通所介護の認知症加算とは?単位数・算定要件をわかりやすく解説【令和6年度】

通所介護の認知症加算は60単位/日。令和6年度改定で単位数は変わっていませんが、利用者割合の要件が「20%以上」から「15%以上」に緩和され、代わりに「認知症ケアに関する事例の検討や技術的指導に係る会議の定期開催」が要件に加わりました。取りやすくなった一方で、やることが1つ増えた改定です。
この記事では、理学療法士・介護支援専門員として現場に関わってきた立場から、通所介護の認知症加算の単位数と算定要件を、告示・留意事項通知(老企第36号)とQ&Aの記載に沿って整理します。割合の計算方法や、間違えやすいポイントまで押さえます。
- 認知症加算の単位数(60単位/日)と算定できる利用者の範囲
- 令和6年度改定で変わった2点(割合要件の緩和と会議要件の追加)
- 算定要件を5つに分けた整理(人員・割合・研修・会議・プログラム)
- 利用者割合の計算方法(前年度/前3月、実人員/延人員)
- 算定対象は自立度Ⅲ以上だけ、という見落としやすい線引き
- 中重度者ケア体制加算とは併算定でき、若年性認知症利用者受入加算とはできない理由
- 認知症高齢者の日常生活自立度の確認方法(Q&Aの答え)
- 届出後に割合が下がったときの取り扱い
通所介護の認知症加算とは
認知症加算は、認知症の利用者を一定割合以上受け入れ、そのための体制を上乗せで整えている通所介護事業所を評価する加算です。単位数は60単位/日。地域密着型通所介護でも同じ60単位/日です。
ポイントは、「認知症の人にケアをしたこと」ではなく「認知症の人を受け入れられる体制を、人員と運用の両方で持っていること」を評価している点にあります。だから要件の中心が、職員の上乗せ配置・研修修了者の配置・会議・プログラムになっています。
| 単位数 | 60単位/日 |
|---|---|
| 対象サービス | 通所介護、地域密着型通所介護 |
| 算定できる利用者 | 認知症高齢者の日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する人 |
| 算定の単位 | 対象となる利用者が利用した日ごと |
| 届出 | 必要(体制届) |
令和6年度改定で変わった2つのこと
令和6年度改定では、単位数は据え置きのまま、要件が2か所動きました。「算定のすそ野を広げつつ、事業所全体の認知症対応力を高める」という趣旨の見直しです。
①利用者割合が20%以上から15%以上に緩和
従来は、利用者の総数のうち自立度Ⅲ以上の人が100分の20以上必要でした。これが100分の15以上に下がっています。母数が変わったわけではなく、必要な割合だけが下がったかたちです。
実務的な影響は小さくありません。利用者30人の事業所なら、6人必要だったところが4.5人(=5人)で足りる計算になります。これまで「あと1人足りずに届出を見送っていた」事業所に、現実的な選択肢として戻ってきた改定です。
②認知症ケアに関する会議の定期開催が要件に追加
新たに、事業所の従業者に対する認知症ケアに関する事例の検討や技術的指導に係る会議を定期的に開催していることが要件に入りました。研修修了者を1人置いて終わり、ではなく、その知識を事業所全体に広げる仕組みまでを求める形です。
この会議は、テレビ電話装置等を活用して行うこともできます。留意事項通知には次のように書かれています。
ちびウルフ「定期的に」って、月1回? 3か月に1回?
リハウルフ通所介護の認知症加算については、告示・通知に具体的な頻度の定めがありません。「定期的に開催していること」とだけ書かれています。頻度が示されていない以上、実地指導で説明できる形(例:月1回、開催日・参加者・検討事例・指導内容を記録)を自分で決めて回すのが安全です。指定権者によって解釈の幅があるので、届出前に確認してください。
認知症加算の算定要件を5つに分けて整理する
要件は告示と留意事項通知に分かれて書かれていて読みにくいので、5つに分けます。すべて満たして初めて算定できます。
| ①人員 | 指定基準上の看護職員・介護職員の員数に加え、看護職員または介護職員を常勤換算方法で2以上確保 |
|---|---|
| ②割合 | 自立度Ⅲ以上の利用者の割合が100分の15以上 |
| ③研修 | 認知症介護に関する研修の修了者を、サービス提供時間帯を通じて1名以上配置 |
| ④会議 | 認知症ケアに関する事例の検討や技術的指導に係る会議を定期的に開催 |
| ⑤プログラム | 認知症の症状の進行の緩和に資するケアを計画的に実施するプログラムを作成 |
①人員:常勤換算2以上の「上乗せ」配置
ここでいう2以上は、指定基準で必要な人数とは別枠の上乗せです。基準ぎりぎりで回している事業所が、そのまま算定できる加算ではありません。
算定方法は中重度者ケア体制加算と同じ考え方で、暦月ごとに、看護職員または介護職員の勤務延時間数を常勤職員が勤務すべき時間数で除して計算します。暦月において常勤換算2以上を確保していれば要件を満たします。
- 常勤換算による員数は、小数点第2位以下を切り捨てる
- 延長加算を算定する際に配置する看護職員・介護職員の勤務時間数は、勤務延時間数に含めない
- 判定は暦月ごと(月をまたいで平均するのではない)
②割合:自立度Ⅲ以上が15%以上
要件になっている「日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者」とは、日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当する人を指します。Ⅱは入りません。
割合は、前年度(3月を除く)、または届出日の属する月の前3月の1月当たりの実績の平均で算定します。計算には利用実人員数または利用延人員数を用い、要支援者は人員数に含めません。
③研修:修了者を提供時間帯を通じて1名以上
対象になる研修は次のとおりです。名称が似ていて紛らわしいですが、通所介護の認知症加算では実践者研修でも要件を満たします。
| 認知症介護指導者養成研修 | 指導者レベル。実践研修の企画・立案や講師を担う立場 |
|---|---|
| 認知症介護実践リーダー研修 | チームのリーダーレベル |
| 認知症介護実践者研修 | 実践者レベル。これでも可 |
| 認知症看護に係る適切な研修 | 日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」、同協会が認定する看護系大学院の「老人看護」「精神看護」専門看護師教育課程、日本精神科看護協会が認定する「精神科認定看護師」(認定証が発行されている者に限る) |
配置は、指定通所介護を行う時間帯を通じて1名以上です。Q&Aでは配置の考え方について、常勤等の条件はないものの、加算対象事業所の職員であることが必要で、加算の対象となる事業所は、その修了者が勤務する主たる事業所1か所のみとされています。1人の修了者を複数事業所で使い回すことはできません。
④会議:定期的な開催
令和6年度改定で追加された要件です。前述のとおり頻度の定めはありませんが、「事例の検討」と「技術的指導」が内容に含まれていることが読み取れます。単なる申し送りや連絡会では説明が苦しくなります。
なお、Q&Aでは、特定事業所加算やサービス提供体制強化加算における「事業所における従業者の技術指導を目的とした会議」と同時期に開催される場合、検討内容の1つが認知症ケアの技術的指導についての事項であり、全ての従業者が参加していれば、両会議を開催したものとしてよいとされています。会議を別立てで増やす必要はありません。
⑤プログラム:進行の緩和に資するケアを計画的に
留意事項通知には、「認知症加算を算定している事業所にあっては、認知症の症状の進行の緩和に資するケアを計画的に実施するプログラムを作成することとする」と定められています。
個々の通所介護計画とは別に、事業所として何をどう提供するのかを示すものです。ここは記載内容の細目が示されていない分、実地指導で「作っていますか」と聞かれて出せるかどうかが勝負になります。
利用者割合の計算方法
割合の計算は、実人員でも延人員でも構いません。どちらかで15%以上になれば算定できます。イメージしやすいよう、利用実人員10人の月で見てみます。
| 利用者 | 自立度/その月の利用回数 |
|---|---|
| A〜Fさん(6人) | 自立なし〜Ⅱ/各8回 |
| G〜Hさん(2人) | Ⅱ/各8回 |
| Iさん | Ⅲ/8回 |
| Jさん | Ⅳ/4回 |
実人員での計算は、Ⅲ以上が2人/10人=20.0%で要件を満たします。一方、延人員では(8+4)÷(8×9+4)=12÷76≒15.7%。この例はどちらでも満たしますが、利用回数の少ない人に重度者が偏っていると、延人員では割合が下がります。両方で計算して、有利なほうを使ってください。
もう1つ、前年度の実績が6月に満たない事業所(新たに事業を開始し、または再開した事業所を含む)は、前年度の実績による届出はできません。この場合は前3月の実績で判断することになります。
認知症高齢者の日常生活自立度はどう確認するか
割合の計算も算定対象者の判断も、すべて自立度が起点です。ここの根拠が曖昧だと、要件そのものが崩れます。Q&Aでは確認方法が明示されています。
- 医師の判定結果または主治医意見書を用いる/その結果を居宅サービス計画または各サービスの計画に記載する
- 複数の判定結果がある場合は、最も新しい判定を用いる
- 医師の判定がない場合は、認定調査員が記入した認定調査票(基本調査)7「認知症高齢者の日常生活自立度」欄の記載を用いる
介護支援専門員は、サービス担当者会議などを通じて自立度も含めて情報を共有することとされています。つまり事業所が独自に判定するものではなく、医師または認定調査の判定を「もらってくる」ものだという整理です。
リハウルフケアマネの立場で言うと、ここは聞かれれば普通に出す情報です。加算の要件で必要だと伝えてもらえれば、担当者会議やモニタリングのタイミングで共有できます。事業所側で抱え込まず、早めに依頼したほうが早い。
通所介護の認知症加算で間違えやすい5つのポイント
届出や請求の場面で実際につまずきやすいのは、次の5点です。
ランクⅡの人には算定できない
繰り返しになりますが、算定できるのはランクⅢ・Ⅳ・Mだけです。割合要件の分子と、算定対象者の範囲は同じ「Ⅲ以上」でそろっています。体制が整った月に、事業所の全利用者へ算定してしまう誤りが起きやすいので注意してください。
要支援者は人員数に含めない
割合の計算では、要支援者は分母にも分子にも含めません。総合事業の第1号通所事業の利用者も、通所介護の報酬体系の外にあります。事業対象者・要支援者を多く受け入れている事業所ほど、母数の取り違えで割合を誤りやすいところです。
認知症対応型通所介護には認知症加算がない
名前が似ていますが、認知症対応型通所介護(地域密着型サービス)は、認知症の人を対象とすること自体が前提のサービスで、基本報酬がその分高く設定されています。認知症加算は通所介護と地域密着型通所介護の加算であり、認知症対応型通所介護では算定しません。
若年性認知症利用者受入加算とは併算定できない
若年性認知症利用者受入加算(60単位/日)は、認知症加算を算定している場合には算定しません。単位数が同じなので損得は出ませんが、両方を重ねて請求することはできません。40歳以上65歳未満の若年性認知症の人については、どちらか一方と覚えてください。
中重度者ケア体制加算とは併算定できる
こちらは逆です。留意事項通知に、中重度者ケア体制加算の算定とともに認知症加算も算定できると明記されています。ただし、上乗せの常勤換算2以上は両方の加算で別々に2ずつ必要と読むのか、共通で足りるのかは判断が分かれる論点です。実際に両方を狙う場合は、必ず事前に指定権者へ確認してください。
| 中重度者ケア体制加算(45単位/日) | 併算定できる(要件を両方満たす場合) |
|---|---|
| 若年性認知症利用者受入加算(60単位/日) | 併算定できない |
| 個別機能訓練加算 | 別要件の加算であり、認知症加算による制限はない |
認知症加算を取りにいく前に確認したいこと
ここからは制度の定めではなく、実務での判断材料としての整理です。
60単位/日は、1単位10円の地域で1日あたり600円。週2回利用の人が月8回なら月4,800円、対象者が10人いれば月48,000円ほどの増収になります(地域区分により単価が異なるため、金額は目安です)。一方で、上乗せ常勤換算2以上の人件費は、これを大きく上回るのが普通です。
研修修了者については、実践者研修で足ります。都道府県が実施する研修で、募集時期が限られるため、算定を検討し始めた時点で受講計画を立てておくと間に合いやすくなります。すでに修了者が在籍していて誰も把握していなかった、というケースも実際にあります。まず職員の研修歴を洗い出すところからです。
認知症加算は1日いくらですか?
令和6年度改定で何が変わりましたか?
自立度Ⅱの利用者にも算定できますか?
研修は認知症介護実践者研修でも要件を満たしますか?
研修修了者は常勤でなければいけませんか?
会議はどのくらいの頻度で開けばよいですか?
他の加算の会議と一緒に開いてもよいですか?
中重度者ケア体制加算と一緒に算定できますか?
届出後に割合が15%を下回ったらどうなりますか?
- 通所介護・地域密着型通所介護の認知症加算は60単位/日。令和6年度改定でも単位数は変更なし。
- 令和6年度改定の変更点は2つ。利用者割合が100分の20以上から100分の15以上に緩和され、認知症ケアに関する事例検討・技術的指導に係る会議の定期開催が要件に追加された。
- 算定できるのは、認知症高齢者の日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する利用者に対してのみ。Ⅱは対象外。
- 人員要件は、指定基準の員数に加えて看護職員または介護職員を常勤換算方法で2以上確保すること。暦月ごとに判定し、小数点第2位以下は切り捨て。
- 割合は前年度(3月を除く)または届出日の属する月の前3月の1月当たり実績の平均で、利用実人員数または利用延人員数のいずれかで判定。要支援者は含めない。
- 研修は、認知症介護指導者養成研修・実践リーダー研修・実践者研修・認知症看護に係る適切な研修のいずれか。修了者を提供時間帯を通じて1名以上配置する。
- 研修修了者に常勤要件はないが、加算対象事業所は修了者が勤務する主たる事業所1か所のみ。
- 会議の頻度に定めはない。他の加算の技術指導会議との同時開催は、要件を満たせば認められる。
- 認知症の症状の進行の緩和に資するケアを計画的に実施するプログラムの作成が必要。
- 中重度者ケア体制加算とは併算定できるが、若年性認知症利用者受入加算とは併算定できない。
- 前3月の実績で届け出た場合、届出後も毎月の割合の維持と記録が必要で、下回れば直ちに届出が必要。
- 自立度は医師の判定結果または主治医意見書(複数あれば最新)で確認し、医師の判定がなければ認定調査票の記載を用いる。
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(告示・通知・Q&A等の一次情報の掲載ページ)
- 厚生省老人保健福祉局企画課長通知「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月1日老企第36号)第二の7(11)・(15)
- 厚生労働省老健局「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(介護保険最新情報Vol.1225/問17〜問24)
※本記事の単位数および算定要件は、厚生労働省の令和6年度介護報酬改定に関する告示・留意事項通知・Q&Aにもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。ここに記載した以外の要件が定められている場合があります。地域区分により1単位あたりの単価が異なるため、金額は単位数から一律には算出できません。令和6年度改定の内容は2026年8月時点で有効なものとして整理していますが、その後の改定・通知により取扱いが変わる可能性があります。会議の頻度や、中重度者ケア体制加算と併算定する場合の人員の考え方など、通知に明示のない事項に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。
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