ペット可の老人ホームはある?受け入れ施設の探し方と注意点

「この子を置いていくくらいなら、施設には入らない」。在宅の現場で、これは何度も聞いてきた言葉です。
この記事では、理学療法士・介護支援専門員として在宅と施設の両方に関わってきた立場から、ペットと一緒に入れる老人ホームは実際にあるのか、どう探すのか、契約前に何を決めておくべきかを整理します。感情論ではなく、施設側が何を心配しているかも含めて書きます。
- ペット可の老人ホームがどれくらいあるのか
- 特養や老健でほぼ受け入れがない理由
- ペットの扱いに全国共通のルールがないこと
- 受け入れ施設で実際に課される飼育条件
- 探すときに踏む手順と、電話で聞くべきこと
- いちばん重要な「世話ができなくなったとき」の取り決め
- 高齢者と動物由来感染症の注意点
- 一緒に暮らせないときの現実的な選択肢
ペット可の老人ホームはあるが、数は限られる
結論から言えば、あります。ただし全体から見ればごく一部です。
LIFULL介護が自社掲載施設を集計した2023年の調査では、ペットと入居できる施設の割合は全国平均で7.2%、割合が0%の県も14ほどあったとされています。みんなの介護の全国調査(2022年8月時点)では、掲載施設のうちペット可は409件で、東京33件・神奈川29件・大阪26件と都市部に偏っていました。
施設の種類によって可能性が大きく変わる
探し始める前に、ここを知っておくと時間を無駄にしません。
| 施設の種類 | 受け入れの現実 | 理由 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | ほぼ不可 | 要介護3以上が中心で集団生活が前提。多床室も多く、他の入所者との調整が難しい |
| 介護老人保健施設(老健) | ほぼ不可 | 在宅復帰を目指す医療色の強い施設で、居室が生活の場として設計されていない |
| 介護付き有料老人ホーム | 一部あり | 個室が基本。ただし介護度が高い人が多く、衛生管理のハードルが上がる |
| 住宅型有料老人ホーム | 比較的あり | 居室が住まいとしての性格を持ち、自立度の高い人も入居している |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 比較的あり | 賃貸住宅に近い契約形態で、ペット可物件として設計されたものがある |
| グループホーム | 施設により | 少人数の共同生活。動物がなじむ場合もあるが、認知症のある他の入居者への影響を慎重に見る |
リハウルフ探すなら住宅型有料老人ホームとサ高住が本命です。理由は単純で、居室が「住まい」として作られているから。特養の空きを待ちながらペット可を探す、という組み合わせは現実的ではありません。方針を早めに決めたほうがいい。
ペットに関する全国共通のルールは存在しない
意外に思われますが、介護施設におけるペットの飼育について定めた法令は、事実上ありません。
有料老人ホームの運営について国が示している「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」にも、特別養護老人ホームの運営基準(厚生省令)にも、ペットや動物に関する規定は置かれていません。実際に本文を検索しても、該当する語は一つも出てきません。
では、どこで決まっているのか。運営規程と管理規程、そして入居契約書です。標準指導指針は、入居契約書に明示すべき事項として「利用料等の費用負担の額及びこれによって提供されるサービス等の内容」や「契約解除の要件及びその場合の対応」を挙げています。ペットの飼育条件は、この枠組みの中に書き込まれています。
ペット可の老人ホームで課される飼育条件
受け入れている施設でも、無条件ということはありません。よくある条件を整理します。
| 項目 | よくある条件 |
|---|---|
| 動物の種類 | 犬・猫のみ。小鳥や小動物は可、爬虫類は不可、など施設ごとに線引きがある |
| 大きさ・頭数 | 体重10kg以下の小型犬まで、1居室1頭まで、といった上限 |
| 飼育場所 | 居室内のみ。共用スペースはケージまたは抱っこでの移動に限る |
| 健康管理 | ワクチン接種証明、狂犬病予防注射済票、ノミ・ダニ駆除、定期的な健康診断の記録提出 |
| しつけ | 無駄吠えをしないこと、排せつの管理ができること |
| 費用 | ペット飼育料として月額数千円〜、敷金の増額、退去時の原状回復費の上乗せ |
| 世話の担い手 | 原則として入居者本人。散歩や通院を職員が代行することは基本的にない |
| 万一のとき | 世話ができなくなった場合の引受人・預け先をあらかじめ届け出る |
このうち、最後の2つが最大の関門です。職員はペットの世話をする立場にありません。介護保険で提供されるサービスに動物の世話は含まれておらず、人員配置もその前提で組まれていません。ここを曖昧にしたまま入居すると、必ずもめます。
ちびウルフでも、入居する人ってだんだん動けなくなっていくよね……。
リハウルフそこです。施設が受け入れをためらう最大の理由は、動物が嫌いだからではなく、その日が必ず来ると分かっているから。入院したら誰が世話をするのか、本人が亡くなったら誰が引き取るのか。この2つに答えを用意して行くと、交渉の空気が変わります。
ペット可の施設を探す手順
順番があります。逆にすると、見つけてから条件が合わずに振り出しに戻ります。
- ペットの条件を書き出す|種類、犬種、体重、年齢、持病、投薬、しつけの状況、1日の世話の内容。これが施設に伝える情報のすべてです。
- 本人の介護度と必要な医療を整理する|ペット可でも、必要な介護に対応できなければ入れません。担当ケアマネジャーに相談し、まず入居可能な施設種別を絞ります。
- 紹介サイトと自治体の情報で候補を出す|「ペット可」で検索できるサイトを使いつつ、都道府県が公表している有料老人ホーム一覧・重要事項説明書も確認します。
- 電話で個別に条件を確認する|掲載情報は古いことがあります。「現在も受け入れているか」「うちの子の条件で可能か」を必ず口頭で確認します。
- 見学し、実際の飼育環境を見る|居室の広さ、床材、においの管理、他の入居者との距離感。すでに動物と暮らしている入居者がいれば、その様子がいちばんの情報です。
- 可能なら体験入居をする|標準指導指針は、契約締結前に体験入居の機会の確保を図ることを求めています。ペットを連れて行けるかも含めて相談してください。
- 契約書と管理規程で条件を文書確認する|飼育条件、費用、世話ができなくなったときの取り決め、違反した場合の扱いが書かれているかを読みます。
電話と見学で必ず聞く7つのこと
- 1飼育条件の詳細|種類・体重・頭数の上限と、その根拠(建物の制約か、運営方針か)
- 2費用の内訳|月額のペット飼育料、敷金の増額、退去時の原状回復費の考え方
- 3本人が世話できなくなったときの扱い|入院中の一時預かり、退居を求められるのかどうか
- 4散歩・通院の支援の有無|職員が対応するのか、外部サービスの利用が必要なのか
- 5他の入居者への配慮の方法|アレルギーや動物が苦手な人への対応、共用部の動線
- 6ルール違反があった場合の手順|いきなり退去なのか、改善の機会があるのか
- 7受け入れの実績|今まで何頭くらい受け入れてきたか。制度としてあるのと、運用されているのは別です
いちばん重要なのは「世話ができなくなった日」の取り決め
ここが本題です。動物愛護管理法は、飼い主の責務として終生飼養を定めています。
環境省の飼い主向けパンフレットは、飼い主自身が高齢になることについても踏み込んで書いています。
- 子犬や子猫を飼った場合、高齢で介護が必要になる10〜15年後は飼い主も同じだけ歳をとっています。そのときの自身の状況を想像して、準備をしておくことが大切です。
- ケガや突然の病気など、ペットを飼えなくなるような万が一の事態にも備えておきましょう。
同パンフレットは飼い主の責務として、健康と安全の保持、感染症予防、逸走防止、終生飼養、繁殖制限、所有明示の6点を挙げています(動物愛護管理法第7条より)。
老人ホームへの入居は、この「万が一の事態」がかなりの確率で起きる場面です。入居前に、次の3つを紙に書いて施設と共有してください。
- 入院したときの預け先|家族、知人、ペットホテル、ペットシッター。連絡先まで具体的に
- 本人が世話をできなくなったときの引受人|口約束ではなく、本人の同意を得た書面で
- 本人が亡くなったあとの行き先と費用|引き取る人、その人が受け取る費用の出どころ
高齢者とペットの健康リスクを現実的に見る
一緒に暮らすことの良さは説明するまでもありませんが、リスクの側も正確に押さえておきます。厚生労働省のハンドブックは、動物由来感染症についてこう書いています。
- 動物由来感染症にかかっても、はじめは、風邪やインフルエンザ、ありふれた皮膚病等に似た症状のことも多く、病気の発見が遅れがちです。特に小さな子どもや妊婦、高齢者はいったん発病すると重症化しやすいので要注意です。
- 医療機関を受診する際は、ペットの飼育状況や健康状態、動物との接触状況についても医師に伝えましょう。
同ハンドブックは、犬猫由来の身近な感染症としてパスツレラ症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症、猫ひっかき病を挙げています。
予防として示されているのは、特別なことではありません。
- 過剰なふれ合いは控える|口移しでエサを与えない、スプーンや箸を共用しない、口や目元を舐めさせない
- 動物と一緒に入浴したり、布団に入れて寝たりしない|濃厚接触にあたるとされています
- 動物に触ったら必ず手を洗う|排せつ物を処理したあとは特に
- ふん尿は速やかに処理する|乾燥すると病原体が空気中に舞いやすくなります
- ノミ・マダニの駆除と定期健診|動物が無症状のまま病原体を持っていることがあります
- 受診時に「ペットを飼っている」と医師に伝える|診断の手がかりになります
一緒に暮らせないと分かったときの選択肢
条件が合わない、あるいは介護度や医療の必要から一般の施設を選ぶしかない。その場合でも、関係を断つ以外の道はあります。
- 1家族・知人が引き取り、面会時に連れてくる|面会に動物を連れ込めるかは施設ごとの判断なので、必ず事前確認を
- 2老犬・老猫ホームに預ける|終身預かりの費用と契約内容、面会の可否を確認します
- 3在宅生活を延ばす方向で組み直す|訪問介護・訪問看護・訪問リハ・小規模多機能を組み合わせ、自宅で暮らす期間を伸ばす選択です
- 4動物がいる施設を選ぶ|自分のペットではなく、施設で飼っている動物とふれ合えるホームもあります
- 5譲渡を検討する|動物愛護団体や自治体の譲渡制度に相談します。早く動くほど選択肢が広い
リハウルフ訪問リハで伺っていた方に、猫のために施設入所を断り続けた方がいました。その判断を否定するつもりはまったくありません。ただ、倒れてから慌てると、選べる道はほぼ残っていない。元気なうちに「私が入院したらこの子はここへ」を決めておく。それだけで、選ばずに済む場面が本当に減ります。
特養にペットを連れて入ることはできますか?
「ペット可」とあれば、どんな動物でも大丈夫ですか?
入居後に世話ができなくなったら、退去になりますか?
職員がペットの散歩や世話をしてくれますか?
ほかの入居者にアレルギーがある場合はどうなりますか?
ペットを飼うことに介護保険の助成はありますか?
- ペット可の老人ホームは存在するが、民間サイトの集計では全国平均7.2%(2023年、LIFULL介護の掲載施設ベース)と少数派。
- 公的な統計は確認できず、実数は不明。「1割に満たない」規模感で考える。
- 特養・老健はほぼ不可。住宅型有料老人ホームとサ高住が現実的な本命。
- 介護施設のペット飼育を定めた法令はない。標準指導指針にも特養の運営基準にも規定はない。
- 条件は運営規程・管理規程・入居契約書で決まる。だから交渉の余地があり、同時に書面化が必須。
- よくある条件は、種類・体重・頭数の制限、居室内飼育、ワクチン証明、飼育料、世話は本人が行うこと。
- 職員はペットの世話をしない。介護保険のサービスに動物の世話は含まれない。
- 探す順番は、ペットの条件整理→入居可能な施設種別を絞る→候補出し→電話確認→見学→体験入居→契約書確認。
- 動物愛護管理法第7条第4項は、飼い主の努力義務として終生飼養を定めている。
- 環境省は、10〜15年後は飼い主も同じだけ歳をとることを想定した準備を求めている。
- 入院時の預け先、世話ができなくなったときの引受人、亡くなったあとの行き先と費用。この3つを書面にする。
- 高齢者は動物由来感染症が重症化しやすい。口移し、一緒の入浴・就寝は避け、接触後は手を洗う。
- 現場で多いのは感染症より、ひっかき傷による皮膚裂傷と、足元のペットによる転倒。
- 同居できない場合も、家族が引き取って面会時に連れてくる、老犬・老猫ホーム、在宅期間を延ばす、譲渡など選択肢はある。
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)」(第7条:動物の所有者又は占有者の責務等)
- 環境省「考えよう 飼う前も、飼ってからも」(飼い主の責務、ペットと飼い主の老いのこと)
- 厚生労働省「動物由来感染症ハンドブック2025」(日常生活で注意してほしいこと、犬猫由来の主な感染症)
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(12 契約内容等。ペットに関する規定は置かれていないことの確認)
- e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)」(同上)
- LIFULL介護「【2023年版】ペットと入居できる介護施設の割合が多い都道府県ランキング」(2023年9月公開)
- みんなの介護「老人ホーム業界の新トレンドに?「ペットと暮らせる」施設全国調査(2022年版)」(2022年8月時点)
※法令・通知に関する記述は上記の原典にもとづきます。条文は要旨として整理している箇所があり、正確な文言は原典をご確認ください。ペット可施設の割合・件数は民間事業者が自社の掲載施設を集計したものであり、国の統計ではありません。掲載されていない施設は含まれないため、実際の割合とは差があります。飼育条件、費用、世話ができなくなった場合の取扱いは施設ごとに大きく異なりますので、必ず入居先の重要事項説明書・管理規程・入居契約書をご確認ください。感染症に関する記述は一般的な注意であり、個別の診断・治療については医師にご相談ください。施設種別ごとの受け入れ状況および現場での外傷・転倒に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験と公表資料にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。



