小規模多機能型居宅介護(小多機)には、定員の制限はありますが、利用回数の制限はありません。この2つを混同すると説明が食い違います。

定員は3層構造です。登録定員29人以下、通いサービスは登録定員の2分の1から15人まで、宿泊サービスは通いの利用定員の3分の1から9人まで(省令34号 第66条)。事業所が何人まで受け入れられるかの上限です。

一方、1人の利用者が月に何回使えるかという上限は、条文のどこにもありません。基本報酬が月額包括だからです。ただし逆向きの規定があり、登録者1人当たりの平均提供回数が週4回に満たないと、事業所の報酬が70%に下がります。

この記事では、省令34号と告示第126号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 登録定員は29人以下(サテライト型は18人以下)
  • 通いサービスの利用定員の計算方法(登録定員別の一覧)
  • 宿泊サービスの利用定員の計算方法
  • 1人当たりの利用回数に上限がないこと
  • 週4回未満で70%に減額される規定(事業所全体の平均で判定)
  • 「通いの利用者が登録定員に比べて著しく少ない状態が続いてはならない」という規定
  • 通いを利用していない日の対応義務
  • 介護予防と一体運営する場合の登録定員の数え方
  • ケアプランを組むときの考え方
  • 定員を理由に断られたときの確認事項

定員は3層。登録・通い・宿泊

省令34号 第66条です。

指定小規模多機能型居宅介護事業所は、その登録定員(中略)を二十九人(サテライト型指定小規模多機能型居宅介護事業所にあっては、十八人)以下とする。
2 (中略)
一 通いサービス 登録定員の二分の一から十五人(登録定員が二十五人を超える事業所にあっては、登録定員に応じて次の表に定める利用定員、サテライト型にあっては十二人)まで
二 宿泊サービス 通いサービスの利用定員の三分の一から九人(サテライト型にあっては、六人)まで

定員の種類本体事業所サテライト型
登録定員29人以下18人以下
通いサービスの利用定員登録定員の1/2〜15人(26人超は下表)12人まで
宿泊サービスの利用定員通いの利用定員の1/3〜9人6人まで

登録定員が25人を超える場合の通いの上限

条文に表が置かれています。

登録定員通いサービスの利用定員の上限
25人以下15人
26人または27人16人
28人17人
29人18人
下限もあることに注意

見落とされやすいのですが、通いサービスの利用定員には下限(登録定員の2分の1)があります。宿泊にも下限(通いの3分の1)があります。

たとえば登録定員29人なら、通いは15人以上18人以下の範囲で定める必要があります。「通いは5人まで」といった設定はできません。

これは登録者が実際に通える体制を確保させるための規定です。登録だけ受けて通いの受け皿がない、という事態を防いでいます。

登録定員29人の事業所の具体例

項目設定できる範囲
登録定員29人以下29人
通いの利用定員15人〜18人18人
宿泊の利用定員6人〜9人(通い18人の1/3=6人)9人

宿泊の下限は「通いの利用定員の3分の1」なので、通いを18人と定めた場合は6人以上になります。通いの定員を小さくすると、宿泊の下限も下がるという連動があります。

1人当たりの利用回数に上限はない

ここが小多機の最大の特徴です。省令にも告示にも、1人の利用者が月に何回まで使えるかという規定はありません。

告示第126号 注1は、基本報酬について「登録者の要介護状態区分に応じて、登録している期間1月につきそれぞれ所定単位数を算定する」と定めています。回数ではなく、登録している期間に対する定額です。

  • 通い・訪問・泊まりを何回使っても基本報酬は変わらない
  • 1日に通いと訪問を両方使ってもよい
  • 訪問を1日に何度入れてもよい
  • ただし事業所の定員の範囲内という物理的な制約はある

省令34号 第73条第1号も、この柔軟性を方針として明示しています。

指定小規模多機能型居宅介護は、利用者が住み慣れた地域での生活を継続することができるよう、地域住民との交流や地域活動への参加を図りつつ、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえて、通いサービス、訪問サービス及び宿泊サービスを柔軟に組み合わせることにより、妥当適切に行うものとする。

ちびウルフちびウルフ

回数制限がないなら、毎日使ってもいいんですか?

リハウルフリハウルフ

制度上は問題ありません。毎日通って、夜は訪問で様子を見て、週末は泊まるという使い方もできます。基本報酬は変わりません。

実際の制約はその日の通いの定員が埋まっているかです。登録29人に対して通いは18人までなので、全員が毎日通うことはできない。だから事業所は登録者の利用予定を調整します。

「使いたい日に使えるか」は、制度ではなく事業所の登録者構成で決まる。ここが利用前に確認すべき最大のポイントです。

使わなすぎると事業所の報酬が下がる

逆向きの規定です。告示第126号 注7です。

イについては、指定小規模多機能型居宅介護事業所が提供する通いサービス、訪問サービス及び宿泊サービスの算定月における提供回数について、登録者(短期利用居宅介護費を算定する者を除く。)1人当たり平均回数が、週4回に満たない場合は、所定単位数の100分の70に相当する単位数を算定する。

判定の対象内容
数えるもの通いサービス・訪問サービス・宿泊サービスの提供回数
母数登録者(短期利用居宅介護費を算定する者を除く)
基準1人当たり平均回数が週4回
下回った場合所定単位数の70%

「登録者1人当たり平均」なので、事業所全体で判定されます。ほとんど使わない登録者が数人いるだけで、事業所全体の報酬が3割落ちます。

「登録だけ」が事業所にとって重荷になる構造

この規定があるため、事業所は実際に使う見込みのある人しか登録したくないという動機を持ちます。「とりあえず登録して、必要になったら使う」という運用が成り立ちません。

利用者側から見れば、週4回以上使う見込みがないなら小多機は向いていないということです。週1〜2回のデイだけで足りる方は、通常の通所介護のほうが合理的です。

省令にも同趣旨の規定がある

報酬だけでなく、運営基準にも歯止めがあります。省令34号 第73条第8号です。

指定小規模多機能型居宅介護は、通いサービスの利用者が登録定員に比べて著しく少ない状態が続くものであってはならない。

登録者に対して通いの利用が極端に少ない状態は、運営基準上も認められません。報酬の減額と運営基準の両方から、同じ方向に圧力がかかっています。

通いを使わない日にも対応義務がある

第73条第9号は、事業所側に積極的な義務を課しています。

指定小規模多機能型居宅介護事業者は、登録者が通いサービスを利用していない日においては、可能な限り、訪問サービスの提供、電話連絡による見守り等を行う等登録者の居宅における生活を支えるために適切なサービスを提供しなければならない。

  • 通いを使っていない日も放置してはならない
  • 手段は訪問サービスの提供、電話連絡による見守り等
  • 目的は「居宅における生活を支える」こと

電話連絡も「サービス」として位置付けられている点が特徴的です。訪問介護なら安否確認だけでは算定できませんが、小多機は月額包括なので、電話での見守りも支援の一部として成り立ちます。

介護予防と一体運営する場合の登録定員

第66条第1項の括弧書きです。

登録定員(登録者の数(当該指定小規模多機能型居宅介護事業者が指定介護予防小規模多機能型居宅介護事業者の指定を併せて受け、かつ、(中略)同一の事業所において一体的に運営されている場合にあっては、登録者の数及び(介護予防の)登録者の数の合計数)の上限をいう。)

要支援の方と要介護の方を合算して29人以下です。「要介護で29人、要支援で29人」ではありません。予防を併せて運営している事業所では、実質的な受入枠が見た目より小さくなります。

ケアプランを組むときの考え方

  • 週4回以上の利用見込みがあるか確認する(下回ると事業所の報酬が減り、登録を断られる要因になる)
  • 希望する曜日の通いの空き状況を事業所に確認する(登録定員と通いの利用定員は別)
  • 宿泊を使う予定があるなら、その定員と予約の取りやすさを確認する
  • 通いを使わない日の関わり方(訪問か電話か)を計画に位置付ける
  • 併用する訪問看護・訪問リハビリ等の曜日と重ならないよう調整する
  • 状態が変わったときに回数を増やせる余地があるかを確認しておく

6つ目が小多機を選ぶ意味そのものです。回数制限がないということは、状態が悪化したときに追加費用なしで利用を増やせるということ。区分支給限度基準額に縛られないため、限度額いっぱいで身動きが取れなくなっている方には大きな利点になります。

定員を理由に断られたときに確認すること

「定員がいっぱいで」と言われた場合、どの定員なのかを確認してください。

  • 登録定員が埋まっている → 空きが出るまで待つしかない
  • 通いの利用定員が特定の曜日だけ埋まっている → 曜日をずらせば登録できる可能性がある
  • 宿泊の利用定員が埋まっている → 登録自体は可能で、泊まりの日程調整の問題

3つは別物です。まとめて「満員」と説明されることがありますが、分けて聞けば道が開けることがあります。

ちびウルフちびウルフ

登録定員29人って、多いんですか少ないんですか?

リハウルフリハウルフ

少ないです。1つの事業所が地域で支えられるのは最大29人ですから。通所介護なら定員40人の事業所も普通にあります。

この「小規模」であることが、顔の見える関係を作れるという強みと、空きが出にくいという弱みの両方を生んでいます。

だから小多機を検討するなら、必要になってから探すのでは間に合わないことがある。状態が下がってきた段階で、地域の小多機の空き状況を先に確認しておくのが実務的です。

よくある質問

小規模多機能の登録定員は何人ですか?

29人以下です。サテライト型事業所は18人以下とされています(省令34号 第66条第1項)。

通いは何人まで利用できますか?

登録定員の2分の1から15人までです。登録定員が26・27人なら16人、28人なら17人、29人なら18人が上限になります。サテライト型は12人までです。

宿泊は何人まで利用できますか?

通いサービスの利用定員の3分の1から9人までです。サテライト型は6人までです。

通いの定員に下限があるのはなぜですか?

登録者が実際に通える体制を確保させるためです。登録だけ受けて通いの受け皿がない事態を防いでいます。

1人が使える回数に制限はありますか?

ありません。基本報酬は登録している期間1月につきの定額であり、通い・訪問・泊まりを何回使っても変わりません。

毎日利用してもよいですか?

制度上は可能です。ただしその日の通いの利用定員が埋まっていれば通えません。実際の制約は事業所の登録者構成によります。

あまり利用しないとどうなりますか?

登録者1人当たりの平均提供回数が週4回に満たない場合、事業所の所定単位数が70%になります(告示第126号 注7)。事業所全体の平均で判定されます。

週1〜2回だけ使いたい場合は?

週4回以上の利用見込みがないなら小多機は向いていません。通常の通所介護のほうが合理的な場合があります。

通いを使わない日は何もないのですか?

省令34号 第73条第9号により、事業者は可能な限り訪問サービスの提供や電話連絡による見守り等を行うこととされています。

要支援の人も登録定員に含まれますか?

介護予防小規模多機能型居宅介護と一体的に運営されている場合は、要介護と要支援の登録者の合計数で29人以下を判定します。

「定員がいっぱい」と言われたらどうしますか?

登録定員・通いの利用定員・宿泊の利用定員のどれが埋まっているのかを確認してください。曜日をずらせば登録できる場合や、登録自体は可能な場合があります。

状態が悪化したら利用を増やせますか?

回数制限がないため、追加の費用負担なく増やせます。区分支給限度基準額にも縛られないことが、小多機の大きな利点です。

まとめ
  • 小多機には定員の制限はあるが、1人当たりの利用回数の制限はない
  • 登録定員は29人以下(サテライト型は18人以下)
  • 通いサービスの利用定員は登録定員の2分の1から15人まで
  • 登録定員26・27人なら通い16人、28人なら17人、29人なら18人が上限
  • 宿泊サービスの利用定員は通いの利用定員の3分の1から9人まで
  • 通い・宿泊の利用定員には下限もある
  • 下限は、登録者が実際に通える体制を確保させるための規定
  • 基本報酬は登録している期間1月につきの定額
  • 通い・訪問・泊まりを何回使っても基本報酬は変わらない
  • 省令も「柔軟に組み合わせること」を方針として明示している
  • 実際の制約は、その日の通いの定員が埋まっているかどうか
  • 登録者1人当たり平均が週4回未満なら所定単位数の70%
  • 事業所全体の平均で判定されるため「登録だけ」は事業所の負担になる
  • 週4回以上使う見込みがないなら小多機は向いていない
  • 運営基準にも「通いの利用者が登録定員に比べて著しく少ない状態が続いてはならない」とある
  • 通いを使わない日も、訪問や電話連絡による見守り等を行う義務がある
  • 電話連絡も支援として位置付けられている(月額包括だから成り立つ)
  • 介護予防と一体運営する場合、要介護と要支援を合算して29人以下
  • 「定員がいっぱい」は3種類あるので、どれかを確認する
  • 状態が悪化しても追加費用なしで利用を増やせるのが最大の利点
  • 小規模ゆえ空きが出にくいので、必要になる前に空き状況を確認しておく
参考にした情報

※本記事の内容は、厚生労働省の省令、告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の利用・算定にあたっては原文および保険者(市町村)の解釈をご確認ください。小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導監督は市町村が行うため、定員の設定や運用の細部が市町村によって異なる場合があります。サテライト型事業所や本体事業所との関係については、本記事に記載していない例外規定があります。詳細は省令の原文をご確認ください。実際に利用できる回数は、事業所の登録者の構成やその日の利用定員の状況によって左右されます。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。事業所への確認事項やケアプランの組み立てに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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