看多機の身体拘束廃止未実施減算・高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)には、運営基準を満たさない場合にかかる減算が3つあります。身体拘束廃止未実施減算・高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算で、いずれも所定単位数の100分の1です。
1%という数字だけを見ると軽く映ります。しかしこの3つは「やっていれば減らない」種類の減算です。算定要件を満たすために新たな人員や設備が要るわけではなく、委員会を開き、指針を作り、研修と訓練を行い、記録を残す。それだけで回避できます。減算を受けている状態は、運営基準そのものを満たしていないという意味でもあります。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費の注4・注5・注6、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第74号の2・第74号の3・第74号の4、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)の原文を確認して整理しました。
- 3つの減算がいずれも所定単位数の1%であること
- それぞれの根拠となる運営基準の条文
- 身体拘束廃止未実施減算が求める記録と適正化の措置
- 高齢者虐待防止措置未実施減算の対象となる措置
- 業務継続計画未策定減算の対象
- 3つが同時にかかる可能性があること
- 短期利用居宅介護費にも適用されること
- 金額以上に指導・監査上の意味が大きいこと
ちびウルフ1%なら、要介護3で月245単位ですよね。正直、そこまで慌てる金額ではない気がします。
リハウルフ金額の話ではありません。この減算がかかっているということは、運営基準に適合していないということです。減算で済むうちはまだよくて、その先には指導・改善勧告・指定の効力停止まで並んでいます。1%を払って済ませる性質のものではないんです。
看多機の3つの減算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の身体拘束廃止未実施減算・高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算は、運営基準で義務づけられた取り組みを行っていない場合に、所定単位数を減額する仕組みです。告示126号 複合型サービス費の注4・注5・注6に規定されています。
3つとも、利用者の尊厳と安全に直結する取り組みです。身体拘束をしないこと、虐待を防ぐこと、災害や感染症でもサービスを止めないこと。いずれも「できれば望ましい」ではなく、運営基準上の義務として定められています。
介護報酬の世界では、義務を果たさないことに対して報酬を減らすという手法がとられます。加算のように「頑張ったら増える」のではなく、「やらなければ減る」という設計です。3つが並んでいることからも、制度がこの領域を重く見ていることが読み取れます。
業務継続計画未策定減算は令和6年度介護報酬改定で本格的に適用が始まった減算です。経過措置が終了し、現在は適用されています。
3つの減算の減算率
4 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、身体拘束廃止未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
5 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
6 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、業務継続計画未策定減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
| 減算 | 根拠 | 減算率 | 根拠となる基準 |
|---|---|---|---|
| 身体拘束廃止未実施減算 | 注4 | 1% | 告示95号 第74号の2 |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 注5 | 1% | 告示95号 第74号の3 |
| 業務継続計画未策定減算 | 注6 | 1% | 告示95号 第74号の4 |
金額の影響
| 要介護度 | 基本報酬 | 1つ該当 | 3つ該当 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | △124単位 | △373単位 |
| 要介護3 | 24,481単位 | △245単位 | △734単位 |
| 要介護5 | 31,408単位 | △314単位 | △942単位 |
※端数処理により実際の請求額とは異なります。
3つは別々の規定なので、同時に該当すれば3つとも適用されます。それでも要介護5で月942単位。金額としては大きくありません。
短期利用居宅介護費にも適用される
注4・注5・注6には、他の多くの規定にある「イについては」という限定がありません。短期利用居宅介護費(ロ)にも適用されると読めます。取扱いは市町村に確認してください。
身体拘束廃止未実施減算
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠となる基準 | 指定地域密着型サービス基準第177条第6号および第7号 |
第177条第6号(記録)
六 指定看護小規模多機能型居宅介護事業者は、前号の身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。
身体的拘束等を行う場合の記録義務です。記録すべき事項は「態様」「時間」「利用者の心身の状況」「緊急やむを得ない理由」の4点。どれか1つでも欠けると基準に適合しません。
第177条第7号(適正化の措置)
七 指定看護小規模多機能型居宅介護事業者は、身体的拘束等の適正化を図るため、次に掲げる措置を講じなければならない。
適正化のために講じるべき措置として、一般に①身体的拘束等適正化検討委員会の定期的な開催と結果の周知徹底 ②適正化のための指針の整備 ③従業者への定期的な研修の実施が定められています。具体的な号の内容は省令原文を確認してください。
第7号の措置は、身体的拘束等を行っているかどうかにかかわらず講じる必要があります。「うちは身体拘束をしていないから関係ない」という理解は誤りです。委員会の開催、指針の整備、研修の実施はすべての事業所に求められます。
高齢者虐待防止措置未実施減算
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠となる基準 | 指定地域密着型サービス基準第182条において準用する第3条の38の2 |
虐待の発生またはその再発を防止するための措置として、一般に①虐待防止のための対策を検討する委員会の定期的な開催と結果の周知徹底 ②虐待防止のための指針の整備 ③従業者への定期的な研修の実施 ④これらを適切に実施するための担当者を置くことが定められています。
④の担当者の配置は見落とされやすい要件です。委員会も指針も研修もあるのに、担当者を明示していないために基準を満たしていない、というケースがあります。
身体拘束の委員会と兼ねられるか
身体的拘束等適正化検討委員会と虐待防止委員会を兼ねられるかは、省令本文からは断定できません。関連する通知では、他の委員会と一体的に開催することが差し支えないとされる場合があります。市町村の取扱いを確認してください。
業務継続計画未策定減算
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠となる基準 | 指定地域密着型サービス基準第182条において準用する第3条の30の2第1項 |
業務継続計画(BCP)の策定と、それに従った必要な措置を講じることが求められます。対象は感染症の発生およびまん延の防止のための業務継続計画と非常災害の発生時における業務継続計画の2つです。
- 感染症・非常災害の両方について業務継続計画を策定していること
- 従業者に対して計画の周知を行っていること
- 必要な研修を実施していること
- 必要な訓練(シミュレーション)を実施していること
- 定期的に計画を見直していること
研修と訓練が実施されていないと、計画があっても基準を満たしません。看多機は宿泊機能を持つため、夜間に災害が起きた場合の対応まで想定した訓練が求められます。
担当したケースでも、BCPは立派に作られているのに訓練の記録がない事業所がありました。作成を外部に委託して、そこで止まっているパターンです。訓練の日付・参加者・想定した場面を記録に残してください。
3つの減算に共通する考え方
| 共通点 | 内容 |
|---|---|
| 減算率 | いずれも所定単位数の1% |
| 根拠 | いずれも運営基準への適合 |
| 回避方法 | 委員会・指針・研修・訓練・記録を整えること |
| 追加の人員・設備 | 不要 |
| 同時適用 | 3つとも該当すれば3つとも適用される |
3つとも、体制を整えれば回避できる減算です。加算のように資格者の確保や実績の積み上げを求められるわけではありません。
逆にいえば、この減算を受けている事業所は、書類と会議を整えるという最低限の作業ができていない状態ということになります。実地指導で最初に確認される領域でもあります。
3つの減算の注意点
減算は「所定単位数から」
注4〜注6はいずれも「所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する」です。基本報酬だけでなく、その月に算定した加算を含めた所定単位数が対象になります。
いつから減算になるか
基準を満たさなくなった時点からいつ減算が始まるのか、いつまで続くのかは告示本文に定めがありません。一般には事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで、という取扱いが示されることが多いのですが、市町村に確認してください。
他の減算との重複
過少サービス減算(70%算定)やサテライト体制未整備減算(97%算定)と重複した場合の計算順序は、告示からは読み取れません。市町村に確認してください。
小規模多機能型居宅介護も同じ構造
| 減算 | 看多機 | 小多機 |
|---|---|---|
| 身体拘束廃止未実施減算 | 1% | 1% |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% | 1% |
| 業務継続計画未策定減算 | 1% | 1% |
減算率も構造も同じです。両方を運営している法人では、委員会・指針・研修を一体的に整備できます。
よくある質問
3つの減算はそれぞれいくらですか?
いずれも所定単位数の100分の1です。要介護3なら1つにつき約245単位です。
3つ同時にかかることはありますか?
あります。注4・注5・注6は別々の規定なので、すべてに該当すれば3つとも適用されます。
身体拘束をしていなければ減算されませんか?
されます。第177条第7号の適正化の措置(委員会・指針・研修)は、拘束の有無にかかわらず必要です。
身体拘束の記録には何を書きますか?
態様、時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由の4点です。
虐待防止で見落としやすい要件は?
担当者を置くことです。委員会・指針・研修があっても、担当者が明示されていないと基準を満たしません。
身体拘束の委員会と虐待防止委員会を兼ねられますか?
省令本文からは断定できません。関連する通知で一体的な開催が差し支えないとされる場合があります。市町村に確認してください。
BCPは何について作りますか?
感染症の発生およびまん延の防止と、非常災害の発生時の2つです。
BCPを作れば減算されませんか?
策定だけでは足りません。周知・研修・訓練・定期的な見直しが必要です。
短期利用にも適用されますか?
注4〜注6には「イについては」という限定がありません。適用されると読めますが、市町村に確認してください。
何に対して1%を計算しますか?
所定単位数です。基本報酬だけでなく、その月に算定した加算も含まれます。
いつから減算になりますか?
告示本文に定めはありません。市町村の取扱いを確認してください。
小多機と減算率は同じですか?
同じです。3つとも1%で、構造も共通しています。
- 看多機には身体拘束廃止未実施・高齢者虐待防止措置未実施・業務継続計画未策定の3つの減算がある
- いずれも所定単位数の100分の1(注4・注5・注6)
- 3つは別々の規定で、同時に該当すれば3つとも適用される
- 注4〜注6には「イについては」の限定がなく、短期利用にも適用されると読める
- 身体拘束廃止未実施減算の根拠は省令34号第177条第6号・第7号
- 記録すべきは態様・時間・利用者の心身の状況・緊急やむを得ない理由の4点
- 身体拘束をしていなくても、委員会・指針・研修は必要
- 高齢者虐待防止措置未実施減算の根拠は第182条において準用する第3条の38の2
- 虐待防止では担当者の配置が見落とされやすい
- 業務継続計画未策定減算の根拠は第182条において準用する第3条の30の2第1項
- BCPは感染症と非常災害の2つについて策定する
- 計画を作るだけでは足りず、周知・研修・訓練・見直しが必要
- 3つとも追加の人員や設備なしに回避できる減算
- 減算を受けている状態は運営基準に適合していないことを意味する
- 減算率も構造も小規模多機能型居宅介護と同じ
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」注4、注5、注6、注7、注8(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第74号の2(身体拘束廃止未実施減算の基準)、第74号の3(高齢者虐待防止措置未実施減算の基準)、第74号の4(業務継続計画未策定減算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第177条第5号〜第7号、第182条において準用する第3条の38の2・第3条の30の2第1項(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の減算率・根拠条文は、厚生労働省の告示および省令にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに減算の開始・終了の時期、身体的拘束等適正化検討委員会と虐待防止委員会を一体的に開催できるか、委員会・研修・訓練の頻度、他の減算との計算順序については告示・省令本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。身体的拘束等の適正化のための措置および虐待防止のための措置の各号の詳細は省令原文をご確認ください。記事中の単位数の計算例は概算であり、端数処理により実際の請求額とは異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




