理学療法士のセカンドキャリア7選|年代別の選び方も解説

理学療法士のセカンドキャリアを考え始めるきっかけは、たいてい「今の職場が嫌になったから」ではありません。このまま20年続けた先が見えないという、もっと静かな不安です。
この記事では、厚生労働省の需給推計の原文を確認したうえで、理学療法士が置かれている状況を整理しました。そのうえで、7つの選択肢と年代別の動き方、動く前に確かめておくべきことをまとめています。
- 理学療法士のセカンドキャリアを考える人が増えている構造的な理由
- 厚生労働省が示した需給推計の中身と、その読み方
- セカンドキャリアの3つの方向性と、混同しやすい違い
- 理学療法士のセカンドキャリア7つの選択肢と、それぞれの現実
- 20代後半・30代・40代・50代で取れる選択肢の違い
- 動く前に確かめておくべき4つのこと
- 「資格を取れば道が開ける」という発想の落とし穴
- どの方向に進むにしても土台になる学び直しの考え方
理学療法士のセカンドキャリアを考える人が増えている理由
個人の不安のように見えて、背景には数字の裏付けがあります。厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会が2019年4月に示した需給推計では、次のように書かれています。
「PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる結果となった。」(第3回理学療法士・作業療法士需給分科会 資料2)
同じ資料では、人口10万人あたりの理学療法士の就業者数についても推計が示されています。
| 年 | 人口10万対の理学療法士就業者数 |
|---|---|
| 2025年 | 163人 |
| 2030年 | 199人 |
| 2035年 | 238人 |
| 2040年 | 278人 |
2025年から2040年にかけて、人口あたりの理学療法士は1.7倍ほどに増える推計です。一方で人口そのものは減っていきます。「食べていけなくなる」と煽るつもりはありませんが、今と同じ働き方を続けたときの相対的な価値は下がると考えておくのが妥当です。
これは2019年時点の推計であり、一定の仮定を置いた試算です。その後の議論や医療政策の変化により見直されうる性質のもので、確定した未来ではありません。ただし「養成数が増え続けている」という事実そのものは動きません。
ちびウルフじゃあ早く別の道に移ったほうがいいってこと?
リハウルフ逆です。慌てて職種を捨てるのが一番もったいない。増えるのは「同じことしかできない理学療法士」で、そこから外れる方法はいくつもあります。
セカンドキャリアの3つの方向性
セカンドキャリアという言葉は、異業種への転身とほぼ同義で使われることがありますが、実際には3つに分かれます。ここを混同したまま考え始めると、選択肢が不必要に狭くなります。
- 働く場所を変える…理学療法士のまま、病院から在宅・施設・行政などへ移る。資格と経験がそのまま活きる
- 役割を変える…臨床から管理・教育・相談援助へ。人を診る仕事から、人と組織を動かす仕事へ移る
- 職種を変える・足す…別の資格を取る、あるいは資格を使わない仕事に移る。積み上げがリセットされる部分が出る
いちばん見落とされるのが2つ目です。臨床が合わないと感じている人の相当数は、理学療法士という職種が合わないのではなく、今の役割が合っていないだけだったりします。職種を捨てる前に、役割を変える選択肢を検討する価値があります。
理学療法士のセカンドキャリア7つの選択肢
現実的に選ばれている7つを挙げます。それぞれ、良い面だけでなく実際にしんどい部分も書きます。
① 訪問リハビリ・訪問看護ステーションへ移る
生活の場で関われるため、病院で感じがちな「退院後がわからない」というもやもやが解消されます。給与水準も病院より高い傾向があります。一方で単独訪問が基本のため、技術的に相談できる相手がいない、移動と天候に左右される、利用者との距離が近すぎて疲れる、といった負荷があります。
② 管理職・管理者になる
臨床から少し離れ、人員配置や収支、スタッフ育成に関わる立場です。裁量が増え、給与も上がります。ただし「臨床が得意な人」と「管理が得意な人」は別の能力で、任されてから苦しむ人も多い。数字の管理と対人調整が業務の中心になることを理解しておく必要があります。
③ ケアマネジャー(介護支援専門員)になる
理学療法士の実務経験5年以上で受験資格が得られます。リハビリの視点を持ったケアマネジャーは重宝され、身体状況の予後予測ができることは大きな強みです。一方で書類量が多く、利用者・家族・事業所の間に立つ調整役としての精神的な負荷は相当なものです。
④ 地域包括支援センター・行政へ移る
個人ではなく地域単位で予防に関われます。介護予防事業や地域ケア会議など、上流に働きかける仕事です。公的な立場になるため雇用は安定していますが、募集の枠が少なく、タイミングに左右されます。
⑤ 教育・養成校の教員になる
臨床経験を次の世代に渡す仕事です。やりがいは大きい一方、多くの養成校で大学院修了や研究業績が求められるため、思い立ってすぐ移れる道ではありません。準備に数年単位を見込む必要があります。
⑥ 産業分野・スポーツ・自費リハビリへ広げる
保険制度の外に出る選択肢です。企業の健康経営支援、スポーツ現場、自費でのリハビリなど。制度の制約を受けにくい反面、集客と価格設定を自分でやる必要があり、臨床能力とは別のスキルが要ります。
⑦ 独立・開業する
訪問看護ステーションの立ち上げ、自費リハ施設の開業など。収入の上限がなくなる一方、制度理解・資金繰り・採用のすべてが自分に乗ります。理学療法士としての腕とは無関係の部分で失敗しうる、という覚悟が必要です。
| 選択肢 | 準備期間の目安 | 積み上げの活き方 |
|---|---|---|
| 訪問リハへ移る | すぐ可能 | そのまま活きる |
| 管理職になる | 職場次第 | 別の能力が要る |
| ケアマネジャー | 実務5年+試験 | 予後予測が強みになる |
| 地域包括・行政 | 募集待ち | そのまま活きる |
| 教育・養成校 | 数年単位 | 研究業績が別途要る |
| 産業・スポーツ・自費 | 1〜2年 | 集客力が別途要る |
| 独立・開業 | 2年以上 | 経営能力が別途要る |
年代別にみた動き方の違い
取れる選択肢は年代で変わります。ただし「もう遅い」という年代はありません。
- 20代後半…失敗しても戻れる時期。職場を変える経験値を積むならここ。ただし1つの分野で3年は続けないと、何も身につかないまま転々とすることになります
- 30代…臨床の型ができ、選択肢が最も広い時期。ケアマネジャーの受験資格も満たせます。ライフイベントと重なるため、収入を下げられる幅で判断が変わります
- 40代…管理職か専門特化かが分かれる時期。未経験分野への移動は給与を下げてでも入る覚悟が要ります。逆に、これまでの経験を「教える側」に転換する道は開けてきます
- 50代…積み上げを活かす方向に絞るのが現実的。ゼロからの分野転換より、今持っているものを別の形で出す発想が合います
担当したケースでも、40代で訪問リハに移ってきた方は、病院で培った急性期の判断力がそのまま在宅のリスク管理に活きていました。年数は不利ではなく、持ち込めるものがあるかどうかです。
動く前に確かめておく4つのこと
勢いで動いて後悔する人には共通点があります。次の4つを言語化してから決めてください。
- 何が嫌なのかを分解する…仕事内容なのか、人間関係なのか、給与なのか、将来性なのか。原因が人間関係なら、職種を変えても解決しません
- 収入をどこまで下げられるか…未経験分野に入るなら一時的に下がります。何年、いくらまで許容できるかを具体的な数字で出しておきます
- 戻れる道を残しているか…臨床から完全に離れると、数年後に戻るのは難しくなります。副業や非常勤で片足を残す方法も検討します
- 家族と合意しているか…収入も働く時間も変わります。決めてから伝えると、たいてい揉めます
不安なときほど資格に手が伸びますが、資格は「その仕事に就く権利」であって「その仕事で通用する力」ではありません。取ってから使い道を探すのではなく、先に進みたい方向を決めてから、必要な資格を取る順番にしてください。
ちびウルフでも何がやりたいかわからないから、とりあえず資格取りたくなるんだよね。
リハウルフわかります。ただ、その状態で取った資格はたいてい使いません。まず今の職場で、やったことのない役割を1つ引き受けてみるほうが、向き不向きが早くわかります。
どの方向に進むにしても土台になる学び直し
7つのどれを選んでも、共通して必要になるものがあります。自分の専門領域の外を知っていることです。
訪問に移れば呼吸・循環・栄養・看取りまで扱うことになります。ケアマネジャーになれば疾患全般と制度の知識が要ります。管理職なら他職種の業務を理解していないと調整ができません。臨床で担当してきた領域だけを深めても、横に広がる方向の準備にはなりません。
この「横に広げる」学習は、書籍だと非効率になりがちです。まだ興味がはっきりしない分野の専門書を買うのは、金銭的にも心理的にもハードルが高いからです。定額で広く触れられる手段を持っておくと、外した分野があっても損をせずに済みます。
進む方向が定まらないうちは、
「外しても損をしない学び方」を選ぶ。
専門書は方向が決まってから買えば十分です。方向を探している段階では、広く浅く触れて「自分が食いつく分野」を見つけるほうが先になります。株式会社geneが運営する『リハノメ』は、PT・OT・ST向けにテーマ別で動画が整理された定額制のオンラインセミナーです。
- 定額で見放題。合わない分野に当たっても金銭的な損が出ない
- 職種別・テーマ別に整理されているので、専門外でも入口を見つけやすい
- 毎月20本以上が新規配信され、興味が移っても次の材料がある
初回限定980円プランあり/通常は月額2,181円〜3,080円(税込)。最新の料金は公式サイトでご確認ください
実際に使った感想と料金プランの比較は「リハノメの評判・口コミは?」にまとめています
職種を捨てる前に、
「場所を変える」だけで解決しないか確かめる。
この記事で挙げた3つの方向のうち、最も現実的で、最も積み上げが無駄にならないのが「働く場所を変える」です。資格も経験もそのまま活きます。まず自分の経験でどんな選択肢があるのかを見てから、職種を変えるかどうかを考えても遅くありません。
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に特化した転職支援
- 病院・クリニック・施設・在宅・訪問まで幅広く求人を扱う
- 登録・相談は無料。情報収集の段階でも利用できる
登録・相談は無料です。求人内容や対応地域は変わることがあるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください
よくある質問
理学療法士は本当に飽和するのですか?
厚生労働省の2019年の推計では、2040年頃に供給数が需要数の約1.5倍になるとされています。ただし一定の仮定を置いた試算であり、その後の政策変化により見直されうるものです。確定した未来ではありません。
セカンドキャリアは何歳までに考えるべきですか?
期限はありません。ただし未経験分野への移動は年齢が上がるほど収入を下げる幅が大きくなるため、分野を大きく変えるつもりなら30代のうちに検討を始めるほうが選択肢は広く残ります。
ケアマネジャーの受験資格はいつ得られますか?
理学療法士としての実務経験が5年以上必要です。受験の詳細な要件や実施時期は都道府県によって運用が異なるため、お住まいの都道府県の案内をご確認ください。
臨床を離れたら戻れなくなりますか?
不可能ではありませんが、離れる期間が長いほど難しくなります。完全に離れることに不安があるなら、非常勤や週1日の勤務で片足を残す方法を検討してください。
管理職になるのと専門を深めるの、どちらがよいですか?
向き不向きの問題で、優劣はありません。人と組織を動かすことに手応えを感じるなら管理職、目の前の一人を良くすることに集中したいなら専門特化が合います。
資格を取れば転職に有利になりますか?
進む方向が決まっている場合は有利に働きます。方向が決まっていないまま取った資格は使わずに終わることが多いので、順番を逆にしないでください。
独立・開業は現実的ですか?
可能ですが、臨床能力とは別に制度理解・資金繰り・採用の能力が要ります。準備期間は2年以上を見込んでください。まず管理職や立ち上げメンバーを経験してからのほうが失敗が減ります。
今の職場が嫌なだけかもしれません。どう見分けますか?
何が嫌なのかを分解してください。人間関係が原因なら、職種を変えても解決しません。同じ職種で職場だけ変えたときに解消するかどうかを基準に考えると整理できます。
- 厚生労働省の2019年の推計では、2040年頃に供給数が需要数の約1.5倍になるとされた
- 人口10万対の理学療法士就業者数は2025年163人から2040年278人へ増える推計
- 一定の仮定を置いた試算であり、確定した未来ではない
- ただし「今と同じ働き方の相対的な価値は下がる」と考えておくのが妥当
- セカンドキャリアは「場所を変える」「役割を変える」「職種を変える」の3方向に分かれる
- 臨床が合わないと感じる人の多くは、職種ではなく今の役割が合っていないだけ
- 選択肢は訪問リハ・管理職・ケアマネ・行政・教育・産業/自費・独立の7つ
- ケアマネジャーは実務経験5年以上で受験資格が得られる
- 教育職は大学院修了や研究業績が求められることが多く、数年単位の準備が要る
- 「もう遅い」年代はない。年数より、持ち込めるものがあるかどうかで決まる
- 動く前に、嫌なことの分解・収入の許容幅・戻れる道・家族の合意を確認する
- 資格は「就く権利」であって「通用する力」ではない。方向を決めてから取る
- 理学療法士・作業療法士の需給推計を踏まえた今後の方向性について(第3回理学療法士・作業療法士需給分科会 資料2)|厚生労働省
- 理学療法士・作業療法士の需給推計について(第3回理学療法士・作業療法士需給分科会 資料1)|厚生労働省
- 理学療法士・作業療法士需給分科会|厚生労働省
※本記事の需給推計に関する記述は、厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会 第3回理学療法士・作業療法士需給分科会(平成31年4月5日)の資料にもとづいて整理したものです。当該推計は一定の仮定を置いた試算であり、その後の議論や医療政策の変化により見直される可能性があります。ケアマネジャーの受験資格など資格制度の運用は都道府県によって異なるため、実際の手続きにあたっては指定権者の案内をご確認ください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理しています。キャリアの選択肢や現場の状況に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




