ショートステイ(短期入所生活介護)の介護職員等処遇改善加算は、(Ⅰ)イ16.3%・(Ⅰ)ロ17.6%・(Ⅱ)イ15.9%・(Ⅱ)ロ17.2%・(Ⅲ)13.6%・(Ⅳ)11.3%です。単位数ではなく、基本報酬と他の加算の合計に乗じる率で計算します。

ショートステイに固有の要素が1つあります。(Ⅰ)に上がるルートが2つ用意されていることです。自事業所でサービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)を届け出るか、本体の特別養護老人ホーム等が処遇改善加算(Ⅰ)を届け出ているか。併設型の事業所は、後者のルートで(Ⅰ)に届く可能性があります。

この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)短期入所生活介護費のリと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第39号の原文を確認して整理しました。

この記事でわかること
  • 6区分の加算率と、区分を分けている要件
  • 加算の対象となる単位数の範囲(イからチまで)
  • (Ⅰ)に上がる2つのルート
  • 本体施設の届出で代替できるショートステイ固有の規定
  • イとロを分ける3つの選択肢
  • (Ⅰ)イに求められる年収440万円以上の職員1人
  • 賃金改善額の2分の1以上を基本給等に充てる要件
  • 他サービスと加算率が違うこと
ちびウルフちびウルフ

併設型だと、本体の特養が届け出ていればいいんですか? ショートステイ側は何もしなくていいと?

リハウルフリハウルフ

何もしなくていいわけではありません。代替できるのは(10)の要件だけで、(1)〜(9)は自事業所で満たす必要があります。ただ(10)はサービス提供体制強化加算という別の加算の届出が条件なので、そこを本体で肩代わりできるのは大きい。併設型の実務では効きます。

ショートステイの介護職員等処遇改善加算とは?

短期入所生活介護の介護職員等処遇改善加算は、介護職員その他の職員の賃金改善に取り組む事業所を評価する加算です。告示19号 短期入所生活介護費のリに規定されています。

介護分野の賃金水準は、他産業と比べて低い状態が続いてきました。事業所が独自に賃金を上げようとしても、報酬が公定価格である以上、原資には限りがあります。そこで報酬に上乗せする形で賃金改善の財源を確保し、その使途を事業所に義務づけるのがこの加算の仕組みです。

令和6年度介護報酬改定で、従来の3つの加算(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算)が1本に統合されました。

他の加算と決定的に違うのは、受け取った額に相当する賃金改善を実施する義務が課される点です。事業所の収益として残せる加算ではありません。

介護職員等処遇改善加算の加算率

リ 介護職員等処遇改善加算
注 (略)届出を行った指定短期入所生活介護事業所が、利用者に対し、指定短期入所生活介護を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、次に掲げる単位数を所定単位数に加算する。(略)
(1) (Ⅰ)イ イからチまでにより算定した単位数の1000分の163/(2) (Ⅰ)ロ 1000分の176/(3) (Ⅱ)イ 1000分の159/(4) (Ⅱ)ロ 1000分の172/(5) (Ⅲ) 1000分の136/(6) (Ⅳ) 1000分の113

区分加算率要介護3・併設型(745単位)30日利用の目安
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)ロ17.6%約3,934単位
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)ロ17.2%約3,844単位
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ16.3%約3,643単位
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)イ15.9%約3,554単位
介護職員等処遇改善加算(Ⅲ)13.6%約3,040単位
介護職員等処遇改善加算(Ⅳ)11.3%約2,526単位

※基本報酬のみに乗じた概算です。実際は他の加算も含めた合計に乗じます。

乗じる対象は「イからチまで」

条文は「イからチまでにより算定した単位数の1000分の◯」としています。イは短期入所生活介護費、ロはユニット型短期入所生活介護費、ハ以降はハ(口腔連携強化加算)からチ(サービス提供体制強化加算)までのすべての加算・減算です。

基本報酬だけでなく、その月に算定した加算をすべて含めた合計に率を乗じます。

他サービスとの比較

サービス(Ⅰ)イ(Ⅰ)ロ(Ⅳ)
ショートステイ16.3%17.6%11.3%
看多機16.8%17.7%12.5%
小多機18.6%

ショートステイの最大率は17.6%です。イとロの差が1.3ポイントあり、看多機の0.9ポイントより大きい。ロに上がる価値が相対的に高い設計になっています。

介護職員等処遇改善加算の算定要件

告示95号 第39号が定める要件です。

(Ⅰ)イの10要件

要件内容
(1) 賃金改善の計画賃金改善に要する費用の見込額が加算の算定見込額以上となる計画を策定し、措置を講じていること
(一) 仮に(Ⅳ)を算定した場合の見込額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当に充てること
(二) 経験・技能のある介護職員のうち1人は、賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上であること(算定見込額が少額である等の理由で困難な場合を除く)
(2) 計画書の作成・周知・届出介護職員等処遇改善計画書を作成し、全ての職員に周知し、都道府県知事等に届け出ていること
(3) 賃金改善の実施加算の算定額に相当する賃金改善を実施すること
(4) 実績報告事業年度ごとに処遇改善に関する実績を報告すること
(5) 労働法令の遵守前12月間において労働基準法・最低賃金法等に違反し罰金以上の刑に処せられていないこと
(6) 労働保険料労働保険料の納付が適正に行われていること
(7) キャリアパス職責・職務内容等の要件の設定と書面での周知、資質向上の支援計画と研修の実施、経験・資格等に応じた昇給の仕組みとその書面での周知(計6項目)
(8) 処遇改善の内容の周知賃金改善以外の処遇改善の内容と費用の見込額を全ての職員に周知していること
(9) 公表(8)の内容等について、インターネットの利用その他の適切な方法により公表していること
(10) いずれかに適合後述の2つのルートのいずれか

(10)=(Ⅰ)に上がる2つのルート

ルート内容
(一)短期入所生活介護費におけるサービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)のいずれかを届け出ていること
(二)事業所が第121条第2項の適用を受ける特別養護老人ホームである場合は当該特養が、併設事業所である場合は併設本体施設(病院・診療所を除く)が、介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イまたはロを届け出ていること
ショートステイ固有のルート

(二)は、看多機や小多機の同種の規定には見られないルートです。併設型のショートステイは、本体の特別養護老人ホームが処遇改善加算(Ⅰ)を届け出ていれば、自事業所でサービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)を取れなくても(Ⅰ)に届きます。

ショートステイの実務では、これが決定的に効く場面があります。サービス提供体制強化加算は介護福祉士80%・60%という高い水準ですが、本体特養が処遇改善加算(Ⅰ)を取っていれば、その壁を迂回できます。

区分を分けているもの

区分要件
(Ⅰ)イ(1)〜(10)のすべて
(Ⅰ)ロ(1)〜(10)+3つの選択肢のいずれか
(Ⅱ)イ(1)〜(9)((10)が不要
(Ⅱ)ロ(1)〜(9)+3つの選択肢のいずれか
(Ⅲ)(1)(一)および(2)〜(8)(年収440万円要件・(9)公表・(10)が不要
(Ⅳ)(1)(一)、(2)〜(6)、(7)(一)〜(四)、(8)(昇給の仕組みも不要

ロを分ける3つの選択肢

選択肢内容
(一)生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定していること
(二)ケアプランデータ連携システムを利用していること
(三)連携推進法人に所属していること

いずれか1つで足ります。生産性向上推進体制加算(Ⅱ)は10単位ですが、これを取ることでイからロに上がり、1.3ポイントの上乗せになります。

上の区分を目指す順序
  • キャリアパス要件((7))と就業規則・賃金規程を整える
  • 賃金改善計画を立て、都道府県知事等に届け出る
  • 処遇改善の内容を公表する((9))
  • サービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)、または本体施設の届出で(10)を満たす
  • 生産性向上推進体制加算(Ⅱ)を算定してイからロへ上げる
  • 経験・技能のある介護職員1人の年収440万円以上を確保する

介護職員等処遇改善加算の注意点

届出先は都道府県知事等

ショートステイは居宅サービスなので、届出先は都道府県知事(指定都市・中核市にあっては市長)です。看多機や小多機などの地域密着型サービスとは異なります。複数のサービスを運営する法人では取り違えやすい点です。

賃金改善額の2分の1以上を基本給等に

(1)(一)は「仮に(Ⅳ)を算定した場合に算定することが見込まれる額の2分の1以上を基本給又は決まって毎月支払われる手当に充てる」ことを求めています。一時金だけで配分する形は認められません。全区分に共通する要件です。

年収440万円要件には例外がある

(1)(二)は経験・技能のある介護職員のうち1人について年額440万円以上を求めていますが、「介護職員等処遇改善加算の算定見込額が少額であることその他の理由により、当該賃金改善が困難である場合はこの限りでない」という但し書きがあります。

公表が要件に入っている

(9)は「インターネットの利用その他の適切な方法により公表」です。(Ⅰ)(Ⅱ)を算定するなら、処遇改善の内容を外部から見える形にする必要があります。介護サービス情報公表システムの活用が想定されます。

受け取った額は賃金改善に充てる

(3)により、加算の算定額に相当する賃金改善の実施が義務づけられています。経営悪化等で事業継続が困難な場合に賃金水準を見直すことはやむを得ないとされていますが、その内容を届け出る必要があります。

算定前に確認したいこと
  • 届出先が都道府県知事等であることを確認したか
  • キャリアパス要件を就業規則・賃金規程に落とし込んでいるか
  • 計画書を全職員に周知した記録があるか
  • 賃金改善額の2分の1以上を基本給等に充てているか
  • (Ⅰ)(Ⅱ)を目指すなら処遇改善の内容を公表しているか
  • (Ⅰ)を目指すなら、サービス提供体制強化加算か本体施設の届出のどちらで(10)を満たすか
  • ロを目指すなら3つの選択肢のいずれかを満たせるか
  • 事業年度ごとの実績報告を行っているか

よくある質問

ショートステイの処遇改善加算の加算率は?

(Ⅰ)イ16.3%、(Ⅰ)ロ17.6%、(Ⅱ)イ15.9%、(Ⅱ)ロ17.2%、(Ⅲ)13.6%、(Ⅳ)11.3%です。

何に対して率を乗じますか?

条文は「イからチまでにより算定した単位数」としています。基本報酬とその月に算定した加算を含めた合計です。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?

(Ⅰ)は要件(10)を満たす必要があります。(Ⅱ)はこの要件が不要です。

(10)の要件は何ですか?

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を届け出ていること、または本体の特別養護老人ホーム・併設本体施設が処遇改善加算(Ⅰ)イ・ロを届け出ていることのいずれかです。

本体施設の届出で代替できるのですか?

できます。(10)(二)により、併設型は本体施設が処遇改善加算(Ⅰ)を届け出ていれば要件を満たします。

これは他サービスにもあるルートですか?

看多機や小多機の同種の規定には見られません。ショートステイに固有のルートです。

イとロの違いは何ですか?

ロは、生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定、ケアプランデータ連携システムの利用、連携推進法人への所属のいずれかを満たす場合です。

いちばん取りやすい上位区分への道は?

生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位を算定してイからロに上がるルートです。1.3ポイントの上乗せになります。

届出先はどこですか?

都道府県知事(指定都市・中核市にあっては市長)です。地域密着型サービスのように市町村長ではありません。

一時金だけで配分してよいですか?

いけません。仮に(Ⅳ)を算定した場合の見込額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当に充てる必要があります。

年収440万円の職員が必要ですか?

(Ⅰ)(Ⅱ)では必要です。ただし算定見込額が少額である等の理由で困難な場合は除くという但し書きがあります。

加算分を事業所の収益にできますか?

できません。加算の算定額に相当する賃金改善の実施が義務づけられています。

まとめ
  • ショートステイの処遇改善加算は(Ⅰ)イ16.3%・(Ⅰ)ロ17.6%・(Ⅱ)イ15.9%・(Ⅱ)ロ17.2%・(Ⅲ)13.6%・(Ⅳ)11.3%
  • 単位数ではなく、イからチまでにより算定した単位数に率を乗じる
  • 基本報酬だけでなく、その月に算定した加算も対象に含まれる
  • 令和6年度改定で従来の3つの処遇改善関連加算が1本に統合された
  • イとロを分けるのは、生産性向上推進体制加算の算定・ケアプランデータ連携システムの利用・連携推進法人への所属のいずれか
  • イとロの差は1.3ポイントで、看多機の0.9ポイントより大きい
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)を分けるのは要件(10)の充足
  • (10)には2つのルートがある
  • 1つはサービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出
  • もう1つは本体の特別養護老人ホーム・併設本体施設が処遇改善加算(Ⅰ)を届け出ていること
  • この本体施設ルートは看多機・小多機にはないショートステイ固有の規定
  • 賃金改善額の2分の1以上を基本給または毎月の手当に充てる必要がある
  • (Ⅰ)(Ⅱ)は年収440万円以上の職員1人と処遇改善の内容の公表が要件
  • 届出先は都道府県知事等(地域密着型サービスの市町村長とは異なる)
  • 加算の算定額に相当する賃金改善の実施が義務づけられている
参考にした情報

※本記事の加算率・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の解釈をご確認ください。とくに年収440万円要件の例外に該当するかの判断、公表の具体的な方法、賃金改善計画の様式・提出期限、実績報告の方法、併設本体施設の範囲については告示本文に明記がなく、留意事項通知および関連する事務連絡、指定権者の取扱いによります。指定権者にご確認ください。記事中の金額は基本報酬のみに率を乗じた概算であり、実際は他の加算を含めた合計に乗じるため異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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