小規模多機能型居宅介護の訪問体制強化加算とは?1,000単位・月200回の要件を解説

小規模多機能型居宅介護(小多機)の訪問体制強化加算は、1月につき1,000単位です。総合マネジメント体制強化加算(Ⅰ)1,200単位に次ぐ大きさで、単独の加算としては小多機で2番目の規模になります。
要件は2つだけですが、片方が「延べ訪問回数が1月当たり200回以上」という明確な数値要件です。登録者25人の事業所なら、1人あたり月8回。稼働25日で割れば1日8回の訪問という水準になります。
算定率は42.4%(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)。過半数の事業所が届いていません。「通いと泊まりが中心で、訪問が伸びていない」小多機が一定数あることを示す数字です。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費のリ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第55号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 訪問体制強化加算の単位数(1,000単位/月)と2つの要件
- 「常勤の従業者2名以上」の対象範囲
- 月200回という回数を1日あたりに割り戻すとどうなるか
- 同一建物に集合住宅を併設する場合の特例要件
- 併設住宅の入居者への訪問だけでは要件を満たせない理由
- 過少サービス減算(週4回)との関係
- 看多機の訪問体制強化加算との違い(看護サービスを除く点)
- 要支援には存在しないこと
- 算定率42.4%をどう読むか
要件は2つ|常勤2名と月200回
告示95号 第55号が定める基準は、次のとおりです。
- イ 指定小規模多機能型居宅介護事業所が提供する訪問サービスの提供に当たる常勤の従業者を2名以上配置していること
- ロ 算定日が属する月における提供回数について、当該事業所における延べ訪問回数が1月当たり200回以上であること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 1月につき1,000単位 |
| 対象 | 「イ」=小規模多機能型居宅介護費(登録者) |
| 届出 | 必要 |
| 判定期間 | 算定日が属する月 |
注意したいのは、回数の判定が「算定日が属する月」であることです。前年度平均や前3月平均ではありません。その月の実績で判定するため、月ごとに算定できたりできなかったりする性質の加算です。
月200回は、稼働25日で割ると1日8回です。
登録者25人の事業所なら、1人あたり月8回=週2回の訪問という計算になります。登録者が20人なら1人あたり月10回です。
裏を返せば、登録者が少ない立ち上げ期の事業所ほど、1人あたりの訪問回数を増やさないと200回に届きません。算定率が42.4%にとどまる理由のひとつです。
同一建物に集合住宅を併設している場合の特例
ロにはただし書きがあり、次の施設を同一建物に併設している場合は要件が変わります。
- 養護老人ホーム(老人福祉法第20条の4)
- 軽費老人ホーム(同法第20条の6)
- 有料老人ホーム(同法第29条第1項)
- サービス付き高齢者向け住宅(高齢者住まい法第5条第1項の登録を受けたもの)
この場合、求められるのは次の2つです。
| 事業所の形 | 要件 |
|---|---|
| 通常 | 延べ訪問回数が1月200回以上 |
| 同一建物に集合住宅を併設 | ①登録者の総数のうち、同一建物に居住する者以外の区分(イ(1))を算定する者が50%以上であること ②かつ、その登録者に対する延べ訪問回数が1月200回以上であること |
特例が適用される事業所では、カウント対象が「同一建物以外に居住する登録者への訪問」に限定されます。
併設のサ高住の入居者を多く登録していると、①の50%要件で先に引っかかります。エレベーターで上下するだけの「訪問」を積み上げても、この加算には結びつかない設計です。
外部の在宅利用者を支えているかどうかを見る加算だと理解してください。
「常勤の従業者2名以上」の読み方
イは「訪問サービスの提供に当たる常勤の従業者を2名以上」としています。小多機の人員基準(省令34号 第63条第1項)では、訪問サービスの提供に当たる者は常勤換算で1以上とされているため、加算はそれを上回る配置を求めていることになります。
| 区分 | 訪問サービス提供者の配置 |
|---|---|
| 人員基準(省令34号第63条第1項) | 常勤換算方法で1以上 |
| 訪問体制強化加算(告示95号第55号イ) | 常勤の従業者を2名以上 |
なお、小多機の条文には職種を限定する括弧書きがありません。後述するとおり、看多機では「保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士を除く」と明記されているのと対照的です。
ちびウルフ200回って、5分の安否確認でも1回に数えていいんですか?
リハウルフ告示は「延べ訪問回数」としか書いておらず、1回あたりの時間の下限は定めていません。小多機の訪問サービスは、もともと時間や内容が固定されていないのが特徴です。
ただし、小規模多機能型居宅介護計画に位置づけられた必要な訪問であることは当然の前提です。回数稼ぎのための訪問は趣旨から外れます。回数の数え方の細部は市町村の解釈が入る部分なので、事前に確認してください。
実務的に効くのは、朝の服薬確認、夕方の戸締まり確認といった短時間訪問を計画に組み込むことです。これは過少サービス減算の回避にも同時に効きます。
過少サービス減算との関係|訪問は両方に効く
小多機には、通い・訪問・宿泊の提供回数が登録者1人当たり平均で週4回に満たない場合に所定単位数が70%になる減算があります(告示126号 注7)。
| 規定 | 数えるもの | 基準 |
|---|---|---|
| 過少サービス減算 | 通い+訪問+宿泊 | 登録者1人当たり平均で週4回以上 |
| 訪問体制強化加算 | 訪問のみ | 事業所の延べ回数で月200回以上 |
訪問回数は両方の分子に入ります。訪問を増やす取り組みは、1,000単位の加算を取りに行くと同時に、30%減算を避けることにもつながります。
登録者20人・週4回を全員が満たす場合、月の総提供回数はおよそ320回(20人×4回×4週)です。そのうち訪問が200回を占めるには、提供回数の6割以上が訪問である必要があります。通い中心の運営では届きにくい水準だとわかります。
看多機の訪問体制強化加算との違い
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)にも同じ1,000単位の訪問体制強化加算がありますが、条文の書きぶりが違います(告示95号 第78号の2)。
| 項目 | 小多機(第55号) | 看多機(第78号の2) |
|---|---|---|
| 常勤2名の職種 | 限定なし | 保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を除く |
| 訪問回数に数えるもの | 訪問サービス | 訪問サービス(看護サービスを除く) |
| 回数 | 月200回以上 | 月200回以上 |
看多機では看護師等による訪問(看護サービス)を回数に含められません。看護の訪問は看護体制強化加算など別の加算で評価されているためです。
小多機にはその除外規定がないため、看護職員が行った訪問も回数に含まれると条文上は読めます。ただし解釈は市町村により分かれ得るため、確認をおすすめします。
要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)には存在しない
指定地域密着型介護予防サービスの報酬を定める平成18年厚生労働省告示第128号には、訪問体制強化加算の規定がありません。
| 加算 | 要支援での算定 |
|---|---|
| 訪問体制強化加算 | × |
| 認知症加算・看護職員配置加算・看取り連携体制加算 | × |
| 総合マネジメント体制強化加算・サービス提供体制強化加算・初期加算 | ○ |
ただし、200回のカウント対象となる訪問は「登録者」への訪問です。要支援の登録者への訪問を回数に含められるかは条文からは読み切れないため、市町村に確認してください。
算定率42.4%|取れていない事業所が過半数
| 加算 | 単位数 | 算定率(事業所ベース) |
|---|---|---|
| 認知症加算(Ⅰ)(改定前) | 800単位 | 92.3% |
| 総合マネジメント体制強化加算 | 1,000単位 | 90.0% |
| 初期加算 | 30単位/日 | 64.9% |
| 訪問体制強化加算 | 1,000単位 | 42.4% |
| 科学的介護推進体制加算 | 40単位 | 33.3% |
1,000単位という金額に対して42.4%という数字は、要件が体制ではなく実績(回数)だからと読めます。研修や届出でクリアできる加算と違い、日々の訪問回数を積み上げなければ届きません。
単位数ベースでは総単位数の2.19%を占めており、総合マネジメント体制強化加算(4.18%)に次ぐ2位です。算定できている事業所にとっては、収益の柱のひとつになっています。
訪問体制強化加算はいくらですか?
1月につき1,000単位です。小多機の加算では総合マネジメント体制強化加算(Ⅰ)1,200単位に次ぐ大きさです。
要件は何ですか?
①訪問サービスの提供に当たる常勤の従業者を2名以上配置していること、②算定日が属する月の延べ訪問回数が1月当たり200回以上であること、の2つです。
200回はいつの実績で判定しますか?
「算定日が属する月」の実績です。前年度平均や前3月平均ではないため、月ごとに算定の可否が変わります。
200回とはどのくらいの水準ですか?
稼働25日で割ると1日8回です。登録者25人なら1人あたり月8回(週2回程度)の訪問に相当します。
サ高住を併設している場合はどうなりますか?
①登録者の総数のうち同一建物以外の区分を算定する者が50%以上であること、②その登録者への延べ訪問回数が1月200回以上であること、の両方が必要です。併設住宅の入居者への訪問は回数に含められません。
短時間の訪問も1回に数えられますか?
告示は「延べ訪問回数」としており、1回あたりの時間の下限は定めていません。ただし小規模多機能型居宅介護計画に位置づけられた必要な訪問であることが前提です。数え方の細部は市町村にご確認ください。
常勤2名は職種の指定がありますか?
小多機の条文には職種を限定する規定がありません。看多機では保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を除くと明記されており、書きぶりが異なります。
看護職員が行った訪問も200回に含められますか?
小多機の条文には「看護サービスを除く」という規定がないため、条文上は含まれると読めます。ただし看多機では明示的に除かれており、解釈が分かれ得るため市町村に確認してください。
過少サービス減算とはどう関係しますか?
過少サービス減算は通い・訪問・宿泊の合計が登録者1人当たり週4回未満で所定単位数が70%になる減算です。訪問回数は両方の分子に入るため、訪問を増やす取り組みは加算の獲得と減算の回避に同時に効きます。
要支援でも算定できますか?
できません。介護予防小規模多機能型居宅介護の報酬を定める告示128号に、訪問体制強化加算の規定はありません。
- 訪問体制強化加算は1月1,000単位で、小多機では2番目に大きい加算
- 要件は常勤の訪問従業者2名以上と、延べ訪問回数月200回以上の2つ
- 判定は「算定日が属する月」の実績で行う
- 月200回は稼働25日なら1日8回、登録者25人なら1人あたり月8回
- 登録者が少ない時期ほど1人あたりの訪問回数を増やす必要がある
- 同一建物に養護・軽費・有料老人ホームやサ高住を併設する場合は特例要件になる
- 特例では同一建物以外の登録者が50%以上、かつその登録者への訪問が200回以上
- 併設住宅の入居者への訪問だけでは要件を満たせない
- 外部の在宅利用者を支えているかを見る加算だといえる
- 人員基準の訪問従事者は常勤換算1以上で、加算はそれを上回る配置を求める
- 小多機の条文には常勤2名の職種を限定する規定がない
- 看多機では常勤2名から看護職・リハ職を除き、回数からも看護サービスを除く
- 訪問回数は過少サービス減算(週4回)の分子にも入る
- 訪問を増やす取り組みは加算獲得と30%減算の回避に同時に効く
- 通い中心の運営では、提供回数の6割以上を訪問にしないと200回に届きにくい
- 要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)には存在しない
- 算定率は42.4%と過半数が未算定だが、単位数ベースでは総単位数の2.19%で第2位
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 指定地域密着型サービス介護給付費単位数表「小規模多機能型居宅介護費」リ(訪問体制強化加算)・注7(過少サービスに対する減算)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第55号(小規模多機能型居宅介護費における訪問体制強化加算の基準)、第78号の2(看護小規模多機能型居宅介護費における訪問体制強化加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第63条第1項(訪問サービスの提供に当たる従業者の員数)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)(厚生労働省法令等データベース)
- 社会保障審議会介護給付費分科会(第218回)資料2「小規模多機能型居宅介護」(PDF)小規模多機能型居宅介護の算定状況(介護給付費等実態統計 令和4年4月審査分)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、省令および審議会資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。地域密着型サービスの指定・指導は市町村が行うため、訪問回数の数え方(1回の下限時間、看護職員による訪問の算入、要支援の登録者への訪問の扱いなど)が自治体によって異なる場合があります。本記事は告示・省令の文言にもとづいて整理しており、留意事項通知の細目までは反映していません。本文中の回数の試算は単純計算による目安です。算定率は令和4年3月サービス提供分の数値です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。短時間訪問の組み込み方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




