看多機の看護体制強化加算とは?算定要件や単位数を解説

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の看護体制強化加算は、(Ⅰ)3,000単位・(Ⅱ)2,500単位です。1月につき算定します。看多機の加算のなかで単独では最も大きく、要介護3の基本報酬24,481単位に対して1割以上を上乗せする水準です。
ただし要件は易しくありません。登録者の80%に主治医の指示に基づく看護サービスを提供していることが入口です。訪問看護の看護体制強化加算(Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位と名前は同じですが、要件も金額も別物として読む必要があります。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のレと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第78号の原文を確認して整理しました。
- 看護体制強化加算(Ⅰ)3,000単位・(Ⅱ)2,500単位の違い
- (Ⅰ)の5要件と(Ⅱ)の3要件
- 割合要件はすべて前3月間の実績で判定すること
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の差500単位が何に対する評価か
- 訪問看護体制減算と同じ3指標を使っていること
- 訪問看護の看護体制強化加算との違い
- 喀痰吸引等事業者の登録が要件に入っている理由
- 実務で最初に着手すべき指標
ちびウルフ(Ⅰ)と(Ⅱ)の差はたった500単位ですよね。わざわざ(Ⅰ)を狙う意味はあるんですか?
リハウルフあります。追加の2要件は、割合要件と性質がまったく違うからです。ターミナルケア加算の算定実績は前12月間で1名以上、喀痰吸引等事業者の登録は届出を出せば済む話。毎月の割合を維持する苦労と比べれば、はるかに手が届く。(Ⅱ)に届いた事業所が(Ⅰ)を取らない理由はほとんどありません。
看多機の看護体制強化加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の看護体制強化加算は、医療ニーズの高い利用者への提供体制を強化した事業所を評価する加算です。告示126号 複合型サービス費のレに規定されています。
看多機は、通い・訪問・泊まりに訪問看護を組み合わせたサービスです。しかし実際の運用では、看護の比重が事業所によって大きく違います。看護体制強化加算は、その比重の高さそのものを数値で測って評価する仕組みです。
評価に使う指標は3つ。①主治医の指示に基づく看護サービスを提供した利用者の割合、②緊急時対応加算を算定した利用者の割合、③特別管理加算を算定した利用者の割合です。これは訪問看護体制減算の判定指標とまったく同じ項目で、同じ物差しの上端が加算、下端が減算という構造になっています。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の区分・単位数に変更はありませんでした。
看護体制強化加算の単位数
レ 看護体制強化加算
注 イについては、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が、医療ニーズの高い利用者への指定看護小規模多機能型居宅介護の提供体制を強化した場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。
(1) 看護体制強化加算(Ⅰ) 3,000単位
(2) 看護体制強化加算(Ⅱ) 2,500単位
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 看護体制強化加算(Ⅰ) | 3,000単位 | 1月につき | イ(看護小規模多機能型居宅介護費) |
| 看護体制強化加算(Ⅱ) | 2,500単位 | 1月につき | 同上 |
条文は「ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」としています。(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定はできません。
基本報酬に対する比率
| 要介護度 | 基本報酬 | (Ⅰ)3,000単位を加えた場合 | 上乗せ率 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 15,447単位 | 約24% |
| 要介護3 | 24,481単位 | 27,481単位 | 約12% |
| 要介護5 | 31,408単位 | 34,408単位 | 約10% |
定額の加算なので、軽度の登録者ほど上乗せ率が大きくなります。要介護1で24%というのは、かなりの規模です。
看護体制強化加算の算定要件
告示95号 第78号が定める要件は次のとおりです。
看護体制強化加算(Ⅰ)=5要件すべて
イ 看護体制強化加算(Ⅰ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
(1) 算定日が属する月の前三月間において、(略)利用者の総数のうち、主治の医師の指示に基づく看護サービスを提供した利用者の占める割合が百分の八十以上であること。
(2) (略)緊急時対応加算を算定した利用者の占める割合が百分の五十以上であること。
(3) (略)特別管理加算を算定した利用者の占める割合が百分の二十以上であること。
(4) 算定日が属する月の前十二月間において、(略)ターミナルケア加算を算定した利用者が一名以上であること。
(5) 登録特定行為事業者(略)又は登録喀痰吸引等事業者(略)として届出がなされていること。
看護体制強化加算(Ⅱ)=上の(1)〜(3)
条文は「ロ 看護体制強化加算(Ⅱ) イ(1)から(3)までに掲げる基準のすべてに適合すること」とだけ定めています。割合要件3つを満たせば(Ⅱ)2,500単位です。
| 要件 | 基準 | 判定期間 | (Ⅰ) | (Ⅱ) |
|---|---|---|---|---|
| 看護サービスを提供した利用者の割合 | 80%以上 | 前3月間 | ○ | ○ |
| 緊急時対応加算を算定した利用者の割合 | 50%以上 | 前3月間 | ○ | ○ |
| 特別管理加算を算定した利用者の割合 | 20%以上 | 前3月間 | ○ | ○ |
| ターミナルケア加算の算定実績 | 1名以上 | 前12月間 | ○ | — |
| 登録特定行為事業者・登録喀痰吸引等事業者の届出 | 届出済み | — | ○ | — |
母集団から短期利用者を除く
第78号の利用者は、第75号と同じく短期利用居宅介護費を算定する者を除くと定義されています。分母は登録者です。
訪問看護体制減算との対応関係
同じ3指標を上下から見ると、看多機の報酬設計がはっきりします。
| 指標 | 訪問看護体制減算 | 中間帯 | 看護体制強化加算 |
|---|---|---|---|
| 看護サービス提供割合 | 30%未満 | 30〜80% | 80%以上 |
| 緊急時対応加算 | 30%未満 | 30〜50% | 50%以上 |
| 特別管理加算 | 5%未満 | 5〜20% | 20%以上 |
3指標のいずれかが中間帯にある事業所は、減算もされないが加算も付かないという位置になります。看護サービス提供割合が50%前後の事業所は、まさにここです。
要介護5で見ると、減算の△2,914単位と(Ⅰ)の+3,000単位で、同じ利用者でも月5,914単位(約6万円)の差が生まれます。登録者20人規模なら年間1,000万円以上の開きになり得る数字です。
訪問看護の看護体制強化加算との違い
訪問看護にも同名の加算がありますが、中身は別物です。
| 項目 | 看多機 | 訪問看護 |
|---|---|---|
| (Ⅰ) | 3,000単位/月 | 550単位/月 |
| (Ⅱ) | 2,500単位/月 | 200単位/月 |
| 看護サービス提供割合 | 80%以上((Ⅰ)(Ⅱ)共通) | — |
| 緊急時の加算 | 緊急時対応加算50%以上 | 緊急時訪問看護加算50%以上 |
| 特別管理加算 | 20%以上 | 20%以上 |
| ターミナルケア加算 | 前12月間に1名以上((Ⅰ)のみ) | 前12月間に(Ⅰ)は5名以上、(Ⅱ)は1名以上 |
| 喀痰吸引等事業者の登録 | (Ⅰ)の要件 | 要件なし |
金額が5倍以上違うのは、看多機の基本報酬が月単位の包括であることによります。比べるときは「月あたりいくら上乗せされるか」ではなく「基本報酬の何%か」で見るほうが実態に近いと思います。
看護体制強化加算の注意点
喀痰吸引等事業者の登録は事前準備が要る
(Ⅰ)の要件(5)は、登録特定行為事業者または登録喀痰吸引等事業者としての届出です。これは介護報酬の届出ではなく、社会福祉士及び介護福祉士法にもとづく都道府県への登録です。
介護職員が喀痰吸引・経管栄養を実施するには、この登録と、職員側の研修修了が必要になります。登録には研修修了者の確保が前提なので、思い立ってすぐ届出という流れにはなりません。(Ⅰ)を目指すなら、ここから逆算して動くのが現実的です。
ターミナルケア加算の実績は前12月間
要件(4)は前12月間で1名以上です。割合要件が前3月間なのに対し、ここだけ12月間である点に注意してください。看取りを1件行えば、その後1年間は要件を満たし続けます。
逆にいえば、1年間看取りがなければ(Ⅰ)から(Ⅱ)に落ちます。500単位の差ですが、月に登録者20人なら年間120万円。看取りの実績管理は、加算の観点からも意味があります。
緊急時対応加算・特別管理加算の算定漏れが致命傷になる
2つの割合要件は、それぞれ緊急時対応加算774単位・特別管理加算500/250単位という単体の加算の算定状況を見ています。
算定できる利用者に算定していないと、その加算収入を逃すだけでは終わりません。看護体制強化加算の割合要件を満たせなくなり、さらに悪化すれば訪問看護体制減算に該当するという二重・三重の損失になります。
担当したケースでも、特別管理加算の対象になる状態(留置カテーテル、真皮を越える褥瘡など)を看護記録では把握していたのに、請求に反映していなかった事業所がありました。状態の把握と算定判断を別の人が担っていると、こういう抜けが起きます。
- 特別管理加算の対象状態を全登録者について棚卸しする
- 緊急時対応加算の体制を整え、同意を得られる方から算定する
- 主治医の指示に基づく看護サービスの提供実績を記録で残す
- 3指標を毎月集計し、80%・50%・20%と照合する
- (Ⅱ)に届いたら、喀痰吸引等事業者の登録とターミナルケアの実績を確認して(Ⅰ)に上げる
よくある質問
看多機の看護体制強化加算はいくらですか?
(Ⅰ)が3,000単位、(Ⅱ)が2,500単位です。いずれも1月につき算定します。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?
割合要件3つは共通です。(Ⅰ)はこれに加えて、前12月間にターミナルケア加算の算定が1名以上あること、登録特定行為事業者または登録喀痰吸引等事業者として届出があることが必要です。
割合要件の判定期間はいつですか?
算定日が属する月の前3月間です。ターミナルケア加算の実績だけは前12月間で判定します。
看護サービスの提供割合は何%必要ですか?
80%以上です。主治医の指示に基づく看護サービスを提供した利用者の割合で判定します。
緊急時対応加算・特別管理加算の割合は?
緊急時対応加算を算定した利用者が50%以上、特別管理加算を算定した利用者が20%以上です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できますか?
できません。条文は、いずれかを算定している場合はその他の加算を算定しないと定めています。
短期利用の利用者も割合に含めますか?
含めません。母集団から短期利用居宅介護費を算定する者は除かれます。
喀痰吸引等事業者の登録とは何ですか?
社会福祉士及び介護福祉士法にもとづく登録特定行為事業者または登録喀痰吸引等事業者としての届出です。介護報酬の届出とは別に、都道府県への手続きが必要です。
1年間看取りがないとどうなりますか?
(Ⅰ)の要件(4)を満たさなくなるため、(Ⅱ)2,500単位に下がります。
訪問看護の看護体制強化加算と同じですか?
違います。看多機は(Ⅰ)3,000単位・(Ⅱ)2,500単位で、看護サービス提供割合80%以上という要件が入ります。訪問看護は(Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位です。
訪問看護体制減算と同時に発生しますか?
指標の基準が正反対なので、同時に成立することは想定されていません。加算は80%以上、減算は30%未満です。
短期利用居宅介護費にも加算されますか?
加算されません。条文は「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。
- 看多機の看護体制強化加算は(Ⅰ)3,000単位・(Ⅱ)2,500単位(1月につき)
- 対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)で、短期利用は対象外
- (Ⅱ)は割合要件3つ、(Ⅰ)はこれに2要件を加えた5要件
- 看護サービスを提供した利用者の割合80%以上
- 緊急時対応加算を算定した利用者の割合50%以上
- 特別管理加算を算定した利用者の割合20%以上
- 割合要件の判定期間は前3月間
- (Ⅰ)はさらに前12月間にターミナルケア加算の算定が1名以上
- (Ⅰ)はさらに登録特定行為事業者・登録喀痰吸引等事業者の届出が必要
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
- 訪問看護体制減算と同じ3指標を、上端から見た加算
- 要介護5では減算と加算で月5,914単位の開きが生まれる
- 要介護1では基本報酬の約24%にあたる上乗せになる
- 緊急時対応加算・特別管理加算の算定漏れが要件未達に直結する
- 訪問看護の同名加算(550/200単位)とは要件も金額も別物
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」レ、ヲ、ワ、ヨ、注14(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第78号(看護体制強化加算の基準)、第75号(訪問看護体制減算の基準)、第76号(緊急時対応加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに割合の具体的な計算方法、月途中の登録者の扱い、要件を満たさなくなった場合の届出時期については告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。登録特定行為事業者・登録喀痰吸引等事業者の登録手続きは都道府県が所管しますので、所在都道府県にご確認ください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




