「運営指導と監査って何が違うの?」「うちの事業所に監査が来たら指定取消になるの?」——介護・障害福祉サービスの事業所運営では、この2つの言葉を正しく区別できていないことが少なくありません。

結論から言うと、運営指導と監査はまったく別の制度です。運営指導はより良いケアのための”気づきを促す”取り組みであるのに対し、監査は不正や基準違反の疑いがある場合に事実関係を確認する強い手続きです。この記事では、両者の違いを根拠とともにわかりやすく整理し、慌てないための備え方まで解説します。

この記事でわかること
  • 「実地指導」が「運営指導」に名称変更された理由(令和4年度〜)
  • 運営指導・集団指導・監査の3つの違い
  • 運営指導と監査の法的根拠と実施頻度
  • 監査に切り替わるケースと、日頃の備え方
ちびウルフちびウルフ

「実地指導」って最近聞かないけど、なくなったの?

リハウルフリハウルフ

なくなってはいないよ。名前が「運営指導」に変わったんだ。まずはそこから整理していこう。

「実地指導」から「運営指導」へ|名称変更の背景

かつて「実地指導」と呼ばれていた指導は、令和4年度から「運営指導」へ名称が変更されました。厚生労働省が令和4年3月に「介護保険施設等運営指導マニュアル」を策定したのにあわせたものです(同マニュアルはその後、令和6年7月に改訂されています)。

名称変更の背景には、オンライン会議システム(ICT)の活用が指導の手法として明記されたことがあります。実際に事業所へ出向く「実地」だけでなく、リモートでの確認も行えるようになったため、「実地」という言葉が実態と合わなくなった、というわけです。

ポイント記事内や現場では今も「実地指導」という言葉が使われることがありますが、現在の正式名称は「運営指導」です。意味するものは同じと考えて差し支えありません。

運営指導とは?|気づきを促すための指導

運営指導とは、各事業所における利用者の生活実態、サービス提供状況、報酬基準への適合状況などを直接確認しながら、事業者の気づきを促すことで、よりよいケアの実現を図る取り組みです。

あくまで「指導」であり、罰を与えるものではありません。基準に対する解釈のズレや書類の不備があれば、その場で改善を促し、必要に応じて後日改善報告を求める、という流れが基本です。普通に運営していれば、過度に恐れる必要はありません。

注意とはいえ、運営指導を「受けていない」事業所も全国的に多いのが実情です。過去には実地指導の実施率が全国平均で2割に満たない年度もありました。いつ通知が来ても慌てないよう、日頃から書類を整えておくことが重要です。

運営指導と集団指導の違い

そもそも「指導」には、運営指導のほかに集団指導があります。両者は対象と方法が異なります。

項目運営指導集団指導
対象個別の事業所所管するすべての事業所
方法事業所を直接(またはオンラインで)確認会場やオンラインで一斉に説明・周知
目的個別のサービス提供・報酬適合状況の確認と気づき制度内容の周知徹底、不正・虐待の未然防止
頻度の目安数年に1度程度毎年度

集団指導は、事業者が守るべき制度内容を周知するために、毎年度すべての事業所を対象に実施することが望ましいとされています。近年は動画配信や資料のインターネット掲載で行う自治体も増えており、配布資料が公開されている場合は目を通しておくと運営指導対策にも役立ちます。

ちびウルフちびウルフ

じゃあ「監査」は、この指導とはまた別物なんだね?

リハウルフリハウルフ

そう、まったくの別物。ここが一番大事なところだよ。

(集団・運営)指導と監査の違い

指導と監査は、目的も法的な根拠も異なります。

指導と監査の指針の違い

指導:事業者が行うサービスの質の確保・向上を主眼とし、自ら法令等を遵守する事業者を「育成」することを目指すもの。

監査:指定基準違反や不正請求などが疑われる場合に、挙証資料をもとに事実関係を把握するために行うもの。

法的根拠で見ると、指導は介護保険法第23条・第24条に基づき行われるのに対し、監査は法第76条等の権限に基づく強い手続きです。つまり監査は、不正の疑いという「理由」があって初めて実施されるものなのです。

項目指導(運営・集団)監査
位置づけ育成・気づきの促し事実関係の確認・是正
根拠介護保険法 第23条・第24条 等介護保険法 第76条 等の権限行使
対象一般的な事業所不正・基準違反の疑いがある事業所
きっかけ定期的な計画・順番通報・情報提供、運営指導での重大な指摘 等
結果改善指導・改善報告改善勧告・命令、指定の効力停止・取消 等

監査はどんな事業所に来るのか

ちびウルフちびウルフ

「監査」ってどんな事業所に来るの?

リハウルフリハウルフ

運営指導で指摘されたのに直さなかった事業所や、不正の通報が入った事業所、報酬請求に不備がありそうな事業所などに来るんだ。普通に運営していれば、まず来ることはないよ。

運営指導から監査へ切り替わる代表的なケースは、次のとおりです。

監査に切り替わる主なケース
  • 人員・施設設備・運営の基準に従っていない状況が著しい場合
  • 介護報酬の請求に不正、または不正の疑いがある場合
  • 高齢者虐待などがある場合
  • 運営指導での指摘事項を是正しなかった場合
  • 利用者・職員などからの通報・情報提供があった場合

監査の結果、指定が取り消された事業所は、事業所名・代表者名・取消理由が公表されます。毎年一定数の事業所が指定取消などの処分を受けているのも事実です。逆に言えば、基準を守り、運営指導での指摘をきちんと是正していれば、監査を過度に心配する必要はありません。

運営指導当日までの流れ

運営指導は、ある日いきなり抜き打ちで来るわけではなく、原則として事前に通知があります。一般的な流れを知っておくと、落ち着いて準備できます。

  1. 自治体から実施通知が届く(実施日・準備書類・対象期間などが示される)
  2. 通知に沿って、自己点検表の記入や必要書類の準備・事前提出を行う
  3. 当日、担当者が事業所を訪問(またはオンライン)で書類・記録・体制を確認する
  4. 確認の結果、改善が必要な点があれば口頭・文書で指導を受ける
  5. 後日、指摘事項について改善報告書を提出する

当日は、運営に関する基本書類、人員配置がわかる勤務表、個別援助計画と記録、加算の算定根拠などが確認の中心になります。「サービスを適切に提供していること」を書類で示せるかが問われるイメージです。

ポイント事前提出を求められる「自己点検票(自主点検表)」は、自分の事業所の弱点を洗い出す絶好の機会です。指導当日までに、ここで気づいた不備を是正しておくと安心です。

運営指導で指摘されやすいポイント

多くの事業所で共通して指摘されやすいのは、次のような点です。あらかじめ自己点検しておきましょう。

領域指摘されやすい例
人員基準常勤換算の計算ミス、資格要件・配置の不足
運営基準重要事項説明書・契約書の不備、苦情・事故記録の未整備
計画・記録個別援助計画の同意漏れ、提供記録とサービス内容の不一致
報酬・加算加算の算定要件を満たす根拠書類が残っていない
ちびウルフちびウルフ

ちゃんとやってても、書類がないと指摘されちゃうんだね…。

リハウルフリハウルフ

そうなんだ。運営指導は「実態」と「記録」が一致しているかを見る。日頃の記録こそが最大の備えだよ。

運営指導に備えて日頃からできること

運営指導はいつ通知が来てもおかしくありません。次の準備をしておくと安心です。

  1. 運営規程・重要事項説明書など基本書類を最新の状態に保つ
  2. 人員基準(常勤換算・資格要件)を満たしているか定期的に確認する
  3. 個別援助計画・記録・同意書を、サービス提供の実態と一致させる
  4. 加算の算定要件を満たす書類・体制を整え、根拠を残す
  5. 集団指導の配布資料・自治体の最新通知に目を通す
ポイント運営指導で指摘されやすいのは、加算の算定根拠や記録の不備です。「やっているのに書類で証明できない」状態をなくすことが、最大の対策になります。

動画で学ぶ|運営指導と監査の違い

運営指導と監査の違いについては、YouTubeチャンネル「リハウルフ」でも解説しています。文章とあわせて視聴すると理解が深まりますので、よろしければチャンネル登録もお願いします。

よくある質問(FAQ)

運営指導はどのくらいの頻度で来ますか?
指定の有効期間(多くは6年)内に1回以上を目安に行うこととされていますが、自治体の体制によって実施状況は異なり、数年来ていない事業所もあります。頻度に関わらず、いつ来ても対応できるよう日頃の整備が大切です。
運営指導で指摘されたら指定取消になりますか?
いいえ。運営指導は是正・気づきを促すもので、指摘された点を改善すれば問題ありません。指定取消などの重い処分につながるのは、基準違反が著しい場合や不正請求などで監査に至ったケースです。
運営指導はオンラインで行われることもありますか?
あります。令和4年度の名称変更の背景には、オンライン会議システムの活用が手法として明記されたことがあります。書類の事前提出や一部確認をリモートで行うなど、自治体により運用は異なります。
運営指導と監査の違いを一言で言うと?
運営指導は「より良いケアのための育成・気づき」、監査は「不正・基準違反の疑いに対する事実確認と是正」です。前者は一般的な事業所に、後者は疑いのある事業所に対して行われます。
まとめ
  • 「実地指導」は令和4年度から「運営指導」に名称変更(ICT活用の明記が背景)。
  • 指導には「運営指導(個別)」と「集団指導(一斉)」があり、いずれも事業者の育成・気づきが目的。
  • 監査はまったく別物で、不正・基準違反の疑いがある場合に法第76条等の権限で事実確認を行う手続き。
  • 普通に運営し、運営指導の指摘を是正していれば監査は基本的に来ない。日頃の書類整備が最大の備え。

出典:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和4年3月策定/令和6年7月改訂)、厚生労働省「介護保険施設等の指導監督について」

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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