認知症サポーター養成講座とは?内容と受講方法

「認知症サポーター養成講座を受けませんか」と言われても、何をさせられるのか分からず身構える方は多いと思います。結論から言うと、90分の講座を受けるだけで誰でもなれます。資格試験もなければ、何かを引き受ける義務もありません。
この記事では、理学療法士・介護支援専門員として地域の活動に関わってきた立場から、認知症サポーターとは何か、講座では何を学ぶのか、どこに申し込めばいいのかを、厚生労働省と認知症サポーターキャラバンの公表内容にもとづいて整理します。家族が介護している人こそ受ける価値がある理由も書きます。
- 認知症サポーターの定義と、何をする(しない)人なのか
- 90分の講座で学ぶ内容
- 申し込み先と、受講までの流れ
- オレンジリングとサポーターカードの違い
- 受けた後にできること(チームオレンジ)
- 講師役「キャラバン・メイト」になる方法
認知症サポーターとは
認知症施策推進基本計画(令和6年12月)は、認知症サポーターを次のように定義しています。
事業を運営する認知症サポーターキャラバンの説明はもっと平易です。「認知症サポーターは何か特別なことをする人ではありません」——認知症について正しく理解し、偏見を持たず、認知症の人や家族を温かい目で見守る「応援者」であり、自分のできる範囲で活動する人だとされています。
リハウルフここを誤解して申し込まない方が多いんです。ボランティアの登録でも、当番でもありません。受けたあと何もしなくても、まったく問題ない。まず知ることが目的の講座です。
どのくらいの人がなっているのか
認知症サポーターキャラバンの公表によると、認知症サポーターは令和8年6月30日時点で17,217,383人(約1,721万人)に達しています。日本の人口規模で見れば、すでに珍しい存在ではありません。
職域での広がりも公表されています(平成31年3月末時点の参考値)。
- 金融機関|約70万人
- スーパー・百貨店・商店等|約20万人
- 警察|約16万人
- マンション管理|約12万人
- 薬局・薬剤師会|約12万人
- 消防|4万人
この事業は海外からも評価されており、WHOが2012年に発表した認知症をテーマとする報告書と、国際アルツハイマー病協会(ADI)の2012年版報告書で、認知症への偏見をなくす日本の国家的な取り組みとして取り上げられています。英国は日本を手本に「dementia friends」という英国版の制度を開始しました。
ちびウルフ日本発の仕組みだったんだ。それは知らなかった
認知症サポーター養成講座は90分
認知症サポーターキャラバンは、自治体(市町村・都道府県)または企業・職域団体が実施する「認知症サポーター養成講座」(90分)を受講すれば、だれでも認知症サポーターになることができると明記しています。試験はありません。
講座の根拠は、厚生労働省老健局計画課長通知「認知症サポーター等養成事業の実施について」(老計発第0712001号、令和3年3月29日一部改正)です。基準と基本カリキュラムが定められているため、どこで受けても、学ぶ骨格は同じになります。
講座で学ぶ内容
講師役の養成研修で「認知症サポーターに伝えたいこと」として示されているのが、そのまま講座の中身です。
| 認知症とはどういうものか | 病気としての認知症の理解。「もの忘れ」との違い |
|---|---|
| 認知症の症状 | 中核症状、行動・心理症状(BPSD)とその支援 |
| 認知症の診断・治療 | どこで診てもらうのか、治療で何ができるのか |
| 認知症の予防についての考え方 | 「予防」をどう捉えるべきか |
| 認知症の人と接するときの心がまえ | ここが実務的にいちばん役立つ部分です |
| 認知症介護をしている人の気持ちを理解する | 本人だけでなく、介護する家族の側にも焦点が当たります |
リハウルフ90分でこれだけ扱うので、一つひとつは浅めです。ただ、全体の地図が手に入るのが大きい。個別のことは後から調べられますが、地図がないと調べようがありません。
受講までの流れ
認知症サポーターキャラバンのサイトに、都道府県ごとの自治体事務局連絡先の一覧が掲載されています。在住・在勤・在学のいずれかの地域の事務局が窓口です。
「認知症サポーター養成講座を受けたい」と伝えます。次回の開催日、費用、申し込み方法を確認してください。
個人で申し込める公開講座のほか、団体からの依頼で開催されるものもあります。人数がまとまるなら、自治会や職場単位での開催を相談する方法もあります。
講師はキャラバン・メイトです。試験はありません。
認知症サポーターカードやオレンジリング等が渡されます(下記参照)。
サポーターの証は「カード」に変わっている
ここは情報が古いままのサイトが多い部分です。認知症サポーターキャラバンの説明は次のとおりです。
- 令和2年度まで|サポーターの証として、オレンジリングが全国一律で配布されていました
- 令和3年4月以降|原則として、講座の実施主体である市町村・都道府県および企業・職域団体ごとに作成される認知症サポーターカードが渡されます
- 従来どおり、オレンジリングを配布する市町村・都道府県および企業・職域団体もあります
リハウルフ「オレンジリングがもらえる」と書いている記事はまだ多いのですが、現在は実施主体によって違うのが正確です。何がもらえるかは、申し込むときに聞いてください。
受けた後、何ができるのか
何もしなくても構いませんが、動きたい人には受け皿があります。
日常の中でできること
- 近所で気になる人がいれば、さりげなく見守る
- 認知症になっても、それまでどおり友人づきあいを続ける
- 認知症の人と暮らす家族の話し相手になる
- まちなかで困っている人がいたら手助けする
キャラバンの資料には、学校で講座を受けた小中学生が、道に迷っている様子の人を見て家族などの大人に伝え、行方不明になるのを未然に防いだ例が紹介されています。特別な活動でなくてよい、というのはこういうことです。
チームオレンジ
2019年度から始まった取り組みです。基本計画では「認知症サポーター等が支援チームを作り、認知症の人本人が参画し、その意向を支援チームの活動に反映する機会を設け、地域ごとに、認知症の人やその家族を、その支援ニーズに合った具体的な支援につなげる仕組み」と定義されています。
キャラバン側の説明では、近隣の認知症サポーターがチームを組み、認知症の人や家族に対する生活面の早期からの支援等を行う取り組みで、認知症の人もメンバーとして参加します。基本計画では「チームオレンジの数」が施策の評価指標にも設定されています。
ちびウルフ認知症の本人もメンバーに入るんだね。支えられるだけじゃないんだ
講師役「キャラバン・メイト」になるには
講座を企画・開催し、講師を務めるのがキャラバン・メイトです。受講のきっかけから住民の相談を受けたり、関係機関との連携を図ったりする、地域のリーダー役が期待されています。
| なる方法 | 自治体または企業・職域団体が実施するキャラバン・メイト養成研修を受講する |
|---|---|
| 受講対象者の例 | 認知症介護指導者養成研修修了者、認知症介護実践リーダー研修修了者、介護相談員など |
| 求められる活動 | 年間10回程度を目安(最低実施数3回)に、原則としてボランティアの立場で養成講座を行える方 |
つまり、サポーターは誰でもなれますが、キャラバン・メイトは一定の実務背景が前提になります。介護職や相談職の方は、自分の自治体の要件を確認してみてください。
家族が受ける価値
私がすすめたいのは、すでに介護している家族が受けることです。理由は3つあります。
もうひとつ。兄弟や配偶者など、介護に関わっていない家族に受けてもらうのも有効です。「言っても分かってくれない」相手に説明を続けるより、90分の講座に行ってもらったほうが早いことがあります。
ちびウルフ介護してない兄弟に受けてもらうの、たしかによさそう
費用はかかりますか?
資格になりますか?履歴書に書けますか?
受けたら何か活動しなければいけませんか?
子どもでも受けられますか?
近くで開催されていない場合はどうすればいいですか?
- 認知症サポーターは、認知症の知識を持って地域や職域で本人や家族を手助けする人。養成講座の受講が必要。
- 「何か特別なことをする人ではない」。活動の義務はなく、できる範囲でよい。
- 講座は90分。試験はなく、誰でも受講すればサポーターになれる。
- 厚生労働省の通知にもとづく基準・基本カリキュラムがあるため、どこで受けても骨格は同じ。
- 学ぶ内容は、認知症とは何か、中核症状と行動・心理症状、診断・治療、予防の考え方、接するときの心がまえ、そして介護している人の気持ちの理解。
- 申し込みは、在住・在勤・在学のいずれかの地域の自治体事務局へ。職場で実施している場合もある。
- サポーターの証は、令和3年4月以降は原則としてサポーターカード。オレンジリングを配る自治体等もある。
- サポーターは令和8年6月30日時点で約1,721万人。金融機関や商店、警察などにも広がっている。
- 受講後の受け皿として、認知症の人本人も参加する「チームオレンジ」がある。
- 講師役のキャラバン・メイトは、養成研修の受講が必要で、一定の実務背景が前提。
- すでに介護している家族、そして介護に関わっていない家族にこそ受講の価値がある。
- 認知症サポーターキャラバン(全国キャラバン・メイト連絡協議会)「認知症サポーターキャラバンとは」(サポーターの定義、90分の講座、実施主体、サポーターカードとオレンジリングの取扱い、根拠通知、キャラバン・メイトの役割、WHO・ADIによる評価)
- 認知症サポーターキャラバン「認知症サポーターの活動」(地域・職域での活動内容、職域別サポーター数)
- 認知症サポーターキャラバン「キャラバン・メイト養成研修について」(研修カリキュラム、講座で伝える内容、受講対象者の要件)
- 認知症サポーターキャラバン「チームオレンジとは」(2019年度開始、取り組みの内容)
- 厚生労働省「認知症施策」(認知症施策推進基本計画〈令和6年12月〉。認知症サポーターおよびチームオレンジの定義、評価指標)
※本記事の制度に関する記述は、認知症サポーターキャラバンおよび厚生労働省の公表資料にもとづきます。講座の費用・開催頻度・オンライン実施の可否・配布されるサポーターの証は、実施主体(市町村・都道府県・企業・職域団体)によって異なります。サポーター数は令和8年6月30日時点、職域別の数値は平成31年3月末時点の公表値です。受講の申し込みは、必ず最寄りの自治体事務局にご確認ください。内容は2026年8月時点の情報です。




