小規模多機能型居宅介護の介護職員等処遇改善加算とは?

小規模多機能型居宅介護の介護職員等処遇改善加算は、イからヨまでで算定した単位数に、区分に応じて1000分の128〜1000分の186を乗じて算定します。単位数の上乗せではなく率での加算です。
実務上いちばん重要なのは、最上位の(Ⅰ)イを取るにはサービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が必須という点です。処遇改善加算だけを単独で最上位まで上げることはできません。
さらに(Ⅰ)ロには、生産性向上推進体制加算の算定・ケアプランデータ連携システムの利用・連携推進法人への所属のいずれかが必要です。加算同士が連鎖する構造になっています。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)のタと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)五十八を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 介護職員等処遇改善加算6区分の加算率
- 算定基礎が「イからヨまで」であること
- (Ⅰ)イにサービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)が必須であること
- (Ⅰ)ロの3つの選択要件
- (Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)がどの要件を落とした区分か
- 届出・報告先が市町村長であること
ちびウルフ加算率だけ見ると(Ⅰ)ロが一番高いんですね。(Ⅰ)イより上って変じゃないですか?
リハウルフ変ではありません。イとロの関係は「上下」ではなく「追加要件の有無」です。ロはイの要件を全部満たしたうえで、生産性向上・ケアプランデータ連携・連携推進法人のいずれかを追加で満たす区分です。要件が1つ増える分だけ率が上がる、という素直な設計です。
小規模多機能型居宅介護の介護職員等処遇改善加算とは?
小規模多機能型居宅介護の介護職員等処遇改善加算は、介護職員等の賃金改善を実施している事業所を評価する加算です。令和6年度改定で、それまでの処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算が一本化されました。
他の加算と決定的に違うのは、加算した額を賃金改善に充てることが要件そのものになっている点です。算定した額に相当する賃金改善を実施しなければならず、事業年度ごとに実績報告も求められます。収入として自由に使える加算ではありません。
小多機は基本報酬が月単位の包括報酬で、加算の多くも月単位です。率で乗せる処遇改善加算は、その積み上げに対して一定割合が上乗せされる形になります。
介護職員等処遇改善加算の加算率
タ 介護職員等処遇改善加算
注 (略)市町村長に対し届出を行った指定小規模多機能型居宅介護事業所が、利用者に対し、指定小規模多機能型居宅介護を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、次に掲げる単位数を所定単位数に加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
| 区分 | 加算率 |
|---|---|
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ | 1000分の171 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)ロ | 1000分の186 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)イ | 1000分の168 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)ロ | 1000分の183 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) | 1000分の156 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) | 1000分の128 |
算定基礎は「イからヨまで」
条文は「イからヨまでにより算定した単位数」を基礎としています。
- 含まれる:イ(基本報酬)〜ヨ(サービス提供体制強化加算)までのすべて。初期加算・認知症加算・看護職員配置加算・訪問体制強化加算・総合マネジメント体制強化加算・生産性向上推進体制加算なども基礎に入ります
- 含まれない:タ(介護職員等処遇改善加算)自身
他の加算を積み上げるほど処遇改善加算の額も増える構造です。
要介護3の登録者(10,000単位相当)に(Ⅰ)ロを算定する場合、10,000×186÷1000=1,860単位が目安になります(他の加算を含めた合計に対して計算します)。
介護職員等処遇改善加算の算定要件
(Ⅰ)イの要件(10項目)
- (1) 賃金改善計画の策定と措置。(Ⅳ)相当額の2分の1以上を基本給または毎月の手当に充てること/経験・技能のある介護職員のうち1人は賃金改善後の年額440万円以上(少額等の理由で困難な場合を除く)
- (2) 介護職員等処遇改善計画書を作成し、全職員に周知し、市町村長に届け出ること
- (3) 算定額に相当する賃金改善を実施すること
- (4) 事業年度ごとに実績を市町村長に報告すること
- (5) 算定日の属する月の前12月間に労働関係法令違反で罰金以上の刑に処せられていないこと
- (6) 労働保険料の納付が適正であること
- (7) 任用要件・資質向上計画・昇給の仕組みの整備と周知(6項目)
- (8) 賃金改善以外の処遇改善の内容と費用見込額を全職員に周知すること
- (9) (8)の内容をインターネット等で公表すること
- (10) サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を届け出ていること
(7)のキャリアパス要件
| 号 | 内容 |
|---|---|
| (一) | 介護職員の任用の際の職責・職務内容等の要件(賃金に関するものを含む)を定めていること |
| (二) | (一)を書面で作成し、全介護職員に周知していること |
| (三) | 資質向上の支援に関する計画を策定し、研修の実施または機会を確保していること |
| (四) | (三)を全介護職員に周知していること |
| (五) | 経験・資格等に応じた昇給、または一定基準による定期昇給の判定の仕組みを設けていること |
| (六) | (五)を書面で作成し、全介護職員に周知していること |
(Ⅰ)ロの追加要件
(Ⅰ)イの(1)〜(10)をすべて満たしたうえで、次のいずれか1つを満たすと(Ⅰ)ロになります。
- 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定していること
- ケアプランデータ連携システムを利用していること
- 連携推進法人に所属していること
(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)は何を落とした区分か
| 区分 | 要件 | (Ⅰ)イとの差 |
|---|---|---|
| (Ⅱ)イ | イ(1)〜(9) | (10)サービス提供体制強化加算が不要 |
| (Ⅱ)ロ | イ(1)〜(9)+ロ(2) | (10)不要+追加要件あり |
| (Ⅲ) | イ(1)(一)、(2)〜(8) | 年額440万円要件と(9)公表が不要 |
| (Ⅳ) | イ(1)(一)、(2)〜(6)、(7)(一)〜(四)、(8) | さらに昇給の仕組み(7)(五)(六)と(9)が不要 |
(Ⅲ)と(Ⅳ)の違いは、昇給の仕組み((7)(五)(六))があるかどうかです。ここが小さな事業所にとって最初の壁になります。
介護職員等処遇改善加算の注意点
(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロを算定するには、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が必須です。
小多機のサービス提供体制強化加算(Ⅰ)は介護福祉士70%以上、(Ⅱ)は50%以上が要件です。職員構成が届かない事業所は、処遇改善加算も(Ⅱ)以下にとどまります。採用・資格取得支援の計画と処遇改善加算の区分は連動して考える必要があります。
賃金改善の実施が要件そのもの
要件(3)は「算定額に相当する賃金改善を実施すること」です。算定して終わりではなく、算定額と賃金改善額が対応していることを説明できる状態が必要です。事業年度ごとの実績報告(要件(4))でこれを示します。
経営悪化で事業継続が困難な場合の賃金水準の見直しは「やむを得ない」とされていますが、その内容を市町村長に届け出ることが条文上求められています。
届出・報告先はすべて市町村長
小多機は地域密着型サービスのため、計画書の届出も実績報告も市町村長あてです。生産性向上推進体制加算の実績報告先が厚生労働省であるのとは異なります。混同しないよう注意してください。
算定を進める順序
- サービス提供体制強化加算の届出状況を確認する((Ⅰ)イ・ロの可否が決まる)
- キャリアパス要件(任用要件・研修計画・昇給の仕組み)の整備状況を点検する
- 算定できる最上位の区分を確定する
- 介護職員等処遇改善計画書を作成し、全職員に周知する
- 市町村長に届け出る
- 賃金改善以外の処遇改善の内容をインターネット等で公表する((Ⅰ)(Ⅱ)の場合)
- 事業年度ごとに実績を市町村長へ報告する
介護職員等処遇改善加算のQ&A
複数の区分を同時に算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合、その他の区分は算定しないと条文に定められています。
加算率は何に掛けるのですか?
イからヨまでにより算定した単位数です。基本報酬と、処遇改善加算以外のすべての加算が基礎に含まれます。
(Ⅰ)ロが(Ⅰ)イより率が高いのはなぜですか?
ロはイの要件をすべて満たしたうえで、生産性向上推進体制加算の算定など追加要件を1つ満たす区分だからです。
サービス提供体制強化加算がないと(Ⅰ)は取れませんか?
取れません。イ(10)で(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が要件とされています。
(Ⅲ)と(Ⅳ)の違いは何ですか?
昇給の仕組み((7)(五)(六))の有無です。(Ⅲ)には必要で、(Ⅳ)には求められません。
年額440万円の職員は必ず必要ですか?
算定見込額が少額であることその他の理由により賃金改善が困難な場合はこの限りでないとされています。
公表はどこで行えばよいですか?
条文は「インターネットの利用その他の適切な方法により公表」としています。方法の指定は市町村に確認してください。
届出先はどこですか?
市町村長です。計画書の届出も事業年度ごとの実績報告も市町村長あてです。
- 介護職員等処遇改善加算は率での加算で、6区分ある
- 加算率は(Ⅰ)イ171/(Ⅰ)ロ186/(Ⅱ)イ168/(Ⅱ)ロ183/(Ⅲ)156/(Ⅳ)128(いずれも1000分の)
- 算定基礎はイからヨまでの単位数(処遇改善加算自身は含まない)
- 複数区分の同時算定はできない
- (Ⅰ)イにはサービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が必須
- (Ⅰ)ロは生産性向上推進体制加算・ケアプランデータ連携・連携推進法人のいずれかを追加
- (Ⅲ)と(Ⅳ)の差は昇給の仕組みの有無
- 算定額に相当する賃金改善の実施が要件そのもの
- 届出・実績報告はいずれも市町村長あて
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 小規模多機能型居宅介護費のタ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)五十八 小規模多機能型居宅介護費における介護職員等処遇改善加算の基準(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の加算率・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、加算の解釈や届出の運用が自治体によって異なる場合があります。記事中の単位数の計算例は加算率の理解のための概算であり、実際の請求額とは異なります。公表の方法、計画書の様式、実績報告の期限については所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




