看多機のサービス提供体制強化加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)のサービス提供体制強化加算は、(Ⅰ)750単位・(Ⅱ)640単位・(Ⅲ)350単位です。登録者について1月につき算定します。看多機の加算のなかで、看護体制強化加算・総合マネジメント体制強化加算に次ぐ規模です。
要件の中心は介護福祉士の割合ですが、母数の取り方に特徴があります。分母となる従業者から、保健師・看護師・准看護師が除かれます。看護職員の配置が手厚い看多機で、看護職を分母に入れたまま計算すると割合が実際より低く出て、算定できるはずの区分を落とします。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のウと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第80号の原文を確認して整理しました。
- サービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の単位数
- 短期利用居宅介護費にも加算されること(25/21/12単位)
- 介護福祉士割合の分母から看護職が除かれること
- (Ⅰ)は介護福祉士70%以上または勤続10年以上の介護福祉士25%以上
- (Ⅱ)は介護福祉士50%以上
- 研修計画と会議の定期開催という共通要件
- 処遇改善加算(Ⅰ)の要件になっていること
- (Ⅲ)は介護福祉士40%・常勤60%・勤続7年30%の3ルートがあること
ちびウルフ介護福祉士70%って高くないですか。看多機は看護師も多いですし。
リハウルフそこが誤解の元です。条文は「看護小規模多機能型居宅介護従業者(保健師、看護師又は准看護師であるものを除く。)の総数のうち」と書いています。看護職は分母から外れる。つまり介護職のなかでの介護福祉士の割合です。計算し直すと届いている事業所は少なくないはずです。
看多機のサービス提供体制強化加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護のサービス提供体制強化加算は、質の高い人材を確保し、研修や会議を通じて職員の技術を維持・向上させている事業所を評価する加算です。告示126号 複合型サービス費のウに規定されています。
介護サービスの質は、最終的には人で決まります。資格を持つ職員の割合、経験年数、研修の機会。これらを整えている事業所を報酬で評価し、人材確保と定着を促すのがこの加算の狙いです。
看多機は通い・訪問・泊まり・訪問看護を1つの事業所で担うため、職員に求められる対応の幅が広くなります。資格と経験を備えた職員をどれだけ抱えられるかが、サービスの質に直結するサービスです。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。
サービス提供体制強化加算の単位数
ウ サービス提供体制強化加算
注 (略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が、登録者に対し、指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、イについては1月につき、ロについては1日につき、次に掲げる所定単位数を加算する。(略)
(1) イを算定している場合:(一) 加算(Ⅰ) 750単位/(二) 加算(Ⅱ) 640単位/(三) 加算(Ⅲ) 350単位
(2) ロを算定している場合:(一) 加算(Ⅰ) 25単位/(二) 加算(Ⅱ) 21単位/(三) 加算(Ⅲ) 12単位
| 区分 | イ(看護小規模多機能型居宅介護費) | ロ(短期利用居宅介護費) |
|---|---|---|
| サービス提供体制強化加算(Ⅰ) | 750単位/月 | 25単位/日 |
| サービス提供体制強化加算(Ⅱ) | 640単位/月 | 21単位/日 |
| サービス提供体制強化加算(Ⅲ) | 350単位/月 | 12単位/日 |
看多機の加算では珍しく、短期利用居宅介護費にも加算されます。ここまで見てきた加算の多くは「イについては」と限定されていましたが、この加算はイとロの両方に区分が用意されています。
基本報酬に対する比率(イの場合)
| 要介護度 | 基本報酬 | (Ⅰ)750単位 | (Ⅲ)350単位 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 約6.0% | 約2.8% |
| 要介護3 | 24,481単位 | 約3.1% | 約1.4% |
| 要介護5 | 31,408単位 | 約2.4% | 約1.1% |
(Ⅰ)と(Ⅲ)の差は400単位です。登録者25人なら月10,000単位、年間120万円の差になります。
サービス提供体制強化加算の算定要件
(Ⅰ)750単位の4要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 研修計画 | 事業所のすべての看護小規模多機能型居宅介護従業者に対し、従業者ごとに研修計画を作成し、研修(外部研修を含む)を実施または実施を予定していること |
| (2) 会議の定期開催 | 利用者に関する情報や留意事項の伝達、または従業者の技術指導を目的とした会議を定期的に開催していること |
| (3) 介護福祉士の割合 | 次のいずれかに適合すること (一) 従業者(保健師・看護師・准看護師を除く)の総数のうち介護福祉士が70%以上 (二) 同じ母数のうち勤続年数10年以上の介護福祉士が25%以上 |
| (4) 定員超過等でないこと | 通所介護費等算定方法第11号に規定する基準のいずれにも該当しないこと |
(Ⅱ)640単位の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) | 従業者(保健師・看護師・准看護師を除く)の総数のうち介護福祉士が50%以上であること |
| (2) | (Ⅰ)の(1)(2)(4)に該当すること |
分母から看護職が除かれる意味
(3)と(Ⅱ)の(1)は、いずれも母数を「看護小規模多機能型居宅介護従業者(保健師、看護師又は准看護師であるものを除く。)の総数」としています。
従業者20名(うち看護職6名、介護職14名)で、介護福祉士が8名の場合
- 誤った計算:8÷20=40% → どの区分にも届かない
- 正しい計算:8÷14=約57% → (Ⅱ)640単位に該当
看護職を分母に入れたまま計算すると、実際より低い割合が出ます。看多機は看護職員の配置が必須で人数も多いため、この誤りの影響が大きく出るサービスです。
担当したケースでも、「うちは介護福祉士が半分に届かないから」と算定していなかった看多機がありました。看護職を除いて計算し直したら、(Ⅱ)の要件を満たしていました。
(Ⅲ)350単位の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) | 次のいずれかに適合すること (一) 従業者(保健師・看護師・准看護師を除く)の総数のうち介護福祉士が40%以上 (二) 従業者の総数のうち常勤職員が60%以上 (三) 従業者の総数のうち勤続年数7年以上の者が30%以上 |
| (2) | (Ⅰ)の(1)(2)(4)に該当すること(研修計画・会議・定員超過等でないこと) |
(Ⅲ)の(二)(三)は母数が違う
ここは条文を丁寧に読む必要があります。(Ⅲ)の(一)だけが「保健師、看護師又は准看護師であるものを除く」となっており、(二)(三)にはこの除外がありません。
| 要件 | 母数 | 看護職 |
|---|---|---|
| (Ⅰ)介護福祉士70%/勤続10年以上の介護福祉士25% | 従業者(看護職を除く) | 除く |
| (Ⅱ)介護福祉士50% | 従業者(看護職を除く) | 除く |
| (Ⅲ)(一) 介護福祉士40% | 従業者(看護職を除く) | 除く |
| (Ⅲ)(二) 常勤職員60% | 従業者の総数 | 含む |
| (Ⅲ)(三) 勤続7年以上30% | 従業者の総数 | 含む |
介護福祉士の割合を見る要件では看護職が分母から外れ、常勤職員・勤続年数を見る要件では看護職も分母に入ります。つまり(二)(三)では、看護職員が常勤であることや勤続年数が長いことが有利に働きます。
看多機は看護職員の配置が必須で、その多くが常勤です。介護福祉士の割合では届かなくても、(二)の常勤職員60%以上で(Ⅲ)に届く事業所は少なくないはずです。3つのルートを順に確認してください。
処遇改善加算との連動
| 処遇改善加算の区分 | 加算率 | サービス提供体制強化加算との関係 |
|---|---|---|
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ | 16.8% | 要件(10)にサービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が含まれる |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)ロ | 17.7% | 同上(イの要件をすべて含む) |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)イ・ロ | 16.5%/17.4% | 要件に含まれない |
処遇改善加算の最上位区分(Ⅰ)に上がるには、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が必須です。(Ⅲ)350単位では要件を満たしません。
要介護3の登録者で処遇改善加算が(Ⅱ)イ16.5%から(Ⅰ)イ16.8%に上がると、月あたり約73単位。サービス提供体制強化加算を(Ⅲ)から(Ⅱ)に上げれば、加算本体の290単位に加えてこの分も乗ります。
サービス提供体制強化加算の注意点
研修計画は「すべての従業者」に
(1)は「事業所のすべての看護小規模多機能型居宅介護従業者に対し、従業者ごとに研修計画を作成し」です。一部の職員だけの計画では要件を満たしません。非常勤も含めて個別の計画が必要になります。
会議の頻度
(2)は「定期的に開催」とのみ定めており、頻度の数値基準はありません。おおむね月1回以上が想定されますが、告示からは確定できません。議事録に日付・参加者・内容を残してください。
勤続年数の数え方
(Ⅰ)の(3)(二)は「勤続年数10年以上の介護福祉士」です。同一法人内の他事業所での勤続を通算できるかなど、数え方は告示に定めがありません。市町村の取扱いを確認してください。
割合の算定時期
割合をいつの時点で判定するのか、常勤換算で数えるのか実人数かも告示本文には書かれていません。留意事項通知および市町村の取扱いによります。
- 市町村長への届出を済ませているか
- 介護福祉士の割合を、看護職を除いた母数で計算したか
- 勤続10年以上の介護福祉士25%以上のルートも検討したか
- すべての従業者に個別の研修計画があるか
- 会議を定期的に開催し、議事録を残しているか
- 処遇改善加算(Ⅰ)を目指すなら(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出があるか
よくある質問
看多機のサービス提供体制強化加算はいくらですか?
(Ⅰ)750単位、(Ⅱ)640単位、(Ⅲ)350単位です。いずれも1月につき算定します。
短期利用にも算定できますか?
できます。短期利用居宅介護費を算定している場合は1日につき(Ⅰ)25単位、(Ⅱ)21単位、(Ⅲ)12単位です。
介護福祉士の割合はどう計算しますか?
看護小規模多機能型居宅介護従業者の総数から保健師・看護師・准看護師を除いた数を母数とします。看護職を分母に入れると割合が低く出ます。
(Ⅰ)の要件は何ですか?
研修計画の作成、会議の定期開催、介護福祉士70%以上または勤続10年以上の介護福祉士25%以上、定員超過等でないことの4つです。
(Ⅱ)の要件は?
介護福祉士50%以上であることと、(Ⅰ)の研修計画・会議・定員超過等でないことの要件です。
介護福祉士が70%に届かなくても(Ⅰ)を取れますか?
取れる場合があります。勤続年数10年以上の介護福祉士が25%以上であれば、もう一方のルートで要件を満たします。
研修計画は全職員分必要ですか?
必要です。条文は「すべての看護小規模多機能型居宅介護従業者に対し、従業者ごとに」としています。
会議の頻度に基準はありますか?
告示に数値基準はありません。「定期的に開催」とのみ定められています。
勤続年数は他事業所の分も通算できますか?
告示に定めはありません。市町村の取扱いを確認してください。
処遇改善加算とどう関係しますか?
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロの要件に、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が含まれています。(Ⅲ)では要件を満たしません。
(Ⅲ)の要件は何ですか?
介護福祉士40%以上(看護職を除く母数)、常勤職員60%以上、勤続年数7年以上の者30%以上のいずれかに適合し、あわせて研修計画・会議・定員超過等でないことの要件を満たすことです。
(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は併算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合はその他を算定できません。
- 看多機のサービス提供体制強化加算は(Ⅰ)750単位・(Ⅱ)640単位・(Ⅲ)350単位(1月につき)
- 短期利用居宅介護費にも1日につき25/21/12単位が加算される
- 3区分の併算定はできない
- 介護福祉士割合の母数から保健師・看護師・准看護師が除かれる
- 看護職を分母に入れて計算すると、実際より低い割合が出る
- (Ⅰ)は介護福祉士70%以上、または勤続10年以上の介護福祉士25%以上
- (Ⅱ)は介護福祉士50%以上
- 共通要件は全従業者への研修計画と会議の定期開催
- 研修計画は非常勤を含むすべての従業者に個別に作成する
- 会議の頻度に数値基準はない
- 処遇改善加算(Ⅰ)イ・ロの要件に(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が含まれる
- (Ⅲ)350単位では処遇改善加算(Ⅰ)の要件を満たさない
- (Ⅰ)と(Ⅲ)の差は400単位で、25人規模なら年間120万円
- (Ⅲ)は介護福祉士40%・常勤職員60%・勤続7年以上30%の3ルートのいずれか
- (Ⅲ)の常勤職員・勤続年数の要件は母数から看護職を除かないため、看護職員が有利に働く
- 勤続年数の通算や割合の判定時期は告示に定めがない
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ウ、ヰ、イ、ロ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第80号(複合型サービス費におけるサービス提供体制強化加算の基準)、第81号・第58号(介護職員等処遇改善加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第171条第1項(看護小規模多機能型居宅介護従業者)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに介護福祉士・常勤職員・勤続年数の割合を判定する時期と方法(常勤換算か実人数か)、勤続年数の通算の可否、会議の開催頻度については告示本文だけでは確定できず、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




