小規模多機能型居宅介護(小多機)の初期加算は、1日につき30単位です。事業所に登録した日から起算して30日以内の期間について算定します。30日フルで算定すれば900単位になります。

単価は小さいものの、算定率は64.9%(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)。3分の1の事業所は算定していない計算になります。要件は「登録したこと」だけで、体制の届出も研修も不要な加算なので、取りこぼしがそのまま損失になります。

実務で判断に迷うのは、入院して戻ってきた利用者にもう一度算定できるかどうかです。条文は「30日を超える病院又は診療所への入院後に利用を再び開始した場合も、同様とする」としています。入院が30日以内なら再算定できないという線引きです。

この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費のハ、指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(同第128号)を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 初期加算の単位数(30単位/日)と算定できる期間
  • 届出や体制要件が条文上定められていないこと
  • 入院後にもう一度算定できる条件(30日を超える入院)
  • 30日以内の入院では再算定できないこと
  • 短期利用居宅介護費には算定できないこと
  • 要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)でも30単位で算定できること
  • 看多機・グループホーム・特養の初期加算との違い
  • 算定率64.9%をどう読むか
  • 過少サービス減算がかかった月の扱い

初期加算は30単位。登録日から30日以内

告示126号の小規模多機能型居宅介護費「ハ 初期加算 30単位」の注は、次のとおりです。

イについては、指定小規模多機能型居宅介護事業所に登録した日から起算して30日以内の期間については、初期加算として、1日につき所定単位数を加算する。30日を超える病院又は診療所への入院後に指定小規模多機能型居宅介護の利用を再び開始した場合も、同様とする。

項目内容
単位数1日につき30単位
期間登録した日から起算して30日以内
最大30日分=900単位
対象「イ」=小規模多機能型居宅介護費(登録者)
届出条文上の定めなし
再算定30日を超える入院後に利用を再開した場合

起算点は「登録した日」であって、初回のサービス提供日ではありません。契約・登録が先行し、実際の利用開始が数日後になった場合でも、30日のカウントは登録日から始まります。

要件が「登録したこと」だけの珍しい加算

小多機の加算の多くは、研修修了者の配置(認知症加算)、訪問回数(訪問体制強化加算)、地域活動(総合マネジメント体制強化加算)など、体制や実績を求めます。

初期加算にはそれがありません。告示の注に「厚生労働大臣が定める基準」も「届出」の文言も置かれていないのは、小多機の加算では例外的です。新規の登録者が出たら自動的に発生する加算だと考えてよく、算定漏れは請求側の見落としが原因になります。

入院して戻ってきた場合|「30日を超える」がカギ

再算定の条件は、入院期間が30日を超えていることです。

状況再算定
登録後、初めて30日以内○(登録日から30日)
入院が30日を超えた後、利用を再開○(再開日から30日)
入院が30日以内で利用を再開×
短期入所生活介護など他サービスを挟んだ場合×(条文は病院・診療所への入院に限定)

条文が挙げているのは「病院又は診療所への入院」だけです。介護老人保健施設への入所や、他の施設の利用を挟んだ場合は、条文の文言に当てはまりません。

ちびウルフちびウルフ

入院が30日以内だと取れないのはなぜですか?戻ってきたら手間はかかりますよね。

リハウルフリハウルフ

初期加算が評価しているのは「登録の初期に集中して発生するアセスメントや関係づくりの手間」だからです。短期の入院で状況が大きく変わっていなければ、その手間はもう一度は発生しない、という整理になります。

実務では入院日数のカウントを間違えやすいところです。担当したケースでも、退院日を含めるかどうかで社内の解釈が割れていました。日数の数え方は市町村に確認しておくのが安全です。

短期利用居宅介護費には付かない

注は「イについては」と限定しています。「イ」は小規模多機能型居宅介護費(登録者に対する1月包括の報酬)です。

報酬区分初期加算
イ 小規模多機能型居宅介護費(登録者・1月)
ロ 短期利用居宅介護費(1日572〜843単位)×

短期利用は、あらかじめ7日以内(やむを得ない事情があれば14日以内)の期間を定めて受け入れる仕組みです。登録者ではないため、初期加算の対象外になります。

要支援でも30単位で算定できる

指定地域密着型介護予防サービスの報酬を定める平成18年厚生労働省告示第128号にも、介護予防小規模多機能型居宅介護費のハとして30単位の初期加算が置かれています。文言は介護給付とほぼ同じです。

イについては、指定介護予防小規模多機能型居宅介護事業所に登録した日から起算して30日以内の期間については、初期加算として、1日につき所定単位数を加算する。30日を超える病院又は診療所への入院の後に指定介護予防小規模多機能型居宅介護の利用を再び開始した場合も、同様とする。

小多機の加算には、看護職員配置加算や訪問体制強化加算のように介護予防では算定できないものがあります。初期加算は要支援でも算定できる側です。

加算要支援での算定
初期加算○(30単位/日)
認知症行動・心理症状緊急対応加算○(200単位・短期利用のみ)
看護職員配置加算×
訪問体制強化加算×
認知症加算×
看取り連携体制加算×

他サービスの初期加算との比較

初期加算という名前の加算は複数のサービスにあります。単位数は同じ30単位でも、起算点が異なります。

サービス単位数起算点
小規模多機能型居宅介護30単位/日登録した日
看護小規模多機能型居宅介護30単位/日登録した日
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)30単位/日入居した日

いずれも30日以内、そして「30日を超える病院又は診療所への入院後の再開(再入居)」で再度算定できる、という構造は共通です。小多機・看多機は「登録」、グループホームは「入居」という点だけが違います。

なお、通所介護や訪問介護には初期加算はありません。小多機の初期加算は、宿泊・通い・訪問を一体で提供する登録型サービスならではの立ち上げコストを評価したものと理解できます。

算定率64.9%|3分の1が取りこぼしている

厚生労働省の資料では、初期加算の算定率は事業所ベースで64.9%、件数ベースで7.74%でした(令和4年3月サービス提供分)。

加算算定率(事業所ベース)要件の重さ
認知症加算(Ⅰ)(改定前)92.3%対象者の該当
総合マネジメント体制強化加算90.0%体制・地域活動
初期加算64.9%登録したこと
訪問体制強化加算42.4%常勤2名・月200回

件数ベースが7.74%と低いのは、登録から30日以内という限られた期間の加算だからです。ある月に新規登録者がいなければ、その月は算定されません。

したがって事業所ベースの64.9%は、調査対象月に新規登録があった事業所の割合に近いと読むのが妥当です。ただし要件が軽い加算である以上、新規登録の月に算定し損ねていないかは確認する価値があります。

過少サービス減算がかかった月は初期加算も影響を受ける

小多機には、通い・訪問・宿泊の提供回数が登録者1人当たり平均で週4回に満たない場合、所定単位数が70%になる減算があります。

新規登録の直後は利用回数が少なくなりやすいため、この減算に該当する可能性があります。初期加算を含めた月全体の請求額に影響するので、登録初月の利用計画は回数の面からも確認しておいてください。

よくある質問
小多機の初期加算はいくらですか?

1日につき30単位です。登録した日から起算して30日以内の期間について算定でき、最大で900単位になります。

起算日は初回の利用日ですか?

違います。条文は「登録した日から起算して30日以内」としています。実際の利用開始日ではなく登録日が起算点です。

届出は必要ですか?

告示の注に届出や「厚生労働大臣が定める基準」の文言はありません。体制要件が課されていない加算です。運用は市町村にご確認ください。

入院後にもう一度算定できますか?

できます。ただし「30日を超える病院又は診療所への入院」の後に利用を再開した場合に限られます。入院が30日以内なら再算定できません。

老健に入所していた場合も再算定できますか?

条文が挙げているのは病院または診療所への入院だけです。介護老人保健施設への入所は文言に含まれていません。市町村に確認してください。

短期利用居宅介護費でも算定できますか?

できません。注は「イについては」と限定しており、イは登録者に対する小規模多機能型居宅介護費です。短期利用(ロ)は対象外です。

要支援でも算定できますか?

できます。介護予防小規模多機能型居宅介護にも同じ30単位の初期加算があり、条文の文言もほぼ同じです。

看多機やグループホームの初期加算と同じですか?

単位数(30単位/日)と30日以内という期間は同じです。起算点が、小多機・看多機は「登録した日」、グループホームは「入居した日」という違いがあります。

登録初月に利用回数が少ないと何か影響しますか?

過少サービス減算に注意が必要です。通い・訪問・宿泊の合計が登録者1人当たり平均で週4回に満たないと、その月の所定単位数が70%になります。

算定率が64.9%と低いのはなぜですか?

登録から30日以内という限られた期間の加算のため、その月に新規登録がなければ算定されないからです。要件自体は軽いので、新規登録があった月の算定漏れは確認しておくべきです。

まとめ
  • 小多機の初期加算は1日30単位、登録日から起算して30日以内
  • 30日フルで算定すれば900単位になる
  • 起算点は初回利用日ではなく「登録した日」
  • 告示上、届出や体制要件の定めがない珍しい加算
  • 30日を超える病院・診療所への入院後に再開した場合は再算定できる
  • 入院が30日以内なら再算定できない
  • 条文が挙げているのは病院・診療所への入院のみで、老健入所等は文言に含まれない
  • 短期利用居宅介護費(ロ)には算定できない
  • 要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)でも30単位で算定できる
  • 看多機も同じ30単位・登録日起算
  • グループホームは同じ30単位だが起算点は「入居した日」
  • 通所介護や訪問介護には初期加算がない
  • 算定率は事業所ベース64.9%、件数ベース7.74%
  • 件数ベースが低いのは、新規登録から30日という限られた期間の加算だから
  • 要件が軽い加算なので、新規登録月の算定漏れは避けたい
  • 登録初月は利用回数が少なくなりやすく、過少サービス減算(70%)に注意
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および審議会資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。地域密着型サービスの指定・指導は市町村が行うため、入院日数の数え方、病院・診療所以外の施設を経た場合の再算定の可否、届出の要否は自治体によって取扱いが異なる場合があります。本記事は告示の文言にもとづいて整理しており、留意事項通知の細目までは反映していません。算定率は令和4年3月サービス提供分の数値です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。初期加算の趣旨や実務上の注意点に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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