「訪問看護でよくあるトラブルって、どんなものがあるの?」
「もしトラブルを起こしてしまったら、どう対応すればいい?」
「そもそもトラブルを起こさないために、何に気をつければいいの?」

そんな悩みを解決できる記事です。どれだけ丁寧に訪問看護を行っていても、利用者さんの生活の場という特殊な環境では、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。大切なのは、起こりやすいトラブルをあらかじめ知り、未然に防ぐ工夫と、起きてしまったときの正しい対応手順を身につけておくことです。この記事では、訪問看護で起こりがちなトラブルの事例・事前対策・対応手順・再発防止までを、現場目線で整理して解説します。

この記事でわかること
  • 訪問看護で起こりやすいトラブルの具体的な事例
  • トラブルを未然に防ぐための事前対策
  • トラブルが起きてしまったときの正しい対応手順
  • 再発を防ぐための事業所の仕組みづくり
ちびウルフちびウルフ

気をつけてるつもりでも、トラブルって起きちゃうものなの?

リハウルフリハウルフ

残念ながらゼロにはできないんだ。でも「どんなトラブルが多いか」を知っておけば、防げるものはぐっと減らせるよ。

訪問看護で起こりやすいトラブルの事例

訪問看護は利用者さんの自宅で行うため、病院とは違ったトラブルが発生します。まずは代表的な事例を一覧で確認しましょう。

トラブルの種類主な内容
物損(家のものを壊す)移動中や処置中に利用者さんの私物を破損
遅刻・訪問忘れスケジュール管理ミスによる遅刻や訪問漏れ
転倒・怪我歩行介助中の転倒、処置の失敗による出血など
暴力・ハラスメント利用者・家族からの暴言、暴力、セクハラ
情報伝達ミス申し送り漏れ、連絡の行き違い
提供内容の不一致希望と提供サービスのミスマッチ、手順ミス
交通事故移動中の事故(多くは第三者とのトラブル)
通信障害電話・タブレットの不通、充電切れ
個人情報の流出カルテの見せ方、他利用者の話の漏えい

① 物損(利用者さんの家のものを壊す)

訪問看護のフィールドは利用者さんの自宅です。振り向いた拍子にぶつかったり、衣服が当たって物を落としたりと、故意でなくても私物を壊してしまうことがあります。対策は「必要最小限の動線で動き、関係のない場所には立ち入らない」「利用者さんの私物には極力触れない」こと。余計な動きを減らすほど、物損のリスクは下がります。

② 遅刻・訪問忘れ

スケジュールの組み間違いや確認漏れで、遅刻や訪問忘れが起きることがあります。待っていた利用者さんの信頼を大きく損なう原因になります。余裕を持ったスケジュール管理と、訪問予定のダブルチェックが有効です。ヒューマンエラーは誰にでも起こりうるため、仕組みで防ぐ意識を持ちましょう。

③ 転倒・怪我をさせてしまう

歩行介助中の転倒や、処置の失敗による出血など、利用者さんに怪我をさせてしまうトラブルもあります。対策の基本は、利用者さんの心身機能をしっかり評価し、その人を理解したうえでケアを行うことです。担当する利用者さんが増えたときや、久しぶりに訪問する場合は特に注意が必要です。

④ 暴力・ハラスメント

利用者さんや家族から暴言・暴力・セクハラを受けることがあります。事実を伝えると態度が急変し「名誉毀損で訴える」などと言われるケースもあるため、慎重な対応が必要です。被害を確認したら、記録や証拠を残しておくことが最優先。状況に応じて行政や弁護士への相談も視野に入れ、一人で抱え込まないことが重要です。

注意ハラスメント被害は「我慢するもの」ではありません。客観的な記録(日時・内容・状況)を残し、管理者へ報告することが、自分自身と同僚を守ることにつながります。

⑤ 情報伝達ミス

ケアマネジャーからの伝達を他職員に伝え忘れる、利用者さんの休みの連絡がスケジュール担当に届かない、複数名訪問で聞いた情報が共有されない――こうした情報伝達ミスもトラブルの火種です。「忘れない仕組み」と「正確に伝える力」の両方を、日頃から意識して鍛えましょう。

⑥ 提供内容の不一致・手順ミス

利用者さんの希望と提供サービスがかみ合っていない、細かな手順を間違える、必要なケアを忘れる、対応が雑になる――といった提供内容に関するトラブルもあります。事業所内でサービス内容を統一し、訪問前に手順を再確認することで、多くは防げます。

⑦ 交通事故

移動中の交通事故も、訪問看護では避けられないリスクです。これは利用者さんではなく、事故の相手とのトラブルになることがほとんどです。事故を起こした場合は、警察・保険会社を間に入れ、必要に応じて弁護士などプロに対応を任せましょう。社用車か自家用車かで責任の所在が変わることもあるため、別記事で詳しく解説しています。

⑧ 通信障害

電話やタブレットの不通、充電切れにより、事業所内の連携やオンコール対応に支障が出ることがあります。電波対策として2社の回線を併用する、車に充電器を常備するといった備えが有効です。

⑨ 個人情報の流出

訪問バッグから他の利用者さんのカルテが見えてしまう、他利用者の話をうっかり口にしてしまう――こうした個人情報の漏えいも重大なトラブルです。「聞かれたから答えた」は通用しません。個人情報保護は契約上の義務と捉え、書類の管理と会話の内容に細心の注意を払いましょう。

トラブルを未然に防ぐ事前対策

ちびウルフちびウルフ

結局、いちばん大事な予防策って何なの?

リハウルフリハウルフ

「個人の注意」より「事業所の仕組み」だよ。ルール化・共有・記録が、トラブルを減らす土台になるんだ。

ポイント 最小限の動線で動く/スケジュールをダブルチェックする/利用者さんの心身機能を正しく評価する/提供内容を事業所で統一する/情報伝達のルールを決める/個人情報の取り扱いを徹底する。これらを「個人の心がけ」で終わらせず、事業所のルールとして仕組み化することが最大の予防策です。

トラブルが起きたときの対応手順

どれだけ注意してもトラブルがゼロになることはありません。起きてしまったときは、感情的にならず次の手順で冷静に対応しましょう。

  1. 関係している双方(全員)の意見・言い分を聴取する
  2. 感情を切り離し、事実のみを整理する
  3. 怒りが収まっていない人がいれば、何に怒っているのか原因を探る
  4. 原因に対応し、事業所内で再発防止策を検討する

片方の話だけで判断せず、まずは関係者全員の言い分を聞くことが大切です。そのうえで事実を整理し、怒っている人がいれば「何に対して怒っているのか」を丁寧に探ります。原因が明確になれば、トラブル自体は収束に向かうことがほとんどです。最後に、ステーション内で同じトラブルを繰り返さないための対策まで落とし込みましょう。

再発を防ぐ事業所の仕組みづくり

トラブル対応で最も重要なのは、対応して終わりにせず「再発防止」までつなげることです。ヒヤリ・ハット報告を集めて共有する、定期的に事例検討の場を設ける、マニュアルを更新する――こうした仕組みが、個人の経験を組織の財産に変えます。「誰が悪いか」ではなく「どうすれば防げるか」に焦点を当てる文化が、安心して働ける職場をつくります。

また、トラブルは利用者さんやご家族との信頼関係が崩れたときに大きくなりがちです。日頃から訪問時の説明を丁寧に行い、ケアの根拠や手順をその都度伝えておくことで、「聞いていない」「思っていたのと違う」といった行き違いを減らせます。小さな違和感のうちに共有・相談する習慣が、深刻なトラブルへの発展を防ぐ最も効果的な予防策です。万が一に備え、事業所として賠償責任保険に加入しているかどうかも、入職時や定期的に確認しておくと安心です。

注意トラブルを個人の責任として責めるだけの職場は、報告が上がりにくくなり、かえって再発リスクが高まります。報告しやすい雰囲気づくりが、結果的にトラブルを減らします。

よくある質問(FAQ)

利用者さんの物を壊してしまったらどうすればいい?
まずは正直に状況を伝え、管理者へ報告しましょう。事業所として加入している賠償責任保険で対応できる場合があります。自己判断で隠したり弁償を約束したりせず、組織として対応することが大切です。
ハラスメントを受けたとき、まず何をすべき?
日時・内容・状況を客観的に記録し、管理者へ報告してください。被害が続く場合は訪問体制の見直し(複数名訪問・担当変更など)を検討します。深刻なケースでは行政や弁護士への相談も選択肢です。セクハラの具体例と対策は別記事で詳しく解説しています。
交通事故を起こしたらどう対応する?
まず負傷者の安全確認と警察への連絡を行い、その後は保険会社を通して対応します。責任の所在(社用車か自家用車か等)で扱いが変わるため、自己判断せずプロに任せましょう。詳細は交通事故の解説記事を参考にしてください。
情報伝達ミスを減らすコツは?
口頭だけに頼らず、記録・チャット・申し送りノートなど「形に残る方法」で伝えることが基本です。誰が・いつ・何を伝えるかをルール化し、受け取った側が確認・復唱する習慣をつけると、行き違いが大きく減ります。

まとめ

まとめ
  • 訪問看護のトラブルは、物損・遅刻・転倒・暴力・情報伝達ミス・交通事故・個人情報流出など多岐にわたる。
  • 最大の予防策は「個人の注意」ではなく、ルール化・共有・記録といった事業所の仕組み。
  • 起きたときは、双方の意見を聞き、事実を整理し、原因に対応し、再発防止につなげる。
  • 「誰が悪いか」より「どう防ぐか」に焦点を当てる文化が、安心して働ける職場をつくる。

最後に、トラブル対応やクレーム対応に役立つ書籍を紹介します。怒りの感情と向き合うアンガーマネジメントや、介護現場のクレーム・トラブル対応をまとめた書籍は、現場での備えとして手元に置いておくと安心です。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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