訪問入浴介護は、介護職の中でも「体力的にきつい」と言われやすい仕事です。浴槽を担いで玄関を通し、狭い居室に設置し、湯を張って、入浴介助をして、また片づけて次の家へ。これを1日5〜6件回ります。

ただし、きつさには「身体の問題」と「制度・体制の構造からくる問題」の2種類があります。この記事では、理学療法士・介護支援専門員として在宅の現場に関わってきた立場から、訪問入浴介護がきつい5つの理由と、その減らし方を整理します。求人を選ぶときに何を確認すべきかまで書きます。

この記事でわかること
  • 訪問入浴介護の仕事内容と3人1組という体制の意味
  • きついと言われる5つの理由と、その構造的な背景
  • 「休みにくさ」が制度設計から生まれていること
  • 看護職員が同行できないと減算されること
  • 入浴できず清拭になったときの報酬の扱い
  • 身体の負担を減らす具体的な工夫
  • 令和6年度改定で看取りの評価が新設されたこと
  • 求人・面接で確認すべきポイント

訪問入浴介護の仕事と「3人1組」の意味

訪問入浴介護は、自宅の浴槽では入浴が難しい方の居宅に移動式の浴槽を持ち込んで入浴を提供するサービスです。寝たきりの方、医療的ケアがある方、末期がんの方など、他のサービスでは入浴が難しい利用者が中心になります。

基本の体制は看護職員1人+介護職員2人の3人1組。ここが仕事のきつさと、やりがいの両方を決めています。

訪問入浴介護費1,266単位/回(令和6年度改定後。改定前は1,260単位)
介護予防訪問入浴介護費856単位/回(同 852単位)
介護職員3人で行った場合所定単位数の100分の95で算定
入浴を見合わせ、清拭・部分浴を行った場合所定単位数の100分の90で算定
人員の数え方看護職員を介護職員として数えてよい(3人のうち2人が看護職員でも差し支えない)
ちびウルフちびウルフ

3人で行くって決まってるの? 2人じゃダメなの?

リハウルフリハウルフ

訪問入浴介護は3人、介護予防訪問入浴介護は2人が基本です。この「3人固定」が、あとで出てくる“休みにくさ”の正体です。1人休むとチームが動けない。しかも看護職員が同行できずに介護職員3人で行うと、報酬は95%に下がります。きつさの一部は、根性論ではなく制度設計から来ているということです。

訪問入浴介護がきつい5つの理由

①浴槽の搬入・搬出が毎回違う条件で発生する

いちばん体にくるのがここです。浴槽・給湯器・ホース類を車から降ろし、玄関を通し、居室まで運び、設置する。そして終わったら全部逆の手順で片づけます。

問題は、現場の条件が毎回まったく違うことです。エレベーターのない団地の3階、幅の狭い廊下、段差の多い玄関、物が多くて動線が確保できない居室。施設と違い、環境を選べません。

②大きな車の運転と駐車

訪問入浴車は一般的なワンボックスより大きく、給湯設備を積んでいるぶん重量もあります。住宅街の細い道、コインパーキングに入らないサイズ、雪や雨の日の運転。運転が苦手な人にとっては、これだけで大きな負担になります。

駐車場所の確保も地味に神経を使う仕事です。近隣からの苦情につながることもあり、「運転できる人が限られる」ことがシフトの硬直につながっている事業所も多くあります。

③夏場の環境が過酷

浴槽に湯を張るため、居室内の温度と湿度が上がります。加えて、利用者が寒がるのでエアコンを弱めにすることも珍しくありません。真夏は文字どおり汗だくになります。

逆に冬は、屋外での搬入・搬出とホースの水で手がかじかみます。季節どちらもきついのがこの仕事の特徴です。

④腰への負担が構造的にかかる

重量物の運搬に加えて、床上での作業姿勢が腰に効きます。浴槽は床に設置するため、洗身も、移乗も、多くの場面で中腰か膝立ちになります。

ベッドから浴槽への移乗は、担架やシートを使うとはいえ3人がかりの持ち上げ動作です。腰痛は「なる人はなる」ではなく、対策をしなければ確率の問題として起こります。

⑤3人1組だから休みにくい

そして最も見落とされているのがこれです。1人が欠けるとチームが成立しません。訪問介護のように1人で回る仕事なら他のヘルパーに振り替えられますが、訪問入浴は3人そろわないと出発できません。

「看護職員が休むと収入が減る」構造とくに厳しいのが看護職員の欠員です。介護職員3人で行った場合、所定単位数は100分の95になります。つまり看護職員が1人休むだけで、その日の全件が5%減収になる。だから看護職員は休みを言い出しにくく、介護職員も「自分が休むと迷惑がかかる」と感じる。これは個人の責任感の問題ではなく、体制から生まれる圧力です。事業所を選ぶときは、ここへの備え(登録スタッフの層の厚さ)を必ず確認してください。

数字で見る「きつさ」の構造

報酬の仕組みを知っておくと、現場で起きることの意味が分かります。

1件あたりの報酬1,266単位。3人がかり・移動込みで1〜1.5時間程度を要する
介護職員3人での実施95%(約63単位分の減)
清拭・部分浴に変更90%(約127単位分の減)
入浴を見合わせて何もできなかった場合算定できない

最後の行が現場では大きい。熱があって入浴を中止した日は、3人で訪問して準備までしても報酬はゼロです。だからこそ、当日の体調確認や事前の連携が重要になり、そこにも神経を使います。

ただし、利用者の希望により清拭や部分浴を実施した場合は90%で算定できます。「入れないから帰る」ではなく「できることをする」判断が、利用者にとっても事業所にとっても意味を持ちます。

きつさを減らす工夫

身体の負担を減らす

  • 持ち上げない動線を先に決める/搬入前に、玄関から設置場所までの経路を3人で確認して役割を分ける
  • 膝をつく/中腰を続けるより、片膝をついたほうが腰は守れる。膝当ての使用も検討する
  • スライディングシート・グローブを使う/移乗で「持ち上げる」場面を減らす
  • 腰痛予防のベルトや装具/事業所が支給しているかを確認する
  • 水分と塩分を意識してとる/夏場は自分自身が脱水になる
  • 着替えを複数用意する/濡れたまま次の家に行かない

チームで減らす

訪問入浴のきつさは、チームの相性で体感が大きく変わります。役割分担が固定されている(=いつも同じ人が重い物を持つ)状態は、事故と離職の両方につながります。ローテーションを提案してよい仕事です。

事業所選びで減らす

1日の訪問件数4〜5件か、6〜7件か。ここで体の消耗がまったく違う
登録・非常勤スタッフの層欠員時に代わりが立つか。休みやすさに直結する
看護職員の人数常勤が何人いるか。1人体制だと休めない構造になる
車両と機材年式、給湯器の性能、台車やスロープなどの補助具の有無
移動時間の扱い労働時間としてどう計算されているか
腰痛対策装具の支給、健康診断、腰痛予防の研修があるか
担当エリアの広さ移動距離が長いほど、拘束時間は延びる

面接では、「1日平均何件ですか」「看護職員は何名体制ですか」「欠員が出たときはどうしていますか」の3つを必ず聞いてください。求人票の文言より、この3つの答えのほうが実態を映します。

それでも訪問入浴にやりがいがある理由

ここまで負担の話をしてきましたが、この仕事にしかない価値があります。

  • 他では入浴できない人を、湯船に入れられる/清拭では代えられない体験を提供している
  • 反応がその場で返ってくる/表情が変わる瞬間に立ち会える仕事は多くない
  • 看護職員と常に一緒に動く/全身の皮膚を毎回観察するため、褥瘡や体調変化の発見が早い
  • 家族の負担を直接減らせる/在宅での入浴介助は、家族にとって最も重い介護のひとつ
  • 短時間で完結する/記録や調整の業務が比較的少なく、時間が読みやすい
令和6年度改定で「看取り」が評価された令和6年度改定で、訪問入浴介護に看取り連携体制加算(64単位/回)が新設されました。医師が回復の見込みがないと診断した利用者について、死亡日を含めて30日を上限に算定されます(事業所側には、訪問看護ステーション等との連絡体制の確保、看取り期の対応方針の策定と説明・同意、看取りに関する職員研修が求められます)。
最期の時期に「お風呂に入りたい」という希望を叶える役割が、制度としてはっきり位置づけられたということです。実際、看取り期の訪問入浴は、家族の記憶に強く残ります。

向いている人・向いていない人

向いている人体を動かすのが苦にならない/チームで動くのが好き/段取りを考えるのが得意/運転に抵抗がない/時間どおりに終わる働き方をしたい/利用者の反応をやりがいにできる
慎重に考えたほうがよい人腰痛の既往が強い/暑さ寒さに弱い/1人で自分のペースで働きたい/急な休みを取る可能性が高い事情がある/運転に強い不安がある

ただし、腰痛の既往があるから絶対に無理、ということではありません。件数の少ない事業所、補助具が整っている事業所を選べば続けられます。決め手は「本人の体力」より「事業所の条件」であることが多いです。

訪問入浴介護の1日の流れ

8:30出勤、朝礼、当日の利用者情報と体調の申し送り、機材の積み込み
9:001件目へ移動。到着後、バイタル測定と入浴可否の判断(看護職員)
9:15浴槽の搬入・設置・給湯。入浴介助、洗身、洗髪
10:00着衣、皮膚の観察と記録、片づけ・撤収
10:302件目へ移動
12:00休憩(車内や事業所。取り方は事業所による)
13:00午後の訪問(3〜4件)
16:30帰社、機材の洗浄・消毒、記録の仕上げ
17:30退勤

きつさが出やすいのは午後2件目以降と、帰社後の機材洗浄です。ここで手を抜くと衛生管理に響くため、疲れていても省けません。求人を見るときは、「帰社後の作業時間が労働時間に入っているか」も確認してください。

よくある質問
訪問入浴介護は何人で訪問しますか?
訪問入浴介護は看護職員1人と介護職員2人の3人が基本です。介護予防訪問入浴介護は2人です。なお人員の算定上は看護職員を介護職員として数えることができ、3人のうち2人が看護職員でも差し支えないとされています。
看護職員がいないと訪問できませんか?
利用者の身体の状況等に支障を生ずるおそれがないと認められる場合は、介護職員3人で行うことができます。ただしその場合、所定単位数の100分の95で算定されます。看護職員が含まれていても、この取扱いは変わりません。
入浴できなかった日は報酬が出ますか?
実際に入浴を行った場合に算定の対象となるため、入浴を見合わせた場合は算定できません。ただし利用者の希望により清拭または部分浴を実施した場合は、所定単位数の100分の90で算定できます。
訪問入浴介護は1日何件回りますか?
事業所によりますが、1日4〜7件程度が一般的です。件数が体力的な負担に直結するため、求人選びの段階で必ず確認してください。
腰痛が心配です。続けられますか?
対策次第です。搬入経路を先に決める、中腰ではなく膝をつく、スライディングシート等で持ち上げる場面を減らす、といった工夫で負担は変わります。事業所側の補助具の整備状況や1日の件数のほうが、続けられるかを大きく左右します。
資格は必要ですか?
介護職員としては介護職員初任者研修以上の資格を求められるのが一般的です(事業所により無資格から可の場合もあります)。看護職員は看護師または准看護師です。
やりがいはどこにありますか?
他のサービスでは入浴が難しい方に湯船での入浴を提供できる点です。全身の皮膚を毎回観察するため体調変化の発見が早く、家族にとって最も重い介護のひとつを直接肩代わりできる仕事でもあります。令和6年度改定では、看取り期の対応を評価する看取り連携体制加算も新設されました。
面接で何を聞けばよいですか?
「1日平均の訪問件数」「看護職員は何名体制か」「欠員が出たときの対応」の3つです。あわせて、帰社後の機材洗浄や移動時間が労働時間に含まれるかも確認してください。
まとめ
  • 訪問入浴介護は、看護職員1人+介護職員2人の3人1組が基本(介護予防は2人)。
  • きつさは「身体の負担」と「体制の構造」の2種類に分けて考える。
  • 身体面は、浴槽の搬入・搬出、大きな車の運転、夏冬の環境、床上作業による腰への負担。
  • 構造面の中心は「3人そろわないと動けない」ことによる休みにくさ。
  • 介護職員3人で実施した場合は所定単位数の100分の95。看護職員の欠員は減収に直結する。
  • 入浴を見合わせた場合は算定できない。清拭・部分浴を行えば100分の90で算定できる。
  • 訪問入浴介護費は1回1,266単位(令和6年度改定後)。介護予防は856単位。
  • 負担軽減は、搬入経路の事前確認、膝をつく姿勢、スライディングシートの活用、役割のローテーション。
  • 事業所選びでは、1日の件数、登録スタッフの層、看護職員の人数、補助具、移動・洗浄時間の扱いを見る。
  • 面接では「件数」「看護職員の体制」「欠員時の対応」を必ず聞く。
  • やりがいは、他では入浴できない人に湯船を提供できること、体調変化の発見が早いこと、家族の負担を直接減らせること。
  • 令和6年度改定で看取り連携体制加算(64単位/回)が新設され、看取り期の役割が制度上も位置づけられた。
参考にした情報
  • 厚生省老人保健福祉局企画課長通知「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月1日老企第36号)第二の3 訪問入浴介護費
  • 厚生労働省老健局「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(1.(4)② 訪問入浴介護における看取り対応体制の評価、訪問入浴介護 基本報酬)
  • 「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第45条ほか(訪問入浴介護の従業者の員数)

※本記事の単位数および算定の取扱いは、厚生労働省の告示・通知にもとづいて整理したものです。地域区分により1単位あたりの単価が異なります。1日の訪問件数、勤務時間の扱い、資格要件、補助具の整備状況は事業所によって大きく異なるため、実際の労働条件は求人票および面接でご確認ください。1日の流れは一般的な例であり、事業所により異なります。腰痛予防に関する記述は一般的な工夫の紹介であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。働き方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)が在宅の現場で関わってきた経験にもとづく整理です。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶