小規模多機能型居宅介護の看護職員配置加算とは?900・700・480単位の要件を解説

小規模多機能型居宅介護(小多機)の看護職員配置加算は、(Ⅰ)900単位・(Ⅱ)700単位・(Ⅲ)480単位(いずれも1月につき)の3区分です。区分を分けているのは資格と勤務形態の2点だけで、利用者の状態や実績は関係ありません。
ここで押さえるべきなのは、小多機には人員基準としてもともと「従業者のうち1以上は看護師または准看護師」という定めがあることです。つまりこの加算は、基準上いるはずの看護職員に対して「常勤か」「専従か」「常勤換算でどれだけいるか」を上乗せで評価するものです。基準を満たしているだけでは算定できません。
算定率は(Ⅰ)28.3%・(Ⅱ)21.8%・(Ⅲ)8.1%で、合計すると約58%(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)。4割の事業所は3区分のどれも算定していない計算になります。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費のト、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第29号、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第63条を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 看護職員配置加算3区分の単位数と分かれ方
- 人員基準の看護職員と、加算で求められる看護職員の違い
- (Ⅰ)(Ⅱ)が「専従・常勤」を求めていること
- (Ⅲ)だけは常勤換算でよいこと
- 同一敷地内の他事業所と兼務している看護師では(Ⅰ)(Ⅱ)を取れない理由
- 3区分は同時に算定できないこと
- 看取り連携体制加算が(Ⅰ)を前提にしていること
- 要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)には存在しないこと
- 算定率58%をどう読むか
3区分は「資格」と「勤務形態」だけで決まる
告示96号 第29号が定める施設基準は、次のとおりです。
| 区分 | 単位数/月 | 配置要件 |
|---|---|---|
| 看護職員配置加算(Ⅰ) | 900単位 | 専ら当該事業所の職務に従事する常勤の看護師を1名以上配置 |
| 看護職員配置加算(Ⅱ) | 700単位 | 専ら当該事業所の職務に従事する常勤の准看護師を1名以上配置 |
| 看護職員配置加算(Ⅲ) | 480単位 | 看護職員を常勤換算方法で1名以上配置 |
いずれの区分も、あわせて定員超過利用・人員基準欠如による減算(通所介護費等の算定方法第7号)に該当していないことが条件です。
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の違い=看護師か准看護師か(200単位差)
- (Ⅱ)と(Ⅲ)の違い=専従・常勤か、常勤換算か(220単位差)
登録者の状態、看護の提供実績、訪問回数などは一切要件になっていません。誰を、どういう雇い方で置いているかだけで決まる純粋な体制加算です。
人員基準の看護職員では算定できない理由
小多機の人員基準を定める省令34号 第63条第4項は、次のとおりです。
第一項の小規模多機能型居宅介護従業者のうち一以上の者は、看護師又は准看護師でなければならない。
この規定には、「常勤」も「専従」も「常勤換算1以上」も書かれていません。従業者のうち1人が看護師または准看護師であればよい、という人数ベースの定めです。
さらに第63条第6項は、同一敷地内に他の事業所(指定居宅サービス事業所、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所、地域密着型通所介護事業所、認知症対応型通所介護事業所など)がある場合、看護師または准看護師はそれらの職務に従事することができるとしています。兼務が認められているということです。
人員基準を満たすだけなら、非常勤の看護師1人でも、同一敷地内のデイと兼務している看護師でも構いません。
しかし加算(Ⅰ)(Ⅱ)が求めるのは「専ら当該指定小規模多機能型居宅介護事業所の職務に従事する常勤の」看護師・准看護師です。兼務している時点で「専ら従事」に当たらず、非常勤なら「常勤」に当たりません。
| 配置の形 | 人員基準 | (Ⅰ)/(Ⅱ) | (Ⅲ) |
|---|---|---|---|
| 常勤・専従の看護師1名 | ○ | ○(Ⅰ・900単位) | — |
| 常勤・専従の准看護師1名 | ○ | ○(Ⅱ・700単位) | — |
| 非常勤の看護職員を合わせて常勤換算1.0 | ○ | × | ○(480単位) |
| 同一敷地内のデイと兼務する常勤看護師1名 | ○ | ×(専従でない) | 兼務分を除いた常勤換算で判定 |
| 非常勤の看護師が週2日のみ(常勤換算0.4) | ○ | × | × |
ちびウルフ(Ⅲ)の480単位なら、非常勤を組み合わせて常勤換算1.0にすれば取れるってことですか?
リハウルフ条文上はそう読めます。(Ⅲ)には「専ら」も「常勤」も書かれておらず、常勤換算方法で1名以上とだけあります。
ただし、常勤換算に算入できるのはその事業所の職務に従事した時間です。同一敷地内のデイと兼務している看護師なら、小多機で働いた時間だけを積み上げることになります。時間の切り分けを勤務表で示せるようにしておいてください。
金額で見ると、(Ⅲ)480単位は年間5,760単位(約5万8千円)。非常勤看護師の人件費を丸ごと賄える額ではありませんが、すでに複数の非常勤で回している事業所なら、届出だけで取れる可能性があります。
3区分は同時に算定できない
告示126号 トの注は、次のとおりです。
(前略)当該施設基準に掲げる区分に従い、1月につきそれぞれ所定単位数を加算する。ただし、この場合において、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
看護師と准看護師を両方、常勤専従で置いていても、(Ⅰ)900単位と(Ⅱ)700単位を重ねることはできません。上位の(Ⅰ)だけを算定します。
看取り連携体制加算は(Ⅰ)が前提
看護職員配置加算は、それ単体で終わりません。看取り連携体制加算(1日64単位・死亡日および死亡日以前30日以下)は、告示126号 チの注に次の条件が付いています。
ただし、この場合において、看護職員配置加算(Ⅰ)を算定していない場合は、算定しない。
| 算定したい加算 | 必要な看護職員配置加算 |
|---|---|
| 看取り連携体制加算(64単位/日) | (Ⅰ)=常勤専従の看護師 |
准看護師による(Ⅱ)700単位では、看取り連携体制加算に進めません。看取りまで対応する方針の事業所は、常勤専従の「看護師」を確保できるかが分岐点になります。
あわせて告示96号 第30号は、看取り連携体制加算について①看護師により24時間連絡できる体制を確保していること、②看取り期における対応方針を定め、利用開始の際に登録者またはその家族等に説明し同意を得ていることを求めています。
要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)には存在しない
指定地域密着型介護予防サービスの報酬を定める平成18年厚生労働省告示第128号には、看護職員配置加算の規定がありません。
| 加算 | 要支援での算定 |
|---|---|
| 看護職員配置加算 | × |
| 認知症加算 | × |
| 訪問体制強化加算 | × |
| 看取り連携体制加算 | × |
| 初期加算 | ○(30単位/日) |
| 総合マネジメント体制強化加算 | ○(1,200/800単位) |
| 科学的介護推進体制加算 | ○(40単位) |
要支援の登録者が多い事業所では、この加算による増収は見込めません。看護職員の配置コストを、要介護の登録者からの加算だけで評価する構造になっている点は、経営判断のうえで押さえておくべきです。
算定率58%|(Ⅰ)を取れているのは3割弱
厚生労働省の資料による算定率(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)は次のとおりです。
| 区分 | 単位数 | 算定率(事業所ベース) |
|---|---|---|
| 看護職員配置加算(Ⅰ) | 900単位 | 28.3% |
| 看護職員配置加算(Ⅱ) | 700単位 | 21.8% |
| 看護職員配置加算(Ⅲ) | 480単位 | 8.1% |
| 3区分の合計 | 約58% | |
人員基準としては全事業所に看護職員がいるはずなのに、加算を算定できているのは約6割です。残りは、非常勤のみ・兼務・常勤換算1.0未満といった配置になっていると推測できます。
(Ⅲ)の算定率は8.1%と低い水準です。しかし要件は「看護職員を常勤換算方法で1名以上」だけ。
非常勤の看護職員を複数抱えている事業所は、勤務時間を合算すると1.0を超えていることがあります。届出をしていないだけで要件を満たしているケースが埋もれている可能性があるので、直近の勤務実績で常勤換算を計算してみてください。
なお、看多機(看護小規模多機能型居宅介護)には看護職員配置加算はありません。看多機は看護職員の配置が基本報酬に組み込まれており、代わりに訪問看護体制減算と看護体制強化加算という別の仕組みで評価されます。
看護職員配置加算はいくらですか?
1月につき(Ⅰ)900単位・(Ⅱ)700単位・(Ⅲ)480単位です。3区分は同時に算定できません。
3区分の違いは何ですか?
(Ⅰ)は専従・常勤の看護師1名以上、(Ⅱ)は専従・常勤の准看護師1名以上、(Ⅲ)は看護職員を常勤換算で1名以上です。資格と勤務形態だけで分かれます。
人員基準を満たしていれば算定できますか?
できません。人員基準(省令34号第63条第4項)は「従業者のうち1以上が看護師または准看護師」という人数ベースの定めで、常勤・専従・常勤換算の要件はありません。加算はそこに上乗せの要件を課しています。
同一敷地内のデイと兼務している看護師でも算定できますか?
(Ⅰ)(Ⅱ)は算定できません。「専ら当該事業所の職務に従事する」ことが要件だからです。(Ⅲ)については、小多機で従事した時間を常勤換算して1.0以上あるかで判断することになります。
非常勤の看護職員だけでも算定できますか?
(Ⅲ)なら可能性があります。常勤換算方法で1名以上あればよく、常勤・専従の要件がないためです。(Ⅰ)(Ⅱ)は常勤が必要です。
准看護師では(Ⅰ)を算定できませんか?
できません。(Ⅰ)は「常勤の看護師」と明記されています。准看護師の場合は(Ⅱ)700単位です。
看護師と准看護師を両方置いたら両方算定できますか?
できません。告示の注が「いずれかの加算を算定している場合においては、その他の加算は算定しない」としています。
看取り連携体制加算を算定したいのですが順序はありますか?
看護職員配置加算(Ⅰ)が先です。告示に「看護職員配置加算(Ⅰ)を算定していない場合は、算定しない」と明記されています。准看護師による(Ⅱ)では算定できません。
要支援でも算定できますか?
できません。介護予防小規模多機能型居宅介護の報酬を定める告示128号に、看護職員配置加算の規定はありません。
看多機にも同じ加算がありますか?
ありません。看多機は看護職員の配置が基本報酬に織り込まれており、訪問看護体制減算と看護体制強化加算という別の仕組みで評価されます。
- 看護職員配置加算は(Ⅰ)900単位・(Ⅱ)700単位・(Ⅲ)480単位(1月)
- 区分は資格(看護師か准看護師か)と勤務形態(専従常勤か常勤換算か)だけで決まる
- 利用者の状態や看護の提供実績は要件になっていない
- 人員基準は「従業者のうち1以上が看護師または准看護師」という人数ベースの定め
- 人員基準には常勤・専従・常勤換算の縛りがなく、同一敷地内の他事業所との兼務も認められている
- 加算(Ⅰ)(Ⅱ)は「専ら従事する常勤の」看護師・准看護師を求める
- 兼務している看護師では(Ⅰ)(Ⅱ)を算定できない
- (Ⅲ)は常勤換算1名以上でよく、専従・常勤の要件がない
- 常勤換算に算入できるのは、その事業所の職務に従事した時間
- 3区分は同時に算定できず、上位1つのみ
- いずれも定員超過利用・人員基準欠如の減算に該当していないことが条件
- 看取り連携体制加算は看護職員配置加算(Ⅰ)が前提で、准看護師では進めない
- 要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)には存在しない
- 算定率は(Ⅰ)28.3%・(Ⅱ)21.8%・(Ⅲ)8.1%で合計約58%
- 4割の事業所はどの区分も算定できていない
- (Ⅲ)は要件が軽いのに8.1%と低く、届出漏れが埋もれている可能性がある
- 看多機に看護職員配置加算はなく、別の仕組み(訪問看護体制減算・看護体制強化加算)で評価される
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 指定地域密着型サービス介護給付費単位数表「小規模多機能型居宅介護費」ト(看護職員配置加算)、チ(看取り連携体制加算)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第29号(指定小規模多機能型居宅介護における看護職員配置加算に係る施設基準)、第30号(看取り連携体制加算に係る施設基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第63条(小規模多機能型居宅介護従業者の員数)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)(厚生労働省法令等データベース)
- 社会保障審議会介護給付費分科会(第218回)資料2「小規模多機能型居宅介護」(PDF)小規模多機能型居宅介護の算定状況(介護給付費等実態統計 令和4年4月審査分)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、省令および審議会資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。地域密着型サービスの指定・指導は市町村が行うため、専従・兼務の判断や常勤換算の計算方法が自治体によって異なる場合があります。本記事は告示・省令の文言にもとづいて整理しており、留意事項通知の細目までは反映していません。本文中の金額は単位数を単純に積算した概算です。算定率は令和4年3月サービス提供分の数値です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。配置の組み立て方や届出漏れに関する指摘は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




