「訪問看護ステーションで理学療法士(PT)は何をするの?」「看護師の管理者として、リハ職をどう活かせばいいの?」——訪問看護の現場では、こうした疑問をよく耳にします。リハ職と看護職が同じステーションで働く今、お互いの役割を正しく理解しているかどうかで、ケアの質も事業所の評価も大きく変わります。

この記事では、訪問看護ステーションにおける理学療法士の役割を8つの視点から整理し、看護師との連携のコツや、令和6年度介護報酬改定でリハ職の訪問がどう扱われるようになったかまで、現場目線で解説します。これから訪問看護で働くPTにも、PTを雇う立場の管理者にも役立つ内容です。

この記事でわかること
  • 訪問看護ステーションにおける理学療法士の8つの役割
  • PTがいることでステーションが得られる強み
  • 看護師とリハ職が上手に連携・協働する方法
  • 令和6年度改定でリハ職の訪問看護がどう変わったか(減算ルール)
ちびウルフちびウルフ

訪問看護のPTって、結局リハビリをするだけじゃないの?

リハウルフリハウルフ

それが意外と幅広いんだ。動作の練習はもちろん、全身状態の把握から住宅改修の助言、家族の心理的支援まで担うんだよ。順番に見ていこうね。

訪問看護ステーションにおける理学療法士の役割は8つ

結論から言うと、訪問看護ステーションで働く理学療法士の役割は、大きく次の8つに整理できます。いずれも「身体機能のリハビリ」だけにとどまらず、利用者さんの在宅生活を丸ごと支える内容です。

No役割主な内容
1全身状態・生活状況の把握と指導バイタル測定、フィジカルアセスメント、転倒・外出状況の把握
2基本動作の練習と指導起立・着座、歩行、段差昇降、移動手段の評価
3日常生活動作(ADL)の練習と指導トイレ・更衣・入浴・食事動作の練習
4福祉用具の選定・住宅改修の提案歩行器・杖の選定、手すり位置や段差解消の助言
5自主練習の指導ホームエクササイズの作成と継続支援
6心理的支援・家族指導傾聴、医療・介護の相談、家族へのケア指導
7外出練習屋外歩行・買い物同行などの社会参加支援
8多職種・他事業所連携看護師・ケアマネ・医師・福祉用具業者との協働
ポイント訪問看護におけるリハ職の訪問は、あくまで「看護業務の一環」として位置づけられます。だからこそ、看護師との情報共有と役割分担が質の高いケアのカギになります。

①全身状態および生活状況の把握と指導

訪問看護で働く理学療法士は、リハビリだけでなく全身状態や生活状況の把握も行います。訪問看護の一環としてのリハビリだからこそ、看護的な視点が欠かせません。

看護師が得意とする以下のようなアセスメントは、PTも実施し、必要に応じて看護師へ報告します。

  • 血圧・体温などのバイタル測定
  • 皮膚状態の把握(褥瘡の有無など)
  • 排便・排尿状況の把握
  • 服薬状況の確認
  • その他のフィジカルアセスメント

あわせて、PTならではの視点で次の情報も把握し、看護師に共有したいところです。

  • 転倒・転落の状況やリスク
  • 外出頻度や外出時の様子
  • 生活動線や住環境の課題
ちびウルフちびウルフ

PTもバイタルを測るんだね!リハビリだけだと思ってた。

リハウルフリハウルフ

訪問看護のリハは「看護の一部」だからね。体調を確認してからリハに入るのが基本なんだ。異変に気づいたら看護師にすぐ連携するよ。

②基本動作の練習および指導

理学療法士は動作と運動のプロです。基本動作の練習・指導はもっとも得意とする分野です。具体的には次のような動作を扱います。

  • 歩行(屋内・屋外)
  • 床からの立ち上がり・座り込み
  • 椅子やベッドからの起立・着座
  • 段差昇降・階段昇降
  • 生活動線に沿った移動の評価
  • 移動手段(杖・歩行器・車椅子)の選定

「最近よく転ぶ」「立ち上がりがつらい」といった相談は、まさにPTの出番です。看護師からも遠慮なく頼ってほしい領域です。

③日常生活動作(ADL)の練習および指導

作業療法士(OT)が関わっていないケースなどでは、理学療法士が日常生活動作の練習を担うこともあります。

  • トイレ動作の練習
  • 更衣動作の練習
  • 入浴動作の練習
  • 食事動作の練習

「できる動作」を増やすことは、利用者さんの自立と尊厳に直結します。看護師が把握している生活上の困りごとと、PTの動作分析を組み合わせると、より実効性の高い支援になります。

④福祉用具の選定や住宅改修の提案・助言

福祉用具の選定や住宅改修の提案・助言も、訪問看護のPTの大切な役割です。厳密には、PTは身体機能と用具・環境とのフィッティングを評価し、その提案の中から最適なものを福祉用具専門相談員が選定する、という流れになります。

実際には次のような提案・指導を行います。

  • 利用者さんに合った歩行器・杖の選定
  • 杖の高さ調整や杖歩行の指導
  • 手すりの位置の提案
  • 段差解消などの住宅改修の提案
  • ベッドの位置やベッド上動作の練習

⑤自主練習の指導

訪問の時間は限られています。だからこそ、訪問していない時間にどれだけ体を動かせるかが回復のカギになります。理学療法士は利用者さんに合った自主練習メニュー(ホームエクササイズ)を作成し、継続できるよう支援します。

写真やイラスト付きのメニューを渡すと続けてもらいやすくなります。立てた自主練習を普段こなせているかを、訪問看護師が訪問時にさりげなく確認するのも良い連携です。

注意自主練習は「やりすぎ」も禁物です。体調や疾患に応じて運動強度を調整し、無理のない範囲で設定しましょう。心疾患などがある場合は、看護師と相談しながら負荷を決めるのが安全です。

⑥心理的支援および家族指導

訪問看護のPTは、看護師と同じように利用者さん・ご家族への心理的支援も担います。在宅で過ごす方やそのご家族は、不安や悩みを抱えていることが少なくありません。

  • 医療・介護に関する相談対応
  • 悩みの傾聴
  • 家族への介助方法の指導

毎回の訪問でこうした関わりを積み重ねることが、信頼関係とケアの土台になります。

⑦外出練習

外出練習も訪問看護のPTが行う支援の一つです。屋内では歩けても、屋外では路面の段差・傾斜・人混みなど条件が大きく変わります。屋外歩行には特有の注意点があるため、リスクを管理しながら段階的に進めることが大切です。

買い物同行などの社会参加につなげると、生活意欲の向上にもつながります。なお、訪問看護で屋外歩行や買い物同行を行ってよいかは制度上の根拠が気になるところです。詳しくは関連記事で解説しています。

⑧多職種・他事業所との連携

多職種・他事業所との連携も、訪問看護のPTの欠かせない役割です。主な連携先は次のとおりです。

  • 同じステーション内の看護師
  • 他事業所の看護師・OT・ST
  • 訪問リハビリテーション
  • デイサービス(通所介護)・デイケア(通所リハ)
  • 福祉用具業者
  • ケアマネジャー(介護支援専門員)
  • 主治医・医療機関

多職種が協働して在宅生活を支えることは、訪問看護のやりがいそのものです。職種の壁を越えて情報を共有し、利用者さんを真ん中に置いたチームをつくりましょう。

【令和6年度改定】リハ職による訪問看護の減算ルールに注意

ここで、PTを雇う管理者・経営者がとくに押さえておきたい制度の話をします。令和6年度(2024年度)介護報酬改定で、理学療法士等による訪問看護に新たな減算が設けられました。リハ職の役割を理解するうえで避けて通れないポイントです。

令和6年度改定のポイント(理学療法士等の訪問看護)
  • リハ職による訪問看護の基本報酬は294単位/回(介護予防は284単位/回)に見直し
  • 前年度にリハ職の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている等の場合、1回につき8単位減算
  • 緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない場合も減算の対象
  • 介護予防訪問看護で、利用開始月から12月を超えてリハ職が訪問する場合は、さらに15単位減算

つまり国は、訪問看護はあくまで看護職員が中心であることを改めて明確にしました。リハ職の訪問が看護を上回る運営は、報酬面で不利になります。これは「PTがいらない」という意味ではなく、看護とリハがバランスよく協働する体制こそが評価されるという方向性です。数値や算定の詳細は変わることがあるため、最新の告示・通知で必ず確認してください。

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じゃあPTは肩身が狭くなっちゃうの?

リハウルフリハウルフ

そんなことはないよ。看護師と役割を分け合って、お互いの強みを出せるステーションはむしろ強い。減算を理解したうえで、看護とリハの最適な比率を考えることが管理者の腕の見せどころなんだ。

看護師とリハ職が上手に連携するコツ

最後に、現場で看護師とPTが協働するためのコツをまとめます。

  1. 初回訪問やカンファレンスで、お互いの「得意分野」と「見てほしい視点」を共有する
  2. 記録・報告で、バイタルや動作の変化など気づきをこまめに伝え合う
  3. 褥瘡・服薬・急変の兆候はPTから看護師へ、動作・住環境の課題は看護師からPTへエスカレーションする
  4. ケアマネ・主治医を含めた多職種で、目標(ゴール)を共通言語にする

職種ごとの役割と強みを尊重し合えば、ステーション全体のケアの質は確実に上がります。

よくある質問(FAQ)

訪問看護で理学療法士は何をするのですか?
全身状態・生活状況の把握、基本動作やADLの練習、福祉用具・住宅改修の助言、自主練習指導、心理的支援、外出練習、多職種連携などを担います。リハビリだけでなく、看護業務の一環として在宅生活を総合的に支えます。
訪問看護のPTと訪問リハビリのPTは何が違いますか?
提供する内容は似ていますが、制度上の位置づけが異なります。訪問看護ステーションからのリハは「訪問看護費」として算定し看護の一環、訪問リハビリは「訪問リハビリテーション費」として医師の指示のもと提供されます。算定や指示書の扱いが異なる点に注意が必要です。
看護師の管理者がPTを雇うメリットはありますか?
動作・住環境の専門的評価、福祉用具選定、転倒予防など、看護師だけでは手が届きにくい領域をカバーできます。ただし令和6年度改定でリハ職の訪問が看護を上回ると減算となるため、看護とリハのバランスを設計することが重要です。
令和6年度改定でリハ職の訪問看護はどう変わりましたか?
基本報酬が294単位/回に見直されると同時に、前年度にリハ職の訪問回数が看護職員を上回る等の場合は1回8単位減算、介護予防では12月超でさらに15単位減算など、看護中心の運営を促す方向に改められました。最新の通知で詳細を確認してください。
まとめ
  • 訪問看護のPTの役割は、全身状態の把握・基本動作練習・ADL練習・福祉用具/住宅改修の助言・自主練習指導・心理的支援・外出練習・多職種連携の8つ
  • リハビリだけでなく「看護業務の一環」として在宅生活を総合的に支える
  • 令和6年度改定で、リハ職の訪問が看護職員を上回る等の場合は減算(8単位/回ほか)が新設された
  • 看護とリハが役割と強みを分け合い、バランスよく協働するステーションが評価される

出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」関連資料・通知/同改定Q&A。報酬の単位数・算定要件は改定や解釈通知により変わるため、最新の告示・通知をご確認ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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