特養の配置医師緊急時対応加算とは?325・650・1300単位の要件を解説

特養の配置医師緊急時対応加算は、通常の勤務時間外325単位・早朝/夜間650単位・深夜1,300単位(いずれも1回につき)です。特養の加算のなかでは1回あたりの単価が突出して高く、しかも算定回数の上限が告示に定められていません。
ただし、算定できる場面はかなり限定されています。定期的・計画的に施設へ来て診療した場合は算定できません。「看護・介護に当たる者が電話等で直接訪問を依頼し、配置医師が必要性を認めて可及的速やかに赴いた」場合だけです。往診の実態がないと成立しません。
そしてもう1つ、前提条件があります。看護体制加算(Ⅱ)を算定していないと、この加算は算定できません。告示に明記されています。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の「カ 配置医師緊急時対応加算」、厚生労働大臣が定める施設基準(平成12年厚生省告示第96号)第54号の2、老企第40号第二の5(34)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 325単位・650単位・1,300単位の3区分と、時間帯の切り分け
- 早朝・夜間・深夜の定義(午前6〜8時/午後6〜10時/午後10〜午前6時)
- 「通常の勤務時間外」が何を指すのか
- 看護体制加算(Ⅱ)が算定の前提条件であること
- 定期的・計画的な訪問診療では算定できないこと
- 唯一の例外(事前に取り決めた夜間の死亡診断)
- 診療開始時刻で判定すること、および長時間診療の例外
- 施設基準の2要件と、取決めの年1回以上の見直し
単位数は325・650・1,300単位の3区分
告示21号の「カ 配置医師緊急時対応加算」は、次のとおりです。
| 診療を行った時間帯 | 単位数(1回につき) |
|---|---|
| 配置医師の通常の勤務時間外 | 325単位 |
| 早朝または夜間 | 650単位 |
| 深夜 | 1,300単位 |
時間帯の定義は、告示の注と老企第40号④で示されています。24時間を並べると、こうなります。
| 時間帯 | 区分 | 単位数 |
|---|---|---|
| 午前0時〜午前6時 | 深夜 | 1,300単位 |
| 午前6時〜午前8時 | 早朝 | 650単位 |
| 午前8時〜午後6時 | この時間帯のうち、配置医師の勤務時間外 | 325単位 |
| 午後6時〜午後10時 | 夜間 | 650単位 |
| 午後10時〜午前0時 | 深夜 | 1,300単位 |
告示は、通常の勤務時間外を「配置医師と施設の間であらかじめ定められた配置医師が当該施設において勤務する時間以外の時間(早朝・夜間・深夜を除く)」と定義しています。
つまり午前8時〜午後6時の日中のうち、あらかじめ決めた配置医師の勤務時間に当たらない時間です。
たとえば配置医師が「毎週火曜の午後2時〜4時」に勤務すると取り決めている場合、木曜の午前10時に呼び出して診療してもらえば325単位。火曜の午後3時に診てもらっても、それは勤務時間内なので算定できません。
この前提として、配置医師の勤務時間があらかじめ明確に定められている必要があります。「必要に応じて来てもらう」という曖昧な取り決めでは、勤務時間内外の線引きができません。
判定は「診療の開始時刻」。ただし長時間診療には例外がある
老企第40号④は、判定方法を明確にしています。
なお、診療の開始時刻が加算の対象となる時間帯にある場合に、当該加算を算定すること。診療時間が長時間にわたる場合に、加算の対象となる時間帯における診療時間が全体の診療時間に占める割合がごくわずかな場合においては、当該加算は算定できない。
原則は診療の開始時刻です。午後9時50分に診療を開始して午後11時まで続いた場合、開始時刻は夜間なので650単位。深夜にまたがっても1,300単位にはなりません。
ただし但し書きがあります。加算対象の時間帯の診療時間が「ごくわずか」な場合は算定できません。午後5時58分に診療を開始して午後8時まで続けた場合、夜間に入る前の2分間を根拠に……という主張は通らないということです。
「ごくわずか」の具体的な閾値は示されていません。診療を依頼した時間と診療を行った時間を記録し、説明できる状態にしておくことが実務上の対応になります。
算定できるのは「呼ばれて駆けつけた」場合だけ
この加算の性格を決めているのが、老企第40号①です。
配置医師緊急時対応加算は、入所者の看護・介護に当たる者が、配置医師に対し電話等で直接施設への訪問を依頼し、当該配置医師が診療の必要性を認めた場合に、可及的速やかに施設に赴き診療を行った場合に算定できるものであり、定期的ないし計画的に施設に赴いて診療を行った場合には算定できない。
成立に必要な要素を分解すると、4つあります。
- 看護・介護に当たる者が依頼する
事務職や管理者が呼ぶのではなく、実際にケアに当たっている職員が依頼する。 - 電話等で直接、訪問を依頼する
「相談」ではなく「訪問の依頼」であること。 - 配置医師が診療の必要性を認める
医師側の判断が入る。依頼すれば必ず算定できるわけではない。 - 可及的速やかに施設に赴き診療する
翌日の定期訪問のついでに診た、では要件を満たさない。
唯一の例外は「事前に決めた夜間の死亡診断」
通知①には但し書きがあります。
ただし、医師が、死期が迫った状態であると判断し、施設の職員と家族等に説明したうえで、当該入所者が死亡した場合について、早朝や日中の診療終了後の夜間に施設を訪問し死亡診断を行うことを事前に決めている場合には、この限りでない。
これは実務的に重要な例外です。看取り期の入所者が夜間に亡くなった場合、「事前に決めていた」訪問であっても算定できます。本来なら「計画的な訪問だから算定不可」となるところを、明示的に除いています。
但し書きを読むと、次の3つがそろっている必要があります。
① 医師が死期が迫った状態であると判断していること
② その旨を施設の職員と家族等に説明していること
③ 死亡時に夜間訪問して死亡診断を行うことを事前に決めていること
②の「家族等への説明」まで要件に入っている点に注意してください。医師と施設の間で決めているだけでは足りません。看取り介護加算の説明・同意のプロセスと一緒に進めるのが自然です。
ちびウルフ深夜に亡くなって、先生に来てもらって死亡診断していただきました。1,300単位を算定していいんですか?
リハウルフ条件つきで算定できます。事前に「夜間に訪問して死亡診断を行う」ことを決めており、それを職員と家族に説明していれば、通知の但し書きに該当します。看取り介護加算(Ⅱ)と同じ月に、この加算も算定できるということです。
逆に、何も取り決めがないまま急に亡くなって、慌てて先生に来ていただいた——という場合は、そもそも「看護・介護に当たる者が訪問を依頼し、医師が必要性を認めて駆けつけた」という本則のほうで整理できます。どちらのルートで算定するのか、記録の書き方が変わります。
看護体制加算(Ⅱ)が前提条件
告示21号「カ」の注は、最後にこう書いています。
ただし、看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合は、算定しない。
看護体制加算(Ⅱ)は、看護職員の人数要件(常勤換算25:1以上かつ人員基準+1以上)と24時間連絡できる体制が要件です。夜間に施設側で状態を判断し、医師を呼ぶかどうかを決められる看護体制があることが、この加算の土台になっています。
加算の連鎖を整理すると、次のようになります。
| 順序 | 加算 | 前提 |
|---|---|---|
| 1 | 看護体制加算(Ⅱ) | — |
| 2 | 配置医師緊急時対応加算 | 看護体制加算(Ⅱ)の算定 |
| 3 | 看取り介護加算(Ⅱ) | 配置医師緊急時対応加算の施設基準を満たすこと |
3段目は「施設基準を満たすこと」であって、加算を実際に算定した実績までは求められていません。とはいえ体制としては地続きです。
施設基準は2つ。複数配置か、協力医療機関との連携か
施設基準(告示96号)第54号の2(第44号の2を準用)は、次の2つを求めています。
- 配置医師と施設の間で、具体的な取決めがなされていること
入所者に対する注意事項や病状等についての情報共有、曜日や時間帯ごとの医師との連絡方法、診療を依頼する場合の具体的状況等について。 - 複数名の配置医師を置いていること、または配置医師と協力医療機関の医師が連携し、施設の求めに応じ24時間対応できる体制を確保していること。
2つ目は「または」なので、どちらか一方で構いません。配置医師を複数名確保するのが難しい施設でも、協力医療機関との連携で要件を満たせます。
取決めは年1回以上の見直しが必要
老企第40号⑤は、取決めの内容と見直しの頻度を定めています。
算定に当たっては、配置医師と施設の間で、緊急時の注意事項や病状等についての情報共有の方法、曜日や時間帯ごとの医師との連携方法や診察を依頼するタイミング等に関する取り決めを事前に定め、1年に1回以上見直しをすることにより、24時間配置医師又はその他の医師による対応が可能な体制を整えることとする。
取決めに盛り込むべき内容は3つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報共有 | 緊急時の注意事項や病状等についての情報共有の方法 |
| 連携方法 | 曜日や時間帯ごとの医師との連携方法 |
| 依頼基準 | 診察を依頼するタイミング |
とくに「曜日や時間帯ごとの」という限定に注目してください。一律の連絡先を1つ決めるのではなく、曜日・時間帯ごとに誰にどう連絡するかを整理しておくことが求められています。
記録と届出の要件
算定にあたって必要な記録・届出は3つあります。
- 診療を行った理由の記録(告示の注に明記)
- 施設が診療を依頼した時間、配置医師が診療を行った時間、内容の記録(老企第40号③)
- 事前に氏名等を届け出た配置医師が実際に訪問し診察したこと(老企第40号②)
通知②は「事前に氏名等を届出た配置医師が実際に訪問し診察を行ったときに限り算定できる」としています。
協力医療機関の医師に来てもらった場合、その医師が配置医師として届出されていなければ算定できません。施設基準のほうは「配置医師と協力医療機関の医師が連携し24時間対応できる体制」でよいのですが、実際に算定できるのは届出済みの配置医師が診療したときだけです。
体制要件と算定要件で対象が違うため、ここは取り違えやすいポイントです。
記録については、依頼した時間と診療した時間の両方が必要です。前述の「診療開始時刻で判定」「長時間診療の例外」を説明するためにも、この2つの時刻がそろっていないと成立しません。
算定回数に上限はない
告示の注には、算定回数の制限が定められていません。要件を満たす診療が行われるたびに、1回につき算定できます。
看取り期に入った入所者について、深夜に複数回の往診が必要になるケースもあります。それぞれが「呼ばれて駆けつけた診療」であり、記録が残っていれば、それぞれ算定できるという整理です。
ただし、当然ながら実態が伴っていることが前提です。1回1,300単位という単価は、特養の加算のなかでも突出しています。実地指導では、依頼記録・診療記録・診療理由の3点セットが確認されると考えておくべきです。
介護予防(要支援)には存在しない
特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版の配置医師緊急時対応加算は存在しません。
また、この加算は特養と地域密着型特養に設定されているもので、老健や介護医療院にはありません。老健・介護医療院は医師の配置が人員基準上必須で、常勤医師がいることが前提の施設だからです。特養の配置医師(嘱託医)が非常勤であることを踏まえた加算だといえます。
配置医師緊急時対応加算の単位数を教えてください。
通常の勤務時間外が1回325単位、早朝または夜間が1回650単位、深夜が1回1,300単位です。早朝は午前6時〜8時、夜間は午後6時〜10時、深夜は午後10時〜午前6時と定義されています。
「通常の勤務時間外」とはいつですか?
配置医師と施設があらかじめ定めた勤務時間以外の時間から、早朝・夜間・深夜を除いた時間帯です。実質的には午前8時〜午後6時のうち、配置医師の勤務日・勤務時間に当たらない時間を指します。
診療が時間帯をまたいだ場合、どの区分になりますか?
原則として診療の開始時刻で判定します。ただし、加算の対象となる時間帯における診療時間が全体に占める割合がごくわずかな場合は算定できません。
定期の往診日に急変があり、そのまま診てもらいました。算定できますか?
算定できません。通知は「定期的ないし計画的に施設に赴いて診療を行った場合には算定できない」としています。看護・介護に当たる者が電話等で訪問を依頼し、医師が必要性を認めて可及的速やかに赴いた場合に限られます。
看取り期の方が深夜に亡くなり、先生に死亡診断に来ていただきました。算定できますか?
事前に「死期が迫った状態」と医師が判断し、施設の職員と家族等に説明したうえで、夜間に訪問して死亡診断を行うことを事前に決めていた場合は算定できます。この3条件がそろっていない場合は、通常の要件(依頼を受けて駆けつけた診療)で判断します。
協力医療機関の医師に来てもらいました。算定できますか?
その医師が配置医師として事前に氏名等を届け出ていなければ算定できません。施設基準としては「配置医師と協力医療機関の医師が連携し24時間対応できる体制」でよいのですが、算定できるのは届出済みの配置医師が診療した場合に限られます。
看護体制加算(Ⅱ)を算定していなくても取れますか?
取れません。告示に「看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合は、算定しない」と明記されています。まず看護体制加算(Ⅱ)の要件を満たすことが先です。
配置医師は複数名必要ですか?
「複数名の配置医師を置いていること」または「配置医師と協力医療機関の医師が連携し、施設の求めに応じ24時間対応できる体制を確保していること」のどちらかで構いません。複数名の確保が難しい施設でも、協力医療機関との連携で要件を満たせます。
算定できる回数に上限はありますか?
告示に回数の制限は定められていません。要件を満たす診療が行われるたびに1回につき算定できます。ただし依頼記録・診療記録・診療理由の記録が必要です。
老健や介護医療院にもこの加算はありますか?
ありません。特養と地域密着型特養に設定されている加算です。老健・介護医療院は人員基準上、常勤の医師配置が前提となっているためです。
- 配置医師緊急時対応加算は、勤務時間外325単位・早朝/夜間650単位・深夜1,300単位(1回につき)
- 早朝は午前6〜8時、夜間は午後6〜10時、深夜は午後10時〜午前6時
- 「通常の勤務時間外」は、あらかじめ定めた配置医師の勤務時間以外(早朝・夜間・深夜を除く)
- 前提として、配置医師の勤務時間が明確に定められている必要がある
- 判定は診療の開始時刻。ただし対象時間帯の診療がごくわずかなら算定できない
- 看護・介護に当たる者が電話等で訪問を依頼し、医師が必要性を認めて速やかに赴いた場合に限る
- 定期的・計画的な訪問診療では算定できない
- 例外は「死期が迫った状態」と医師が判断し、職員と家族等に説明したうえで事前に決めた夜間の死亡診断
- 例外の適用には家族等への説明も要件に含まれる
- 看護体制加算(Ⅱ)を算定していないと算定できない
- 看護体制加算(Ⅱ)→配置医師緊急時対応加算→看取り介護加算(Ⅱ)という連鎖になっている
- 施設基準は「取決めの整備」と「複数配置または協力医療機関との24時間連携」の2つ
- 取決めは曜日・時間帯ごとの連携方法まで定め、年1回以上見直す
- 事前に氏名等を届け出た配置医師が診療した場合のみ算定できる
- 体制要件と算定要件で対象となる医師の範囲が違う
- 診療理由・依頼した時間・診療した時間・内容の記録が必要
- 算定回数の上限は告示に定められていない
- 介護予防(要支援)版は存在せず、老健・介護医療院にもこの加算はない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」カ(配置医師緊急時対応加算)、ヨ(看取り介護加算)、注10(看護体制加算)
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成12年厚生省告示第96号)第54号の2(指定介護福祉施設サービスにおける配置医師緊急時対応加算に係る施設基準)、第44号の2(準用元)、第54号(看取り介護加算に係る施設基準)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(34)配置医師緊急時対応加算について、同(35)看取り介護加算について
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項第1号、第28条第1項
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。「加算の対象となる時間帯における診療時間が全体の診療時間に占める割合がごくわずかな場合」の具体的な水準は通知に示されておらず、指定権者によって判断が異なる可能性があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。記録の残し方や取決めの整備方法に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




