建物・同じ月でも、訪問介護は19人、居宅介護支援は20人という結果になり得ます。
訪問介護の同一建物減算で実務がつまずく場面
| 場面 | 取扱い |
|---|---|
| 建物のオーナーが別法人 | 減算の対象になる(通知④) |
| 同じサ高住に、事業所から離れた別棟がある | 建築物ごとに判定。合算しない(通知②イ) |
| 月の途中で入居者が増減した | 1日ごとの人数を日数で割る。月末時点の人数ではない |
| 19.9人だった | 切り捨てで19人。減算なし |
| 50人以上の建物の利用者 | 15%のみ。12%の判定からは分子・対象ともに除外 |
| 離れた建物の20人以上ルール該当者 | 10%。90%判定の分子には入らない |
| 判定が90%未満だった | 書類は作成し、2年間保存する |
| 特別地域訪問介護加算を算定している | 正当な理由として例示されている(自動免除ではない) |
10%と15%が同時にかかることはありますか?
ありません。告示の注12が「同一敷地内建物等に居住する利用者(50人以上居住する建物に居住する利用者を除く。)」というかっこ書きで対象者を分けているため、ひとりの利用者に適用される率はひとつです。
12%減算になったら、10%減算はどうなりますか?
12%に置き換わります。注12のただし書きが「同一敷地内建物等に居住する利用者に対して、指定訪問介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の88に相当する単位数を算定する」としているためです。10%と12%が足し合わされるわけではありません。
建物の所有者が自分の法人でなければ減算されませんか?
減算されます。老企第36号 第二の2(16)④が「当該建築物の管理、運営法人が当該指定訪問介護事業所の指定訪問介護事業者と異なる場合であっても該当する」と明記しています。
同一敷地内に建物がありますが、敷地が広くて移動に時間がかかります。それでも減算ですか?
通知③が「同一敷地であっても、広大な敷地に複数の建物が点在する場合」を、同一敷地内建物等に該当しないものの例として挙げています。ただし該当・非該当を最終的に判断するのは指定権者です。敷地図や実際の移動時間の記録を用意したうえで、事前に相談してください。
90%の判定は、訪問回数と利用実人員のどちらで計算しますか?
老企第36号⑥ロは利用実人員による計算式を示しています。一方、大臣基準告示第95号 三の二は「提供総数のうち…提供されたものの占める割合」という書き方で、文言は一致していません。実務では通知の計算式によることになりますが、条文上の整合が取れているわけではないため、迷う場合は指定権者に確認してください。
90%未満だった場合、何もしなくてよいですか?
書類の作成と2年間の保存が必要です。通知⑥ハが「90%以上でなかった場合についても、当該書類は、各事業所において2年間保存する必要がある」としています。提出が不要なだけです。
小規模なら90%を超えても減算されませんか?
自動的に免除されるわけではありません。「判定期間の1月当たりの延べ訪問回数が200回以下であるなど事業所が小規模である場合」は正当な理由として例示されていますが、通知は「都道府県知事が当該理由を不適当と判断した場合は減算を適用する」としています。
減算後の単位数に、特定事業所加算の加算率をかけるのですか?
そのとおりです。同一建物減算は基本部分の所定単位数を減らす仕組みで、加算率はその後の単位数に対して働きます。順序を逆にすると請求額が変わるので注意してください。
訪問介護と居宅介護支援を同じ建物で運営しています。両方とも減算ですか?
それぞれの基準で判定します。定義はほぼ同文ですが、訪問介護は日ごとの平均(切り捨て)、居宅介護支援は給付管理票に係る利用者の合計と数え方が異なるため、結果が食い違うことがあります。減算率も訪問介護は10〜15%、居宅介護支援は一律5%です。
第一号訪問事業の利用者も人数に含めますか?
20人以上ルールについては、通知②ロが「指定相当第一号訪問事業と一体的な運営をしている場合、第一号訪問事業の利用者を含めて計算すること」と明記しています。50人以上ルールを定めた⑤ロには同じ記述がなく、条文からは同じ扱いと断定できません。該当しそうな場合は指定権者に確認してください。
- 訪問介護の同一建物減算は10%・12%・15%の3段階で、ひとりの利用者に重複適用されない
- 同一敷地内建物等に居住=10%減(50人以上の建物を除く)
- 同一敷地内建物等以外でも、同じ建物に利用者が20人以上いれば10%減
- 同一敷地内建物等に利用者が50人以上いる建物は、その建物の利用者全員が15%減
- 同一敷地内建物等への提供割合が90%以上なら12%減(令和6年度改定で新設)
- 20人・50人の人数は1日ごとの合計を日数で割った平均、小数点以下切り捨て
- 90%判定の分子には、50人以上建物の利用者も、離れた建物の20人以上ルール該当者も入らない
- 判定期間は3月〜8月/9月〜2月、減算適用は10月〜3月/4月〜9月
- 書類は9月15日・3月15日までに作成。90%以上なら提出、未満でも2年間保存
- 正当な理由は特別地域訪問介護加算・延べ訪問回数200回以下等が例示。自動免除ではない
- 建物の管理・運営法人が別でも減算の対象になる
- 位置関係のみで判断せず、効率化につながらない場合は減算を適用すべきでないと通知が明記
- 居宅介護支援の同一建物減算は一律5%で、50人・90%ルールはない
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問介護費 注12
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)三の二
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)第二の2(16)、第三の10
- 指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第20号)別表 居宅介護支援費 注5
※本記事の減算率・要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の請求にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。同一敷地内建物等への該当・非該当の判断や正当な理由の可否は、都道府県(指定都市・中核市)によって異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務上の留意点に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。


