高齢者の熱中症|室内で起きる理由と家族の備え

熱中症で運ばれる人のうち、半数以上が高齢者です。そして最も多い発生場所は、屋外ではなく住居です。
畑や炎天下ではなく、自分の家の中で起きています。この記事では、消防庁の最新の確定値と、法律に位置づけられたアラートの基準を確認して、家族が何を見て何をすればよいかを整理しました。
この記事でわかること
- 熱中症の搬送に占める高齢者の割合(最新データ)
- 発生場所の内訳
- 高齢者が熱中症になりやすい理由
- 症状の段階と、救急車を呼ぶ判断
- その場でできる応急処置
- 熱中症警戒アラートと特別警戒アラートの違い
- クーリングシェルターという逃げ場
- 薬を飲んでいる人の注意点
高齢者の熱中症は室内で起きている
消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」の確定値です。
| 区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 高齢者(満65歳以上) | 57,433人 | 57.1% |
| 成人(満18歳以上満65歳未満) | 34,096人 | 33.9% |
| 少年(満7歳以上満18歳未満) | 8,447人 | 8.4% |
| 乳幼児 | 531人 | 0.5% |
| 合計 | 100,510人 | 100% |
令和7年は5月から9月の搬送人員が10万人を超え、調査を開始した平成20年以降で最多でした。
発生場所の内訳はこうなります。
消防庁の原文(発生場所別)
「住居が最も多く38,292人(38.1%)、次いで道路19,773人(19.7%)、公衆(屋外)12,175人(12.1%)、仕事場① 10,559人(10.5%)の順となっています」
そして重症度です。軽症が63.1%を占める一方、中等症(入院診療)が34,399人(34.2%)、重症(長期入院)が2,217人(2.2%)、死亡が117人。入院が必要な状態が3分の1以上あります。
搬送人員は令和3年の47,877人から令和7年の100,510人へと増えています。「昔は大丈夫だった」は根拠になりません。
高齢者が熱中症になりやすい理由
体の変化と、生活習慣の両方が関係します。
- 暑さを感じにくい…室温が上がっていても自覚しにくい
- 汗をかきにくい…体温を下げる力が落ちている
- 体内の水分が少ない…余力が小さく、失うと一気に傾く
- のどの渇きを感じにくい…飲む行動につながらない
- エアコンを使わない…もったいない、体に悪い、という考えが根強い
- 服薬の影響…利尿薬などで脱水になりやすい
現場で多いのは5つめです。「扇風機で十分」「冷房は体に悪い」と言って、真夏に締め切った部屋にいる。訪問すると室温が30度を超えていることがあります。
説得より、室温計を見える場所に置くほうが効きます。数字が見えると、本人の判断が変わることがあります。
脱水そのものについては高齢者の脱水症状|気づき方と薬の落とし穴をご覧ください。
症状の段階と救急車を呼ぶ判断
熱中症は段階で整理されています。
| 段階 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| Ⅰ度(軽症) | めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量の汗 | 涼しい場所へ。水分・塩分。その場で様子を見る |
| Ⅱ度(中等症) | 頭痛、吐き気、嘔吐、だるさ、力が入らない | 医療機関を受診する |
| Ⅲ度(重症) | 意識がおかしい、けいれん、まっすぐ歩けない、体が熱い | すぐに救急車 |
迷ったときの基準
自分で水分を飲めない、飲んでも吐く、呼びかけへの反応がおかしい。この3つのどれかがあれば、様子を見ずに救急車を呼んでください。無理に水を飲ませると誤嚥します。
高齢の方では、「なんとなくぼんやりしている」が最初のサインのことがあります。暑い時期に急に様子が変わったら、熱中症を疑ってください。せん妄と見分けがつきにくいため、まず体を冷やしながら受診の判断をします。
その場でできる応急処置
救急車を待つ間も、やることがあります。
- 涼しい場所へ移す(冷房の効いた室内、日陰)
- 衣服をゆるめる、脱がせる
- 首、わきの下、太ももの付け根を冷やす(太い血管が通っている)
- 体に水をかけて、うちわや扇風機で風を送る
- 意識がはっきりしていれば、水分と塩分をとらせる
3つめの部位は覚えておいてください。おでこを冷やしても体温は下がりません。首・わき・脚の付け根です。
飲ませるものは、水だけより経口補水液や食塩水(0.1〜0.2%程度)が適しています。大量に汗をかいた後に水だけを飲むと、塩分が薄まって別の問題が起こります。
ちびウルフ親がエアコンを絶対につけないんだけど、どうすればいい?
リハウルフ「暑いでしょう」ではなく「室温が31度です」と数字で伝えてください。あとは設定温度を触らせないこと。リモコンを預かる、タイマーを切らない設定にしておくのも現実的です。
熱中症警戒アラートと特別警戒アラート
2種類あります。混同されやすいので整理します。これらは気候変動適応法(平成30年法律第50号)の改正により法律に位置づけられたものです。
| 熱中症警戒アラート (熱中症警戒情報) | 熱中症特別警戒アラート (熱中症特別警戒情報) | |
|---|---|---|
| 発表の単位 | 府県予報区等 | 都道府県 |
| 基準 | いずれかの暑さ指数情報提供地点で、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33(予測値)に達する場合 | 全ての暑さ指数情報提供地点で、翌日の日最高暑さ指数(WBGT)が35(予測値)に達する場合等 |
| 意味合い | 熱中症の危険性が高い | 過去に例のない危険な暑さ。重大な健康被害のおそれ |
特別警戒アラートは「都道府県内の全ての地点で35に達する」という条件です。めったに出ません。出たときは異常事態だと考えてください。
クーリングシェルターという逃げ場
特別警戒アラートには、実際の行動につながる仕組みがついています。
環境省の説明(指定暑熱避難施設)
「事前に市町村長が市町村の区域内に存する施設を指定暑熱避難施設として指定している場合には、熱中症特別警戒情報が発表される際、当該指定暑熱避難施設が開放されます」
指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)は、冷房設備を有するなどの要件を満たす施設を市町村長が指定したもので、公民館、図書館、ショッピングセンターなどが該当します。
エアコンがない、壊れている、電気代が心配で使えない。そうした家庭にとって、これは具体的な避難先になります。お住まいの市町村にどこが指定されているか、暑くなる前に確認しておいてください。
なお環境省は、自宅にエアコンがあるなど涼しい環境が確保できる場合、施設への移動は必須ではないとしています。
薬を飲んでいる人は注意が要る
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、服薬中の注意として次のように書いています。
ガイドの原文(利尿薬)
「利尿薬:脱水になりやすいので、熱中症や起立性低血圧に注意し、水分補給も心がけましょう」
あわせて、厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」は、糖尿病のSGLT2阻害薬について「脱水や過度の体重減少、ケトアシドーシスなど様々な副作用を起こす危険性がある」とし、利尿薬との併用は脱水リスクの観点から避けるべきとしています。
これらを飲んでいる方は、暑い時期の水分について主治医に目安を聞いておいてください。心臓や腎臓の病気で水分制限がある方もいるため、一律に「たくさん飲む」とは言えません。
家族ができる予防
離れて暮らしている場合も含めて、現実的にできることです。
| すること | 具体的に |
|---|---|
| 室温を見える化する | 温湿度計を居間と寝室に置く。本人の目に入る位置に |
| エアコンを動かす状態にする | シーズン前に試運転。フィルター掃除。リモコンの電池 |
| 設定を触らせない | つけっぱなしの設定にしておく。タイマーで切れないように |
| 水分のタイミングを決める | 起床時、食事、入浴前後、就寝前。手の届く場所に置く |
| 暑い日に連絡する | アラートが出た日は電話する。反応の様子も確認できる |
| 逃げ場を決めておく | クーリングシェルターの場所を調べておく |
最後から2つめは、見守りとしても機能します。受け答えがいつもと違えば、それ自体がサインです。
ケアマネジャーや訪問サービスが入っている場合は、暑い時期の訪問時に室温と水分を確認してもらうよう伝えておくと確実です。
よくある質問
熱中症で運ばれる人のうち高齢者はどのくらいですか?
消防庁の令和7年(5〜9月)確定値では、高齢者が57,433人で全体の57.1%です。搬送人員の合計は100,510人で、調査開始以降で最多でした。
どこで起きていることが多いですか?
住居が最も多く38,292人(38.1%)です。次いで道路(19.7%)、公衆(屋外)(12.1%)、仕事場(10.5%)の順です。
軽症がほとんどではないのですか?
軽症は63.1%ですが、中等症(入院診療)が34.2%、重症(長期入院)が2.2%、死亡が117人います。入院が必要な状態が3分の1以上を占めます。
救急車を呼ぶ基準はありますか?
意識がおかしい、けいれん、まっすぐ歩けない場合はすぐに呼んでください。自分で水分を飲めない、飲んでも吐く場合も同様です。
どこを冷やせばいいですか?
首、わきの下、太ももの付け根です。太い血管が通っています。おでこを冷やしても体温は下がりません。
水だけ飲ませればいいですか?
大量に汗をかいた後は、経口補水液や0.1〜0.2%程度の食塩水が適しています。ただし意識がはっきりしない場合は飲ませないでください。誤嚥します。
熱中症警戒アラートはどんなときに出ますか?
府県予報区等内のいずれかの暑さ指数情報提供地点で、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33に達すると予測される場合に発表されます。
特別警戒アラートとの違いは何ですか?
特別警戒アラートは、都道府県内の全ての暑さ指数情報提供地点で翌日の日最高暑さ指数が35に達する場合等に発表されます。めったに出ない、危険度の高い情報です。
クーリングシェルターとは何ですか?
市町村長が指定した冷房設備のある施設(公民館、図書館、ショッピングセンター等)で、特別警戒情報の発表時に開放されます。場所は事前に市町村で確認できます。
薬を飲んでいると熱中症になりやすいですか?
利尿薬は脱水になりやすく、熱中症や起立性低血圧に注意が必要とされています。SGLT2阻害薬も脱水の危険性が指摘されています。水分の目安は主治医に確認してください。
まとめ
- 令和7年の熱中症搬送は100,510人で調査開始以降最多
- 高齢者が57,433人・57.1%を占める
- 発生場所は住居が38.1%で最多
- 中等症・重症・死亡を合わせると3分の1以上
- 搬送人員は令和3年の47,877人から増え続けている
- 高齢者は暑さと渇きを感じにくく、汗をかきにくい
- エアコンを使わない習慣が最大のリスク
- 説得より室温計を見える位置に置くほうが効く
- 意識がおかしい、飲めない、吐く場合はすぐ救急車
- 冷やすのは首・わきの下・太ももの付け根
- 汗をかいた後は経口補水液や薄い食塩水
- 警戒アラートは暑さ指数33、特別警戒アラートは全地点で35
- 特別警戒情報の発表時は指定暑熱避難施設が開放される
- 利尿薬・SGLT2阻害薬を飲んでいる人は特に注意
- 水分量は制限がある人もいるため主治医に確認する
参考にした情報
- 消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」
- 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症特別警戒情報とは」
- 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症警戒アラート」
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(2018年5月)
※搬送人員の数値は消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」の確定値です。アラートの発表基準・指定暑熱避難施設に関する記述は環境省 熱中症予防情報サイトにもとづいて整理したもので、運用の詳細は年度により変わる可能性があります。指定暑熱避難施設の有無・場所は市町村によって異なります。症状の段階分けと応急処置は一般的な整理であり、診断は医師が行います。水分摂取量の目安は、心疾患・腎疾患などにより制限がある場合があります。必ず主治医の指示に従ってください。本記事は特定の薬剤の中止・減量を勧めるものではありません。意識障害がある場合や自力で水分を摂取できない場合は、飲ませずにただちに救急要請してください。記述は2026年9月時点の内容として整理しています。





