認知症でも使える介護保険サービス一覧を解説

「認知症と診断されたけれど、何が使えるのか分からない」——窓口で一気に説明されても、頭に入らないのが普通です。認知症専用の介護保険制度があるわけではなく、介護保険サービス全体が使えます。そのうえで、名前に「認知症対応型」とつくサービスが2つあります。
この記事では、理学療法士・介護支援専門員として在宅の認知症の方に関わってきた立場から、使えるサービスの全体像を厚生労働省の公表内容にもとづいて整理し、認知症の場合にどれを優先して検討すべきかを目的別にまとめます。
- 介護保険で使えるサービスの全体像(国の公表分類)
- 「認知症対応型」とつく2つのサービスの中身
- 困りごと別に、どのサービスを検討すべきか
- 40〜64歳でも介護保険が使える条件
- 地域密着型サービスの落とし穴
- 介護保険の外で使える認知症向けの支援
大前提:まず要介護認定が必要
介護保険のサービスは、要介護認定を受けていないと使えません。厚生労働省は、介護保険で利用できるサービスを次の2つに分けて示しています。
- 介護給付|要介護1〜5と認定された方が利用できるサービス
- 予防給付|要支援1〜2と認定された方が利用できるサービス。介護予防に適した、軽度者向けの内容・期間・方法で提供されます
申請の窓口は市区町村または地域包括支援センターです。診断を受けたら、まずここに行ってください。
40〜64歳でも使える
介護保険は65歳以上のものと思われがちですが、40〜64歳の方(第2号被保険者)も、特定疾病が原因であれば利用できます。介護保険法施行令第二条が定める16の特定疾病には、「初老期における認知症」が含まれています。若年性認知症の方が介護保険を使えるのは、この規定によります。
リハウルフここは知られていません。「まだ50代だから介護保険は関係ない」と言われて申請していない方に、何度も出会いました。診断名が該当するなら、年齢で諦める必要はありません。
介護保険サービスの全体像
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、サービスが次のように分類されています。「予防」は介護予防サービスがあるもの、「地域」は地域密着型サービスです。
| 相談・ケアプラン作成 | 居宅介護支援 |
|---|---|
| 自宅に訪問 | 訪問介護(ホームヘルプ)/訪問入浴〈予防〉/訪問看護〈予防〉/訪問リハビリテーション〈予防〉/夜間対応型訪問介護〈地域〉/定期巡回・随時対応型訪問介護看護〈地域〉 |
| 施設に通う | 通所介護(デイサービス)/通所リハビリテーション(デイケア)〈予防〉/地域密着型通所介護〈地域〉/療養通所介護〈地域〉/認知症対応型通所介護〈予防・地域〉 |
| 訪問・通い・宿泊を組み合わせる | 小規模多機能型居宅介護〈予防・地域〉/看護小規模多機能型居宅介護〈地域〉 |
| 短期間の宿泊 | 短期入所生活介護(ショートステイ)〈予防〉/短期入所療養介護〈予防〉 |
| 施設等で生活 | 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)/介護老人保健施設(老健)/特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)〈予防〉/介護医療院/認知症対応型共同生活介護(グループホーム)〈予防・地域〉/地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護〈地域〉/地域密着型特定施設入居者生活介護〈地域〉 |
| 福祉用具 | 福祉用具貸与〈予防〉/特定福祉用具販売〈予防〉 |
認知症だからといって使えるサービスが限られるわけではありません。ここに並んだものは、要介護度とケアプラン次第で選択肢になります。
名前に「認知症対応型」とつく2つのサービス
| 認知症対応型通所介護 | 認知症の方を対象とした通所介護。少人数で運営されるのが特徴で、一般のデイサービスになじめなかった方の選択肢になります。介護予防(要支援)版もあります |
|---|---|
| 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 認知症の方が少人数の共同生活を送りながら介護を受ける住まい。地域密着型サービスで、介護予防版もあります |
ちびウルフえ、住んでる場所で使えるものが変わっちゃうの?
リハウルフそうです。しかも地域密着型は市区町村が指定するので、そもそも自分の市に事業所が無いこともある。まずは「うちの市に何があるか」を、ケアマネジャーか地域包括支援センターに聞くのが最初の一手です。
困りごと別に使える介護保険サービス
ここからは現場での考え方です。サービス名から入るより、何に困っているかから逆算するほうが早く決まります。
| 日中の居場所がない・閉じこもり | 通所介護/認知症対応型通所介護。集団が苦手なら後者を検討 |
|---|---|
| 入浴を嫌がる・家族では入れられない | 通所介護(入浴設備あり)/訪問介護/訪問入浴 |
| 家族が疲れきっている | 短期入所生活介護(ショートステイ)。定期的に組み込むほど効果があります |
| 身体機能が落ちてきた | 通所リハビリテーション(デイケア)/訪問リハビリテーション |
| 医療的な管理が必要 | 訪問看護/看護小規模多機能型居宅介護/短期入所療養介護 |
| 夜間が不安・夜に動く | 夜間対応型訪問介護/定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
| 環境の変化に弱い | 小規模多機能型居宅介護。訪問・通い・宿泊を同じ事業所の同じ職員が担うため、なじみの関係を保てます |
| 転倒が心配・浴室が危ない | 福祉用具貸与/特定福祉用具販売(手すり、シャワーチェア等) |
| 在宅の限界が近い | 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)/介護老人福祉施設/特定施設入居者生活介護 |
ちびウルフサービス名を全部覚えなくても、困ってることから聞けばいいんだね
要支援1〜2でも使えるもの
認知症の初期では、要支援の判定になることがあります。この場合も、予防給付として次のサービスが利用できます。
- 訪問入浴/訪問看護/訪問リハビリテーション
- 通所リハビリテーション(デイケア)/認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 短期入所生活介護/短期入所療養介護
- 特定施設入居者生活介護/認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 福祉用具貸与/特定福祉用具販売
「要支援だから何も使えない」は誤りです。早い段階から関わりを作っておくほうが、進行したときの移行がずっとスムーズになります。
ちびウルフまだ軽いから、って様子見しないほうがいいんだね
介護保険の外にもある支援
介護保険だけがすべてではありません。認知症施策推進基本計画に位置づけられている取り組みも使えます。
| 認知症初期集中支援チーム | 複数の専門家が、認知症が疑われる人や認知症の人およびその家族を訪問し、観察・評価を行ったうえで、家族支援等の初期の支援を行うチーム。受診につながっていない段階でも動けます |
|---|---|
| 認知症地域支援推進員 | 市町村に配置され、地域の支援機関間の連携づくりや、認知症カフェ・認知症ケアパス・社会参加活動などの体制づくり、本人と家族の相談業務を担う人 |
| 認知症カフェ | 本人や家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う場 |
| 認知症ケアパス | 認知症の始まりから人生の最終段階まで、相談先や、いつ・どこで・どのような医療介護サービスを受ければよいかの流れをあらかじめ標準的に示したもの。多くの市町村が作成しています |
| 一体的支援事業 | 本人と家族を一体的に支援し、思いのずれや葛藤を調整して関係の再構築を図る事業 |
まず市町村の認知症ケアパスを手に入れてください。その地域で何がどの段階で使えるかが一覧になっています。入手先は地域包括支援センターです。
利用開始までの流れ
無料です。認定を受けていなくても相談できます。認知症ケアパスもここでもらえます。
市区町村の窓口、または地域包括支援センター経由で申請します。主治医意見書が必要になるため、かかりつけ医にも伝えておきます。
調査員が自宅などを訪問します。認知症は当日「できてしまう」ことが多いため、普段の様子をメモにして渡してください。
要支援1〜2なら地域包括支援センター、要介護1〜5なら居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当になります。
困りごとを具体的に伝えます。「大変です」ではなく「夕方に落ち着かなくなる」「入浴を1週間拒否している」と伝えるほど、合うサービスが出てきます。
特に通所系は、本人との相性がすべてです。必ず見学し、可能なら体験利用をしてから契約してください。
使うときの注意点
リハウルフ最後の5番が本当に重要です。「限界です」と言われてから動くと、選択肢がほぼありません。使わなくてもいいから、認定だけは早めに取っておく。これが私の一貫したすすめ方です。
認知症と診断されれば、自動的に介護保険が使えますか?
50代ですが、若年性認知症でも介護保険は使えますか?
グループホームは他の市のものでも入れますか?
一般のデイサービスと認知症対応型通所介護、どちらがいいですか?
本人が「行きたくない」と言います。
- 認知症専用の制度があるわけではなく、介護保険サービス全体が対象になる。
- 利用には要介護認定が必要。介護給付は要介護1〜5、予防給付は要支援1〜2。
- 40〜64歳でも、特定疾病(「初老期における認知症」を含む)が原因なら利用できる。
- 名前に「認知症対応型」とつくのは、認知症対応型通所介護と認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の2つ。
- この2つを含む地域密着型サービスは、事業所がある市区町村の住民の利用が基本。
- サービス名からではなく、困りごとから逆算して選ぶほうが早い。
- 環境の変化に弱い方には、通い・訪問・泊まりを一体で担う小規模多機能型が向きやすい。
- 要支援1〜2でも予防給付で多くのサービスが使える。「まだ軽いから」と様子見しない。
- 介護保険の外にも、認知症初期集中支援チーム、認知症地域支援推進員、認知症カフェ、認知症ケアパスがある。
- 限度額を超えた分は全額自己負担。配分はケアマネジャーと相談する。
- 限界になってからでは間に合わない。使わなくても認定は早めに取っておく。
- 厚生労働省「公表されている介護サービスについて(介護サービス情報公表システム)」(介護給付・予防給付の区分、サービスの分類と名称一覧、地域密着型サービスの利用範囲)
- 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」(介護保険法施行令第二条が列記する16の特定疾病。「初老期における認知症」を含む)
- 厚生労働省「認知症施策」(認知症施策推進基本計画〈令和6年12月〉。認知症初期集中支援チーム、認知症地域支援推進員、認知症カフェ、認知症ケアパス、一体的支援事業の定義)
- 厚生労働省「認知症に関する相談について」(相談窓口)
※本記事のうち、サービスの区分・名称・地域密着型の利用範囲および特定疾病に関する記述は厚生労働省の公表資料にもとづきます。サービス選びの考え方や現場での留意点は筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづくものです。利用できるサービスの有無、支給限度額、自己負担割合、地域密着型サービスの具体的な取り扱いは、要介護度および市区町村によって異なります。個別の判断は、必ず市区町村・地域包括支援センター・担当ケアマネジャーにご確認ください。内容は2026年8月時点の情報です。




