「認知症専門ケア加算の単位数や算定要件って、令和6年度改定で結局どう変わったの?」——訪問・通所・施設とサービスをまたいで算定できる加算だけに、対象や要件を正確に押さえるのは意外と大変です。とくに令和6年度(2024年度)改定では訪問系サービスの要件が見直され、ここを誤解したまま運用している事業所も見受けられます。

この記事では、認知症専門ケア加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数・対象サービス・算定要件を、厚生労働省の告示・通知・Q&A(介護保険最新情報Vol.1225 ほか)をもとに正確に整理します。令和6年度改定の変更点、必要な研修、対象者割合の数え方、よくある実務の疑問まで、事業所の運営者・管理者が押さえるべきポイントを網羅しました。

この記事でわかること
  • 認知症専門ケア加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数(3単位/4単位ほか)と対象サービス
  • 令和6年度改定で見直された「訪問系サービスの算定要件」の中身
  • (Ⅰ)(Ⅱ)それぞれの算定要件と、必要な研修(実践リーダー研修・指導者養成研修など)
  • 対象者割合(日常生活自立度Ⅱ/Ⅲ以上)の数え方と前3か月ルール
  • 厚労省Q&Aで示された「配置」「指導者」などの実務上の取り扱い

認知症専門ケア加算とは?認知症ケアの専門性を評価する加算

認知症専門ケア加算とは、認知症介護に関する専門的な研修を修了した職員を配置し、チームとして専門的な認知症ケアを提供する事業所を評価する加算です。認知症高齢者が今後さらに増加すると見込まれるなか、質の高い認知症ケアを提供する事業所を後押しする目的で設けられています。

区分は(Ⅰ)と(Ⅱ)の2段階で、(Ⅱ)のほうが要件が重く、単位数も高く設定されています。共通するのは、専門研修修了者の配置・認知症の利用者を一定割合受け入れていること・認知症ケアに関する会議や研修の実施、といった要件です。

ちびウルフちびウルフ

うちの事業所でも取れるのかな?どのサービスが対象なの?

リハウルフリハウルフ

訪問・短期入所・施設・グループホームなど、かなり幅広いサービスで算定できるんだ。まず対象サービスから整理していこう。

認知症専門ケア加算の対象サービス

認知症専門ケア加算は、令和3年度改定で対象が拡大され、現在は次のサービスで算定できます。

区分対象サービス
訪問系訪問介護/訪問入浴介護(介護予防含む)/定期巡回・随時対応型訪問介護看護/夜間対応型訪問介護
短期入所系短期入所生活介護/短期入所療養介護
居住系特定施設入居者生活介護/地域密着型特定施設入居者生活介護/認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
施設系介護老人福祉施設/地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護/介護老人保健施設/介護医療院
ポイント通所介護(デイサービス)や通所リハビリには、この「認知症専門ケア加算」は設定されていません。通所系には別建ての「認知症加算」があり、名称も要件も別物です。混同しないよう注意しましょう。

認知症専門ケア加算の単位数(Ⅰ・Ⅱ)

単位数は、原則として(Ⅰ)が3単位/日、(Ⅱ)が4単位/日です。ただし包括報酬のサービスでは「月あたり」で設定されています。

サービス(Ⅰ)(Ⅱ)
訪問介護・訪問入浴介護3単位/日4単位/日
短期入所・特定施設・施設・グループホーム など3単位/日4単位/日
定期巡回・随時対応型訪問介護看護90単位/月120単位/月
夜間対応型訪問介護(Ⅱ)(包括報酬)90単位/月120単位/月
夜間対応型訪問介護(Ⅰ)3単位/日4単位/日
注意令和6年度改定では、認知症専門ケア加算の単位数そのものは変更されていません。改定で見直されたのは「訪問系サービスの算定要件」です。次章で具体的に確認します。

令和6年度改定の変更点|訪問系サービスの要件が見直された

令和6年度改定では、認知症高齢者の重症化の緩和や、日常生活自立度Ⅱの方に対して適切に専門的ケアを行うことを評価する観点から、訪問系サービスにおける利用者の受入れ要件が見直されました。ポイントは次の3点です。

  1. 認知症専門ケア加算(Ⅰ)の受入れ要件を広げ、より軽度の「日常生活自立度Ⅱ以上の者」を基準とした。
  2. 認知症専門ケア加算(Ⅱ)の要件に、「日常生活自立度Ⅲ以上の者の割合が利用者の100分の20(20%)以上」という基準を追加した。
  3. 単位数は変更なし。

これにより、訪問系では(Ⅰ)は自立度Ⅱ以上の利用者が総数の50%以上、(Ⅱ)は自立度Ⅲ以上の利用者が20%以上という形で、対象者割合の考え方が整理されました。対象となる訪問系サービスは、訪問介護・訪問入浴介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護・夜間対応型訪問介護です。

ちびウルフちびウルフ

つまり、訪問系は「より軽度の認知症の人もちゃんと専門ケアの対象として評価する」方向に変わったってこと?

リハウルフリハウルフ

そういう理解でいいよ。重症化してから手を打つのではなく、早い段階から専門的ケアを行うことを後押しする見直しなんだ。

認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定要件

認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定要件は、おおむね次のとおりです(訪問系の例。短期入所・施設系等も考え方は共通です)。

認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件
① 加算の届出を行い、日常生活自立度Ⅱ以上の認知症利用者(対象者)にサービスを提供していること
② 利用者の総数のうち、対象者(自立度Ⅱ以上)が占める割合が50%以上であること ※短期入所・施設系等では「2分の1以上」
③ 認知症介護に係る専門的な研修(認知症介護実践リーダー研修等)の修了者を、対象者の人数に応じて配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施していること
④ 従業者に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催していること

③の研修修了者の配置人数は、対象者の人数に応じて次のように決まります。

日常生活自立度Ⅱ以上の対象者の人数研修修了者の配置人数
20人未満1人以上
20人以上1人に、対象者が19人を超えて10人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上

認知症専門ケア加算(Ⅱ)の算定要件

認知症専門ケア加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)の要件を満たしたうえで、さらに上乗せの要件をクリアする必要があります。

認知症専門ケア加算(Ⅱ)の要件
① (Ⅰ)の③④の要件を満たしていること
② 日常生活自立度Ⅲ以上の認知症利用者にサービスを提供していること
③ 利用者の総数のうち、対象者(自立度Ⅲ以上)が占める割合が20%(100分の20)以上であること
④ 認知症介護の指導に係る専門的な研修(認知症介護指導者養成研修)の修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施していること
⑤ 介護職員・看護職員ごとに認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施または実施を予定していること
ポイント厚労省Q&A(Vol.1)では、(Ⅱ)について「認知症介護実践リーダー研修修了者とは別に、認知症介護指導者養成研修修了者を新たに配置する必要はない」と示されています。たとえば対象者20名未満の場合、実践リーダー研修と指導者養成研修の両方を修了した者が1名いれば算定できます。

認知症専門ケア加算に必要な研修

算定の前提となる「認知症介護に係る専門的な研修」「指導に係る専門的な研修」には、次のものがあります。各都道府県・指定都市が実施する研修が中心です。

研修名位置づけ
認知症介護実践リーダー研修(Ⅰ)(Ⅱ)共通の配置要件となる中核研修。チームリーダーとしての知識・技術を習得
認知症介護指導者養成研修(Ⅱ)で1名以上の配置が必要。指導者として事業所全体の認知症ケアを指導
認知症看護に係る適切な研修日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」、同協会認定の「老人看護」「精神看護」専門看護師教育課程、日本精神科看護協会「精神科認定看護師」(認定証発行者に限る)

Q&Aでは、平成20年度以前の認知症介護指導者養成研修を修了した者は、認知症介護実践リーダー研修が未受講でも当該研修を修了したものとみなす取り扱いも示されています。研修修了者が誰に当たるかは、自治体・経過措置の扱いも含めて確認しておくと安心です。

対象者割合(自立度Ⅱ/Ⅲ以上)の数え方

算定要件である認知症高齢者の日常生活自立度ⅡまたはⅢ以上の割合は、直前3か月間のうち、いずれかの月の利用者数で算定します。利用者数は「利用実人員数」または「利用延人員数」のいずれを用いてもかまいません(包括報酬のサービスでは利用実人員数を用いるなどの留意点があります)。

日常生活自立度の確認方法について、厚労省Q&Aでは、原則として医師の判定結果または主治医意見書を用いるとされています。複数の判定結果がある場合は最も新しい判定を用い、医師の判定がない場合は認定調査票(基本調査)の「認知症高齢者の日常生活自立度」欄の記載を用います。

注意対象者割合は「前3か月のいずれかの月」で判定するため、月によって要件を満たしたり満たさなかったりすることがあります。要件を満たした月の翌月以降に算定可能となるなど、実績と算定可否の関係には独自のルールがあります。Q&A(Vol.4)の例も参照しながら、自施設の利用者構成を毎月確認しましょう。

運営者・管理者が押さえる実務ポイント

事業所の運営者・管理者として、認知症専門ケア加算を取得・維持するための実務ポイントを整理します。

まず研修修了者の計画的な養成です。実践リーダー研修や指導者養成研修は、各自治体が年に限られた回数しか実施せず、受講までに時間がかかります。算定を見据えるなら、早めに受講計画を立て、複数名を養成しておくと、退職・異動による要件割れを防げます。

次に対象者割合のモニタリングです。前3か月のいずれかの月で割合を判定するため、利用者の入れ替わりで割合が変動します。毎月、自立度Ⅱ以上・Ⅲ以上の利用者数と割合を記録し、算定可否を継続的に確認する運用を仕組み化しましょう。

そして会議・研修記録の整備です。(Ⅰ)の「技術的指導に係る会議」や(Ⅱ)の「研修計画」は、運営指導(実地指導)でも確認されます。Q&Aでは、特定事業所加算やサービス提供体制強化加算の会議と同時開催し、全従業者が参加して認知症ケアの技術的指導も議題にした場合は、両会議を開催したものと扱える旨も示されています。会議体を効率的に設計しつつ、議事録・出席者・研修計画をきちんと残しておくことが、加算を安定して算定するカギになります。

ちびウルフちびウルフ

研修・割合・記録の3つを回し続けるのが大事なんだね。

リハウルフリハウルフ

そうだね。加算は「取って終わり」ではなく「維持し続ける」もの。仕組みにしておけば、質の高い認知症ケアと収益の安定が両立できるよ。

認知症専門ケア加算のよくある質問(FAQ)

令和6年度改定で単位数は変わりましたか?
単位数は変わっていません。(Ⅰ)3単位/日、(Ⅱ)4単位/日(定期巡回・随時対応型訪問介護看護等の包括報酬は(Ⅰ)90単位/月・(Ⅱ)120単位/月)のままです。改定で見直されたのは訪問系サービスの算定要件です。
通所介護(デイサービス)でも算定できますか?
「認知症専門ケア加算」は通所介護の対象ではありません。通所系には別建ての「認知症加算」があり、要件・単位数も異なります。名称が似ているため混同しないよう注意してください。
研修修了者は常勤でなければいけませんか?
厚労省Q&Aでは、配置に常勤等の条件はないとされています。ただし、要件を満たすためには事業所内で業務を行う必要があるため、加算対象事業所の職員であることが必要です。なお、その研修修了者が要件を満たす事業所は、主たる事業所1か所のみとされています。
(Ⅱ)の認知症介護指導者は管理者が兼ねてもよいですか?
Q&Aでは、認知症介護指導者研修修了者であり、適切に事業所全体の認知症ケアの指導等を行っている場合であれば、その者の職務や資格は問わないとされています。したがって管理者が兼ねることも可能です。
対象者割合はどの期間で数えますか?
直前3か月間のうち、いずれかの月の利用者数で算定します。利用実人員数または利用延人員数を用います(包括報酬のサービスは利用実人員数)。利用者の入れ替わりで割合が変動するため、毎月の確認が必要です。
まとめ
  • 認知症専門ケア加算は、専門研修修了者を配置し、チームで専門的な認知症ケアを行う事業所を評価する加算。単位数は(Ⅰ)3単位/日・(Ⅱ)4単位/日(包括報酬は(Ⅰ)90単位/月・(Ⅱ)120単位/月)。
  • 対象は訪問・短期入所・特定施設・グループホーム・施設系など幅広い。通所系の「認知症加算」とは別物。
  • 令和6年度改定では訪問系の要件を見直し。(Ⅰ)は自立度Ⅱ以上が50%以上、(Ⅱ)は自立度Ⅲ以上が20%以上を基準に。単位数は変更なし。
  • (Ⅱ)は(Ⅰ)の要件+指導者養成研修修了者の配置+研修計画の作成が必要。実践リーダー+指導者の両研修を修了した1名でも算定可能なケースがある。
  • 対象者割合は前3か月のいずれかの月で判定。研修養成・割合モニタリング・会議/研修記録の3点を仕組み化することが安定算定のカギ。

出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」、介護保険最新情報Vol.1225(令和6年3月15日)、令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1:令和6年3月15日、Vol.4:令和6年4月18日)ほか。算定にあたっては、必ず管轄自治体(指定権者)の最新の取扱い・様式をご確認ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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