訪問看護の看護体制強化加算は、(Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位の月額加算です。医療ニーズの高い利用者を受けているステーションを評価する加算で、要件は「実績の割合」で判定されます。つまり今月の努力ではなく、過去6か月・12か月の積み上げで取れるかどうかが決まる加算です。

この記事では、大臣基準告示(平成27年厚生労働省告示第95号)第9号と老企第36号の原文にもとづいて、4つの要件を1つずつ整理します。とくに割合の母集団は延べ数ではなく実人数であることステーションと医療機関では要件の数が違うこと、そしてこの加算がリハビリ職の8単位減算を回避する要件にもなっていることを扱います。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 看護体制強化加算(Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位という単位数
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)を分ける唯一の違いはターミナルケア加算の人数であること
  • 4つの要件(緊急時50%・特別管理20%・ターミナル・看護職員60%)
  • 割合の計算は延べ数ではなく実人数で行うこと(告示の原文つき)
  • 緊急時と特別管理は前6か月間、ターミナルは前12か月間で見ること
  • 医療機関では看護職員60%の要件が不要なこと
  • 介護予防と一体運営なら看護職員の割合を合算して計算できること
  • 要支援では区分がなく100単位であること
  • この加算がリハビリ職の8単位減算の回避要件になること
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できないこと
ちびウルフちびウルフ

550単位って大きいですね。うちも取れないでしょうか?

リハウルフリハウルフ

まずターミナルケア加算を年間何人算定しているかを数えてみてください。(Ⅰ)は12か月で5名以上、(Ⅱ)は1名以上。ここが最初の関門です。看取りをほとんど受けていないステーションだと、(Ⅱ)すら届かないことがあります。

訪問看護の看護体制強化加算とは?550単位・200単位

告示の条文です。指定居宅サービス介護給付費単位数表の訪問看護費「ト」に定められています。

「ト 看護体制強化加算
注 イ及びロについて、(中略)届出を行った指定訪問看護事業所が、医療ニーズの高い利用者への指定訪問看護の提供体制を強化した場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) 看護体制強化加算(Ⅰ) 550単位 (2) 看護体制強化加算(Ⅱ) 200単位」
(指定居宅サービス介護給付費単位数表 訪問看護費 トより引用)

ただし書きのとおり、(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できません。要件を満たす上位の区分を算定します。

なお、この加算の対象は「イ及びロ」——つまり訪問看護ステーションと病院・診療所です。定期巡回・随時対応型訪問介護看護と連携する類型(ハ・月額2,961単位)には付きません。

4つの要件|(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは1点だけ

要件は大臣基準告示第9号に定められています。訪問看護ステーションの場合、(Ⅰ)は次の4つをすべて満たす必要があります。

要件内容評価期間
①緊急時訪問看護加算の割合利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者が50%以上前6か月間
②特別管理加算の割合利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者が20%以上前6か月間
③ターミナルケア加算の人数ターミナルケア加算を算定した利用者が5名以上前12か月間
④看護職員の割合従業者の総数のうち、看護職員の占める割合が60%以上

(Ⅱ)200単位は、③のターミナルケア加算の人数が「1名以上」に緩和されるだけで、①②④は同じです。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の分岐点はターミナルだけ①緊急時50%以上、②特別管理20%以上、④看護職員60%以上——この3つは(Ⅰ)(Ⅱ)共通です。違いは前12か月間のターミナルケア加算が5名以上か、1名以上か。それだけです。逆に言えば、(Ⅱ)を算定できている事業所が(Ⅰ)を目指すなら、看取りの受け入れ体制だけが課題ということになります。

要件①②の原文

「(一) 算定日が属する月の前六月間において、指定訪問看護事業所における利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算(中略)を算定した利用者の占める割合が百分の五十以上であること。
(二) 算定日が属する月の前六月間において、指定訪問看護事業所における利用者の総数のうち、特別管理加算(中略)を算定した利用者の占める割合が百分の二十以上であること。」
(厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第九号イ(1)より引用)

要件④の原文と、介護予防との合算

「(四) 当該事業所において指定訪問看護の提供に当たる従業者(中略)の総数のうち、(中略)看護職員の占める割合が百分の六十以上であること。ただし、指定訪問看護事業者が、(中略)指定介護予防訪問看護事業所の指定を併せて受け、かつ、指定訪問看護の事業と指定介護予防訪問看護の事業とが同一の事業所において一体的に運営されている場合における、当該割合の算定にあっては、指定訪問看護を提供する従業者と指定介護予防訪問看護を提供する従業者の合計数のうち、看護職員の占める割合によるものとする。」
(同 第九号イ(1)(四)より引用)

ほとんどのステーションは介護予防の指定も併せて受け、一体的に運営しています。その場合は両方の従業者を合算した母数で60%を判定します。

リハビリ職の割合が40%を超えると届かない要件④は、裏返せばPT・OT・STなどの看護職員以外が40%を超えていると算定できないということです。リハビリ職の比率が高いステーションでは、ここが構造的な壁になります。この点は、後述するリハビリ職の8単位減算とも連動します。

割合は「実人数」で計算する

届出前にもっとも間違えやすいのが、①②の割合の計算方法です。老企第36号が明確に示しています。

「① (中略)以下のアに掲げる数をイに掲げる数で除して、算定日が属する月の前6月間当たりの割合を算出すること。
ア 指定訪問看護事業所における緊急時訪問看護加算を算定した実利用者数/イ 指定訪問看護事業所における実利用者の総数
③ ①及び②に規定する実利用者数は、前6月間において、当該事業所が提供する訪問看護を2回以上利用した者又は当該事業所で当該加算を2回以上算定した者であっても、1として数えること。」
(平成12年3月1日老企第36号 第二の4(28)より引用)

つまり、延べ人数ではなく実人数です。半年間毎月緊急時訪問看護加算を算定していた利用者も、「1人」としてカウントします。

  • やってはいけない計算:6か月分の請求データで緊急時訪問看護加算の算定件数を足す(延べ数になってしまう)
  • 正しい計算:6か月間に一度でも緊急時訪問看護加算を算定した「人」を重複なく数える

延べ数で計算すると、割合が実態より高く出ることも低く出ることもあります。毎月継続して算定している利用者が多いほど、延べ数と実人数のズレは大きくなります。届出後に指導で指摘され、返還になるケースがあるので、必ず実人数で計算してください。

医療機関(病院・診療所)は要件が1つ少ない

訪問看護ステーション以外の指定訪問看護事業所——つまり病院・診療所が行う訪問看護については、要件が異なります。

要件ステーション病院・診療所
①緊急時訪問看護加算 50%以上必要必要
②特別管理加算 20%以上必要必要
③ターミナルケア加算(Ⅰ)5名/(Ⅱ)1名以上必要必要
④看護職員60%以上必要不要

大臣基準告示は「指定訪問看護ステーション以外である指定訪問看護事業所にあっては、(1)(一)から(三)までに掲げる基準のいずれにも適合すること」としており、④が除かれています。病院・診療所はもともと看護職員中心の組織なので、この要件を課す必要がないという整理でしょう。

要支援は区分なしの100単位|ターミナル要件も不要

介護予防訪問看護の看護体制強化加算は、区分がなく一律100単位です。要介護の550単位・200単位と比べると、かなり低く設定されています。

要件については、大臣基準告示が「第九号イ(1)((三)を除く。)(中略)の規定を準用する」としています。(三)はターミナルケア加算の人数要件です。介護予防訪問看護にはそもそもターミナルケア加算が存在しないため、要件から外されています。

要件要介護要支援
①緊急時(介護予防)訪問看護加算 50%以上必要必要
②特別管理加算 20%以上必要必要
③ターミナルケア加算の人数必要要件なし
④看護職員60%以上必要必要(ステーションの場合)
単位数550単位/200単位100単位

要支援の利用者について、緊急時介護予防訪問看護加算を50%以上・特別管理加算を20%以上算定しているという状況は、実際にはそう多くありません。要支援で医療ニーズが高いケースが一定数いる事業所でなければ、100単位には届きにくいのが実情です。

リハビリ職の8単位減算を回避する要件にもなる

看護体制強化加算には、単位数以外の意味があります。PT・OT・STによる訪問看護の8単位減算を回避する要件の1つになっていることです。

「前年の4月から当該年の3月までの期間の看護職員の訪問回数が理学療法士等による訪問回数以上である場合であっても、算定日が属する月の前6月間において、緊急時訪問看護加算(Ⅰ)、緊急時訪問看護加算(Ⅱ)、特別管理加算(Ⅰ)、特別管理加算(Ⅱ)、看護体制強化加算(Ⅰ)及び看護体制強化加算(Ⅱ)のいずれも算定していない場合は、理学療法士等の訪問看護費から8単位を減算する。」
(老企第36号 第二の4(4)⑧より引用)

看護体制強化加算を算定していれば、この条件は自動的にクリアされます。もっとも、看護体制強化加算の要件①②に「緊急時訪問看護加算50%以上」「特別管理加算20%以上」が入っているので、看護体制強化加算を取れる事業所は、そもそもこの減算の心配がありません。詳細は訪問看護のリハビリ減算をわかりやすく解説【令和6年度介護報酬改定】で扱っています。

加算を積み上げる順番看護体制強化加算はゴールであって、スタートではありません。まず緊急時訪問看護加算の届出、次に特別管理加算の算定漏れをなくす。この2つの実績が半年分たまってはじめて、看護体制強化加算の土俵に乗ります。要件①②は、それぞれ独立した加算としても収益になるので、順番に積み上げるのが現実的です。
よくある質問
看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?

前12か月間のターミナルケア加算の算定人数だけです。(Ⅰ)550単位は5名以上、(Ⅱ)200単位は1名以上。それ以外の要件(緊急時訪問看護加算50%以上、特別管理加算20%以上、看護職員60%以上)は同じです。

(Ⅰ)と(Ⅱ)を両方算定できますか?

できません。告示に「いずれかの加算を算定している場合においては、その他の加算は算定しない」と明記されています。要件を満たす上位の区分を算定します。

割合の計算は延べ人数ですか、実人数ですか?

実人数です。老企第36号は「前6月間において、当該事業所が提供する訪問看護を2回以上利用した者又は当該事業所で当該加算を2回以上算定した者であっても、1として数えること」としています。半年間毎月算定していた利用者も1人としてカウントします。

評価する期間は何か月ですか?

要件によって違います。緊急時訪問看護加算の割合と特別管理加算の割合は「算定日が属する月の前6か月間」、ターミナルケア加算の人数は「算定日が属する月の前12か月間」です。

病院・診療所でも算定できますか?

算定できます。ただし要件が1つ少なく、看護職員60%以上の要件が課されません。緊急時訪問看護加算50%以上、特別管理加算20%以上、ターミナルケア加算の人数要件の3つを満たせば算定できます。

看護職員60%の分母には介護予防の職員も入りますか?

訪問看護と介護予防訪問看護の指定を併せて受け、同一の事業所で一体的に運営されている場合は、両方の従業者を合算した数を分母として計算します。多くのステーションはこの形に該当します。

リハビリ職が多いステーションでも算定できますか?

看護職員の割合が60%以上であることが要件なので、PT・OT・STなど看護職員以外が40%を超えていると(ステーションの場合)算定できません。リハビリ職の比率が高い事業所では、ここが構造的な制約になります。

要支援の人にも算定できますか?

算定できますが、区分がなく100単位です。また要件からターミナルケア加算の人数が除かれ、緊急時介護予防訪問看護加算50%以上・特別管理加算20%以上・看護職員60%以上の3つになります。

定期巡回と連携する訪問看護(訪問看護Ⅰ5)でも算定できますか?

できません。告示は「イ及びロについて」と定めており、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と連携する類型(ハ)は対象外です。

看護体制強化加算はリハビリ職の8単位減算の回避に役立ちますか?

役立ちます。8単位減算の回避条件の1つが「前6か月間に緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれかを算定していること」だからです。ただし看護体制強化加算の要件自体に緊急時訪問看護加算50%以上・特別管理加算20%以上が含まれているため、看護体制強化加算を算定できる事業所はもともとこの条件を満たしています。

まとめ
  • 看護体制強化加算は訪問看護費「ト」に定められた月額加算
  • (Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位で、併算定はできない
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)の違いはターミナルケア加算の人数(5名以上か1名以上か)だけ
  • 要件①緊急時訪問看護加算を算定した利用者が50%以上(前6か月間)
  • 要件②特別管理加算を算定した利用者が20%以上(前6か月間)
  • 要件③ターミナルケア加算を算定した利用者の人数(前12か月間)
  • 要件④従業者の総数のうち看護職員が60%以上
  • 割合は延べ数ではなく実人数で計算する(2回以上でも1として数える)
  • 病院・診療所では看護職員60%の要件が課されない
  • 介護予防と一体運営なら看護職員の割合は合算して算定する
  • リハビリ職の比率が40%を超えるとステーションでは算定できない
  • 定期巡回連携型(訪問看護Ⅰ5)は対象外
  • 要支援は区分なしの100単位で、ターミナル要件が除かれる
  • リハビリ職の8単位減算を回避する要件の1つにもなっている
  • まず緊急時訪問看護加算と特別管理加算の実績を積み上げるのが現実的な順番
参考にした情報
  • 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 指定居宅サービス介護給付費単位数表「訪問看護費」ト
  • 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表 指定介護予防サービス介護給付費単位数表「介護予防訪問看護費」ホ
  • 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第九号(訪問看護費における看護体制強化加算の基準)、第百四号(介護予防訪問看護費における看護体制強化加算の基準)
  • 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)第二の4(4)⑧、第二の4(28)

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。実利用者数の数え方や看護職員の範囲などの解釈は、都道府県によって異なる場合があります。届出にあたっては、指定権者が示す様式および算定要件の確認をお願いします。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務上の運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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