「認知症」と診断されたとき、多くのご家族は「認知症という病気になった」と受け取ります。しかし正確には違います。認知症は状態の名前であって、その原因になっている病気が別にあります。そして、どの病気が原因かによって、出てくる症状も、進み方も、家族の関わり方も変わります。

この記事では、理学療法士・介護支援専門員として在宅と施設の両方で認知症の方に関わってきた立場から、主な4つの種類の違いを整理します。とくに混同されやすいアルツハイマー型とレビー小体型は、見分けの目安と、家族が知っておくべき注意点まで踏み込みます。

この記事でわかること
  • 認知症の主な4つの種類と、それぞれの特徴
  • アルツハイマー型とレビー小体型の見分けの目安
  • レビー小体型で家族が必ず知っておくべき薬の注意点
  • 種類が分かると、その後のケアがどう変わるか
  • 治療によって改善する可能性がある「治せる認知症」

そもそも認知症とは「状態」の名前

厚生労働省は認知症を、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり働きが悪くなったために障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6か月以上継続)と説明しています。

つまり「認知症」は、熱が出ている状態を指す「発熱」に近い言い方です。発熱の原因が風邪なのか肺炎なのかで対応が変わるように、認知症も原因となる病気によって対応が変わります。

中核症状と周辺症状脳の細胞が壊れることで直接起こる記憶障害・見当識障害・理解や判断力の低下・実行機能の低下を「中核症状」といいます。これに本人の性格や環境が絡んで出てくる、うつ状態・妄想・行動面の問題を「周辺症状」と呼びます。中核症状は病気によって出方が違い、周辺症状は関わり方で変えられる部分がある——これが、種類を知る意味です。
リハウルフリハウルフ

「認知症だから何をしても同じ」ではないんだ。原因の病気が違えば、効く関わり方も、危ない対応も違う。ここを知らずに介護すると、家族も本人も消耗するよ。

主な4つの種類(早見表)

原因となる病気はたくさんありますが、実際に多いのは次の4つです。まず全体像をつかんでください。

種類最初に目立つこと進み方
アルツハイマー型新しいことを覚えられない。同じことを何度も聞くゆるやかに、少しずつ進む
レビー小体型いないはずの人や動物が見える(幻視)。調子の波が大きい波がありながら進む
血管性脳梗塞・脳出血のあとに始まる。できることとできないことの差が大きい発作のたびに段階的に落ちる
前頭側頭型もの忘れより先に、性格や行動が変わる比較的ゆっくり。比較的若い年代で発症

もっとも多いのはアルツハイマー型で、認知症全体の半数以上を占めます。厚生労働省の資料が引用している平成25年の調査では、アルツハイマー型がおよそ7割弱、脳血管性がおよそ2割、レビー小体型と前頭側頭葉変性症がそれぞれ数%という内訳が示されています。(この数値は2013年に報告された調査にもとづく目安です)

アルツハイマー型認知症

どんな病気か

脳内にたまった異常なたんぱく質によって神経細胞が壊され、脳が萎縮していく病気です。記憶をつかさどる部分から障害されるため、「新しいことを覚えられない」が最初に来ます。

家族が最初に気づくこと

昔のことはよく覚えているのに、さっきの出来事が抜け落ちる。同じ質問を繰り返す。しまい忘れが増える。日付を間違える。この「新しい記憶だけが残らない」という形が典型です。

進行すると時間や場所の感覚が薄れ、慣れた道で迷うようになります。さらに進むと、人間関係の認識にも影響が出て、50歳の娘を「姉さん」と呼ぶといったことが起こります。

関わり方のコツ

  • 間違いを訂正しない。本人にとっては、それが事実として記憶に残っていない
  • 説明は短く、一度に一つ。情報が重なると処理できなくなる
  • 急がせない。時間をかければ自分なりの結論にたどり着けることが多い

レビー小体型認知症

どんな病気か

レビー小体という特殊なたんぱく質が脳にたまり、神経細胞が壊れていく病気です。アルツハイマー型と混同されやすいのですが、症状の出方はかなり違います。

4つの特徴的な症状

  • くり返す幻視。「子どもが部屋にいる」「虫が這っている」など、実際にはいないものがはっきり見えます。本人には本当に見えているので、否定しても解決しません。
  • 認知機能の変動。しっかり会話できる日と、ぼんやりして反応が乏しい日がある。同じ日でも時間帯で大きく変わります。
  • パーキンソン症状。手足がふるえる、筋肉がこわばる、歩幅が小刻みになる。転びやすくなるのが最大のリスクです。
  • レム睡眠行動障害。夢の内容に反応して、寝ながら大声を出す、手足を激しく動かす。これが認知症の症状より何年も早く現れることがあります。
家族が必ず知っておくべきこと:薬への過敏性レビー小体型では、抗精神病薬などの薬に対して強く反応し、重い副作用が出ることがあると知られています。幻視や興奮を抑えるつもりで処方された薬で、動けなくなる・意識がぼんやりするといった事態が起こりえます。

受診先が変わるとき、入院するとき、必ず「レビー小体型です」と最初に伝えてください。お薬手帳にも書いておくと確実です。ただし、自己判断で薬を中止するのは危険です。気になることは必ず処方した医師に相談してください。
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「そこに子どもがいる」って言われたら、どう答えたらいいの?

リハウルフリハウルフ

否定も肯定もしないのがコツ。「そう見えるんだね。私には見えないけれど、怖いなら別の部屋に行こうか」——本人の体験は認めて、行動だけ変える。これがいちばん揉めないよ。

関わり方のコツ

  • 幻視は否定しない。「いない」と言い張ると信頼関係が壊れる
  • 薄暗さと影を減らす。照明を明るくし、ハンガーにかけた服など人影に見えるものを片づけると、幻視が減ることがあります
  • 調子のいい時間帯に用事を寄せる。波があるのが特徴なので、悪い時間に無理をさせない
  • 転倒対策を最優先に。手すり、床の段差、滑る履物。ここは早めに手を打つ

血管性認知症

どんな病気か

脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が届かなくなり、その部分の細胞が死んでしまう病気です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因になります。

特徴は「まだら」と「段階的」

障害を受けた場所によって症状が決まるため、できることとできないことの差が極端になります。計算はできるのに日付が分からない、といった状態です。ご家族が「わざとやっているのでは」と誤解しやすいところです。

また、ゆるやかに進むのではなく、脳血管の発作が起こるたびに階段状に低下します。逆に言えば、発作を防げれば進行を抑えられる可能性がある、ということでもあります。

身体症状が早くから出ることがある

手足の麻痺、飲み込みにくさ、言葉の出にくさなど、早い時期から身体の症状を伴うことがあります。リハビリの対象になりやすいのもこのタイプです。

前頭側頭型認知症(前頭側頭葉変性症)

どんな病気か

脳の前頭葉や側頭葉の神経細胞が減り、萎縮していく病気です。前頭葉は「抑える」「段取りをつける」といった働きを担っているため、もの忘れより先に、性格と行動が変わります。

家族が困ること

感情の抑えがきかなくなる、社会のルールが守れなくなる、同じ行動を毎日決まった時間に繰り返す、食べ物の好みが極端に変わる。記憶は保たれているため、「認知症とは思われず、性格が変わった・わがままになったと誤解される」のが最大の問題です。

比較的若い年代で発症することがあり、仕事上のトラブルをきっかけに見つかることもあります。

関わり方のコツ

叱っても止まりません。禁止するより、本人が繰り返したくなる行動を、周囲に迷惑がかからない形に置き換えるほうがうまくいきます。専門的な対応が必要になりやすいので、早めに認知症疾患医療センターなどの専門機関につないでください。

アルツハイマー型とレビー小体型の見分けの目安

混同されやすい2つを並べます。あくまで目安であり、診断は医師が行うものです。

アルツハイマー型レビー小体型
最初の症状もの忘れ幻視、睡眠中の異常行動、動きにくさ
記憶早い段階から明らかに障害初期は比較的保たれることがある
日内の変動大きくない大きい。時間帯で別人のよう
幻視まれはっきりした幻視がくり返し起こる
歩行・動作進行してから拙くなる早い段階から小刻み歩行・転倒
薬の副作用一般的な注意とくに強く出ることがある
受診時に伝えるべき3点診察室では短時間しか話せません。①いつから ②どんな場面で ③どのくらいの頻度でをメモにして渡してください。とくに「寝ているときに大声を出す」「いないものが見える」「よく転ぶ」は、種類を見分ける手がかりになるため、必ず伝えてください。

種類が分かると、その後のケアが変わる

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。診断名は、ただのラベルではありません。

種類優先すべき対策
アルツハイマー型生活の流れを一定にする。予定を目に見える形にする。金銭管理を早めに整える
レビー小体型転倒予防が最優先。薬の情報共有を徹底。照明と部屋の環境を整える
血管性血圧・血糖の管理で再発を防ぐ。麻痺や飲み込みへのリハビリ
前頭側頭型行動を置き換える工夫。周囲(近所・店・職場)への説明と理解づくり

現場でよくあるのが、レビー小体型の方に、アルツハイマー型と同じ関わり方をして転倒事故が起きるケースです。デイサービスやヘルパーを使うときも、診断名が伝わっているかどうかで支援の中身が変わります。ケアマネジャーやサービス事業所には、必ず種類まで伝えてください。

リハウルフリハウルフ

担当した中には、「認知症」としか伝わっていなくて、レビー小体型だと分かった途端に支援計画がガラッと変わったご家族もいたよ。情報が伝わっていないだけで、受けられる支援の質が落ちる。もったいないんだ。

治療によって改善する可能性がある認知症もある

忘れてはいけないのが、これです。認知症のような症状を出す病気の中には、治療によって改善が期待できるものがあります。厚生労働省の資料でも、認知症の原因疾患のひとつとして次のようなものが挙げられています。

  • 正常圧水頭症——脳脊髄液の循環の障害。歩行障害・尿失禁を伴いやすい
  • 慢性硬膜下血腫——頭を打ったあと、数週間から数か月して症状が出ることがある
  • 甲状腺機能低下症——動作が遅くなる、意欲が落ちるなど
  • ビタミンB12欠乏・ビタミンB1欠乏など、栄養や代謝に関わるもの
  • 薬の影響——複数の薬の飲み合わせで、認知機能が落ちて見えることがある

「認知症だから仕方ない」と受診せずにいると、これらを見逃します。早く受診する最大の理由は、ここにあると私は思っています。

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頭を打った覚えなんてないけど、それでも慢性硬膜下血腫ってあるの?

リハウルフリハウルフ

あるんだ。本人も家族も覚えていない程度の打撲が原因のことがある。だから「思い当たらないから違う」とは言い切れない。判断は医師に任せて、まず受診してほしい。

実際には「混ざっている」ことも多い

教科書のようにきれいに分かれるわけではありません。アルツハイマー型と血管性が併存している「混合型」は珍しくありません。高齢になるほど、複数の要因が重なります。

ですから「うちの親はどれにも完全には当てはまらない」と悩む必要はありません。分類は、ケアの方向性を決めるための道具です。当てはまる要素があれば、その対策を取り入れればいい——それで十分です。

65歳未満で発症する「若年性認知症」

認知症は高齢者だけの問題ではありません。65歳未満で発症するものを若年性認知症と呼びます。働き盛りの年代で起こるため、仕事・収入・子どもの教育費といった、高齢者とはまったく違う課題が生じます。

国の施策として、各都道府県に若年性認知症支援コーディネーターが配置されています。就労の継続、傷病手当金や障害年金などの制度利用まで含めて相談できる窓口です。該当する場合は、地域包括支援センターか都道府県の担当課に問い合わせてください。

どこに相談すればいいか

  • まず地域包括支援センターへ。市町村すべてに設置され、無料で相談できます。本人が行かなくても、家族だけで相談できます。
  • かかりつけ医に相談する。以前の様子を知っている強みがあります。必要に応じて専門機関を紹介してもらえます。
  • 認知症疾患医療センターで詳しく調べる。種類の鑑別には画像検査などが必要です。専門の医療機関で診断を受けます。
  • 受診につながらないときは、認知症初期集中支援チーム。専門職が自宅を訪問して支援します。地域包括支援センター等に配置されています。

よくある質問

診断された種類は、あとから変わることがありますか?
あります。経過を見ていく中で、当初の診断と違う特徴が出てくることは珍しくありません。とくに初期は鑑別が難しく、経過観察のうえで診断が見直されることがあります。診断名が変わっても、それまでの対応が無駄になるわけではありません。
種類によって、使える介護サービスは変わりますか?
サービスの種類そのものは、要介護認定の結果で決まるため変わりません。ただし「何を重点的に支援するか」は大きく変わります。レビー小体型なら転倒予防、血管性ならリハビリ、というように、ケアプランの中身に反映されます。だからこそ、ケアマネジャーへの情報共有が重要です。
幻視を訴えるとき、否定してはいけないのはなぜですか?
本人には実際に見えているためです。否定されると「嘘つき扱いされた」という感情だけが残り、信頼関係が損なわれます。体験そのものは受け止めたうえで、安心できる行動に誘導するのが現実的です。
前頭側頭型を「わがまま」と誤解しないためには?
「以前はこんな人ではなかった」という変化の速さに注目してください。もともとの性格の延長ではなく、この1〜2年で明らかに変わったなら、病気の可能性を考える理由になります。診断がつくと、周囲の理解も得やすくなります。
認知症の種類は、検査だけで分かりますか?
画像検査や血液検査は重要な材料ですが、それだけでは決まりません。日常生活でどんな症状がいつから出ているか、という家族からの情報が診断を大きく左右します。メモを持参する価値は、ここにあります。
まとめ
  • 認知症は状態の名前。原因となる病気が別にあり、種類で対応が変わる。
  • 主な4つはアルツハイマー型・レビー小体型・血管性・前頭側頭型。最多はアルツハイマー型。
  • レビー小体型は幻視・変動・パーキンソン症状・睡眠中の異常行動が特徴。転倒予防が最優先。
  • レビー小体型は薬に強く反応することがある。受診・入院時は必ず病名を伝える。
  • 血管性は段階的に進む。再発予防がそのまま進行予防になる。
  • 前頭側頭型はもの忘れより先に性格・行動が変わる。「わがまま」と誤解されやすい。
  • 正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など、治療で改善が期待できる病気もある。
  • 診断名はケアマネジャーやサービス事業所にも必ず共有する。
参考にした情報(公的機関等)

※本記事の制度に関する内容は、2026年8月時点の情報にもとづいています。病型別の割合は2013年に報告された調査にもとづく目安であり、最新の数値とは異なる場合があります。本記事は医学的な診断を行うものではありません。診断・治療・薬に関する判断は、必ず医療機関にご相談ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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