訪問リハビリの高齢者虐待防止措置未実施減算とは?

訪問リハビリの高齢者虐待防止措置未実施減算は、所定単位数の100分の1、つまり1%の減算です。令和6年度改定から適用されました。虐待が起きたことへの罰則ではなく、防止のための体制がないことへの減算です。そして研修の回数が「年1回以上」。特養や老健の「年2回以上」とは違います。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)と老企第36号の原文を確認して、減算率・4つの要件・施設系との違い・減算のタイミングを整理しました。
この記事でわかること
- 訪問リハビリの高齢者虐待防止措置未実施減算は1%だということ
- 虐待が発生したこと自体は減算の理由ではないこと
- 減算の対象になる4つの不備
- 研修が「年1回以上」で、施設系の「年2回以上」と違うこと
- 担当者を置くことが要件に含まれること
- 根拠になる指定居宅サービス等基準の条文
- 改善計画の提出と3か月後の報告が必要なこと
- 訪問リハ特有の注意点
訪問リハビリの高齢者虐待防止措置未実施減算とは?
高齢者虐待防止措置未実施減算は、虐待の防止のために求められている措置を講じていない場合に、基本報酬を1%減額する仕組みです。令和6年度改定から適用が始まりました。
老企第36号 (10)は、この減算の性格を明確にしています。
高齢者虐待防止措置未実施減算については、事業所において高齢者虐待が発生した場合ではなく、指定居宅サービス基準第37条の2(中略)に規定する措置を講じていない場合に、利用者全員について所定単位数から減算することとなる。
虐待が起きたかどうかではなく、防止のための体制があるかどうかを見ています。
ちびウルフ病院に併設された訪問リハなので、病院の研修に出れば足りますか。
リハウルフ内容が要件を満たしていれば考え方としてはあり得ますが、事業所として実施した記録が要ります。訪問リハは病院・診療所・老健・介護医療院に併設される形が多いので、母体の研修と事業所の研修の区別が曖昧になりやすいところです。
高齢者虐待防止措置未実施減算の減算率
告示第19号の訪問リハビリテーション費の注2に定められています。
2 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
| 減算 | 減算率 | 対象 |
|---|---|---|
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1% | 利用者全員 |
訪問リハビリ費の基本報酬は1回308単位ですから、1%は約3単位です。金額としては小さいものの、減算を受けたという事実そのものの重さは別にあります。
高齢者虐待防止措置未実施減算の対象になる4つの不備
老企第36号 (10)は、具体的に次の4つを挙げています。
- 高齢者虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催していない
- 高齢者虐待防止のための指針を整備していない
- 高齢者虐待防止のための年1回以上の研修を実施していない
- 高齢者虐待防止措置を適正に実施するための担当者を置いていない
研修は「年1回以上」。施設系とは回数が違う
特養・老健・介護医療院などの施設系では、この研修が「年2回以上」とされています。訪問リハをはじめとする居宅サービスは「年1回以上」です。同じ名前の減算でも回数が違うため、施設系の記事や資料をそのまま持ち込まないでください。
根拠となる条文
指定居宅サービス等基準 第37条の2(訪問リハビリテーションについては第39条の3において準用)です。
委員会の頻度
委員会は「定期的に開催していない」とされ、回数の明示がありません。研修の回数だけが明示されている構造です。
高齢者虐待防止措置未実施減算のタイミング
老企第36号 (10)は、手続きの流れを定めています。
- 基準を満たさない事実が生じる
- 速やかに改善計画を都道府県知事に提出する
- 事実が生じた月の翌月から、利用者全員について減算が始まる
- 事実が生じた月から3か月後に、改善計画に基づく改善状況を都道府県知事に報告する
- 改善が認められた月まで減算が続く
| 時点 | 内容 |
|---|---|
| 事実が生じた月 | 減算なし。速やかに改善計画を提出 |
| 翌月 | 減算開始 |
| 事実が生じた月から3か月後 | 改善状況を報告 |
| 改善が認められた月 | この月まで減算 |
改善計画の提出が必要な数少ない減算
訪問リハビリの減算のなかで、改善計画の提出と3か月後の報告が求められるのはこの減算だけです。業務継続計画未策定減算にはその定めがありません。
訪問リハビリでの実務上の注意点
併設元の体制と切り分ける
訪問リハビリ事業所は、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院に併設される形でしか開設できません。母体の医療機関や施設が虐待防止の体制を持っていても、訪問リハ事業所として要件を満たしているかは別に確認が必要です。担当者の指名、指針、研修記録。事業所名で示せる形にしておいてください。
訪問という場面の特性
訪問リハは、自宅に一人で入る仕事です。職員同士が互いの関わり方を見る機会がありません。施設のように「隣で見ていた職員が気づく」構造がないぶん、研修と振り返りの場の意味は大きくなります。
リハビリの場面に引きつけて言えば、痛みを訴える人に「もう少し頑張りましょう」と続ける、拒否のある人に無理に立位を取らせる。訓練という名目があるぶん、線引きが曖昧になりやすいのが訪問リハの難しさです。研修の題材として扱う価値があります。
養護者による虐待への気づき
訪問リハは自宅に入るため、家族による虐待の兆候に最初に気づく立場になることがあります。減算の要件そのものではありませんが、虐待防止の研修では、事業所内の防止だけでなく、通報義務を含めた対応の整理も扱っておくと実務に役立ちます。
指針は他の指針と分けて整備する
身体的拘束等の適正化のための指針と、虐待の防止のための指針は別のものです。1つの文書にまとめる場合でも、それぞれの内容が明確に区分されていることが必要です。
高齢者虐待防止措置未実施減算のQ&A
虐待が起きたら減算されますか?
されません。通知は「事業所において高齢者虐待が発生した場合ではなく」と明記しています。減算の理由は防止のための措置を講じていないことです。
研修は年に何回必要ですか?
年1回以上です。施設系サービスの「年2回以上」とは異なります。
委員会の開催頻度は決まっていますか?
「定期的に開催していない」とされるのみで、回数の明示はありません。
担当者は誰が務めますか?
通知は職種を特定していません。高齢者虐待防止措置を適正に実施するための担当者として、文書で特定できるようにしておいてください。
併設元の病院の研修に参加すれば足りますか?
内容が要件を満たしているかに加えて、事業所として実施した記録が必要です。取扱いは指定権者に確認してください。
減算はいつから始まりますか?
基準を満たさない事実が生じた月の翌月からです。
改善計画の提出は必要ですか?
必要です。事実が生じたら速やかに都道府県知事に提出し、3か月後に改善状況を報告します。
減算はいつまで続きますか?
改善が認められた月までです。
減算の対象は誰ですか?
利用者全員です。
まとめ
- 訪問リハビリの高齢者虐待防止措置未実施減算は所定単位数の1%
- 令和6年度改定から適用された
- 虐待が発生したこと自体は減算の理由ではない
- 減算の理由は虐待の防止のための措置を講じていないこと
- 根拠は指定居宅サービス等基準 第37条の2(第39条の3で準用)
- 対象になる不備は委員会・指針・研修・担当者の4つ
- 研修は年1回以上(施設系の年2回以上とは違う)
- 委員会の頻度は「定期的に」とされ、明示がない
- 担当者を置くことが要件に含まれる
- 事実が生じたら速やかに改善計画を都道府県知事に提出する
- 減算が始まるのは事実が生じた月の翌月から
- 3か月後に改善状況を報告し、改善が認められた月まで減算が続く
- 訪問リハビリの減算のうち、改善計画の提出が求められるのはこの減算だけ
- 併設元の医療機関の体制とは切り分けて、事業所として記録を残す
- 減算の対象は利用者全員
参考にした情報
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問リハビリテーション費 注2
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第37条の2・第39条の3
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)
※本記事の減算率・要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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