老健の在宅復帰支援機能加算とは?

老健の在宅復帰支援機能加算は、1日につき10単位です。名前から基本型・在宅強化型の加算だと思われがちですが、実際は逆で、その他型・療養型の老健にだけ算定できます。在宅復帰・在宅療養支援機能加算(各51単位)とは別の加算です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)と老企第40号の原文を確認して、単位数・対象になる類型・2つの基準・相談援助の中身を整理しました。
この記事でわかること
- 老健の在宅復帰支援機能加算は1日10単位という単位数
- 算定できるのはその他型・療養型だけだということ
- 基本型・在宅強化型では算定できない理由
- 在宅復帰・在宅療養支援機能加算(51単位)との違い
- 家族との連絡調整と居宅介護支援事業者への情報提供という2つの基準
- 相談援助の4つの内容
- 市町村・地域包括支援センターへの情報提供が含まれること
- 室料相当額控除との関係
老健の在宅復帰支援機能加算とは?
在宅復帰支援機能加算は、入所者を在宅へ帰すための家族との連絡調整と、居宅介護支援事業者との連携を評価する加算です。1日10単位と小さな加算ですが、算定できる施設が限られているところに特徴があります。
老健は在宅復帰・在宅療養支援等指標の点数によって5類型に分かれます。指標が高い順に超強化型・在宅強化型・加算型・基本型、そしてその他型です。在宅復帰支援機能加算は、このうち下位の類型にだけ用意されています。
理由は報酬の組み立て方にあります。在宅復帰の機能が高い老健は、基本報酬そのものが高く設定され、さらに在宅復帰・在宅療養支援機能加算(各51単位)を算定できます。一方で、その他型・療養型の老健にはそうした評価がありません。それでも在宅復帰に向けた取り組みを行っているなら評価する、という位置づけの加算です。
ちびウルフ在宅強化型なので、この加算も取れると思っていました。
リハウルフ取れません。名前が似ている加算が2つあって、在宅強化型が取るのは在宅復帰・在宅療養支援機能加算のほう、51単位です。こちらの10単位はその他型・療養型向けです。
在宅復帰支援機能加算の単位数
告示第21号の介護保健施設サービスのカに定められています。
カ 在宅復帰支援機能加算 10単位
注 イ(2)及び(3)並びにロ(2)及び(3)について、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する介護老人保健施設であって、次に掲げる基準のいずれにも適合している場合にあっては、在宅復帰支援機能加算として、1日につき所定単位数を加算する。
イ 入所者の家族との連絡調整を行っていること。
ロ 入所者が利用を希望する指定居宅介護支援事業者に対して、当該入所者に係る居宅サービスに必要な情報の提供、退所後の居宅サービスの利用に関する調整を行っていること。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | 100床・年間の目安 |
|---|---|---|---|
| 在宅復帰支援機能加算 | 10単位 | 1日 | 365,000単位 |
1日10単位は小さく見えますが、入所者全員に1日単位で算定するため、100床なら年間365,000単位になります。その他型・療養型の老健にとっては、取れる加算が限られるなかで意味のある額です。
在宅復帰支援機能加算を算定できるのはどの類型か
注の冒頭にある「イ(2)及び(3)並びにロ(2)及び(3)について」が、この加算の対象を決めています。
| 告示の記号 | 該当する介護保健施設サービス費 | この加算 |
|---|---|---|
| イ(1)・ロ(1) | 介護保健施設サービス費(Ⅰ)=基本型・在宅強化型とそのユニット型 | 算定できない |
| イ(2)(3)・ロ(2)(3) | 介護保健施設サービス費(Ⅱ)(Ⅲ)等=その他型・療養型とそのユニット型 | 算定できる |
「イ(1)、ロ(1)について」との違いに注意
老健の加算には、褥瘡マネジメント加算のように「イ(1)、ロ(1)について」=基本型・在宅強化型限定のものと、この在宅復帰支援機能加算や療養体制維持特別加算のように「イ(2)及び(3)並びにロ(2)及び(3)について」=その他型・療養型限定のものがあります。告示の注の冒頭を読み飛ばすと、算定できない加算を届け出てしまいます。
在宅復帰支援機能加算の算定要件
注に並んだ2つの基準の両方を満たす必要があります。
基準イ:入所者の家族との連絡調整
老企第40号 5の(36)①は、「入所者の家族との連絡調整」を次のように定義しています。
「入所者の家族との連絡調整」とは、入所者が在宅へ退所するに当たり、当該入所者及びその家族に対して次に掲げる支援を行うこと。
退所後の居宅サービスその他の保健医療サービス又は福祉サービスについて相談援助を行うこと。また必要に応じ、当該入所者の同意を得て退所後の居住地を管轄する市町村及び地域包括支援センター又は老人介護支援センターに対して当該入所者の介護状況を示す文書を添えて当該入所者に係る居宅サービスに必要な情報を提供すること。
単に家族と連絡を取ればよいのではなく、退所後のサービスについて相談援助を行うことが中身です。必要に応じて、市町村と地域包括支援センター(または老人介護支援センター)への情報提供まで含まれます。
相談援助の4つの内容
老企第40号 5の(36)②は、本人・家族に対する相談援助の内容を具体的に挙げています。
- 食事、入浴、健康管理等、在宅における生活に関する相談援助
- 退所する者の運動機能および日常生活動作能力の維持・向上を目的として行う各種訓練等に関する相談助言
- 家屋の改善に関する相談援助
- 退所する者の介助方法に関する相談援助
リハビリ職が関わる項目が2つある
4つのうち、運動機能・日常生活動作能力の訓練に関する相談助言と、介助方法に関する相談援助は、そのままリハビリ職の担当領域です。家屋の改善に関する相談援助も、住宅改修の必要性を判断するには動作の評価が要ります。支援相談員だけで抱える項目ではありません。退所前の家族指導をリハ職が担っている施設は多いはずで、その記録を加算の根拠として整理できます。
基準ロ:居宅介護支援事業者への情報提供と調整
「入所者が利用を希望する指定居宅介護支援事業者に対して、当該入所者に係る居宅サービスに必要な情報の提供、退所後の居宅サービスの利用に関する調整を行っていること」が要件です。
情報提供と調整の両方が求められています。サマリーを送って終わり、では「調整」にあたりません。担当者会議への参加や、居宅サービスの利用開始に向けたやりとりの記録を残してください。
ちびウルフ入所者全員に算定するのに、要件は退所する人の話ですよね。
リハウルフそこは体制加算の性格です。施設としてその取り組みを行っている状態を評価する形なので、1日単位で入所者に算定します。ただ実態がなければ要件を満たさないので、退所ケースごとの記録は必要です。
在宅復帰・在宅療養支援機能加算との違い
名前が似ている2つの加算を並べます。
| 比較の観点 | 在宅復帰支援機能加算 | 在宅復帰・在宅療養支援機能加算 |
|---|---|---|
| 単位数 | 10単位(1日) | (Ⅰ)(Ⅱ)各51単位(1日) |
| 対象の類型 | その他型・療養型 | (Ⅰ)は加算型、(Ⅱ)は超強化型 |
| 要件の性格 | 家族との連絡調整・居宅介護支援事業者との連携 | 在宅復帰・在宅療養支援等指標の点数と施設基準 |
| 指標のハードル | なし | (Ⅰ)は40以上、(Ⅱ)は70以上 |
単位数は5倍以上の差があります。指標を上げて類型を上げるほうが報酬は大きいという設計です。在宅復帰支援機能加算は、そこに届かない施設のための評価だと位置づけられます。
在宅復帰支援機能加算の注意点
類型が変わると算定できなくなる
その他型・療養型で算定していた施設が、指標を上げて基本型になった場合、この加算は算定できなくなります。基本報酬が上がるので収入としては増えますが、加算の届出を取り下げる手続きを忘れないでください。
室料相当額控除の対象と重なる
この加算を算定できるその他型・療養型は、室料相当額控除(1日26単位の控除)の対象と重なります。多床室があり、床面積の要件に該当すれば、10単位を加算しながら26単位を控除される形になります。
類型の選択は加算単位では決まらない
その他型・療養型を続けるか、指標を上げて基本型以上を目指すか。この判断に効いてくるのは、基本報酬の差、在宅復帰・在宅療養支援機能加算(51単位)の有無、室料相当額控除(26単位)の有無、そしてこの加算(10単位)の有無です。加算1つの単位数ではなく、これらを合算して比較してください。
届出が必要
告示の注は「別に厚生労働大臣が定める基準に適合する介護老人保健施設であって」としています。届出の要否と様式は指定権者に確認してください。
在宅復帰支援機能加算のQ&A
基本型でも算定できますか?
できません。告示の注が「イ(2)及び(3)並びにロ(2)及び(3)について」としており、介護保健施設サービス費(Ⅰ)=基本型・在宅強化型は対象外です。
在宅復帰・在宅療養支援機能加算と両方算定できますか?
できません。対象となる類型が重ならないためです。在宅復帰・在宅療養支援機能加算は加算型・超強化型が対象です。
誰が相談援助を行うのですか?
通知は職種を特定していません。支援相談員が中心になることが多いですが、訓練に関する相談助言や介助方法の相談援助はリハビリ職が担うのが自然です。
市町村への情報提供は必須ですか?
通知は「必要に応じ、当該入所者の同意を得て」としています。すべてのケースで必須というわけではありませんが、行う場合は同意が必要です。
入所者全員に算定するのですか?
1日につき所定単位数を加算する体制加算です。要件を満たしていれば入所者に対して算定します。請求上の具体的な扱いは指定権者に確認してください。
ユニット型でも算定できますか?
算定できます。注は「ロ(2)及び(3)」=ユニット型のその他型・療養型も対象に含めています。
退所者がいない月でも算定できますか?
体制として要件を満たしていることが前提です。取扱いは指定権者の判断によるため、確認してください。
居宅介護支援事業者への情報提供はサマリーの送付だけでよいですか?
要件は「情報の提供」と「退所後の居宅サービスの利用に関する調整」の両方です。調整の記録も残してください。
基本型に変わったらどうすればよいですか?
算定できなくなります。届出の取り下げについて指定権者に確認してください。
まとめ
- 老健の在宅復帰支援機能加算は1日につき10単位
- 算定できるのはその他型・療養型(介護保健施設サービス費(Ⅱ)(Ⅲ)等)のみ
- 基本型・在宅強化型(介護保健施設サービス費(Ⅰ))では算定できない
- 告示の注の「イ(2)及び(3)並びにロ(2)及び(3)について」が対象を決めている
- 在宅復帰・在宅療養支援機能加算(各51単位)とは別の加算
- 要件は「家族との連絡調整」と「居宅介護支援事業者への情報提供・調整」の2つ
- 家族との連絡調整とは、退所後のサービスに関する相談援助を行うこと
- 必要に応じ、同意を得て市町村・地域包括支援センター等へ情報提供する
- 相談援助の内容は在宅生活・訓練・家屋改善・介助方法の4つ
- 訓練と介助方法の相談援助はリハビリ職の担当領域と重なる
- 居宅介護支援事業者へは情報提供だけでなく調整まで求められる
- 1日10単位でも100床なら年間365,000単位になる
- 類型が基本型以上に変わると算定できなくなる
- 算定できる類型は室料相当額控除(1日26単位控除)の対象と重なる
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護保健施設サービス カ
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)5の(36)、8の(33)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。



