訪問看護ステーションで働く理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が増える中で、「訪問看護で屋外歩行はやってもいいの?」「買い物同行は算定できる?」という疑問を持つ方は少なくありません。屋内の練習だけでは生活の再建につながらない場面も多く、屋外でのリハビリの必要性を感じている専門職は多いはずです。

結論として、訪問看護でも一定の条件を満たせば屋外歩行は実施できます。この記事では、屋外歩行が認められる3つの条件と制度上の根拠、買い物同行の考え方、そして令和6年度介護報酬改定で押さえておきたい理学療法士等の訪問ルールまで、現場で使えるかたちで整理して解説します。

この記事でわかること
  • 訪問看護で屋外歩行が実施できる3つの条件
  • 屋外歩行を裏づける制度上の根拠(居宅起点ルール)
  • 訪問看護で買い物同行はできるのかという論点
  • 令和6年度改定で押さえる理学療法士等の訪問の算定ルール
ちびウルフちびウルフ

訪問看護って、家の中だけじゃなくて外で歩行練習してもいいの?禁止って聞いたこともあって…。

リハウルフリハウルフ

禁止ではないよ。きちんと条件を満たせば屋外歩行はできるんだ。まずはその3つの条件から確認していこう。

結論|訪問看護でも屋外歩行は実施できる

まず結論からお伝えします。訪問看護における屋外歩行は、自立支援を目的とし、適切な手続きを踏めば実施可能です。訪問看護は利用者の居宅で行うサービスなので、居宅の外だけで行うものは原則として算定できません。ただし、居宅を起点に屋外へ広げるリハビリは、条件を満たせば例外的に認められるという整理です。

大切なのは、なんとなく外を歩くのではなく、生活機能の維持・向上という明確な目的のもとで、医師の指示やケアプランに位置づけて行うことです。次の章で、その具体的な条件を見ていきましょう。

訪問看護で屋外歩行を実施できる3つの条件

訪問看護で屋外歩行を行うときは、次の3点をすべて満たす必要があります。

  1. 自立支援を目的としていること利用者の生活機能の維持・向上を図ることが目的であること。単なる散歩やレクリエーションではなく、生活の再建につながる訓練であることが求められます。
  2. 医師の具体的な指示があること主治医による医学的判断に基づく具体的な指示があること。訪問看護指示書やリハビリの指示と整合していることが前提です。
  3. ケアプラン・訪問看護計画に位置づけられていること適切なケアマネジメントのもとで作成されたケアプランに沿って、訪問看護計画書に屋外歩行が明確に位置づけられていること。
POINT

「自立支援の目的」「医師の具体的指示」「計画への位置づけ」の3点セットがそろって初めて、屋外歩行が正当な訪問看護のリハビリとして成立します。

屋外歩行が認められる制度上の根拠

「条件は分かったけれど、根拠はどこにあるの?」という疑問にお答えします。理学療法士等による訪問看護の取り扱いは、いわゆる老企第36号(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準の解釈通知)などに基づいて運用されています。

「居宅を起点とする」が大原則

注意したいのは、訪問看護はあくまで居宅サービスであり、利用者の自宅を起点としなければならないという点です。自宅から出発して屋外で歩行訓練を行い、自宅に戻る——この流れが基本になります。事業所や施設から直接出発するような形は想定されていません。

自治体のQ&Aはローカルルールに注意

前の章の3条件は、法令や老企第36号に明文で書かれているものではありません。平成21年に作成された介護保険給付のQ&A(訪問看護)で示された考え方として、自治体の運営指導や現場で広く参照されているものです。そのため、駅までの移動や公共交通機関の利用練習をどこまで認めるかといった細かな線引きは、保険者によって判断が分かれます。居宅を起点とする原則だけは、どの保険者でも外せません。

この法律において「訪問看護」とは、居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。

出典:介護保険法 第8条第4項

注意

屋外歩行の細かな取り扱いは自治体によって解釈が分かれることがあります(ローカルルール)。実際の運用前に、必ず担当の保険者(市区町村)に確認しましょう。

訪問看護で買い物同行はできるのか?

「買い物同行はできますか?」という質問もよく受けます。これも屋外歩行と同じく、先ほどの3条件を満たすリハビリの一環であれば実施可能と考えられます。買い物という生活行為を通じて、歩行・耐久性・判断力・金銭管理などの生活機能の維持向上を図る、という位置づけです。

ちびウルフちびウルフ

じゃあ、毎回買い物に付き添えばいいってこと?

リハウルフリハウルフ

そこが大事なところ。ただ物を買うだけの付き添いは「家事代行」になってしまって自立支援とはいえないんだ。あくまで訓練としての目的が必要だよ。

つまり、毎回ただ商品を購入するだけ・荷物を持つだけの関わりは自立支援とはいえず、訪問看護のリハビリとしては不適切です。買い物という場面を「リハビリの目標達成のための手段」として用いることがポイントになります。

【令和6年度改定】理学療法士等の訪問で押さえる算定ルール

屋外歩行を実施するうえで、理学療法士等による訪問看護の算定ルールも正しく理解しておく必要があります。令和6年度介護報酬改定で見直された重要ポイントを整理します。

基本の算定ルール(介護保険)

項目内容
1回の時間最低20分
回数の上限1人につき週6回まで
基本報酬1回(20分以上)につき294単位(訪問看護ステーションの場合)
1日3回以上その日のすべての訪問が1回につき100分の90で算定
要支援(介護予防訪問看護)1回284単位。1日3回以上のときは1回につき100分の50で算定
要支援で12月超1回につき5単位減算(8単位減算に該当する事業所は15単位減算)

「1日3回以上」の減算は、3回目だけでなくその日の全部の訪問が100分の90になる点に注意してください。午前に2回、午後に1回のように分けて訪問した場合も同じ扱いです(老企第36号 第2の4(4)③)。週6回の上限も「回」(20分単位)で数えるため、40分の訪問を週3日行えば6回で上限に達します。

新設された8単位減算に注意

令和6年度改定では、次のいずれかに該当する訪問看護ステーションは、理学療法士等の訪問1回につき8単位が減算されることになりました。

  • 前年度において、理学療法士等の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている
  • 算定日が属する月の前6月間に、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない

1つ目の判定で使う「訪問回数」は、算定回数とは数え方が違います。理学療法士等が連続して2回訪問した場合は1回と数えます。たとえば3月1日と3月3日にそれぞれ連続2回訪問した場合、算定回数は4回ですが、訪問回数は2回です(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)問28)。訪問看護と介護予防訪問看護を一体的に運営している事業所では、両方の回数を合算して判定します(同Vol.5 問1)。

これは「訪問看護ステーションは医療ニーズの高い利用者に24時間・365日対応する」という本来の役割を明確にする狙いがあります。リハビリ専門職の訪問が中心の事業所ほど、看護職との連携体制が問われます。

POINT

屋外歩行を計画する際も、訪問回数・時間・看護職との役割分担を意識し、減算要件に該当しないか定期的に確認しておきましょう。

屋外歩行を安全に行う実践ポイント(リハ職の視点)

制度面をクリアしても、屋外には屋内にないリスクがあります。安全に実施するために、現場で意識したいポイントをまとめます。

リスク管理を徹底する

段差・坂道・路面状況・気温・交通量など、屋外特有のリスクを事前に評価しましょう。バイタル測定や体調確認を行い、転倒・熱中症・急変への備えとして連絡手段や中止基準を決めておくことが大切です。

目的と評価を記録に残す

「なぜ屋外で行うのか」「どんな生活機能の向上を狙うのか」を訪問看護計画と記録に明記します。目的・実施内容・評価がそろった記録は、運営指導の際の説明責任を果たすうえでも重要です。

多職種・ケアマネと連携する

屋外歩行や買い物同行は、ケアマネや主治医、看護職と目標を共有してこそ意味があります。カンファレンスで進捗を共有し、計画を見直しながら進めましょう。

よくある質問(FAQ)

訪問看護のリハビリで、医師の指示は屋外歩行についても具体的に必要ですか?

はい。屋外歩行を含むリハビリは、主治医の具体的な指示(医学的判断に基づくもの)が前提です。指示書の内容と訪問看護計画が整合しているか確認しましょう。

事業所や駅から直接出発して訓練してもよいですか?

訪問看護は居宅サービスのため、原則として利用者の自宅を起点とします。自宅から出発し、屋外で訓練を行い、自宅に戻る流れが基本です。具体的な可否は保険者に確認してください。

買い物同行が「自立支援」と認められるのはどんなケースですか?

歩行耐久性の向上や外出機会の確保、判断力・金銭管理の練習など、明確なリハビリ目標があり計画に位置づけられている場合です。単に荷物を持つだけ・代わりに買うだけでは認められにくいです。

屋外歩行の取り扱いが自治体で違うのはなぜですか?

細かな運用は保険者の解釈に委ねられている部分があり、ローカルルールが生じやすいためです。トラブルを避けるため、実施前に担当の市区町村へ確認するのが確実です。

まとめ|屋外歩行は「目的・指示・計画」で正しく実施しよう

訪問看護でも屋外歩行は実施できます。大切なのは、自立支援という目的を明確にし、医師の指示とケアプラン・訪問看護計画に位置づけて、安全に行うことです。

この記事のまとめ
  • 屋外歩行は「自立支援目的」「医師の具体的指示」「計画への位置づけ」の3条件を満たせば実施可能
  • 訪問看護は居宅サービス。自宅を起点とする原則を守り、取り扱いは保険者に確認する
  • 買い物同行は、明確なリハビリ目標があれば可能。単なる代行は不可
  • 理学療法士等の訪問は1回20分以上・週6回まで。1日3回以上の減算と8単位減算にも注意

制度の根拠を押さえたうえで、利用者の「できる生活」を広げる屋外リハビリを安全に届けていきましょう。

リハウルフリハウルフ

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参考にした情報

※本記事の算定ルールは、厚生労働省の告示・通知・Q&Aにもとづいて整理したものです。屋外でのリハビリの3条件は、平成21年作成の介護保険給付Q&A(訪問看護)で示された考え方として広く参照されているもので、細かな取扱いは保険者によって異なります。実施前に必ず保険者(市区町村)にご確認ください。制度に関する記述は2026年10月時点の内容として整理しています。屋外歩行の実践ポイントは、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味