看多機の生産性向上推進体制加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の生産性向上推進体制加算は、(Ⅰ)100単位・(Ⅱ)10単位です。いずれも1月につき算定します。令和6年度介護報酬改定で新設されました。
10倍の差がある2区分ですが、分けているのは介護機器を「複数種類」使っているか、そして実績が出ているかです。(Ⅱ)は委員会での検討と介護機器の活用、そして報告の3つだけ。介護記録ソフトを1つ入れているだけの事業所でも、委員会と報告を整えれば届く水準です。取りこぼしている看多機は多いと思います。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のムと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第79号の2・第37号の3の原文を確認して整理しました。
- 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)100単位・(Ⅱ)10単位の違い
- (Ⅰ)の5要件と(Ⅱ)の3要件
- 委員会で検討すべき4つの事項
- 「介護機器」の定義が広いこと
- (Ⅰ)は介護機器を複数種類使う必要があること
- 事業年度ごとの厚生労働省への報告が必須であること
- 処遇改善加算(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)ロの要件になっていること
- まず(Ⅱ)から取りにいく理由
ちびウルフ介護機器って、見守りセンサーとか介護ロボットのことですよね。看多機に入れるのは大変そうです。
リハウルフ定義はもっと広いんです。条文は「業務の効率化及び質の向上又は職員の負担の軽減に資する機器」としか書いていません。介護記録ソフトもインカムも含まれ得ます。すでに使っているものが該当しないか、先に棚卸ししたほうがいい。
看多機の生産性向上推進体制加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の生産性向上推進体制加算は、介護機器を活用しながら、利用者の安全とケアの質を保ちつつ職員の負担を軽減する取り組みを評価する加算です。告示126号 複合型サービス費のムに規定されています。
介護分野の人手不足は、事業所の努力だけで解決できる規模を超えています。同じ人数でより多くの利用者を支えるには、業務のやり方そのものを変えるしかない。令和6年度改定で新設されたこの加算は、その転換を後押しするために置かれました。
重要なのは、機器を導入すれば算定できる加算ではないという点です。委員会で安全とケアの質を検討すること、業務分担を見直すこと、そして実績を国に報告することが要件に組み込まれています。機器の導入は手段の1つにすぎません。
生産性向上推進体制加算の単位数
ム 生産性向上推進体制加算
注 (略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所において、利用者に対して指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) 生産性向上推進体制加算(Ⅰ) 100単位
(2) 生産性向上推進体制加算(Ⅱ) 10単位
| 区分 | 単位数 | 要件数 | 介護機器 |
|---|---|---|---|
| 生産性向上推進体制加算(Ⅰ) | 100単位 | 5つ | 複数種類の活用+実績 |
| 生産性向上推進体制加算(Ⅱ) | 10単位 | 3つ | 活用していること |
(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定はできません。
登録者全員に算定できる
| 登録者数 | (Ⅱ)10単位 | (Ⅰ)100単位 | 差(年間) |
|---|---|---|---|
| 20人 | 200単位/月 | 2,000単位/月 | 21,600単位 |
| 25人 | 250単位/月 | 2,500単位/月 | 27,000単位 |
(Ⅰ)に上げられれば、25人規模で年間27,000単位(約27万円)の差になります。
生産性向上推進体制加算の算定要件
告示95号 第79号の2は第37号の3を準用しています。
(Ⅱ)10単位の3要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 委員会での検討 | 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会において、後述の4事項について必要な検討を行い、実施を定期的に確認していること |
| (2) 介護機器の活用 | 介護機器を活用していること |
| (3) 厚生労働省への報告 | 事業年度ごとに(2)および(1)の取組に関する実績を厚生労働省に報告すること |
委員会で検討する4事項
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| (一) | 介護機器を活用する場合における利用者の安全及びケアの質の確保 |
| (二) | 職員の負担の軽減及び勤務状況への配慮 |
| (三) | 介護機器の定期的な点検 |
| (四) | 業務の効率化及び質の向上並びに職員の負担軽減を図るための職員研修 |
条文は「介護機器」を「業務の効率化及び質の向上又は職員の負担の軽減に資する機器」と定義しています。介護ロボットや見守りセンサーに限定されていません。
- 介護記録ソフト・タブレット端末
- インカム・スマートフォンによる連絡体制
- 見守りセンサー・眠りセンサー
- 移乗支援機器・入浴支援機器
- 送迎の配車支援システム
該当するかどうかの最終判断は保険者によります。すでに導入している機器が要件に使えないか、まず棚卸ししてください。
(Ⅰ)100単位の5要件
| 要件 | 内容 | (Ⅱ)との違い |
|---|---|---|
| (1) 委員会での検討 | 4事項の検討と定期的な確認 | 共通 |
| (2) 実績 | (1)の取組および介護機器の活用による業務の効率化・ケアの質の確保・職員の負担軽減に関する実績があること | 追加 |
| (3) 複数種類の活用 | 介護機器を複数種類活用していること | 追加 |
| (4) 業務分担の見直し | 委員会において職員の業務分担の明確化等による業務の効率化・ケアの質の確保・負担軽減について検討し、取組を実施し、定期的に確認すること | 追加 |
| (5) 厚生労働省への報告 | 事業年度ごとに(1)(3)(4)の取組に関する実績を報告すること | 報告内容が広い |
(Ⅰ)で加わるのは「実績があること」「機器が複数種類」「業務分担の見直し」の3つです。とくに(2)の実績は、取組の前後を比較できるデータが要ります。
処遇改善加算との連動
この加算には、単体の100単位以上の意味があります。
| 処遇改善加算の区分 | 加算率 | 生産性向上推進体制加算との関係 |
|---|---|---|
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)ロ | 17.7% | 3つの選択肢の1つとして生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の算定が挙げられている |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)ロ | 17.4% | 同上 |
処遇改善加算の(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)ロは、イの要件に加えて①生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の算定 ②ケアプランデータ連携システムの利用 ③連携推進法人への所属のいずれかを満たす必要があります。
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位を取ることが、処遇改善加算を(Ⅰ)イ16.8%から(Ⅰ)ロ17.7%に上げる道になります。
要介護3の登録者(基本報酬24,481単位)で処遇改善加算の率が0.9ポイント上がると、月あたり約220単位。生産性向上推進体制加算(Ⅱ)の10単位を大きく上回ります。
10単位だから取らない、という判断は損です。まず(Ⅱ)を確実に取り、そのうえで(Ⅰ)を目指すのが順序だと思います。
生産性向上推進体制加算の注意点
厚生労働省への報告が必須
(3)((Ⅰ)では(5))は「事業年度ごとに実績を厚生労働省に報告すること」です。市町村への届出とは別に、国への報告が要件になっています。報告方法・様式・期限は告示に書かれていないため、通知および事務連絡を確認してください。
委員会は既存のものを活用できるか
条文は「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」としています。新たに委員会を設置する必要があるのか、既存の運営推進会議や事故防止委員会を兼ねられるのかは、告示からは読み取れません。市町村に確認してください。
「複数種類」の判断
(Ⅰ)の(3)は「介護機器を複数種類活用していること」です。何をもって「種類が違う」とするかは告示に定めがありません。タブレットと記録ソフトを別種と数えられるのかといった判断は、保険者に確認が必要です。
短期利用居宅介護費の扱い
ムの注は、他の加算と違って「イについては」という限定が付いていません。短期利用居宅介護費にも加算されるのかは、条文の文言からは断定できません。市町村に確認してください。
- 市町村長への届出を済ませているか
- すでに導入している機器が「介護機器」に該当しないか棚卸ししたか
- 委員会で4事項を検討し、実施を定期的に確認しているか
- 事業年度ごとの厚生労働省への報告方法を確認したか
- (Ⅰ)を目指すなら、機器が複数種類あるか
- (Ⅰ)を目指すなら、取組の前後を比較できる実績データがあるか
- 処遇改善加算(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)ロへの引き上げを検討したか
よくある質問
看多機の生産性向上推進体制加算はいくらですか?
(Ⅰ)が100単位、(Ⅱ)が10単位です。いずれも1月につき算定します。
いつ新設された加算ですか?
令和6年度介護報酬改定で新設されました。
(Ⅱ)の要件は何ですか?
委員会での4事項の検討と定期的な確認、介護機器の活用、事業年度ごとの厚生労働省への報告の3つです。
(Ⅰ)で追加される要件は?
業務の効率化等に関する実績があること、介護機器を複数種類活用していること、委員会で業務分担の明確化等を検討し取組を実施することの3つです。
「介護機器」とは介護ロボットのことですか?
それに限りません。条文は「業務の効率化及び質の向上又は職員の負担の軽減に資する機器」と定義しており、介護記録ソフトやインカムなども含まれ得ます。
委員会で何を検討しますか?
介護機器活用時の利用者の安全とケアの質の確保、職員の負担軽減と勤務状況への配慮、介護機器の定期的な点検、職員研修の4事項です。
既存の委員会を兼ねられますか?
告示に定めはありません。市町村の取扱いを確認してください。
厚生労働省への報告は必要ですか?
必要です。事業年度ごとに取組に関する実績を報告することが要件です。
「複数種類」の判断基準は?
告示に定めはありません。保険者に確認してください。
処遇改善加算とどう関係しますか?
処遇改善加算(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)ロは、3つの選択肢の1つとして生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の算定を挙げています。
10単位でも取る意味はありますか?
あります。処遇改善加算の加算率を上げる要件になるため、実際の効果は10単位を大きく上回ります。
短期利用の利用者にも算定できますか?
ムの注には「イについては」という限定がありません。条文からは断定できないため、市町村に確認してください。
- 看多機の生産性向上推進体制加算は(Ⅰ)100単位・(Ⅱ)10単位(1月につき)
- 令和6年度介護報酬改定で新設された
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
- (Ⅱ)の要件は委員会での検討・介護機器の活用・厚生労働省への報告の3つ
- (Ⅰ)はこれに実績・複数種類の機器・業務分担の見直しが加わる5要件
- 委員会では安全とケアの質・職員の負担と勤務状況・機器の点検・職員研修の4事項を検討する
- 「介護機器」の定義は広く、介護記録ソフトやインカムも含まれ得る
- すでに導入している機器の棚卸しから始めるのが現実的
- 事業年度ごとの厚生労働省への報告が要件に含まれる
- 処遇改善加算(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)ロの3選択肢の1つになっている
- (Ⅱ)10単位を取ることで処遇改善加算の率が0.9ポイント上がる道が開く
- 要介護3では処遇改善の差が月約220単位となり、10単位を大きく上回る
- 「複数種類」の判断や委員会の兼務可否は告示に定めがない
- ムの注には「イについては」の限定がなく、短期利用の扱いは市町村に確認が必要
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ム、ヰ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第79号の2(複合型サービス費における生産性向上推進体制加算の基準)、第37号の3(生産性向上推進体制加算の基準)、第81号・第58号(介護職員等処遇改善加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに「介護機器」に該当する機器の範囲、「複数種類」の判断、委員会を既存の会議と兼ねられるか、厚生労働省への報告の方法・様式・期限、短期利用居宅介護費への加算の可否については告示本文に明記がなく、留意事項通知および関連する事務連絡、市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




